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第六十二話 流浪民の街

更新遅れて申し訳ございません!

  先ほどと同じ場所に出なかったのはよかったが、逆に来てはいけないような所に来てしまったレイオス。

 視界には、傷だらけになった木の棒を角に一本ずつ、合計四本の長方形の形を作りその棒に茶色く変色した布を巻き簡易テントにしてその下で商売をしている者たちがいる。

 そこで買い物をしている人達も、さきほどの通りとは違いほとんどの者たちが薄汚れて元は白色であったはずの服が茶色く変色している服を着ている。


 「ここは……通り、なのか?」


 そう疑いたくなるほど、目の前の光景はみすぼらしいものだった。タイルがはげかけた歩道、なにやら得体の知れないものが流れている排水口、風が吹く度に香るツンとした何かが腐ったような臭い、この場所は先ほどと違って余りにも不衛生すぎる場所だ。


 レイオスは戸惑いながらも歩き始めた。レムエムも何も言わぬまま、不可視状態になり他の人に当たらぬよう家の屋根に跳躍してそこから屋根を伝いながらレイオスの後をついてきている。

 










 「ねえ、お兄さん。いい気持ちになれる薬はいらないかい?嫌なことを忘れられるよ」


 「へへっ、リュミオーネ銅貨3枚で売ってやるよ。あ、高い?知ったこっちゃねえな」


 「泥棒ーー!誰か、誰かそいつを捕まえて!!」


 「ひっ、ひひひひ、ひははひ、ふひっ、ふはひ!」


 「お恵みを……誰か、誰か私めにお恵みを……」


 「女はこっち、野郎はこっちの荷車に積めこんどけ!」


 





 薬、泥棒、人身売買。ニコウレ通りとは正反対の商売や、住んでいる人たち。どの人たちの目にも生気がなく、ドス黒く濁っている。ここは恐らく先ほどアシルが言っていた流浪民が住んでいる区域なのだろう。

 

 「酷い所だな………」


 そう言いつつ、レイオスは寂れた街道を歩き始めた。見たところ、この通りは比較的大きな通りのようでそれなりにだが人も歩いている。誰かに道を聞けばニコウレ通りに戻れるかもしれない。

 淡い期待を抱きつつ、流浪民を荷車に積めている恰幅の良さそうな人に話しかけた。


 「すまない、少々道を尋ねたいのだが……」


 「ああん?道だと。………どこだ」


 レイオスが話しかけたのは緑色の一張羅を着た小太りの男だった。頭はなくなったのか剃ったのかはわからないが髪がなく、右手には和紙の頭の形をした杖をついていて志望で垂れた手にはいくつ物宝石がちりばめられた指輪をすべての指にはめている。聞かずともわかる、流浪民ではない平民の中でも大のつく富豪だ。

 レイオスは事情を説明した。自分がニコウレ通りというところから歩いているうちにここに迷い込んでしまったこと(レムエムと争って迷ってしまったことはもちろん伏せておいたが)を。すると、男は多少渋りつつもニコウレ通りまで送ってくれることを約束してくれた。この男、バッテラというらしくある貴族のために雇われた者らしい。雇った貴族が新しい家を建てるらしく、そのために人手がいるのでここの区域から収集していたとの事。一瞬、人身売買かとも疑ったがこれはそうではなく働き手がない者たちのためにわざわざ仕事を与えているそうだ。

 ふと、レイオスはバッテラの後ろにある荷車を見た。二十人ぐらいは入れそうな大きな荷車。白い布で覆われた後部の荷台にはぎりぎりにまで詰め込められた人たちが虚ろな目でこちらを見つめている。全員立ったままだ。


 「もう少しで終わるからここで待ってな。終わり次第、ニコウレ通りを通るからそこで降ろしてやる」


 「すまない。わざわざそこまでしてもらって」


 「なに、どうせ途中で通るからな。それと、お前さんは見た感じレイディアント学園の者だろう?俺もあそこにはいつもご贔屓にさせてもらっているからな。いいってことだ」


 そう言って、バッテラは仕事に戻っていった。左足を引きずりながら、他の者達に指示を出し荷車に人を入れている。


  

 「……ふぅ。なんとかなったな」


 (なあ、レムエム)

 

 バッテラが去ると同時にレイオスのもとに戻ってきたレムエム。人と接触するのがもともと嫌いなため、今まで家の屋根でことの成行きを見守っていたのだ。


 (ふん、大見得を切っておいて結局これか。たいしたことないな、レイオス)


 (うるせえ!元はといえばお前が自信満々で道案内をするからこうなったんだろうが。なにが「我の鼻は一キロ先の肉のにおいまでも嗅ぎとれることができる」だ。コンテストで優勝したかなんだか知らないが、お前こそ大したことないな)


 (知らんな。我は悪くない、悪くないぞ。悪くないったら悪くない!)


 (………レムエム)



 ため息をつき、その場に腰を下ろす。店を出てからもう小一時間は立っているはず、そろそろ話も終わっている頃だろう。早めに帰らないとアシル・ホーネンスもレイラも心配するかもしれない。主に金の心配を。


 と、そのときだった。ふと顔を上げると、白い服を着た(といってもやはり汚れて茶色く変色していたが)綺麗なエメラルド色の髪を腰近くまで降ろした少女がこちらのほうをじーっと見ている。最初は気のせいかとも思ったが、こちらが少し横に移動するとそれに合わせて少女も顔をこちらに向けた。


 (……なあ、レムエム。ところであの子を見てくれ、あの子をどう思う?)


 (む、なんだ?少女だと……………すごく、少女だな。で、それがどうしたのだ?)


 (いや、なんかさ。ずっとこちらのほうを見ている気がするんだけど気のせいか?)


 (…………被害妄想もたいがいにせんとな)


 (ほほう、被害妄想ときたか!なら見てみろよ。おれが動いたらあの子の顔も動くぞ)


 ため息をつくレムエムをよそ目にレイオスは座りながら右横の方に移動し始める。すると、少女も顔をレイオスから見て右に動かした。


 (………む、むう)


 (だろ?で、どうすればいい。この状況)


 (むう、ど、どうしたものか………む?)










 「離して!!いやっーーー!」


 突然、少女が悲鳴上げた。驚いたレイオスがレムエムと話すのをやめ、少女の方を振り向くとバッテラが少女のか細い腕を掴んでいた。それに抵抗するように少女はもがくが勝てるはずもなくずるずると荷車の方に引きずられていく。

 バッテラがなにをしようとしているのかは見当もつかない。だが、いまやるべきことだけはわかる。


 




 「このロリコンがーー!!」


 「ふげっ!?」


 レイオスとレムエムによる跳び蹴り。ちなみにレムエムは右前足跳び蹴り。足に魔力を込め跳躍し、足のつま先をバッテラの顔めがけて狙いを定め顔にめり込ませた。少女を捕まえることだけに意識を集中していたバッテラはよけれるはずもなくその場から五、六メートル吹っ飛んだ後、痙攣しそして動かなくなった。


 「おい、こっから逃げるぞ!」


 「へっ、ふにゅっ!?」


 なにが起きたのか未だにわからず呆然としている少女を担ぐと、レイオスはその場からすごいスピードで逃げ出した。そして、レムエムも後を走りながら一言。


 




 (お姫様抱っことはな……。さすが鈍感王だ)


 レイオスは気づいていないが少女を担いで走っている間、少女の顔が真っ赤になっていたことは知る由もない………。

風邪をひいてしまいました……。次の更新はもう少し早くできたら…いいですね(おい

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