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文化祭と新たな火種 4 分岐

*


「あ~ひどい目にあった……」


「ひどいのはお前だ! 結局お前が気絶して、俺が負ぶって帰っているんだぞ!」


 結局雄介はあの後、加山に捕まり気絶してしまった。

 そのまま置いていくという訳にもいかないので、慎が雄介を負ぶって帰宅する事になった。


「わるいわるい……まだ気分がな……」


「まったく……まぁ良いけどよ、それより珍しいな」


「何が?」


「お前から優子を誘うなんて、何かあったのか?」


「別になんもねーよ。たまには良いかと思っただけだ」


「なんだよそれ?」


 慎は雄介を背負いながらそんな雑談を続ける。

 ほどなくして雄介は体調が回復し、自分の足で帰宅した。

 慎とは分かれ道で別れ、今は家までの道のりを雄介一人で歩いている。


「ただいま~」


 ほどなくして家につき、雄介は真っすぐ部屋に向かい、バックを置いてベッドに倒れ込んだ。

 気分が回復したと言っても、まだまだ本調子ではない、少し睡眠をとるために雄介は目を閉じて眠りに落ちて行った。


「……くん……ゆ……く……」


 誰かの声で雄介は薄っすら目が覚めた。

 まだ寝ぼけているようで、良く聞き取れない。

 雄介はまだ寝て居たい気持ちもあったので、目を閉じてそのままジッとしていた。


「……起きないわね……はぁ……はぁ……い、今なら…何をしても……グヘへへ」


 雄介は身の危険を感じ、すぐさまベッドから飛び起きた。


「里奈さん、何をやっているんですか?」


「あ……えっと……添い寝?」


 里奈は雄介の隣に寝ころんで息を荒くしながら、雄介に何かをしようとしていた。

 急に起きた雄介に里奈は目を丸くして驚き、咄嗟に言い訳をするも、全然いい訳になっていない。


「添い寝は必要ないので、出てってください!」


「やん! もう、ユウ君! お姉ちゃんに優しくしないと、悪戯しちゃうわよ~」


 小悪魔っぽい表情を浮かべながら、里奈は雄介にそういう。

 しかし、雄介はそんな里奈をスルーして、部屋を出ようとする。


「今から晩飯作るので、少し待っていてください」


「まって! スルーはやめて! お姉ちゃんユウ君にスルーされるのが一番傷つくから!!」


 里奈は涙目で叫びながら、雄介の後を追って一階に降りて行く。

 雄介はそんな里奈をいつも通りあしらないながら、晩飯の用意を始める。

 準備をしている最中も里奈は必要以上に雄介にちょっかいを掛けたが、雄介はそれを慣れた感じであしらい、晩飯を作っていく。


「お待たせしました。さぁ、食べましょう」


「はい! 食事の前にユウ君にお話があります」


「いただきま~す」


「だからスルーしないで! いい加減いしないと、お姉ちゃん今日の夜、ユウ君の布団に潜り込むわよ! 全裸で!!」


「すいません、ちゃんと聞くので勘弁してください……」


 雄介は里奈の言葉を聞いてすぐさま謝罪し、里奈の話を聞く。

 里奈は「よろしい」と言って腕を組み、顔お膨らませて不満そうに話を始めた。


「最近ユウ君はお姉ちゃんを放置しすぎだと思います!」


「はぁ……そうでしょうか?」


「そうだよ! 前は良く二人でお買い物とか行ったのに! 最近はそういうの無いし! ユウ君はお姉ちゃんを置いて他の女の子の家に行くし!」


 雄介は里奈の話をため息を吐きながら聞いていた。

 確かに最近は里奈と二人になる事が減った気がしていた。


「毎日こうして二人ごはん食べているじゃないですか?」


「そう言うのは良いの! もっと外にお出かけとか! そう言うのが良い!」


 頬を膨らませ、雄介に不満を言い続ける里奈。

 雄介はヤレヤレといった表情を浮かべながら、里奈に尋ねる。


「で、結局何が言いたいのですか?」


「お姉ちゃんと文化祭回ろう!」


(あぁ……やっぱりそれか……)


 雄介は今日加山と約束したときに、もしかしたら里奈にも同じような事を言われるのではないかと思っていた。

 予想通りに里奈からお誘いを受けた雄介だが、生憎と二日間の予定はびっしり埋まってしまっていた。


「あの、里奈さん……大変申し訳ないのですけど……」


「ユウ君?」


「は、はい!」


 一緒に回れない、そう言おうとしたところで、雄介は里奈の背後から流れ出る黒いオーラに気が付いた。

 名前を呼ばれ、恐怖で咄嗟に大きな声を出してしまう雄介。

 里奈は俯きながら、話を続ける。


「まさか…断らないわよね??」


「い、いやぁ……俺にも約束が……」


「死のう……」


「待ってください! 回ります! 回りますから! その首元の包丁を離してください!」


 どこから取り出したのか、里奈は雄介が断ろうとしたしたと頃で、自分の首に包丁を当てる。

 慌てて雄介が止めに入り、何事も無く終わったのだが……。


「え! 本当に? じゃあそうね、1日目の開いた時間でどうかしら?」


 さっきまでのあの緊迫した空気は何処に言ってしまったのか、嬉しそうに明るく話を進める里奈に、雄介は呆れてため息を付いた。


(はぁ……また、騙された……)


 嬉しそうな顔で、晩御飯を食べすすめる里奈。

 雄介はそんな里奈を他所に、どう日程を組もうかと考え始めていた。


「そう言えばユウ君のクラスって何やるの?」


「メイド喫茶ですよ」


「は! まさかユウ君! メイド萌え? 待ってて、今着替えてきてあげるから!!」


「別にそう言うのじゃないですから! 良いから座ってごはん食べちゃってください!!」


 雄介と里奈の夜はこうして過ぎて行く。

 そして次の日。文化祭の前日という事もあり、今日は授業が無く、丸一日文化祭の準備になる。

 雄介は現在、教室のあちこちに、宣伝用のポスターを貼る仕事で、校内を駆け回っていた。


「えっと、二階の廊下はOKだな……次は……」


「校門前にも張っておこうぜ、あそこが一番人の通りが多い」


「そうだな、じゃあ行くか」


 一緒にポスター張りを命じられた慎と共に、雄介は校内中を歩いてポスターを貼って回る。

 学校内は慌ただしく準備が進められ、どこも忙しそうだった。


「しっかし、三年は凄いな……クオリティが半端ねぇ……」


 三年生の出し物を見ながら慎は驚いている。

 自由な校風の学校なのと、クラス替えが無いという珍しい点もあり、三年間を共に過ぎしてきた先輩たちが、クラス一丸になって用意するクラスの出し物は、気合と団結力でとんでも無い出来になっていた。


「予算って一体いくらもらってんだろうな……」


「大学レベルじゃね? この出来は……」

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