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第六話 喧嘩

 リュフィエラ街道―この街道は、ヴァシリア王国に続く道で、商人や旅人などが使う重要な街道である。

 ヴァシリア王国がたてられてから、二年後に、初代国王が魔法使いたちによって作らせたもので、魔法によって作られているので、三百年という月日が過ぎても朽ちることはなかった。


 「へえ〜、賑やかな所だな〜」


 漆黒の髪、獣を思わせる眼、そしてどこの国でも見たことがない服装、その風貌のせいでほかの旅人から注目されていることも知らず、レイオスは初めて見る光景に目を輝かせながらそう言った。


 「お、ラピス、これはなんていう食べ物なんだ?」


 そばに売ってあったお菓子を見てレイオスはそういった。


 「ちょっと、少し静かにしてよね。私のほうが恥ずかしいじゃない」


 (まったく、こっちの身にもなりなさいよね)


 そういうと、ラピスは、少しカールした赤い髪をいじり始めた。落ち着かない時に、よくやる癖である。


 (あいつのせいで、この三日間、ろくなことがなかったわ……)


 ラスカの森を出てからの三日間、外に出たことがなかったレイオスは、すべてが初めて見る光景にじっとしていれらなかった。途中で道をそれたり、立ち止まったりと本来なら、一日半で行ける道のりを三日間もかけていたのだ。


 「お〜い、こっちで面白いことやってるぞ」


 (まったく……)


 最初に見た時は、かっこよかったのに。今じゃ、まるでガキね。


 そう思いながらも、ラピスはレイオスのほうへ向かっていった。




 目の前でこぶしを殴りあう男たちの姿が見える。どうやら喧嘩をしているらしい。周りの人たちはヤジ馬だろうか、いろんな言葉を投げかけながら本人たちは笑っていた。ラピスはヤジ馬の間をすり抜けて、レイオスのところまで向かっていった。


 「レイオス!」


 どこにもいない……。


 へんね……さっきまでここにいたはずなんだけど…………


 「おい、喧嘩はよしなよ」


 ラピスは、その言葉を聞いた瞬間、レイオスが何をしたのかを悟った。そして、ここから逃げ出したい衝動に駆られる。だが、


 「おっ、ラピス遅かったな」


 レイオスが言った一言で、ラピスは逃げられなくなった。周りのヤジ馬たちや、喧嘩をしていた本人たちがラピスにいや〜な視線を送っているからだ。


 「ちょっと、レイオス! あんた、なにやってんのよ。人のけんかに口を出すなんて」


 そう言って、レイオスを連れ出そうとする。


 「ちょっと待ちなおちびちゃん」


 だが、喧嘩をしていたやつらに道をふさがれてしまった。相当ご立腹のご様子で鼻息を荒くしている。


 「人のけんかに口を出しといて、すぐに逃げようとするたあどういうつもりだ?」


 けっこうがたいのいいひげを生やした大男が、こめかみに青筋を立てながら怒鳴りかけた。


 「いや、あの、すいません。まさか私の連れがこんなことするなんて。ちゃんとしつけときますんで今回はどうか穏便に――――」


「無理だな」


「……やっぱり?」


 「人のけんかに口を出すってことは、お前が代わりに相手をしてくれるってことだよな?」


 そう言いながら、二人の大男は上着を脱ぎ戦闘態勢に入った。どうやら、もう止まらなさそうだ。


 (ちょっと、あんたが引き起こしたんだからあんたで解決しなさいよね)


 (ああ、わかってる)


 そういうレイオスの顔は、先ほど見せていたものとは違う顔になっていた。いいたとえが見つからないが、あえて言うなら先ほどのレイオスが光で今のレイオスが闇に見えた。


 「気絶ぐらいは覚悟しとけ」


 そう言って、レイオスは腰を低く落としてこぶしを前に突き出した。そして、息を深く吸い込み吐き出す。


 「へ、その言葉そっくりお返しするぜ」


 大男どもは、こぶしを高く振り上げながら突進してきた。もしも当たったら骨折ぐらいは免れないぐらいだろうの威力だ。ほかのヤジ馬たちも、ラピスも、レイオスが勝つとは思っていなかった。せめて、少しぐらいは持つだろうと。

が、大男どものこぶしがレイオスに当たったと思った瞬間、レイオスの手が相手のこぶしを受け流すと同時に一気に懐に入り込み、左の腕で肘鉄をくらわせ、相手の体が崩れると同時に右のこぶしで相手の腹を強打した。大男が、何とも言えない声を発して倒れこむ。その間、実に10秒も満たない。


 「うそ…………」


 ラピスは今の戦いを目で追えなかった。それほどまでに、レイオスの攻撃は早かったのだ。


 「く、てんめえええ!!」


 もう一人の残った大男が肩に下がっていた大剣を抜き、レイオスに切りかかってきた。刀身が大きくそれている。


 「レイオス、あぶな……」


 しかし、ラピスの言葉は途中で途切れた。レイオスがいつの間にか自分の剣を握っていたからだ。レイオスが持っている剣は、普通の剣とは違っていた。肝心の刀身がないのだ。


 「うおおおおおおおおお!!」


 大男がレイオスの頭めがけて大剣を振り下ろしてきた。レイオスはそれを受け止め、右にはじき返す。そして、3mぐらいの距離をあけた。


 (なんで、あそこで切りつけないの?) 


