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第六十四話 炎の情熱、そしてヤンデレ

更新遅れて申し訳ございませんでしたm(_ _)m

 太陽がもう真上にきていた。時間にすれば十二時ちょうどぐらいだろうか。


 「はあ、はぁ…………………こ、ここまでくれば大丈夫だろ」


 「………あ、あの」


 「ん?」


 「お、降ろしていただけますか?」


 「あっ……………」


 少女に言われようやく気付く。風で吹き荒れてボサボサになったエメラルド色の髪、少女が両手で押さえていたおかげで見えてはいないもののスカートが風でめくれて傷のない柔らかな太股が露わになっている。追っ手から逃げることに必死になっていたためか、少女のことにまで気づいてやれなかったみたいだ。

 あわてて少女をタイルが剥がれかけている地面に降ろしてやる。すると少女は、あわてて髪を整え服を元の位置に戻すとこう言った。


 「あ、あの………………お兄ちゃん、ありがとう!私、あのままじゃ奴隷になってたかもしれなかったです……」


 ぺこん、と律儀にお辞儀をする。まだ幼いはずなのにしっかりとした子だ。と、そんなことを考える前に自分も返事を返さなければならない。ここはラピスに教わった仕方で返事を返そうと思い、右足を少し後ろに下げ左手は半円を描きながら原のところまで持っていきそのままお辞儀をする。ラピス曰く、このやり方は男の中でも紳士がやる仕草だそうだ。

 すると、少女はなにを思ったのか急に右手を口に軽く当てくすくすと笑いだした。


 「ふふふ、お兄ちゃん変な人ですね。お兄ちゃん、平民ですよね?なのに流浪民の私に律儀にお辞儀をするなんて」


 その言葉にレイオスはむっときた。それは自分自身のことを流浪民と呼んだこと、また、それを恨むことなく平然と言ったこと。いや、それ以上にこのような人権の差を生み出した元凶にむっときたのかもしれない。


 「女性がお辞儀をしてくれたのにそれを無視するわけにはいかないからな。それに、俺は流浪民だとか平民だとかそんなものにこだわるほど堕ちた人間じゃない」


 「…………いい人ですね。…ねえ、お兄ちゃん。ここでお話するのもなんだから私の家にきてくれませんか?この辺り一帯は危険ですし、それにせっかく助けていただいたんです。なにかお礼の一つでもさせてください」


 「え、……………いや、まあ、別に君がいいのなら別にいいが………。あ、そうだ。まだ君の名前を聞いていなかったな」


 「人の名前を尋ねるときはまず自分からって言いませんか?」


 してやったりな顔をする。レイオスもまさかの返答に焦るどころか逆に笑みをこぼした。


 「ふ……、俺の名前はレイオス。それじゃあ、君の名前は?」

 

 自分の名を答える。すると、少女も笑みをこぼしながら答えた。


  




 「私の名前はシュイン。シュイン・ウォーリアです」





















 「へ?」





























 ラインデッド・リヴォーレ!


 群青色の水柱が魔術陣から溢れ出る。まるで意志を持っているかのようにくねくねと動く水柱は術者が指さすと同時に目の前にいた男共に襲いかかり、壁に押しつけた。


 「がっ!」

 「ぐえぇぅ!」


 壁に衝突した際の衝撃と押しつける水圧によって体が圧迫され、意識が刈り取られる。それと同時にみず柱が小さくなり次第には魔術陣から消えていった。


 「サラビュート!」


 両手に携えられた二丁の魔石銃にそれぞれ二つずつ純度の高い宝石を込め魔力を送り込む。イメージするは破壊と守りの二つ。その二つを銃に乗せ撃ち放つ。


 ヴォルカニック・フレイム! 


 ガーンボルデ・ラインズル!


