そんなんで良いんかい!?
「竹や、竿竹、竹や、竿竹、竿竹同好会は君を待っている!」
「塑像の型どり研究会で、君も自分自身の像を型どりして作りませんか?」
「みんなで暑い汗を流そう!フィンランドサウナ部では、体験入部絶賛受付中だ!」
入学式の後には部活勧誘の嵐だった。
校舎前にブースを作り、各部が新入生を虎視眈々と狙っていた。
ここ泡沫高校の普通科に入学した主人公男も、中学から一緒にいる友人の一番親友と、ブースを覗いている。
「……ラ、……ラ、……ラヴミー・チャーム!」
少女の声が響いた。
「美しいお嬢さん、お名前を」
突然、公男がそのツインテールの少女の手を握り、ささやいた。
「私、タダナです。オモヒトタダナです。君の名前と所属先を書いてもらえますか?」
「わかりました」
少女タダナの差し出すファイルの紙に、公男は、【普通科1年1組9番主人公男】と自分のペンで書き込んでタダナに返した。
「!良かった身内だ!ならぜひ、お友達もお願いします」
タダナは、親友にも紙とペンを差し出した。
「え?俺も?」
親友が紙を受け取り見た。
入部届けだった。
すでに入部希望の部名が書かれている。
「補欠部?これ何部よ?」
疑問符が親友の頭を満たした。
「あなた、今のは禁止事項よ」
突然近付いた、生徒会委員の腕章を着けた女子生徒が、親友から用紙をふんだくった。
「勧誘に誘惑魔法は禁止です」
「えぇ!そんな校則、聴いてません!」
生徒手帳を示して、タダナが口を尖らせた。
「法律で禁止されてるんだから、校則に【人を殺さない】って書かないのと同じように、常識です」
腕章の女子生徒は腰に手を当てて言い切った。
「私、帰国子女だから……」
「国際法でも禁止されてるぞ」
別の、生徒会委員の腕章の男子生徒も会話に加わった。
腕章男子生徒がタダナの手から、公男の書き込んだ紙を取り上げ、公男に渡す。
「魔法科2年2組22番主人公女、又ペナルティね」
後ろから来た、女性教師が宣言し、公女が、膝から地面に崩れ落ちた。
「主人さん。先に、生徒指導室へ行っててね」
女性教師が公女を立たせて言った。
「……はぁい」
不貞腐れたような返事をして、公女はその場を離れた。
「Current Recovery!」
その女性教師の力ある言葉で、公男は我に還った。
「今のは一体?……でも今の娘、可愛かったぁ」
ボーッとして公男が呟くと、親友が言った。
「そうか?並みだろ並み」
「運命の出会いだ。この出会いを無駄にしないぞ!」
「じゃ、公男はあの先輩の部活に入るんだ」
呆れたように親友が言う。
「そうする!けど、この補欠部って、なにする部か分からん!」
すぱぁぁ〜ん。
公男の顔面にハリセンが叩きつけられた。
「痛っ!くない?音だけ?」
「刀剣道の補欠部だ!」
「「刀剣道の補欠部?」」
異口同音に公男と親友が、ハリセンの人物にたずねた。
「そう、この地域にはすでに在るのに学校に【刀剣道部】を造ろうとした、大迷惑な部外者女だからな」
「ウレタン刀でドツキ合うスポーツ刀剣道でなくて?あの全身スーツの?」
親友がたずねる。
「そうだ。全身スーツにフルフェイスヘルメットの、どの地区にも昔からある刀剣道を、わざわざ学校に申請して部にしようとしたんだ」
「そりゃ、選手集まらんな」
公男が腕を組んで言う。
「二重以上登録は国際条約でスポーツ会一世紀追放だからな」
親友も腕を組んで言う。
「なら俺は、地域スポーツ入って無いから、オッケーじゃね?」
自分の顔を、指差して公男が言った。
「地域スポーツで試合に出られない程の選手が、一時期集まった。が、練習試合の相手校がなかったんで、ほとんど他所に転部しちまった」
公男の言葉をスルーしてハリセン男が続けた。
「弱すぎて?」
「いや、他に刀剣道部のある学校が無くて」
「今も?」
「今はある。昨年開校した全寮制の私立ライバル高校に、この春からな」
「あ、寄付金がべらぼうな高校だ」
阿吽の呼吸でハリセン男と親友。
「ライ高はその代わり、特待生になれば授業料無料、寮費無料、食費無料な上に、学校から小遣いまで出るぞ」
公男が言い切った。
「お前妙な事知ってるな」
ハリセン男が公男の肩を叩いた。
「いやぁ、受験の前に調べた」
「行かなかったのか?」
公男の答えに、ハリセン男が返す。
「こいつ、推薦落ちた」
親友が口を挟んだ。
「行かなかったんだよ!通常の受験で、ここ受かったから、こっちに……」
「二次募集も落ちた」
公男の言葉を親友が遮った。
「あの部外者と同じだな」
頷いてハリセン男が言った。
「あのぅ、先輩は誰で何部なんですか?」
むっとしながら、公男がハリセン男にたずねた。
「おれか?おれは、魔法科2年の自己中男、その補欠部、部長だ」
「入部します!」
公男は、中男の手を、しっかり握っり、入部届けを押し付けた。
「「マジか!」」
中男と親友の声が揃った。