第五十九話 祭りだ祭り!【下準備編】
遅れてすいませんでした!
ガリルレギオンの事件から二日後、この日レイディアント学園ではある催し物が行われていた。
レイディアント学園には月ごとに各精霊達をあがめるために塔で催し物をすることが規則となっている。そのため、学園には行ったばかりの学生達は初めて行う行事に朝も夜も催し物の準備に追われるのだ。それはレイオスでも例外ではない。今回、催し物が行われるのはシャイレストの月のためレイオスとアシル、そしてレイラがいる塔−−シャイレストで行われることになっている。そのため、シャイレストの塔に在籍する学生達は今現在も休む暇を惜しんで二日後に行われる催し物のために働いていた。
「おい、そっちの荷物。奥の突き当たりにある倉庫においといてくれ!」
「ああ、了解」
「ねえ、そこの小道具かたしといて!ついでにゴミ箱の中身も捨てといてね」
「は、はい。わかりました」
「ねえ、僕。こんなつまらないことするより、私といい子としない?サービスするわよ」
「寝言はまず自分の顔と体型をみていってくださいね。その厚化粧で迫られると男はおろか、女でさえも逃げ出しますよ」
「おい、今度はそこの荷物も倉庫においといてくれ!」
「ああ、了解」
「あ、ねえあんた。食堂に行って水持ってきてね」
「え、私ですか!?は、はい。わかりました………」
「ねえ、ちょっと!何よその言い方、あんたひどくない?っていうかあ、調子に乗るんじゃないわよ!」
「え、何か?自分はただ正直に言っただけですけど。それに、あなたこそ調子に乗ってませんか?なんですか、それ。胸元をわざと開いて。対してない胸を強調されても興奮なんかできないんですが、ということで早くどこかにいっていただけませんでしょうか?仕事の邪魔です」
三人とも先輩である上級学生達にこき使われ、大変そうである。ただ一人、胸元を開いて自分の胸の大きさをアピールしている女先輩に向かって、笑顔で拒絶するアシルを除いてだが。
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「あう〜〜…………」
「う〜ん、やっぱり賃金がでないとやる気がでないな」
「ストレス解消になったな〜〜」
三人ともそれぞれ愚痴をこぼしながら(アシルはグチではないが)、レイオスの部屋で昼食をとっていた。ちなみに、テーブルの上に並べられている料理の数々はレイオスとエルハイマが作ったものだ。何故か、レイラがレイオスの部屋に入ってエルハイマを見た瞬間、不潔です!と言われて思い切り平手打ちを食らったが。
「はぁ〜、事件の傷跡がまだ癒えていないんだがな……」
「それはレイラも同じ事だし、テイルもラピスも同じ事。みてないの?テイルとラピスのは働きっぷり」
アシルの言葉にむっとしながらも、なにも言い返せないのでテーブルの上に置いてあるティーカップを持って口に運ぶ。
確かに、あの二人の仕事量は尋常ではない。自分が見ている限り、ラピスは生徒会長の仕事をこなしつつも自分達のクラスの催し物の手伝いをしてくれている。テイルはと言うと、シャイレストの塔全てのクラスから依頼された荷物を運んでいた。
ラピスはともかくテイルはただいいように使われているだけじゃないか、と思いつつエルハイマの作ったクッキーを口に放り込む。一瞬だけ舌にしょっぱり塩の味が広がったがその後、すぐにほのかな甘みが口の中全体に広まった。
(………後でこのクッキーの作り方、教えてもらおう)
自分より上手に、かつ見た目もきれいに作られているクッキーを頬張り、内心嫉妬を覚えつつもレイオスはクッキーを頬張り続けた。
「あの、レイオスさん?クッキー頬張りすぎですよ?」
「ふべ?」
「あ、ほんとだ。まるで下着を盗もうとしてばれそうになったから口に隠している変人みたいだね」
「べふっ!?…………ぬぐ、おい、その表現おかしくないか!?」
「え、そう?」
「れ、レイオスさん。……変態だったんですか?」
「おい、違うって。レイラ、誤解だぞ!」
「レイオス、そう言う行為は私の下着だけにしてください。他の方の迷惑です」
「待て!色々突っ込みたいところだけどまずお前は喋るな、エルハイマ!」
先ほどまでレムエムのベッドに寝転がりながら三人の話を聞いていたエルハイマが突然割り込んできた。
「何故です?私の物であれば、他の方の迷惑になることもありませんし、私も迷惑ではありませんので大丈夫と思うのですが」
「だから、それがだめなんだっての!少しは恥じらいってもものを持ってくれよ!」
すると、エルハイマの話を聞いたアシル達が
「れ、レイオス。それはさすがにいかがなものかと………」
そう言って、レイオスから徐々に離れていくアシル。
「し、下着、見る食べる!? こ、恋人!?」
