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第七話 学園長

 一羽の黒鳥がヴァシリア王国の上空を旋回していた。その黒鳥は、合図を待っていた。主人からの合図を。


 その時、突風が雲を追い払い月が顔を出した。


 その時、月の光が辺りを照らし、黒鳥の姿があらわになった。もしもその姿を見た者がいるならば、悲鳴を上げたかもしれない。それほど、黒鳥の姿はおぞましかった。

体は羽毛ではなく、ぶよぶよとした肉でおおわれ、しっぽには蛇が鎌首をもたげていた。嘴ではなく、人のような口があり、中には肉食動物を思わせる鋭い歯がずらりと並んでいる。


 また風が吹き、月を覆い隠した。その時、下のほうから光が一回、二回とほんの一瞬だったが光った。すると、黒鳥が光が出た方向へと降りていく。そして、ある一軒家のあいている窓に入って行った。


 「やっと、戻ってきたんだね。どうだったい、光の王は」


 その部屋にいた女性がその黒鳥に話しかけた。その女性は黒いローブを身にまとい、黒曜石で作られた杖を握り、真っ黒なロッキング・チェアに座っていた。


 『トオテエマオヲアコアコアットア』


 「そうだろうねえ。まだ、16か17じゃなかったかい。あの少年は」


 黒鳥がしゃべる言葉は、この世のものではなかった。しかし、女性はいつも聞いているかのような口調でしゃべっていた。


 『マオウスウグウ・カオカオネイクウルウ』


 その言葉を聞いた瞬間、女性の顔に笑みがこぼれた。


 「そうかい、もうすぐここに…………」


 女性は立ち上がり、空を見上げた。


 「始まるんだね。『エファンゲリア(やくそくされた)ソルテリファ(すくい)が」












 「や、やっと、ついたわ」


 ヴァシリア王国正門、通称ティーメー・ゲート。栄光の門とも言われている場所で、ラピスと砂にまみれた謎の物体が門の前で佇んでいた。


 「よし!あとは、学園長のところに連れて行けば私の仕事はこれで終わりね。は〜あ、長かったわ。それもこれもあんたのせいよ、レイオス!」


 しかし、レイオスは返事をしなかった。いや、できなかった。なにせ、あの喧嘩のあとずっと、休みもせず走り続けていたのだ。そのせいで、レイオスの体は傷だらけ。普通の人なら絶対に死んでいます。


 (レイオス、大丈夫か?)


 (すまん、無理)


 なんとか、レムエムと疎通する力だけはあるようだ。


 「まったく、体の鍛え方が足りないわね。そんなんじゃこの先、生きていけないわよ」


 (じゃあ、お前は耐えられるのか? この大食いぺったんこ女が)


 喋ることができないので、レイオスは心の中でそう皮肉を言った。


 「ん? あんた今、私の事、この大食いぺったんこ女とか言わなかったかしら?」


 (げ、まじかよ)


 恐るべき、ラピス。どうやら、レイオスが心の中で言ったことを何となくだが感じ取ったらしい。何となくなのに、一文字も外していないが。


 「へ〜え、いい度胸よねあんた。大食いならまだしも、ブラもつけられない幼児並みのペッタンコ女なんていうなんて」


 威嚇するように、指を軽く鳴らす。


 (いや、あの、ラピスさん? あんた、俺が心の中で言ったこと聞こえてないはずだよね? ってか、俺、そこまでひどい事言ってないんだが!!)


 しかし、レイオスの声は届かなかった……のではなく、言えなかった。


 『逆巻け風よ 我にあだなす敵を貫け』


 ラピスが、詠唱を始める。その瞬間、レイオスはラピスが何をしようとしているのかを悟った。


 (え? ちょっ、まっ、それはやったらだめだろうが! ってか、あの怪物のときより魔力の量が多いんですけど!くそ、動け!俺の体ー!)