 火と地が解き放たれた。一つは敵を焼きその存在を破壊する業火の渦。もう一つは物理的攻撃に絶大なる信頼をおける頑強なる石の盾。

 解き放たれた二つの魔術と魔法が敵を襲い、水の魔術を行使する術者を守る盾となる。

 

 路地裏からどこから元もなく現れた一人の男が水の術者の背後に忍び寄る。そして手に握っていた半月刀で一閃。だが、突如として現れた岩の盾に阻まれそれどころか男を囲うように四方から岩の盾が生え男を取り囲んだ。


 「ひっ、ぎゃあぁぁっ!」


 そして予想もしていなかった反撃に逃げることもできず炎の渦が男共を襲う。炎の渦が呑まれた後には死んではいないものの全身真っ黒焦げとなって剣を掲げたまま固まった男共の姿があった。

 

 「気を抜かないでね、レイラ!こいつらたいしたことはないけどおそらく奴隷商の手下共だ。さらわれたが最後、どこぞの国にとばされ売られちゃうからね!」


 水の術者ーーレイラが路地裏からぞろぞろと現れる男共に水柱を飛ばしながら徐々にアシルの方へと後退する。


 「わ、わかりました!で、でも数が多すぎますよ!?なんなんですかこの数!」


 「おそらく奴隷たちだ。なぜこうなっているかはわからないけど誰かを捕まえるために奴隷までを使っているんだろう。ついでに新しい奴隷を増やしながら探せっていいながらね」


 「なっ!?」


 「たぶんだけどね……。恐らく襲ってきたのはそのせい……っと!」


 屋根から飛び降りてきた奴隷の一人の攻撃を避けざまに銃で横腹に銃で思い切り殴打する。奴隷の一人が叫び声と悲鳴ともつかないうめき声をだしその場で悶絶する。


 「…ふぅ。これもたぶんなんだけど、今までの感じからいってその追われている人物に心当たりが、はぁっ!………あるんだけどね」


 話しながらも隙は見せずに、襲いかかる複数の奴隷たちを銃で撃っていく。もちろん、殺さないように宝石から当たると催眠性の粉が散布する弾丸に切り替えて撃っている。これまたレイラに迷惑のかからないよう男性専用に調合した弾丸だ。ついでにいうと、自分もかからないように調節しているが。


 「そ、それはだれ、きゃっ!…………う〜、それはだれですきゃっ!?」


 敵の攻撃を避けながら、というよりも避けながらも杖や足で自然的に奴隷達の鳩尾や顔を強打しているが、器用に避けながらカウンターを食らわせているレイラ。鈍器で男の大事な所をさりげなく狙っているあたり、あんがい男の天敵になりそうな予感がしないでもない。

 とそのとき、またもや路地裏のあちこちから奴隷らしきものたちが棍棒や剣を持って現れた。ただ、ほかの奴隷たちと違うことが一つ。












 「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」








 レイラが〜〜〜流浪民街の路地裏で〜〜〜〜〜〜全裸の男たちに〜〜〜〜〜出会ったあ〜〜(上半身は服を着ています)




 「来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないでえええぇぇっ!!」


 もろに奴隷たちの全裸を凝視してしまったレイラが半ば半狂乱になりながら手当たり次第に魔術で威力を増した水の塊を飛ばす。その全てが男たちの花園にあたり、鳥が首を絞められたようなか細い悲鳴をあげその場で悶絶した。


「………………うわぁ」


 その光景を見ていたアシル。知らず知らずのうちに両手が自分のまたを覆うようにしているのは本能のせいかもしれない。


 (レイラを怒らせるのはやめとこう………)



  身震いしながらそんなことを思い、牽制代わりに宝石を銃に込め直し雷属性の魔術を解き放つ。目的は殺傷ではない、電撃による神経の情報伝達の母語作動を引き起こす。体の神経がいかれることによって自分の意識とは裏腹に体が動きこけたり壁に激突する。その間にレイラはアシルの所まで後退した。


 「恐らくだけど………………レイオスかな〜〜〜」


 「もうやだ………」


 アシルの口から出された人物の名前に涙を浮かべながらもやっぱりですかと同意する。


 「ど、どうします?この奴隷の量ですとかなりの奴隷商だと思いますけど…」


 「う〜ん、ここは手っとり早く屋根に登った方が楽だと思うんだけど…………ん?れ、レイラ。あれ、あれ見て!」


 「へ、なんです……………あ、あれは………オオカミさん!?」


 逃げる所がないかと空を見上げた瞬間、突然上空からオオカミならぬレムエムがレイラとアシルの元に降りてきた。その姿はいつもの小さな姿ではなく一度だけ、泥棒騒ぎの際にみた四メートル以上はある巨大な一匹狼の姿。その目はいつもの優しい眼ではなく、獲物を狩る際だけに現れる鋭い切れ目。


