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二人のお兄さん達

明けましておめでとうございます(^ω^)


本日より更新を再開させていただきます。

今年も愉快な仲間達との楽しい旅を、どうぞ見守ってやってください!




「うわあ、あの大量の弁当箱。あれ全部収納しちまったよ」

「一体どれだけ入るってんだよ。すっげえなあ」

 呆れたような、半ば感心するような笑った声が聞こえて、俺は苦笑いしながらすっかり存在を忘れていた二人を振り返った。

「俺のはありがたい事に容量が相当あるんですよ。収納の能力を授けてくれた創造主様に感謝ですよね」

 積み上がった鉱夫飯の横でドヤ顔で胸を張るシャムエル様が視界に入り、笑いそうになるのを堪えながら肩を竦めてそう言うと、二人も笑って頷いてくれた。



「ありがとうございました〜〜!」

 満面の笑みのスタッフさん達が総出で見送ってくれる中を、手を振り返した俺は観光案内所を後にした。当然、草原エルフの二人がその後について来る。

「ああ、そういえば名乗っていませんでしたね。改めましてオリゴーですハンプールの英雄殿」

「カルンです。よろしく。ハンプールの英雄殿。俺とオリゴーとは双子なんですよ」

 笑ってそう言い、顔を寄せて揃って同じポーズを取る。

「ああ、よろしく。へえ、双子なんだ。確かに同じ顔だね。装備が違うから間違えはしないだろうけど、これで全く同じ装備にされたら絶対見分ける自信は無いなあ」

 顔だけ見ると確かにそっくり同じなので、俺も笑いながらそう言って頷く。

 オリゴー君は、背中に弓矢を装備していて、腰に装備しているのは宝石がついた短剣。カルン君は背中に小さめの丸い盾を背負い、腰にあるのはバッカスさんが持っていたみたいな湾曲したシミターだった。当然そのシミターの柄にも大粒の宝石が付いているので、恐らく二人も何らかの術を使うんだろう。



「俺達は王都で冬を過ごすつもりだったんですけど、少し前にギルド経由で三人が揃ってバイゼンで冬を越す予定だって伝言を聞いたんで、急遽予定を変更してこっちへ来たんですよ。妹達も久し振りにアーケルに会いたがっていたんだけど、彼女達は王都で仕事があるからね」

「ああ、妹さんもいるって言ってたね。へえ、妹さん達は王都にいるんだ」

 並んで宿泊所への道を歩きながら、俺はリナさんが三男二女のお母さんな事を思い出していた。

「なんだか知らないけど、俺達をもの凄く驚かせる事があるとか言ってたから、もしかしてアーケルに彼女でも出来たかって言ってたんですよ。まさかねえ」

 ちらりと何か言いたげに二人が揃って俺を見るので、小さく笑った俺は少し考えてから首を振った。

「さあねえ、アーケル君の交友関係までは俺は知らないけど、少なくとも彼女がいるって話は聞いた事がないなあ」

 まあ、実際にその通りなのでそう答えると、なぜだか二人は安堵したようにため息を吐いて揃って頷き合ってる。

 どうやら誰が一番に彼女を作るかは兄弟の間では重要な問題みたいだ。そういうのをムキになって競い合えるのって一人っ子の俺にはちょっと羨ましい関係だけど、三人にとっては冗談抜きで大問題なんだろうな。

 それより、リナさんが魔獣使いとして復活した事や、アーケル君が同じく魔獣使いとして覚醒した事は、話しても良いんだろうか?

 少し考えて俺は黙って首を振った。

 どう考えても、伝言で言ってた驚かせる事ってそれだろうから、部外者の俺がサプライズのネタバラシするのは駄目だよな。

「その、驚かせるってのが何なのか。多分俺は知ってると思うんだけど、せっかくだから直接本人達から聞いてやってくれよ。アーケル君とリナさんとアルデアさんは、俺の仲間達と一緒に郊外へ狩りに行ってるんだ。夕方くらいまでには戻って来るって聞いてるから、ギルドで待ってれば会えると思うぞ。ああ、三人も俺や仲間達と一緒で、ギルドの宿泊所に泊まってるよ」



 そんな話をしながら、観光案内所から少し歩いた所にある大きな円形広場で揃って立ち止まる。

 そこは広場の端の方に屋台村みたいな一角が出来ていて、香ばしい匂いがあたり一面に漂っていたんだよ。

「俺達は昼前くらいに、バイゼンヘ着いたところなんですよ。それでとりあえず冒険者ギルドへ行ったら、宿泊所に両親とアーケルが泊まってるって聞いて行ってみたんですけど留守だったんですよね」

「それで多分どこかへ出かけてるんだろうから、夜に会えるだろうと思ってさ」

「それなら時間潰しに、トロッコに乗りたいってこいつが言うもんだから、観光案内所へ行ったんですよ。以前来た時よりコースが増えていたから面白くてみていたら、ケンさんが声をかけて来たんです」

「俺達小柄だし、草原エルフは珍しいから、人間の冒険者から絡まれる事がよくあるんですよね。それで警戒したんです」

「失礼しました」

 最後は二人揃って見事なシンクロ率で謝ってくれたので、俺は慌てて首を振った。

「いやいや、こちらこそ突然失礼したよ。アーケル君の名前が聞こえて振り返ったら、まさかの草原エルフの二人連れだったからさ。兄弟がいるって聞いてたから、それでつい声を掛けちゃったんだよ」

「ああ、そうだったんですね。ところでケンさん。昼飯は?」

「いや、まだだよ。何だか良い香りがするから、どうしようか考えていたところ」

「それなら、せっかくですからご一緒しませんか。せっかくだから、見に行けなかったけどハンプールの早駆け祭りの話、聞きたいです」

「ああ、それなら俺も聞きたい! それなら後でいいので、早駆け祭りに出たハウンドに触らせて欲しいです!」

「それなら俺も触りたい! 絶対皆に自慢しまくるよ!」

「だよな〜〜!」

「な!」

 満面の笑みでそう言って手を叩き合ってる姿を見ると、彼らの実年齢は知らないけど、ノリは間違いなく高校生レベル。

 笑って頷いた俺は、二人の背中を叩いて一緒に屋台村を指差して頷き合った。



 最近のリナさんやアーケル君の話になると、うっかりサプライズのネタバラシをしそうだからそれは困るけど、早駆け祭りの話なら、いくらでもしてあげられるからな。

 笑顔の二人と一緒に、俺も良い香りに引き寄せられるみたいに屋台村の店を見て回ったのだった。

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