第六十八話 新、必殺技!
またもや更新が遅れてすいません。卒業や進学の関係で遅れてしまいました。無事、卒業+進学もできたのでこれから少しずつながらも書いていこうと思います。
「で、目的の娘はどうなったんだね?君に頼みこんでもう何か月たったと思っているんだ」
「ですがね、あの娘はあれでなかなかすばしっこいやつでさ。そう簡単に捕まってくれねえんですよ。それに、今回はちょいと邪魔が入りましたもんで」
「…………邪魔?」
「へい、黒髪で獣目をしたおっかねえガキです。俺がようやく捕まえたと思ったらそいつが邪魔してきたんです」
「……ふむ、で。そいつは捕まえたのかね?」
「う、いやそれが……」
「まだか……」
「だ、大丈夫です!今ようやくあいつがいる場所を突き止めたんです。もう包囲も完了しているんで時間の問題でさ!」
「ならいい。さっさと娘を捕まえてこちらへ持ってこい」
プツン、という音が切れる音とともに相手の声が聞こえなくなった。バッテラは手に持っていた水晶をポケットの中に戻すとわざとらしく鼻を鳴らした。
「ふん、貴族がぐだぐだ言いやがって。こちらの身にもなれってんだ」
存外、人という生き物は単純な生き物なのかもしれない。喜び、怒り、哀しみ、楽しみの喜怒哀楽は例え一瞬の感情だったとしてもそれはその時のものでありそれ時点で続くかどうかはその人の意志によって左右される。意志が強ければ強いほど、その執念は強く。弱ければ弱いほど簡単に消えてしまう。
少年――レイオス・ウォーリア前者のほうだった。
「んにゅ…」
贅沢にもきれいとはいえないベットの上でレイオスの魔法で少しながらも清潔になった毛布をまるでミノムシのように体一面に覆いながらシュインは幸せそうに眠っていた。
「ようやく寝たか……」
その様子に安堵の表情を浮かべ、レイオスは椅子に座る。年代を感じさせながらも未だ職人の技の神髄をうかがわせるロッキングチェアーはきしりというどこか不安な音を立てながら揺れ始めた。
これからどうすればいい……
レイオスの頭の中でその懸念が浮かび上がる。シュイン・ウォーリア、恐らく…いや、確実にこの子は父であるセルス・ウォーリアの手掛かりとなる何かを持っている。この世界は広い。もし、このことあったのが違う国であるのならばまだ名前が同じだけだったですむかもしれないが、今回ばかりはそうもいかない。なにせ同じ出身であるこの国で出会ったのだ。絶対に何か父と接点があるに違いない。
レイオスの父、セルス・ウォーリアは自身にとっても謎の多い人物だ。年齢、容姿は頭に残っている。それも相当前の話の為、変わっているかもわからないが。だが、そのほかに関してはまったくといっていいほど知らないに等しい。どこにいて、何をし、何を考えているのか。唯一わかっているのは父から送られた手紙による父の生存。
自分とは違う正反対の性格では同じ思考を考えるなど神に誓っても無理だ。
「はぁ~、どうするかね」
これを解決する案としては幾つかある。まずは手紙からの情報、どこの国で作られているか。どこから配達されたか、紙の種類、値段などなど。次に校長に相談。父や母と親しいあたり、何か情報を持っている可能性が高い。性格からしても何か重大なことを自分に教えていないような気がする。他には自分で探す、ギルドに頼みこんで指名手配にしてもらう。などもあるが、いかんせんこちらはお金がかかりすぎる。ただでさえ当の本人による借金があるためこの方法は賛成できない。
だが、今回の件で見つけたシュインなら話は別だ。このこの身の内話を聞けば何かしら有益な情報を得られる可能性が高いかもしれない。年もそれ相応だからレイオスの元からいなくなってからの空白の時間の間に何かしらの出来事があったのは確実だろう。
「だけど、この子に迷惑をかけるのもなんだしな。また一から出直すかな」
そう言ってすやすやと気持ちよさそうに眠っているシュインを見てレイオスは色々複雑な心境の中で溜息を吐いた。
父のこと、シュインのこと、お金のこと、お金のこと、お金お金お金お金お金お金お金お金………………ついでに外でたむろしている不審な輩のことを含めて。
「ここまで律義に追ってくるとか、どんだけ執念深いんだよ。……シュインに迷惑をかけたくはないしいっちょやっておくか~~」
レイオスは部屋を出た。そして半ば崩壊しかけた広間らしき場所を大股で歩きながら通り越すとレイオスは歩きざまにある呪文を唱えた。
「光の王の名において命ずる アディキアー・テレイティム」
すると、レイオスがシュインの家を出た瞬間に光の壁が家を覆うようにして現れた。一瞬、半透明の壁が家を覆っていたがすぐに霧散するようにしてなくなった。
