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買い物と商人ギルド

「それじゃあ弁当ありがとうな」

「行ってくるよ」

「弁当ありがとうございま〜〜す!」

 いつもの広場の屋台で好きに朝食を食べた俺は、従魔達をハスフェル達に託して広場で別れた。今回は近場でそれほどの無茶はしないとの事なので、ラパンとコニーのうさぎコンビも一緒に狩りに出かけていったので、留守番組はスライム達以外はモモンガのアヴィとハリネズミのエリーだけだ。

 リナさん一家とランドルさんも一緒だから、従魔の数はすごい事になってて、来た時から広場の大注目の的だったよ。

「気をつけてな〜〜」

 笑って狩りに出かける一行を手を振って見送り、俺はそのままムービングログを取り出して飛び乗る。

「まずは買い物だな。あの調子で弁当を用意してたら、あっという間に作り置きが無くなりそうだ」

 シルヴァ達がいた時に作ってた量を思い出して、ちょっと乾いた笑いが出た俺だったよ。



 って事で、まずは屋台で目についた物をガンガン買いまくり、朝市の通りへ行って、ここでも新鮮野菜や果物を中心にありったけ買いまくった。

 それから肉屋の並ぶ通りへ行き、各種お肉や乳製品も追加でがっつり仕入れてきたよ。

 ジビエはまだまだ山ほどあるけど、やっぱり定番の牛肉や豚肉、それに鶏肉は欠かせないもんな。



「さあて、とりあえず食材は確保したぞ。ううん、俺が欲しい物はどこへ行けばあるんだ?」

 まず俺が欲しいのは、昨日のお店で見たチーズフォンデュ用の分厚い陶器の鍋。多分あれ一種類って事は無いだろうから、他の鍋があれば土鍋に転用出来そうなのが有るんじゃないかと思っている。それに、チョコレートフォンデュをするのなら、出来れば吹き上がるあのチョコタワーが欲しい。

 腕を組んで考えた俺が向かったのは、商人ギルド。まずはあの陶器製の鍋が、どこに売っているのか教えてもらう為だ。

「陶器のお鍋はまあすぐに見つかるだろうけど、チョコタワーはどうしたら良いかなあ」

 ムービングログを転がして商人ギルドへ向かいながら、俺は定食屋でバイトしていた時に、店長がノリで始めたバレンタイン企画の時に店で使っていた、チョコレートフォンデュタワーの組み立てをした時の事を必死になって思い出していたのだった。

「確か、土台のお皿の真ん中に立ってた芯の部分が螺旋状になってて回転してチョコソースを上に持ち上げる仕組みだったよな。それで重ねた傘から下に流れ落ちてたんだっけ。ううん、どう考えても簡単じゃないか。やっぱり、チョコタワーはドワーフギルドのエーベルバッハさんに相談するのが一番良い気がしてきた。だけどこの世界には無い道具だろうから、聞いてみて無理そうなら諦めて鍋でするか。あんなチョコタワーがあれば、シルヴァ達やシャムエル様はきっと大喜びすると思うんだけどなあ」

 小さく呟きながら考えている俺の右肩では、聞いていたシャムエル様が大興奮状態でものすごい勢いでステップを踏んでいる。

 頼むから、肩の上は危ないからやめてください。



「おや、一人か?」

 俺が商人ギルドへ到着して顔を出したら、ヴァイトンさんが丁度スタッフさん達と話をしているところだった。

「ええ、ハスフェル達はまた狩りに出かけました。俺は留守番です」

「何だ、お前さんも冒険者なんだろうに、また留守番か?」

 笑ったヴァイトンさんの言葉に、俺も笑って肩を竦める。

「俺は料理担当なんですよ。まあたまには戦いますけどね」

「せっかく武器と防具一式をあれだけの物に一新するんだから、使ってやらないと装備が拗ねるぞ」

「どうせ旅に出たらまた大変な事になるんですから、街にいる間くらいゆっくりさせてください」

「あはは、まあ気持ちは分かるぞ。どうだ。この際冒険者から商人に鞍替えなんてのは?」

「せっかく作る装備が無駄になるから嫌です」

 笑いながらそう言い返すと、当然本気で言っていたわけでは無いヴァイトンさんも一緒になって大笑いしていた。



「それで、今日の御用は? ああ、例の屋敷の修繕工事の見積もりがそろそろ上がってるんじゃないか。大工の手配が済んだって言ってたからな」

「ええ、この後でドワーフギルドにも顔を出すつもりなので確認しておきます。それでちょっと聞きたい事があって立ち寄ったんです」

「おう、どうした。俺に分る事なら何でも教えてやるぞ」

 まあ、きっとそう言ってくれると思ってここへ来たんですよね。

 って事で、俺は昨日見た陶器製の分厚い鍋がどこに行けば売っているのかを尋ねた。

「それなら道具屋筋へ行けば色々あるぞ。あそこは主に店舗向けの備品や道具なんかを扱ってる店が多いが、現金でなら誰にでも売ってくれるからな」

 道具屋筋の場所を聞いてみると、武器や防具の工房がたくさんある職人通りからすぐ近くの裏通りだったよ。

「ありがとうございます。じゃあ行ってみますね」

「もしも素人に売れないとか言われたら、俺の紹介で来たって言えばいい。ああそうだ。一応渡しておくから、何か言われたらこれを見せるといいぞ」

 そう言って、綺麗な銀色のカードを渡してくれる。だけど、それってめっちゃ見覚えのあるカードの色違いだ。

 それを見て少し考えた俺は、自分で収納してあった、ハンプールの街で貰ったギルド連合の名誉会員の金色のカードを取り出した。やっぱり、色が違うだけで全く同じ柄なのを見て思わずヴァイトンさんを振り返った。

「おおなんだ。お前さんもそれを持っていたのか。それならシルバーカードは要らないな。もし何か言われたら、それを見せるといいぞ」

 にんまりと笑ってそう言われて、俺も何となくニンマリと笑って頷き返した。

 それから互いの拳をぶつけ合ってから、一礼した俺は商人ギルドを後にしたのだった。



「へえ、これって貰ったきりすっかり忘れてたけど、何だか色々と便宜を図ってくれそうなカードなんだな」

 自分でカードを収納した俺は、またムービングログに飛び乗り今度はドワーフギルドへ向かったのだった。

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