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鉱夫飯の引き取りと草原エルフの冒険者達

「ううん、ここの広場はどこで買っても美味しいよな、これは初めて食ったけど美味しいよ」

 今日は大きくてフカフカの肉まんもどきとタマゴサンドを買って、広場の隅に座ったマックスにもたれかかってシャムエル様と並んで食べているところだ。

 ハスフェル達は、相変わらず朝からガッツリ肉系。リナさん達も揃ってガッツリ肉系に走ってるよ。

 小柄な体に合わず、あの三人もよく食べるんだよな。

 ここへ来る前に、あの大急ぎで作った弁当を渡してやったら大喜びしてたから、多分リナさん達も完食コース。俺なら余裕で二食分はあるんだけどなあ。

 ぼんやりとそんな事を考えながら大きな肉まんを完食して、やや薄めの本日のおすすめコーヒーを飲む。

「今日は昼過ぎに鉱夫飯を引き取りに行かなくちゃいけないんだよな。なら、午前中は買い物にして、鉱夫飯を引き取ったら宿泊所に戻ってあとはまた料理かな。さて、何を作るかね」

 そんな事を考えながら、残りのコーヒーを飲み干してカバンに放り込んでおく。

「さて、それじゃあ気を付けて行って来てくれよな」

 マックスとニニとカッツェを順番に撫でてやり、他の子達も順番に撫でたりもふったりおにぎりにしたりしてやる。

「はい、それではいってきますね!」

 マックスが嬉しそうに、尻尾を扇風機にしながらそう言って起き上がった。

「おう、それじゃあ気をつけてな」

 最後にハスフェル達を振り返ってそう言い、揃って手を振って出かけるのを見送った。

「さてと、じゃあまた俺は買い物だな」

 そう呟いて鞄を持ち直すと、まずは屋台での買い物から始めたのだった。



「ううん、もういいかな。これだけあればなんでも作れるぞ」

 屋台での買い物を終えた後、そのまま朝市の通りへ向かい、ガッツリ色々と買い込んだよ。

 もちろん、あの栗の屋台が並んだところでも大量にお買い上げ、マロンパフェを作ったんだって話をしたらめっちゃ食いついてきたので、まあ良いかと一つ出してやったら、何故か屋台の人達から拍手大喝采だったよ。その上、またしても焼き栗を大量にもらってしまった。商売は良いのか、こんな事で。

 満面の笑みの屋台の人達に見送られて朝市を後にする。

 その後は、通りにある肉屋や牧場直営の店で牛乳やチーズを大量購入。のんびりと通りを見ながらムービングログで進み、気になる店があれば見て買ったりした。



「さて、そろそろ行ってみてもいいかな。まだだったら近くの広場で何か食べて時間を潰せばいいな」

 そろそろ太陽が頂点に差し掛かる頃だ。空を見上げてそう呟いた俺は、メインストリートを抜けて城壁沿いにある観光案内所へ向かった。



「ああ、いらっしゃいませ。たった今入荷したところです、数の確認中なので、もう少しだけお待ちください!」

 ファータさんが俺に気が付いて受付から手を振ってくれる。

「了解です。待ってますのでどうぞごゆっくり」

 笑って手を振り返し、待ってる間になんとなく壁面に貼られたツアー案内を見てまわっていた。



「へえ、こんなのあるんだ」

「面白えな。時間のある時に行ってみてもいいかも」

「冬中ここで過ごすんだろう? それなら時間は充分あると思うなあ」

「そうだな。アーケル達と合流したら、どれか行ってみてもいいかもな」



 少し離れた所にいた二人組の声を聞くとは無しに聞いていると、いきなりアーケル君の名前が聞こえて驚いて振り返った。

 そこにいたのは、どこからみても十代の美少年二人、だけど若干耳が尖っているのに気付いて目を瞬いたよ。って事は、草原エルフだよな。

「あれ、もしかして……リナさんの息子さん? 冒険者だっていう」

 思わず声に出してそう呟くと、聞こえたらしく驚いたように揃ってこっちを振り返った。

「どなたですか?」

 思いっきり不審そうに聞かれて、苦笑いして肩を竦める。

「ああ、失礼しました。初めまして。魔獣使いのケンだよ」

「……従魔は?」

 これまた不審そうにもう一人の方がそう尋ねる。

「俺の従魔は仲間達が狩りの為に外へ連れて行ってくれてるよ。俺は今日は留守番なんだ」

 その時、奥からワゴンに乗せた鉱夫飯の山を数人のスタッフさん達が運んで来てくれた。

「ああ、お手間取らせてすみません。じゃあこれ、残りの代金です」

 用意していたお金を払い、カウンターに並べられる鉱夫飯をガンガン収納していく。どうせ物理的に持っていけない量なんだから、隠しても無駄。俺が収納の能力持ちなのは、市場の人達は皆知ってるからね。



「はい、確かに。ええと、今日の分ってもう無いですかね?」

 全部収納した俺がそう尋ねると、スタッフさんの一人がおずおずと進み出てきた。

「あの、まだご入用でしょうか?」

「ええ、もしあれば頂きたいんですけど」

 俺がそう言って頷くと、なぜか泣きそうな顔になったそのスタッフさんがいきなり深々と頭を下げた。

「実は、急に団体様がキャンセルになりまして、その……」

「あれ、もしかして余ってます?」

 コクコクと頷くスタッフさんを見て、俺はにっこり笑ってお金を入れた巾着を取り出した。

「良いですよ、全部頂きます。予算は潤沢にありますのでどうぞご心配なく」

 そう言ってカウンターに巾着を置くと、スタッフさんに泣きそうな声で何度もお礼を言われた。

 なんでも、急なキャンセルだったんだけど、鉱夫飯の発注にギリギリ間に合う時間だったらしい。だけど連絡が行き違って発注されてしまい、全部で八十個も余ってしまったこれをどうするかで、大騒ぎになっていたらしい。

 よし、ストックが全部で百個越え。これで当分の間弁当に苦労しないぞ。いざとなったら俺の昼ごはん二回分だ。



 ガンガン運ばれてくる鉱夫飯を嬉々として収納している俺を、草原エルフの二人は呆気に取られて見つめていたのだった。

 ごめんよ。途中から君達の存在をすっかり忘れてたよ。

いつもお読み頂き有難うございます。

年内の更新は今回を最後にして、お正月休みとさせていただきます。

年明けの三日夜(四日早朝)より、更新を再開させていただきますので、しばらくお待ちください。

それでは皆様、どうぞ良いお年を!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今年も更新お疲れさまでした。 良いお年を!
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