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文化祭と新たな火種 8


 雄介たちが教室で衣装合わせをしている頃、慎と沙月は二人で話をしていた。


「で、さっきの気持ちの悪い頼みは何かしら?」


「おいおい、気持ち悪いとは失礼だな、だから説明したじゃねーかよ」


 今二人が居るのは、誰も居ない校舎の裏。

 誰も居ない場所で話をしたいという慎の願いにより、二人はこの場所に二人っきりで居た。


「だから、私も言ったでしょ? 嫌ですって」


「頼むよ! 他に頼める女子が居ないんだ」


 慎がなぜこんなにも必死に頼んでいるかというと、理由は文化祭二日目のベストカップルコンテストにあった。


「しつこいわね、山本君モテるんだから、相手ぐらい大勢いるでしょ?」


「それだと、後々面倒なことになるだろ? なし崩しに彼女ずらとかされても面倒なんだよ……」


「まぁ、その気持ちもわかるけど……」


「じゃあ、俺を助けるト思って! 友達だろ?」


「友達だけど、カップルではないわ」


 慎は頑として首を縦に振らない沙月に頭を悩ませて考え、何とか説得を心見る。

 そんな慎に、沙月はハッキリと言い放つ。


「大体、私は山本君みたいなイケメンって嫌いなの、なんかむかつく」


「理由がザックリしすぎじゃないか? 仕方ないだろ? こういう顔なんだから」


 思いっきり決め顔をする慎に、沙月はごみを見るような視線で答える。

 メンタルに自身のある慎も、沙月の子の表情は流石に効いたようだった。


「大体、なんでそんなのに出なきゃいけないの?」


「あぁ、コレには深い理由があってな……」


「どうせ下らない理由でしょ?」


「良いから聞いてくれよ……実はな……」


 慎がベストカップルコンテストに出なければいけない理由、それは数日前の告白にあった。

 いつものように呼び出された慎は、申し訳ない気持ちで告白をしてきた女生徒に言う。


「ごめん、君とは付き合えない」


「そんな……」


 慎はもう慣れっこだった、告白をされるのもそれを振るのも、しかし今回の告白は少し違った。


「なんでなんですか! 彼女も居ないのに!! やっぱり、あの今村とかいう先輩と……」


「誤解しないでくれるかな? 俺と誠実は友人だけど、そういう関係じゃないよ」


「じゃあ、なんでですか! 彼女居ないなら付き合ってくれてもいいじゃないですか! それとも私に不満があるんですか!」


 随分自分に自信がある子のようで、いつもの子のように簡単には引き下がってくれない。

 慎はそんな彼女の強気の押しに、若干負けそうになりながら、言い訳を続ける。


「い、いや……君に不満というのは無いけど……その、君の事を俺は全く知らないし……」


「じゃあ、今から知ってください! 私、本気で山本君が好きなんです!!」


 一向に諦める気配のない彼女に、慎は咄嗟に嘘をついてしまった。


「いや、実は俺、彼女がちゃんと居るんだよ!」


「?! ……ほ、本当ですか!! だ、誰ですか!!」


「そ、それは言えないよ……だって、そんな事をしたら、君が何をするかわからないからね……」


「なんでそんな事を言うんですか! 何もしませんよ!」


「じゃあ、握りしめたカッターを閉まってくれない? さっきから怖くて仕方無いんだ……」


 告白してきた女の子に、どこか危険を感じた慎は、嘘をついた事を後悔し始めた。

 嘘がばれたら、何をされるかわからない。

 ボロが出ないうちに逃げようと、慎は彼女から離れ始める。


「ご、ごめんね……じゃあ、俺はここで……」


 慎が帰ろうとした瞬間、慎の頬を何かがかすめた。

 何かと思い、頬に触れると、そこには刃物で切られたようなきれいな傷と血が流れていた。


「……証拠………」


「……え?」


「証拠を見せて下さい!」


「だ、だから……彼女の名前を教えるのは……」


「だったら、文化祭のベストカップルコンテストに出て下さい! 山本君の彼女なら相当可愛いだろうし、優勝だって間違いないでしょ? そうすれば私も諦めが付くし、貴方だって彼女が居るってアピールできるじゃない!」


「な、なんでそうなるの……」


 無茶苦茶を言う彼女に、慎はそんな事をつぶやきつつも、少し危険な彼女に危機感を感じていた慎は彼女が嘘だとは言えず……。


「わ、分かった……それで諦めてくれるんだね?」


「はい、私だってそこまでしつこくないです」


「じゃあ、カッターを持ち歩くのはやめようか? 今も俺を狙ってるよね?」


 そんな少し危険な少女に好かれてしまった慎。

 もちろん彼女なんて居るわけがないので、こうして沙月に相方役を頼んだのだった。

 話を聞いた沙月は、またもや慎の事をごみを見るような目線で見る。


「それ、貴方の自業自得じゃない……お葬式くらいは出てあげるわ」


「まってくれ、確かにこれは俺の嘘が招いたことだけど、いい機会だと思ったんだ」


「いい機会?」


「あぁ、今まで何人もの女生徒から告白されて断って来たけど、彼女が居るって公にすれば、みんな諦めてくれるかなって?」


「そう、じゃあ相手役の私に嫉妬の視線が集まってくるわね……絶対お断りよ」


 沙月は無表情のままその場を後にしようとする。

 しかし、その行く手を慎が遮る。


「ま、待ってくれ! これは太刀川さんの為でもあるんだぞ?」


「私の為? 何を言ってるの?」


「太刀さんだって、加山さんが雄介一筋になってから、毎日のように告白されてるよね?」


 優子が雄介にベタぼれという噂が広まってから、今まで優子に告白していた男子たちが優子を諦め、沙月に告白し始めたのだ。

 理由は簡単で、望みのない優子に告白するよりも、男の噂がなく普通に可愛い沙月を男子たちが狙い始めたのだ。

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