 今の状況なら、切り返せるはずだったのに……


 しかし、大男が持っていたものを見てラピスは驚いた。


 カイオー・ボム。


 火の爆炎といわれる、その名の通り火の精霊を封じ込めた爆弾だ。この手の精霊爆弾は、今は禁止され製造中止になっているはず。


 「へ、よく気がついたな。あの時に切りつけりゃこいつが爆発して勝てるはずだったのによ」


 (だから、よけたのね)


 ラピスは驚いた。あの大男があんなレアなものを持っているのにも驚いたが、レイオス があの場面で瞬時に把握し、よけたことも。


 「精霊を、そんなふうに使うとはな。人は本来、精霊と恩恵を受けて生きていられるのに、その精霊を戦いの道具として使うとは…………この外道が」


 レイオスの顔が怒りで歪む。それは、戦いのときにしか見せることのないレイオスのもう一つの顔だった。


 「ふん、使えりゃなんでもいいんだよ」


 大男が精霊を封じた爆弾を振り回す。その中で、精霊が苦しんでいるのがレイオスには分った。


 「おおおおお!!」


 大男が大声をあげて、レイオスに突進する。しかし、レイオスは動かなかった。腰を低く落とし、剣を顔の近くまで上げ、大男のほうを見据えている。

その時、ラピスはレイオスの剣に魔力が集まって行くのがわかった。すると、徐々に何もなかった刀身のところが、光り輝き始める。どうやら、レイオスが持っているあの剣は、魔力を吸収して形となるらしい。

先ほどまで見えなかったのは、魔力を少ししか分け与えていなかったからだろう。大男も、レイオスの剣が光り輝き始めるのを見て、何かを感じたらしい。だが、大男は逆にスピードを上げ、レイオスに切りかかった。


 「バルティゾー・フォース」


 レイオスが何かをつぶやくと同時に、持っていた剣を振り下ろした。


空気を切り裂く音とともに、大男に光の衝撃波が襲いかかる。


 「な、なんだそ……ぐがああああ!!」


 大男の体が20mほど吹き飛び、倒れる。


 「ふん、口ほどにもないな」


 そういうと、レイオスは大男のそばに転がっていた精霊爆弾を破壊した。中に閉じ込められていた精霊が解放される。


 「ksdがlgけ」


 何やらわけのわからない言葉とともに、精霊はレイオスに一度お辞儀をするとその場から消えてしまった。レイオスが剣をしまう。すると、野次馬たちが一斉に歓喜の叫びをあげた。


 「こぞう、よくやった!」


 「お前に賭けといてよかったぜ!」


 「かっこよかったよ!」


 「いい男だね〜」


 いろいろな声が飛び交う中(中には少々、変な言葉も交じっていたが)レイオスはラピスのほうへ向かっていった。


 「終わったぞ」


 まるで、遊びから帰ったみたいな感じてレイオスはラピスに話しかけた。


 「あんた…………今の魔術よね?それにさっきの精霊の言葉、私、勉強したことがあるからわかるんだけど、あんたのこと『光の王』って……」


 「あんまり、精霊の言葉を覚えてもいいことがあるわけじゃないぞ」


 「へ?」


 レイオスの言葉に、ラピスはどういう反応をしたらいいのかわからなかった。精霊の言葉を覚えたらいけない?どういうこと?


 「ま、あんまり深く考えんな。てか、それより学園のほうはいいのか?」


 その瞬間、レイオスの言葉について考えていたラピスははっと気がついた。依頼主から、言われた期限は明日まで。つまり、それ以上を過ぎるとあの依頼主、つまり学園長から一日中説教……いや、それどころかあんなことやこんなことまで…………


 「レ、レイオス、超特急で行くわよ!!」


 「へ、ちょっと待てよ、もう少しゆっくり――――」


「そんなひまない!!」「


「だから、ちょっと、まて……んなあああああああああああああああああああああ!!??」


 レイオスが叫び声をあげると同時に、ラピスは走り出した。もちろんただ走るわけではない。風の精霊を体に付与させた超高速移動魔法だ。そのスピード、約200キロほど。普通の人間なら死んでしまう。


 「ちょ、まって。まってくださいラピスさん! 俺が悪かったから、離してくれ――」


「うっさいわね。加速するわよ」


「へ? ぎゃあああああああああああああ!!」


 レイオスをひきずりながら、走るラピス。学園に着くころには、レイオスは生きていないかもしれない。だが、そんなこともお構いなしにラピスは走り続けるのであった。


レイオスとレムエムのローン・ウルフ講座


レイ「それでは、これからローン・ウルフ講座を行うぞ。ちゃんと、読んでくれ」


レム「読まなくてもいいがな」


レイ「黙っとけ。それでは、まず最初におれたちが使う魔術について話そうかな。元々、魔術にはこれといって決まった術式はないんだ。たとえば、


逆巻け風よ 槍となりて すべてを消し去らん


こんな魔術があったとする。だけど、この術式を変えると、


落ちろ雷 槍となりて すべてを打ち抜け


こんな風に変えることで、風属性から雷属性へと変えることができるんだ。だけど、文章として成り立っていないと魔術は発動しないから気をつけるように。例で言うと


逆巻け風よ 槍となりて すべてを焼き尽くせ


これだと最初の文が風属性、最後の文が火属性となってしまい、魔術が発動しなくなるんだ」


レム「つまりだな。簡単に言うと、火に水をかけると消えてしまうということだ」


レイ「よくわかんないぞ。それ」


レム「と、ともかくだ。これからも、ローン・ウルフ講座は続けるつもりなので、これからもよろしく頼むぞ」


レイ「それでは、第七話でまたお会いしましょう」

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