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屋台村にて

「おお、ここは初めて来たけど、どれも美味しそうじゃん」

 屋台村になってるその一角は、全部で十店舗ぐらいが軒を連ねていて、あちこちから良い香りが漂っている。

「ええ、麺類発見。これはラーメンかな?」

 明らかにラーメン屋っぽい店を見つけて覗いてみると、なんとメニューは一点のみ。しかもどうやらラーメンというよりは、具が無くて汁そばっぽい。

 シンプルな細麺に綺麗な透明の鶏がらスープのみ。だけどすっごく良い香り。

「あの、一杯ください」

 何か考える前にそう言っていた。だって、これはもう美味しい予想しかしないだろうが。

「あいよ。持ち帰りかい? それともここで食う?」

 麺をお湯に放り込みながら、俺と同世代っぽい兄さんが笑顔でそう聞いてくれる。

「ここでいただくよ」

「あいよ、少々お待ち〜〜」

 そう言いながら、ザルの中に入った麺をお箸でかき回している。

 隣の店は中華屋さんっぽい感じで、なんとチャーハンを炒めている真っ最中だった。

「あの、それ一人前ください!」

 ラーメンとチャーハン。めっちゃ炭水化物なメニューだけど構うもんか。どちらも美味しい香りしかしないんだから仕方がない!

 開き直って脳内で言い訳してから、お皿に盛り付けてくれたチャーハンをお金を払って受け取る。

 トレーに乗せて出来上がった汁そばも受け取り、見回して空いている座席に座った。



 お昼の時間を少し過ぎていたせいか、それほど混んでいないのであちこちに空席がある。



「ああ、それも美味しそうでしたよね。でも俺は腹が減ってるんでこっちにしました!」

 同じくトレーを持った二人が戻って来たけど、どっちのお皿も料理が山盛り。俺の倍くらいは余裕であったよ。

「ああ。その唐揚げ美味そう!」

 オリゴー君のお皿に乗っている山盛りの唐揚げを見てそう言うと、笑って奥の屋台を指差して教えてくれた。

「鶏肉料理の専門店らしいですよ。塩焼きとめっちゃ悩んだんだけど、まずはこっちかなと。他にもいろいろありましたよ」

「そうなんだ。ちょっと行ってくるから見ててくれるかな」

「はあい、いってらっしゃい」

 笑ってそう言ってくれたので、トレーを机に置いて大急ぎで教えてもらった店へ行く。見てみると唐揚げだけじゃなく、塩焼きやバター焼き、照り焼きっぽいのもあるし胸肉の一枚焼きなんかもある。それから手羽先や軟骨っぽいのもあった。

 確かにどれもめっちゃ美味しそう。よし、今度ここへも買い出しに来よう。

 しばらく悩んで、串から、と命名されたやや小さめの唐揚げを串に刺したのを二本と鶏皮の唐揚げを買った。

 多いかと思ったんだけど、間違いなく一本はシャムエル様に取られるだろうからさ。



「お待たせ。あれ、カルン君は?」

 オリゴー君だけが座ってて、カルン君の姿が見えない。

「ケンさん、こっちは? 飲みますよね?」

 笑って飲む真似をするのを見て、俺は笑顔でサムズアップしたよ。

「はいどうぞ。これは俺の奢りですよ」

 すぐに戻ってきたカルン君の手にあるのは、白っぽい飲み物なので濁り酒っぽい。

「これ、美味いんですよ。オススメなので」

 一つを俺の前に置き、もう一つをオリゴー君の前に置いてから屋台へ戻ってもう一杯用意してもらっている。

「では、まずはシルヴァ達に……届くよな?」

 小さくそう呟いて手を合わせながらシルヴァ達に祈ると、収めの手が現れて俺の頭を撫でてから、目の前に置かれた料理を撫でて消えていった。よしよし、出先からでも届けられたみたいだ。

「で、どれがいる?」

 当然のようにお椀を持って、汁そばの横でステップを踏んでいるシャムエル様を見る。

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 久々の定番味見ダンスの後、最後に片足でくるっと一回転して見事にポーズを決める。

「その麺はここにください! で、串からは一本と鶏皮とチャーハンはこっちにください!」

 一瞬でもう一枚出て来たお皿と一緒に、揃って差し出す。

「はいはい、ちょっと待ってくれよな」

 苦笑いして汁そばをお箸でつまんでお椀に入れてやり、スプーンでたっぷりとお汁も入れてやる。チャーハンもスプーンでたっぷりとすくってお皿に盛り付けてやる。串からは予想通り一本乗せてその横に鶏皮も適当に乗せてやる。

「お待たせしました、はいどうぞ」

 並べて目の前に置いてやると、まずは串からの串を勢いよく引っこ抜き、早速一個目を齧り始めた。

「肉食リス再び、だな」

 小さく笑ってそう言い、いつもよりもちょっと膨れた尻尾をそっと突っついてやった。



「かんぱ〜い」

 自分の分を持って戻って来たカルン君の声に、俺も貰ったカップを手にして一緒に乾杯する。

 飲んでみたけどそれほどアルコールはキツくなくて、やや甘めの美味しい濁り酒だ。

「うん、確かに美味しいな」

 俺がそう言うと二人が揃ってドヤ顔になる。

 笑顔でもう一回乾杯してから、それぞれ買って来たものを食べた。

 予想通りに汁そばは絶品だったし、串からも美味しい。そして鶏皮もカリカリでめっちゃ美味しかったよ。

 ちなみに鶏皮は三人で後半のお酒の当てに摘んだよ。これも絶対買っておこう。酒の当てに最高だよ。

 もう一杯買って来た濁り酒を飲みながら、俺はハンプールでの早駆け祭りの大騒ぎの話を時折一緒に笑いながら楽しく話しをした。まああの馬鹿の話とか、その後の馬鹿弟子の話には、二人揃って災難だったなと同情されたよ。

 すっかり話に夢中になっていたら、気がつけば周り中に人が集まっていて、一緒になって俺の話を聞いてて、最後は見事に二連覇達成したって話になった瞬間に、拍手大喝采になったのだった。

 皆、早駆け祭り好きなんだねえ。

 こんな離れた街にまで俺達の名が轟いてて、気軽に参加した俺の方が逆に驚いちゃったよ。

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