「やっぱり、魔力の変え方が前より何倍もうまくなってる…………」
魔法を行使して確信する。あのツヴァイト・レグレーベンと戦って以来、魔術や魔法に加えて肉体に流れる魔力の流れが全てにおいて前より上回っている。
なぜかはわからないが、今はそんなことを気にしている暇はない。先ほど感じた気配、それはつまり誰かがこの家を包囲している。
「そろそろ出てきたら、どうだ?」
剣を抜く。そして誰もいないはずの空間に向かって剣を抜いた。
すると、
「ふん………………」
そんな気合いのない声とともに、周りの景色がゆがむ。すると、今まで誰もいなかったはずの空間に大男数人とローブを被った魔術師らしき者達、そしてレイオスが先ほど蹴り飛ばしたロリコンがいた。
「ちょっと待て!今変なこと言っただろ!?」
「うっさい、ロリコン。か弱い女の子を狙うような奴がロリコンじゃないわけがない」
唾をまき散らしてロリコンが叫ぶ。
「だいだいだ!せっかく道案内をしてやろうと思ってやったのにこの仕打ちは何だ!見ろ、お前のせいで鼻が潰れたじゃねえか」
そういって自分の顔を指さす。なるほど、確かに鼻がひしゃげて豚のような鼻になっている。顔もぽっちゃりしているせいか、それも相まって本当に豚のような顔だ。
「いいじゃん、前より男前になったぞ」
「えっ、まじ……………だ、だまされんぞ!」
「いや、今めっちゃだまされたよな……」
「ええい、うるさいうるさい!やれ、野郎ども。こいつをぶっ倒して後ろのぼろ屋にいる小娘を連れだしてこい!連れだしてきた奴には褒美をやる」
うおおおぉぉぉ、と男共達が叫び声とも歓声ともわからない声を上げた。獲物を持ち、我先へとレイオスの後ろにあるシュインの家へと突進する。
「やらせるかってーの!」
何のためにシュインを家においてきたんだ、と頭の中で思い、剣を下段に構える。
そして足に魔力を通わせ、突進。かすかな光を放つ剣が軌跡を残すほどの速さで大男達の内側に潜り込み、剣に注ぎ込む魔力を押さえたまま切り上げる。無論、相手を殺さないためだ。たとえ、シュインを狙う者達だとしても殺してしまえばこちらが悪者になってしまう。そうすると、ここにはいられないしまた賞金額があがってしまうことになる。それだけはごめん被りたい。
よけいな考えを張り巡らせているうちにレイオスに右の筋を断ち切られた大男が苦痛に顔をゆがめながらも右手に持っていた武器を左手に持ち変えてレイオスの頭上に振りおろす。それに続くように他の大男二人も自分の獲物、半月状の形をした剣をレイオスのわき腹を狙って振る。
「ちっ!」
軽く舌打ちをすると同時に、左腕に魔力を通し筋肉を活性化させ頭上から振り下ろされる剣をはじき返す。そしてはじき返すとその流れのまま背を反り爆転し、剣を地面に突き刺すと剣の柄頭を左手でつかみ両横から襲いかかる半月剣を回避した。
「なっ!?」
二人の大男が驚愕する。が、それも一瞬のことで視界にに入った何かを見た瞬間に二人の意識は刈り取られた。
「まだ、やるか…………?」
地面に降りて、剣を鞘に戻して一言。そしてロリコンを睨みつけた。すると、ロリコンならぬバッテラはレイオスの目に気圧されたのか、後ろに慌てて下がると鷲杖で地面を叩いた。
「ええい、役にたたん奴らめ!魔術師、貴様の出番だ」
すると、今までバッテラの後ろで黙りを決め込んでいた魔術師がバッテラをかばうように前に進み出た。
そして右腕を軽く振り下ろし、袖の中から円形状の鉄でできたようなものを取り出した。
(………なんだあれ)
直径は約10センチほど。円の中心にはこれまた円形状の穴があいており刃はまるで紙のように薄くのばされている。また、側面には遠目からなのでよく確認しにくいが何か文字が掘られているのが微かにだがわかる。
初めて見る武器だ。いや、呪具だろうか。
「……………ゆくぞ」
魔術師が両腕を交差した。瞬間、レイオスの耳に羽虫が羽を震わせたような音が聞こえた。
「っ!」
ほぼ直感で膝を曲げる。何かが切れるような音と共にレイオスのすぐ上を何かが通り抜けた。それはあたたかも意志を持っているかのように不規則な動きをしながら魔術師の手元へと戻る。
そして風に吹かれゆっくりと落ちてゆく自身の髪。先ほどの音は魔術師の何かによって髪が切られた音のようだ。
体勢を立て直し、鞘から剣を抜き構える。
「大層なものをお持ちで……」
「お世辞は好かん」
その一言とともに魔術師が腕を交差した。また、羽虫が羽を震わせるような音が辺り一帯に響く。
瞬――!
