楽しんでるんじゃないですよね?
「根元までぐっとな。中男、動くな!少しじっとしてろ!一名!」
中男が型の見本を見せて、退部が解説をしていた。
「Come to rest」
そこに一名の力ある言葉が流れた。
「バックラーの影になるようにな」
「退部先輩、このカッコ、キツイ」
「なら、中男が体幹を鍛えるのにもってこいだろう」
中男を文句を退部が、さらりとかわした。
「かまえばウレタンでのどつきあいでお馴染みじゃないですか!わざわざ見本はおかしいでしょう!」
さらに中男が文句をつけた。
「……よし、筋肉の動きも、見せた方が良いな。苦手、一名、中男をひんむけ」
「退部先輩、出来ません。固定だけで許容範囲を超えてます」
一名はやる前からギブアップ。
「僕は加減がまだできませんから、全部に成りますよ。いいですよね中男部長。Naked Emperor!」
苦手が中男に宣言し、力ある言葉を発した。
「え?全部?えぇぇー!?ちょ、ちょ、ちょぉぉーッ!!」
焦る中男だが、見た目では、何も変化が起きなかった。
「さすが、すごい筋肉」
中男の正面に体育座りの一名が言う。
「こういう風に動かすんですね」
その横で同じように体育座りの苦手も言った。
「背中やふくらはぎも立派です」
中男の後ろに居る、退部の隣から眺めていた不断も声をあげた。
「あんまり視たくないよなぁ。尻」
不断とは退部を挟んで反対側の隣に居る親友がボソッと言った。
「ほう、ほう。そうなんだ、中男先輩、先輩なのに。見栄っ張りだったんだ」
公男がニヤニヤ嘲いながら、中男の正面に立って言った。
「公男、おめぇに言われたくねぇ!おめぇだって見栄じゃねぇかよ!」
中男が公男に吼えた。
「へ?」
公男が首をひねった。
「公男、こんなのでも部長だ、中男部長って呼んでやれ」
退部が声をかける。
「公男、Naked Emperorは前提条件に相互信頼が無いと発動しない、双方向だから、公男も中男部長に同じように視えてかます」
一名が公男に声を投げた。
「えぇぇ!」
絶叫して、公男がフルフェイスヘルメットを腰の前に抱えた。
「どう?1年生慣れた?」
そこに、ぬるりと無能顧問が現れた。
「あ、顧問ちゃん。いらっしゃい。今、ポージングを中男部長にさせて1年のお手本にしてます」
退部が無能顧問に説明した。
「そうなのね。定例の練習試合、来週末に決まったから、報告よ。詳しい事はメールで送られて来るから、視といてね」
そう言って、中男の肩をポンと叩いて、無能顧問はぬるりと消えた。
「……また、ライ高か。公男は、まあ、悲観しないで頑張って生きろ。生きていれば良いことも在るぞ。たとえ小さくとも」
「ん?」
中男の言葉に、公男が首をかしげた。
「この魔法は、人体以外、何で遮蔽しても、すべて無駄ですよ、公男」
苦手の一言で公男がフルフェイスヘルメットの前を、手でおおった。
「早く言えよ!俺は、臨戦態勢ん成るとすごいんだよ!」
「はいはい」
公男の叫びに、中男が生暖かい視線と返事を向けた。
「まあ、中男部長と1年全員が信頼関係にあるのがわかったな。信頼を確かめるために時々やろう」
平然と退部が言った。