 レイオスの無駄な抵抗もかなわず、ラピスがついに詠唱を完成させた。


 『いっぺんしんどけやあああああああぁぁぁぁぁぁっ、シルフィード・ランス!!』


 勢いのいい掛け声(?)とともに、ラピスはシルフィード・ランスを撃ちはなった。その時、レイオスは悟った。ラピスにぺったんこは禁句だなと。


 そして、シルフィード・ランスがレイオスに直撃した。もうもうと土煙が舞い上がり、一瞬、レイオスの周りが見えなくなる。


 「ふん、私をぺったんこって言った報いよ」


 ラピスはそういって、レイオスのところへと歩いていった。死体……ではなく、レイオスの体を学園町に届けるため(?)だ。が、レイオスの体はどこにもなかった。


 「へ? そんなばかな!」


 絶対あたったと思ったのに……そうラピスは思った。レイオスの体はラピスがずっと引きずっていたため、動けるはずはない。だとしたらどこに……。


 「客人に手を上げるなんて…………。私、とお〜っても悲しいですう」


 なにやら背筋が寒くなるような声とともに、ラピスの背後から一人の女性が現れた。ラピスが震えながら声のしたほうを向く。すると、そこにはラピスより背の低い、年で言えば10、11歳ぐらいに見えなくもない子供がレイオスの首根っこを捕まえてそこにいた。髪は銀色。服はフリルがついたかわいらしい服を着ている。だが、ラピスはこの子供を知っていた。


 「が、学園長…………」


 なんと、そこにいたのはレイディアント学園第八代校長、レイム・アンシュホローネ・リ・グロネシアだった。


 「な、なんで、学園長がこんなとこに?」


 「うふふ、さ〜て、何でしょうねえ?」


 ぞくりと、ラピスの体に悪寒が走る。


 「まあったく、あんまりにも帰りが遅いんで心配してたんですよ。ラピスちゃんのみに何かがあったんじゃないのかって。それなのに、こんなところでいちゃついて〜」


「いちゃついてなんか……」


「だまりなさい」


「は、はい」


「まったく、レイオスちゃんをこんなにして。私、言いましたよね。無事に学園まで送り届けることって。それがなんですかこれは? ボロボロじゃないですか」


 「う……………………」


 何もいえない。それはそうだろう、レイオスをボロボロにしたのはほかでもないラピス自身なのだ。


 「ま、今回はレイオスちゃんを無事に連れてこられただけでも良しとしましょう」


『やった。それじゃ』


「あ、だけどちゃんと罰は受けてもらいますよう♪」


 絶句。ラピスの体がへなへなとまるで枯れた草のように地面に倒れる。よほど、学園町のお仕置きが怖いらしい。それをみて、学園長――レイムは満足したのか、レイオスを担いで(どこにそんな力があるのかわからないが)その場から消えてしまった。


 「あ、はは、あはっはははは、は…………。学園長のお仕置き…………いっ、いやあああああああ!!」


お仕置きが相当いやなのか、ラピスの精神が壊れてしまいました。ご臨終。









 (むう、小娘のやつ、なぜ悲鳴を上げておるのだ?)


 おかしくなったラピスを見ながら、レムエムは思った。


 (このごろ、出番が少ない……)


 そんなことを思いながら、レムエムはレイオスの元へと走り去っていった。


レイオスとレムエムのローン・ウルフ講座


レイ「皆さん、こんばんは。いや、こんにちはか?・・・ま、どうでもいいか。これからローン・ウルフ講座を行います」


レム「今回は、我々精霊たちについて教えたいと思う。耳をかっぽじってよ〜く聞くのだぞ」


レイ「まず、精霊というのは、火・風・水・地・雷・氷・光・闇に属性ごとに分けられているんだ。そして、属性ごとに住む場所が違っている。火だったら火山や砂漠など。風だったら渓谷や草原など。水だったら川や湖など。いろいろなところに住んでいる。だけど、精霊術などによって召喚されたときなどは、その術者の魔力で精霊の適さない場所でも生きていられるんだ」


レム「また、精霊などにもランクがある。一番上から精霊王、その次に精霊王を守護する守護精霊、その次には一般精霊より少しだけ強い上級精霊、そして一般精霊。こういう風に人間界では分類されている」


レイ「ん?ちょっとまてよ、人間界ではってことは、精霊界では違うのか?」


レム「うむ。だが、話すとややこしくなるから今日はこれぐらいにしよう」


レイ「そうだな。それではまた第八話で会いましょう」

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