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そこのクズ野郎、ちょっと人助けしませんか?  作者: 佐藤 りか
第1章 出会いと魔法
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自由人を操り、自由人に尽くす者は誰だ? 後編

 場所は運動場だとシルクは言っていた。

 その通りに運動場へ目をやると、シルクの煌めく銀髪が目に入り、翔太は飛ぶ速度を早める。


「こいつらなにも思わず平気でサッカーしてるわ⋯⋯。人間の紛い物であるシルクたちより感情がおかしいだなんて、控えめに言って人間じゃないかしら」


 洗脳魔法の対象者は三人。


 シルクは三人に触れ、発動したままだった記憶覗き魔法で記憶を覗いたあと、洗脳魔法で犯人の記憶をすり替える。


「洗脳魔法、開始」


 普通ならば一人づつ触って魔法を発動させるのだが、シルクの技量と才能で三人同時に魔法を発動することができている。

 荒業によって魔力の消費量は多いが、刻一刻と時が過ぎている今、そんなことは気にしていられない。


「あなたたちはあの少年を殴ってない。けどトイレに閉じ込めてしまった。そのことを後ろめたく思い、罪悪感に駆られ、あなたたちはサッカーをやめてあの少年を解放しに行く」


 冷静に透き通る声で放った言葉は、捏造された記憶になって少年らに入っていく。


「記憶覗き魔法、洗脳魔法――解除」


 魔法が解除されると同時に三人の少年は立ち止まる。

 そして冷や汗が止まらなくなり、罪悪感で頭がいっぱいになっていく。


「お、俺たち」

「とんでもないことをしちゃったんじゃ⋯⋯」

「すぐに謝らなきゃ⋯⋯!」


 やばいやばいと口にし、急いで校舎に走る三人。

 サッカー部だからか足が早い。これならすぐに着きそうだ。


「これでひとまず安心ね」


「っシルク! 大丈夫か?」


 魔法をかけ終わった直後、心配そうに飛んできた翔太と合流した。


「なにを心配されているのかわからないけれど、シルクは大丈夫よ。至って冷静かしら」


「そうか、よかった。暴走して変な洗脳かけてないか心配になったよ」


「変な洗脳って何かしら⋯⋯そんないかがわしいことしないわよ」


「その発想に至るのがいかがわしいよ⋯⋯」


 ボケるほど余裕があるんだなと一安心。


 急いで走っていく少年たちを見て、シルクは口を開く。


「これに懲りてもう一生あんなことはしないと思ってくれたらいいのだけれど」


「やられた子は重度の熱中症になってんだ、さすがに懲りてくれなきゃ困る」


 いじめを体験している翔太はそう簡単に懲りないだろうと思ってはいるが、洗脳の効果で少しはマシになっているだろうと信じている。


 暴走しないならよかったと、翔太が校舎に戻ろうとしたとき。


「シルクー! 翔太ー! こっちは片付いたぞー!」


 と、大声でいいながらルイと小豆が飛んできた。


 ルイは「暴走なんてしてなかっただろ?」と言いたげな表情でニヤつき、ニヤついているルイを見てシルクは「なにニヤついているのかしら」と、気持ち悪がる。


「ルイたちができるのはここまでってことで一件落着!」


「そうね、契約者探しに戻りましょう」


 ――――――――――――――――――


 ということで契約者探し再開。また地道な作業をこなしていく。


「はぁーめんどくせぇなぁー。こうパパッと見つからねぇのか?」


 駄べりながらも運動部の魔法適正を調べるルイ。

 いつの間にかルイの腕の中が定位置になっている小豆は少し眠そうだ。


「はぁ、そんなに面倒なら、さっきやったみたいに異例魔法でも創ればいいじゃない」


 と、解決できそうな策を提案するシルク。


「⋯⋯そ」


 その案を聞いたルイはハッとして、目を見開き――。


「それだあああ!!」

「んぎゃああ!!!」


 と、小豆の鼓膜を破る勢いで叫んだ。


 ――――――――――――――――――


「み、耳がキーンって⋯⋯なった⋯⋯なったのだ⋯⋯」


「よしよし。ルイがうるさかったよな。しばらく俺の腕の中にいるといいぞ」


 異例魔法を創ればいいと気が付かなかったのか不思議だ。

 だが気が付いた今、異例魔法が創りやすいのはこのためでは? と、ルイは思っている。


「よし、早速創ろう、今すぐ創ろう」


 ルイはアメジストのような瞳を(まぶた)で隠し、地面であぐらをかいて瞑想のポーズをとる。どうやら魔法の構想を練っているようだ。


 そしてものの五分で――、


「できたぞ!」


 と、立ち上がるのであった。


「今までの苦労はなんなのよって本気で思うわね」

「そうだな」「全くなのだ」


 ルイは謝るポーズをして、早速創った魔法を発動させる。


「『人探し魔法』――開始!」


 ルイが今回創った異例魔法は『人探し魔法』といい、探す人の特徴を細かく指定すればするほど、条件にあった人の位置がわかるという魔法だ。


 とても汎用性の高い魔法だが、魔力の消費は上級魔法程度で収まるらしい。さすがルイクオリティといったところ。


「魔法適正がルイと同じくらい、またはそれ以上。性別は男で年齢はルイより下。ルイに振り回されずに尽くしてくれる人の位置を教えてくれ!」


 条件を言ったためその条件に合った人が魔力によって探される。


「理想の男性を探す婚活女子みたいなこと言ってるかしら」

「年収とか言い出したらもろそれだな」

「こんかつってなんなのだ?」


 確かに汎用性の高いこの魔法ならば、理想の相手を探すことも容易いだろう。⋯⋯結ばれるかどうかは別として。


 ルイが言った条件に合う、該当者。一番距離が近い該当者に向かって、金色の矢印が伸びていく。


 その矢印は徒歩より早いスピードで、翔太たちから離れるように移動しており、該当者が何かに乗って移動していることが伺える。


「この矢印を目安に飛んでけばいいんだな?」


「そうだぜ、ついてこい!」


「こんかつってなんなのだ!?」


「はいはい後でね。今は向かうわよ」


 空を飛び、ものの三分程度で矢印が指す人物が見つかった。


 その人物は病院のべッドに横たわり、窓の外、空を見ている。


「もしかして⋯⋯!」


 なにかを悟った翔太は、少し嬉しそうな声でそう言った。


 サラサラで長い前髪の黒髪ヘアに、前髪の隙間から覗かせる深緑(ふかみどり)の瞳。


 ずっと目を瞑っている姿しか見てなかったが、その人物は既視感のある顔で――、


「さっき助けたあの少年じゃね!?」


 ルイを操り、ルイに尽くす者は、いじめを受け、重度の熱中症で病院に運ばれたこの少年だった。

おまけ


「婚活っていうのはね、結婚したい人が結婚相手を探すことを言うのよ」


「ふむふむ、じゃあルイは婚活をしておるのか?」


「ルイがしてるのは契約者探しだ!」


「まぁ探し人魔法で結婚相手を探すこともできるよねって話だ」


「なるほどなのだ」


 猫なのに婚活という言葉を覚える小豆だが、恐らく婚活という言葉を使うことはないだろう。

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