目に見えぬ斬撃がレイオスを襲う。返し、返し、返しそして返す。迫りくる無数の斬撃をレイオスは全ていなしていく。むろん、見えているわけではない。前より強化された魔力の流れを見る力、そのお陰で目に見えない攻撃を跳ね返すことができる。だが、それだけだ。これを止める術を使わなければこの一方的な攻撃は終わることはない。
「ふっ!」
レイオスが動いた。襲いかかってくる斬撃を返し自分の身を守るための剣を相手に投げつけ突進、両手を大きく広げアスネースを行使する。思い描くは断罪のしるしである十字の剣。
魔力を通し―――
陣を構成し―――
術を放つ。
「シャイニング・スタウロス」
何十、いや何百という数に及ぶ白い十字架がレイオスの周りに現れた。それによって空中を旋回していた円形状の武器が何百とあるうちの一つにつかまりくるくると少しの間回っていたもののついには勢いをなくして十字架にかけられるようにして動かなくなった。
「なっ!?」
魔術師が驚きを隠せないように体をのけぞらせる。だが、それに構ってあげられるほどレイオスは優しくない。投げた武器が魔術師の右肩を切り裂き、腱を断つ。ただし、かすかに魔力を炎に変えたおかげで切り口からは血がほとんど出ていない。それでも、痛みはなくなることはない。想像を絶する激痛が魔術師を襲いその場でうずくまるようにして動かなくなった。
シルフィードランス――――!
ヴォルカニックランス――――!
他の魔術師たちがついに動き始めた。ラピスの愛用術であるシルフィードランスと炎の属性を持つシルフィードランスと同系統の魔術、ヴォルカニックランス。そのあとにもう一人の魔術師が杖を媒介にして陣を描き始める。
前衛二人が初級魔術で敵をけん制、そして後ろの一人が上級魔術を詠唱する。
「滅びあるところに栄えあり」
後衛に位置する魔術師の足元に水色の陣が浮かび上がる。水属性の魔術だ。
(使ってみるか……)
けん制代わりに放たれた風の槍と炎の槍を見てレイオスは剣を収めた。すぐさま体中に張り巡らせていた魔力を消し、代わりに違う力を手だけに張り巡らせる。
それはある意味呪われているといってもいい力、存在するだけで周りに害をもたらす災厄の力。だが、今だけはその力を有効に使う。
左足で半円を描くように地面に足をつけながら体の向きを横にする。そして深く膝を曲げて右手を剣の柄に添え軽く抜く。左手は鞘と柄の間にできた剣の刀身に触れさせそこから力を放出した。
魔力を食らい――――――
形を変えて――――――
ただ欲望の赴くがままに解放して剣に纏わせ空間を薙ぐ。
「喰らえ、アスティカルブレード!」
抜く。光が形を纏い、刀身が鞘から姿を現すたびに光は徐々に形をなして一つの姿を作りだす。それは口があり、牙があり目がある。
「お、狼……」
魔術を放った魔導師がその姿を見て一言そう呟いて、
レイオスが剣を振り下ろした瞬間、上級魔術を放とうとしていたものも含めて三人の魔術師を一匹の光り輝く狼がその口を大きく広げて食い千切った。
お久しぶりでございます。本当に更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした!
余談ですが、とあるサイトでレイオスを主人公としたリリカルものを書いておりました。そのせいで投稿が遅れてしまったというのもあります、というよりそのせいです。
ごめんなさいいい!!
そういえば、ツイッターって面白いですね。人の愚痴、とか色々書いてますけど見ていてなるほどなーと思うところがたくさんあります。小説家のツイッターにしては面白そうなネタがいっぱいありましたし。皆さんもやってみてはどうですか?
自分のツイッター名はsiboufuragusinというのでやっています。というなの宣伝wwwwww