謎が身近におちていましたが?
スピーカーからチャイムのメロディーが流れた。
「じゃな、親友、鍵は宜しく!退部先輩、お先ぃ〜」
練習を終えると、着替えも片付けもしないで中男が、ぬるりと消えた。
「また逃げられたぁ〜!苦手、中男先輩捕まえろよ!」
「だから、あれは刑法上、違反には成りませんから、無理ですって、何回言った?」
「だから、何だよそれぇ〜」
苦手の言葉に、親友が肩を落とした。
「親友ばっかり、負担になるから、僕らも交代で鍵当番をしよう」
一名が言った。
「良いな。月曜日は親友と苦手、火曜日は親友と公男、水曜日は中男と親友、木曜日は親友と不断、金曜日は親友と一名だ。親友が来れない時は俺が入る。もし土日に有るなら雁にだな、縄を付けてでも中男にやらせる。中男以外はあくまでも手伝いだぞ、責任者は部長の中男、副部長の親友だ。部長の中男があれだから結局親友には負担が残るな。すまんな」
ジャージ姿の退部がそう言って、5人を見回した。
「今日の鍵当番は僕とだね」
一名が親友に言った。
「よろしく」
ニパッと親友が笑った。
「部室を開けなければ鍵当番無しだからな。開けたら、使わなくても鍵は確かめて帰るんだ、体育館の鍵はうちだけが体育館使う時か、うちが最後に出る時だけだな。部室、体育館どっちの鍵も、職員室か守衛さんに返せ。これは昨日までのも親友がやってたからわかるだろうけどな」
「何でも聞けや」
親友は、腰に手を当て胸を張った。
「でだ、話は代わるが、先週注文した、ユニホームと装備の一式、来週月曜日に届くから、引き落としが出来るようにな」
退部が、もう一度5人を見回し言った。
『はい』
後輩の返事に無言で頷く退部は、いつの間にか着替え終わって、制服姿に成っていた。
「じゃ、また月曜日にな」
『お疲れ様でした』
階段を降りながらひらひら手を振る退部に、後輩が声を揃えた。
「退部先輩、話を始めた時はジャージだったよな?」
公男が呟く。
「あれは、謎だよ」
苦手も首をひねった。
しばらくして、5人は片付けと着替えを終えた。
「To Release The Soundproofed Virtual Wall」
苦手が、力ある言葉を放つと、体育館のホールやステージを使っていた、生徒のざわめきが聞こえ始めた。
「なあ、何か食って帰るかぁ?」
部室の鍵をチリチリさせながら、階段を降りながら、親友が皆に声をかけた。