何故か、顔を真っ赤にしてソファーに倒れてしまったレイラ。いつものことなので、レイオスが近くにおいてあった毛布をレイラに掛けてあげる。
その光景を見て、アシルは笑った。その笑い声に反応したのか、レイオスがしかめっ面でアシルに近づく。
「アシル、途中で話を変えるのはやめてくれよ。話が進まないだろ?」
当のアシルはと言うと、
「ごめんごめん。みんな疲れるようだったからさ。息抜きにと思ってね」
「あれが息抜きね………俺の存在感が危ぶまれる息抜きだったけどな」
ため息をついてレイオスはソファーに座り直した。そして、テーブルの下にあったのだろうか。丸まった意図の固まりといかにも手作り感があふれるいびつな、先端が丸まった棒を取り出した。レイオスは糸を器用に先端にひっかけて編み物を始める。これはもはやプロと言ってもいいのかもしれない。手が見えないほど素早く動き、瞬く間に服のような物ができあがるのを見てアシルは思った。
「それより、レイオス。うちのクラスの催し物どうするの?材料はレイオスの言うとおりに集めたけどさ」
ポケットからひしゃげた紙を取り出し、レイオスに手渡す。レイオスはそれを広げると、怪しい笑みをこぼした。
そしてどこからか、リストのようなものを取り出しひしゃげた紙を見ながらそのリストに何かを書き連ねていった。
「ふんふん、材木は足りてるか………水も大丈夫、と。足りなくなったらレイラの魔術で出してもらえばいいか。後は…食材も大丈夫。足りないのは……飾り用の布と、各人数分の服か。………よし」
ぶつぶつと何かを確認しながら呟きつつ、リストに書いていく。そして紅茶が冷めきった頃、レイオスは突然立ち上がると上着を羽織り、ソファーのそばに立てかけていた剣を腰に差した。
アシルが不思議に思いながら見ていると、レイオスは自室に戻り催し物用の金が入った金袋を持ち出してきた。確か、レイオスがこの金を渡されたときどうしようかな…と呟いているのを覚えている。
「レイオス、どうしたんだい?」
「ん、ああ。このリストに載っていない足りないものを今から買いに行こうと思ってな」
その時、アシルはこの言葉に矛盾を感じた。
「え、レイオス。君さ、どうやって買いに行こうと思ってるの?まさか、学園内で買えるとは思ってないよね?」
レイディアント学園にも購買を行うための店舗が立地されている。だが、その店舗には必要最低限のもの、つまり、文房具や身の回りの必需品、または基本的な食材しか置いていないのだ。もし、特別な食材や大量の布などを買うのであればレイディアント学園から出て城下町に行って買わなければならない。だが、この国の城下町は自慢ではないがそうとうでかい規模で店が並んでいる。正規の店もあれば、勝手に商売を行っている露店などなど。その中で物を買うということは、ここで生まれ育ったものでしか無理だろう。ましてや、この国にきてまだ一か月も満たないレイオスが城下町にたどりつけるのかどうかさえも怪しい。絶対に迷子になること必須だ。
「そのぐらいわかってるよ。ここで買えないんであれば、外で買う。つまり城下町だ。城下町なら安くて良質な素材がたくさんあるはずだからな。金も使わないですむだろう」
予感的中。
レイオスって常識があるのかないのかときどき疑ってしまうほど、常識と非常識の差が激しいや。
「レイオス、道わかるの?」
すると、レイオスは何を根拠にしているのかわからないが親指を立ててアシルに突きつけた。
「大丈夫!俺にわからない道などない。ただ、初めてのところは少々緊張するけどな」
「それってつまり、わからないんでしょ」
「うん」
「だめだこりゃ……」
それから数分後、目を覚ましたレイラと身支度を整えたアシルが意気揚々と外へ行こうとするレイオスを抑えながらレイディアント学園を出たのを疲労困憊で動けなくなったラピスが見たとか見なかったとかやっぱり見たとか後で自分を呼ばなかったのを後悔させてやるとか呟いていたとか。
こんにちは、お久しぶりです。イソです"( ´ ▽ ` )ノ"ちわぁ
度重なる不定期更新、本当に申し訳ございません!
進学などの関係で執筆が遅れてしまいました。次回からはこのようなことがないよう、できる限り頑張っていこうと思います。た、たぶん・・・:(;゛゜'ω゜'):
さて、今回からやっとコメディーパートに入ることできました。大分書き溜めているので更新は早くできると思います。(さっきの言葉と矛盾してる
それでなのですが、今回から土曜日更新を一旦、やめにしたいと思っております。前と変わらず、一週間更新で行こうとは思っていますが一週間以内のうちに出来上がったらその日に即投稿、という形にしようと思っておりましたので土曜日更新をやめることにいたしました。
最後にですが、自分の勝手な事情につき読者の皆様に迷惑をおかけしまことに申し訳ございません!