さくらいろ
その頃どんなに目をこらして頑張ってみても
夜空には星と月しかみえず
ひとりでは
生きるってそんなもんだと今でも思っています
時計台のある北の街で感じた
そうでないひととき
その人は白い細い指をのばし よぞらキャンバスに
わけのわからない線を描いてくれました
私がちょっとからかっても
めげずにくり返しくり返し描きつづけてくれました
するといつのまにか夜空に輝く夢たちがあらわれてきました
これが白鳥座
かちほこったようにいうのですが 私には十字架にしかみえない
ほんとうにちゃんとみてる
頬と頬をくっつけ 私の視線を追いながら
ここよここ
くり返しくり返ししつこいくらい みえない白鳥だけ
あんまりしんけんに描くから
みえたことにして解放されたけど
おまけにあとで調べたらそれは白鳥座でもなんでもなかったのだけど
でも生まれて初めて夜空に輝く夢をみることができたのです
その後なんどやってもじぶんひとりではけっしてみえないから
彼女は今も私の眠った心ふるわす奇跡の女神なのです
夜空に星座などみえるわけなくて
あの夜みえたのは人のみる夢だから
夢などみたことのない私に
夢をわけあたえてくれるのは
きっと私のこと好きだからなんだ
そうでしょうってしんけんにきいた私に
あなたこそわたしのこと そう なんじゃない?
ってすこしめをそらしてみせてくれたのは
からだとろける
この人のためならなんだってできると誓わせる
とびっきりの桜色のえがお みたこともない