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マロンペースト作り

「ご主人、そろそろプリンが蒸し上がる時間だよ!」

 栗を湯がいていた鍋が煮立ってきたので弱火にしたところで、タイミング良くプリンチームから呼ばれて慌てて様子を見に行く。

「おお、今回は蒸し時間も完璧だな。よしよし、良い感じだ」

 一度作ってるから蒸し加減もバッチリだ。

 全部取り出して、近くにいたアルファとベータに冷ましておいてもらい、まとめて冷蔵庫に突っ込んでおく。これも冷えたらそのまま収納だよ。



 そうこうしているうちに、栗が茹で上がった。

 お湯から上げて一つ切ってみたけど、茹で加減もバッチリみたいだ。

「よし、じゃあこれの中身を全部取り出して、なめらかになるまですり潰して欲しいんだけど、分かるかな?」

 待ち構えていたアクアとサクラに、湯がいた山盛りの大粒の栗を見せる。

「中身を取り出すって、こういう事だよね?」

 サクラがそう言って、一粒だけ栗を取り込みすぐに中身だけ綺麗に渋皮まで剥いて取り出してくれた。

「おう、完璧」

 頷く俺を見て、皮を剥いた栗をもう一回取り込む。

「なめらかになるまですり潰すって事は、これくらいまで?」

 一瞬で取り出した小皿に、一粒分の見事になめらかになった栗の塊を取り出す。

 触ってみても、完璧な仕上がりだ。

「素晴らしい。じゃあこれで頼むよ。俺は他の材料の準備をするからさ」

「はあい、じゃあその前に皆にやり方を教えておくねえ」

 早速アクアとくっつきあってモゴモゴ始めたサクラが元気に返事をする。

「おう、よろしくな」

 笑って手を伸ばして、マロンクリーム用の大きめの銅の片手鍋を取り出し、他の材料も取り出して計っておく。



「ご主人、すり潰した栗はどこに入れますか〜?」

 のんびりしたサクラの声に、空いたボウルを差し出す。

「とりあえず重さを計るからここに入れてくれるか」

「はあい、あともう少しあるから待ってね」

 ドバッとまとめて塊を吐き出し、アクアとくっ付き合ってモゴモゴし始める。

「ご主人、剥いた皮は要りませんか?」

「おう、それは使わないから食ってくれて良いぞ」

 すり潰した栗の残りをボウルに全部出してくれたあとに期待に満ち満ちた声でそう聞かれて、俺は笑いそうになりつつ大きく頷いてやった。

「わあい、じゃあ皆で食べるよ〜〜〜!」

 妙に嬉しそうな返事の後、ゴールドスライムとクリスタルスライムが一瞬で合体する。

「わあい美味しい〜〜〜! ご馳走様でした!」」

 数回もぐもぐと咀嚼するみたいに動いてから、そう言って一気にバラけて床に転がるスライム達。

「美味しかったのか。よかったな」

 机の上に跳ね飛んで戻って来たアクアとサクラを撫でてやりながら、計った栗の重さに合わせて、レシピを参考にしながら他の材料を計っていく。

「で、これを全部まとめて鍋に入れて、綺麗に混ざったら弱火にかけて水分を飛ばすわけか。硬くしすぎない様にしないとな」

 レシピの説明を読みつつ手順を確認してから作業に入る。

「火を使うから、少し離れてろよ」

 側にいたアクアとサクラにそう言ってやると、コロコロと転がって床にいる皆の所へ転がって行った。

「じゃあ、待ってる間にもう少し果物の飾り切りを色々作っててくれるか」

「はあい、じゃあ作っときま〜す!」

 嬉しそうなスライム達の声が聞こえて、俺は鍋にたっぷり入ったマロンクリームを焦がさない様に気をつけながらせっせと木べらでかき回し、楽しそうに果物の飾り切り作業を始めるスライム達を眺めて和んでいた。



「おお、良い感じになって来たなあ。多分冷めたらちょっと硬くなるだろうから、これくらいでやめておくか」

 なんとなく良い感じになったので、そこで一旦火を止める。

「じゃあこれ冷ましておいてくれるか」

 そう言って跳ね飛んできたアルファに鍋ごと渡す。あれは冷めたら別のお皿に取っておかないとな。



 それからまた、師匠のレシピを見て考える。

「ううん、俺的にはモンブラン風のパフェにしたいんだけど、あの細長くするのはどうやって絞ってるんだ?」

 多分どこかにクリームを絞る道具もあった気がするんだが、逆に俺が使えない気がする。定食屋とトンカツ屋では生クリームを絞った記憶は無い。

「でもまあ、なんとなく分かる気がするがいきなり本番でやるのは無謀だろうなあ。じゃあやっぱりスプーンですくって落とすか」

 そう呟いて、モゴモゴとやってるアルファを見る。

「あ、ちょっと待てよ。これなら良い感じに作れるんじゃね?」

 不意に思いついたそのやり方ならなんとかなりそうだ。

「よし、じゃあこれでやってみよう。上手くいったら他のパフェでも転用出来そうだ」

 単なる思いつきだったけど、良いアイデアだと思うので、とりあえずやってみる事にしよう。



「はい、冷めましたよ〜!」

 得意気にそう言って、マロンクリームの入った鍋ごと取り出して机の上に置いてくれる。

「良い感じだ、どれどれ。これはまずは味見をしないとな」

 にんまりと笑って、スプーンを取り出してちょいとすくって舐めてみる。

「うおお、めっちゃ美味い! 超濃厚じゃんか。って、痛い! 分かった分かった。あげるから叩くな」

 突如俺の右肩に現れた大興奮状態のシャムエル様が、ちっこい手で俺の頬をバシバシと叩き始める。

「ほら、ちょっとだけだぞ」

 小皿にスプーンですくって渡してやる。ついでに俺ももうひと舐め。美味しいけどかなり甘い。

「ふおお〜〜〜! 美味しい! めっちゃ濃厚な栗クリーム!」

「く、栗クリームって」

 突然の駄洒落の登場に、咄嗟に吹き出した俺は……悪くないよな。

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