チョコパフェ試作編
「じゃあまずはチョコソースからだな。よし、山ほどあるログインボーナスチョコを使おう」
この世界に来た時以来、毎日一粒貰えるログインボーナスチョコ。今でも定期的に箱から取り出して別の入れ物に保存している。もう、数えるのはやめてる。かなり使ったと思っていたけど、気がつけばまたいっぱいになってる。どんどん増えるんだから勿体がらずにありがたく使わせてもらおう。
ちなみにこれは甘いミルクチョコなので、セレブ買いの時に塊で購入した全然甘くないブラックチョコも混ぜて使おう。
「ええと、刻んだチョコレートをミルクで溶かす訳か。それでなめらかなソースに仕上げたら最後にバターを入れて溶かせば完成。何だ、簡単じゃん」
すでに大興奮して机の上で跳ね回っているシャムエル様を横目に見て、師匠のレシピの倍量で作る事にした。
まずは材料を計っていく。
「チョコは半々くらいかなあ。誰かこれ、三分の一くらいを細かく削ってくれるか」
「はあい、やりま〜す!」
側にいたサクラが一瞬で塊のチョコを飲み込む。
「じゃあ、削れたらここに出してくれるか」
適当にボウルを置いておく。
その間にログインボーナスチョコも計ってボウルに入れておき、削れたブラックチョコも同量計って混ぜておく。
「ええと、ミルクを沸かしてそこにチョコを入れて溶かせば良いんだろう。簡単じゃん」
今こそ銅の鍋の出番だよな。
やや小さめの銅の片手鍋にミルクを入れて火にかける。
「で、沸いてきたらチョコを投入っと」
こぼさないように数回に分けて鍋に入れてから木べらで混ぜていく。
「ううん、なかなか溶けないぞ。弱火でちょっとだけ火にかけるか、レシピには絶対に焦がすなって書いてあるから、油断禁物だぞ」
必死にかき回しながら鍋をゆすり、何とか溶けてきたので火を止める。
「溶けたら仕上げにバターを一欠片入れて、これが溶ければ完成っと。なるほど簡単簡単。ううんもうちょいミルクを入れとくか」
思ったより硬そうだったので、追いミルクをして綺麗に混ざったら完成だ。
「よし、なめらかになったぞ。誰かこれ、冷ましておいてくれるか」
「はあい、やりま〜す!」
アルファが跳ね飛んできて、鍋ごと飲み込んでくれる。
「アイスはまだある。じゃあ誰か生クリーム泡立ててくれるか」
そう言って、大瓶に入った生クリームと砂糖を並べておくと、これはメタルスライム達が張り切って集まって泡立て始めてくれた。
「あとは果物の飾り切りだな。ええとこの前のが少し残ってたな。じゃあベータ達は果物の飾り切りをお願い出来るかな」
色々取り出した果物を渡して、飾り切りにする分と、細かく刻む分に分けて作ってもらう。
余ったらまた別のデザートに使えるから、これはたくさん作っておいてもらうよ。
「じゃあまずは試作で一つ作ってみるか。ええと師匠のレシピに見本のイラストがいくつか載ってたな。これを参考にすればいいか」
正直言ってチョコパフェなんて子供の頃に食べたきりだからどんな風だったかなんておぼろげな記憶しかない。だけどまあ何となくでも作れるだろう。
「パフェのグラスを買った店でこれを見つけたんだよな」
にんまりと笑って取り出したのはアイスクリームディッシャー。要するに、丸くアイスをすくって飾る時に使うアレだよ。
「何々、底にシリアルを入れてチョコソースを絡める。よし、これくらいだな」
師匠のレシピのイラストを見て、近い形のやや縦長のグラスを取り出す。当然縁の部分はフリル付きだよ。
「ご主人、これくらいで良いですか?」
丁度、アルファにお願いしていたチョコソースが冷えたみたいだ。
「よし、良い感じだ。じゃあこれをシリアルにたっぷりと回しかけて、その上にアイスを入れる」
濡らしたディッシャーでアイスをすくってグラスに入れる。
「二個くらい入りそうだな。もう一個入れとくか」
そこにもチョコソースをかけてから、刻んだバナナとリンゴを入れる。
「生クリームを絞る技術は俺には無いから、ここはスプーンの出番だな」
しっかり泡立ててくれている生クリームをすくい取り、アイスの上にたっぷりと乗せる。
「真ん中にもう一回アイスを入れて、飾り切りした果物を色々とはみ出させるみたいに盛り付けるわけか。それで最後にもう一回生クリームを落としてチョコソースを回しかければ完成だ!」
「ブラボーブラボー!」
買ってきたあのパフェ用の長いスプーンをまるで槍みたいに振り回しつつ、ものすごい勢いで跳ね飛んでステップを踏むシャムエル様。そしてさっきから俺の後頭部の髪を必死になって引っ張る収めの手。
「待って、ちゃんと供えるからもうちょっとだけ待ってって」
笑ってそう言うと、手早く俺用に小さなグラスにアイスクリームを取ってチョコソースをかけただけのを作り、それと一緒にシャムエル様が渡してくれたパフェ用スプーンも添えてチョコパフェを簡易祭壇に並べる。
「お待たせしました、試作のチョコレートパフェです。きっとシルヴァ達は好きだと思うよ、またいろんなバージョンを作る予定だからお楽しみに」
笑ってそう言いながら手を合わせると、いつもの収めの手が何度も何度も俺の頭を撫でてから、パフェを撫でまくり、最後にグラスごと持ち上げる振りをしてから消えていった。
「めっちゃ喜んでたな」
笑いながらそう言い、パフェとスプーンを持っていつもの椅子に座る。
「食、べ、たい! 食、べ、たい! 食べたいよったら食べたいよ〜〜〜〜〜〜!」
欲望丸出しの食べたいダンスの歌と共に、ものすごい勢いでステップを踏む。
「俺は一口くらい食べたら充分だから、どうぞ」
そう言って、グラスごとシャムエル様の目の前にスプーンと一緒に置いてやる。
「良いの?」
目を輝かせるシャムエル様に笑って頷き、どうぞと手を差し出す。
「ふおおお〜〜〜これは素晴らしい! では遠慮なく、いっただっきま〜す!」
高らかに宣言したシャムエル様は、スプーンを置いて頭からパフェに突っ込んでいった。
そしてグラスの縁の部分に器用に座って、ものすごい勢いで食べ始めた。
「あぁあ、頭の後ろ側までチョコとクリームまみれになってるぞ」
苦笑いした俺は、いつもの三倍サイズになったもふもふの尻尾をそっとこっちに引き寄せて、チョコソースをかけたアイスを食べながら、もふもふ尻尾を堪能したのだった。