 「乗れ!」


 ただ、一言。それだけ。だがその一言だけでレイラとアシルは我に返り背中に飛び乗った。ふさふさとした柔らかい毛がレイラとアシルを包み込む。


 「振り落とされるなよ!」


 言うが早いか、すぐに跳躍した。あまりの速さに風がなびき、振り落とされそうになる。だがレイラは急いで毛をつかみ振り落とされないように体を固定する。アシルはというと何故かはわからないが思い切り毛を掴んで体を固定していた。その際にレムエムが悲鳴を上げているが。


 「お、オオカミさん!いったいどこにいくんですか?っというか、何でこんなことに?」


 「質問は後でする!今はここから逃げることが先決だ」


 「ね、ねえ、犬っころ!」


 「犬ではない!」


 「レイオスは、レイオスはどうしたんだい!?」


 「あやつなら、今どこかで隠れているはずだ!」


 「なぜに!?」


 「ええい、いい加減黙っておれ!」


 「へっ……みぎゅ!」


 「お、オオカミさん!これからどうするんですか!?」


 風を切る音に負けないように大声でレムエムに聞く。


 「まずはレイオスと合流する。レイオスが蹴ったバッテラという奴隷商が想像以上にかなりの地位を持つ奴だったらしくてな、逃げきれるのに時間がかかっておるのだ」


 バッテラという男の名前をレムエムが口にした瞬間、アシルは驚いた。


 「ぬなっ!?そ、その奴隷商ってかなり有名な奴だよ。ねらったが最後、必ず奴隷にしてしまうことから『蛇豚』って呼ばれてるくらい危険な男なんだよ!?そんな男を蹴ったの、レイオスは」


 「蛇豚………………ネーミングセンスがないな」


 「ほんとですね。私がつけてあげた方が百万倍いいです」


 「………よくいうよ」


 「何かいいました?アシルさん」



 自分の口からそういえることがすごいよな〜〜、とデブ猫の名前を付けたのを思い出しながらアシルがぼやくとレイラが急に振り向いて訪ねてきた。


 「………な、なんでもないです。はい……」


 絶対ヤンデレになるよ、レイラ……。ぜっったい、ヤンデれになる。レイオスがほかの女の子と一緒にいたらいきなり刃物とかを振り回してきて「あなたを殺して私も死にます!」とかなんとかいいそうだもん。それにあの背中に立ち上るドス黒いオーラは絶対ヤンデレだよ。


 そのとき、下の路地裏から炎を纏った矢が放たれた。矢はレムエムの頬をかすめ、空中で霧散する。


 「っ、魔術!」


 本来であれば形を残すはずの矢本体が消えるということはそれ自体が魔力の塊でできているということ。つまり、


 レムエムの背中から身を乗り出し路地裏を見下ろす。すると、紫色のローブを着た禿頭の男がこちらに向かって杖を向けていた。その杖には遠目からなのでおおよそでしかないが魔力石が埋め込まれている。何者、というまでもない。魔術師だ。


 「レムエム、急速回避!そのあと自分を路地裏におろして!」


 「むっ!?むぅ、わ、わかった」


 屋根を蹴って移動していたレムエムが自分を降ろすために路地裏に降りる。その背中から降りて地面に足をつける。そのとき、


 ヴォルカニック・ランス!


 炎の矢が自分めがけて襲いかかってきた。……だが、


 




 「僕はこんなぬるい炎で熱くなれないよ?」


 銃で矢を叩きつける。その様子に禿頭の魔術師は驚きの様子だ。無理もない、魔術が何の変哲もない銃に消されたのだから。


 




 


 銃を両手に持つ。代々ホーネンス家に伝わる二丁魔石銃。兄には劣るかもしれないけど、それでも自分だって相当練習してきたんだ。こんな奴には負けない。それに………




 「さっきの話し合いでむしゃくしゃしてたとこなんだ。発散代わりに僕の炎で踊ってもらう!」


 








 優しき情熱の炎が動く。

更新が遅れてしまい申し訳ございません。いろいろな事情(テスト)とかがかさなってしまい、執筆に力が入ることができませんでした。


余談ですが、自分の文章の書き方をもう一度見直すためその練習用として違う小説を連載しています。もし、興味がある方はそちらのほうもどうぞです。幻想入りってやつですが、一人称視点の文章や三人称視点の文章などいろいろな方法で書きたいと思っています。ローン・ウルフの更新には響かないですのでご安心くださいです。

それでは、乱文失礼いたしました。

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