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第五十七話 女の意地、男の憂鬱

 「絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対ぜえぇ〜〜ったい、認めないわ!!」


 「その意見は認めません」


 かれこれ30分間だろうか。エルハイマの問題発言をきっかけとしてラピスが抗議を続けている。だが、当のエルハイマはというと


 「認めません」


 の一点張りでてんでラピスの話を聞こうとはしなかった。


 「ふざけんじゃないわよ!いきなりやってきてはいそうですかって言えるわけないでしょ!それに、あんたは敵じゃないの。そんな奴なんかにレイオスは任せられないわね!」


 先ほど硬直してしまってエルハイマの上から動かなくなってしまったレイオスを校長がどこかに放り投げて、ベッドの上に座らせたエルハイマの目の前でラピスは両手を胸の前に組み、仁王立ちになって怒鳴った。額には青筋、は浮かんでいないものの完全に怒り心頭とわかる、つり上がった眉毛が上下に痙攣している。


 「しかし、私は主にそう命令されました。主の命令は絶対、私にはどうすることも出来ません。あなたが私の代わりをしてくれるのであれば別ですが」


 淡々というエルハイマ。しかし、ラピスはその言葉に口をあんぐりと開けて固まった。


 「………………わ、わ、わあわわわ、私、が……れれ、レイオスののの、世話!?」


 「はい、炊事洗濯掃除身の回りの世話。そのかわり、ありとあらゆることをしてもらいますが。もちろん、体の処理もしなければなりませ………………」


 「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー!!女がそんな簡単にそう言うことを言うなーー!!」


 エルハイマの言葉に文字通り耳まで真っ赤になってしまったラピス。しかし、エルハイマは不思議な顔をして首を傾げた。


 「? 何故、そうまで動揺するのですか。体の処理というのは傷を負ったときなどの手当などのことをまとめてかだの処理と言ったのですが………」


 「………へ?」


 しん、と静まり返った保健室。ただし、校長だけが二人の会話を聞いて腹を抱えて声に出さないようにしながら笑っている。ラピスはというと、もう羞恥心やらならんやらかんやらで真っ赤を通り越して言葉では表せないほど、すごい顔になっていた。


 「どうなされたのですか?」


 一人、涼しい顔で喋りかけるエルハイマ。その顔がよけいにラピスを恥ずかしくさせる。


 「…………べ、別にそんなことを知らずにいったわけじゃないんだからね!わざと言ったんだから!」


 「その割には発汗、心拍数の上昇、体温の変化などがみられますが。………………もしかしますと、あなたは体の処理のことを性欲処ーー」


 「それ以上言ったら本当にぶっ殺すわよ!!」


 いつの間にか握られていた鍵をエルハイマに突きつける。だが、


 「ラピスちゃ〜〜ん、レイオスちゃんの客人に危害を加えることはこの私が許しませ〜〜ん!」


 校長の声がラピスの背後から聞こえた。ひっ!と言ってラピスがその場に硬直する。


 「ラピスちゃん、あなたは少々おいたが必要なようですね〜〜〜。むふふふふふふふふふふふ〜〜」


 指を軽く鳴らしながら校長が言う。笑っているはずなのにその場の空気は先ほどよりも不穏な空気に変わっていた。


 「あ、ああ……こ、校長。どうか、どうか落ち着いてくださ……」


 「だ〜〜〜め!さあ、私の部屋に行きますよ。新しい技を試してみたかったんですう」


 そう言って、校長はラピスの首根っこをがっちりと掴むとレイオスに果物は全部食べていってね〜と言うと、ラピスを引きずりながら扉を開きその場から立ち去った。






 「いやあああああ!!いやああああ!!あの部屋だけはいやあああああ!だれか、誰か助けて!!いやあああああああああああああああ!!」



 とても悲痛な叫び声が廊下から響いた。


 「………………ラピス、哀れなり」


 ようやく復活したレイオスが両手を前に出して合掌する。すると、廊下の方から


 「レイオス、あんた覚えときなさいよ!!……………ひっ、いやです!それはやめてくださ…きゃあああ!!」


 …………………またもや悲痛な叫び声が徐々に遠くなりながらもきこえた。ついでに、自分に対してのなにやら物騒なセリフも。


 








 その場に残ったのはレイオスとエルハイマの二人だけ。

 

 「あの…………………」


 「びくっ!な、なんだ?」


 エルハイマに声をかけられた瞬間、レイオスが驚いてこちらをふりむいた。別に、効果音を声に出さなくてもいいのに………………とエルハイマは思った。


 「私の寝床はどうすればいいのでしょうか。あなたの世話をする以上、私はあなたのそばにいなければなりません」


 「………………ずっと?」


 「はい、ずっとです」


 「………ちなみに拒ーー」


 「ちなみに拒否権はありませんので」


 「………………ぐすん」


 わかってはいたさ、わかってはいたのさとそう言って自分に言い聞かせる。でなければこんなことやってられないもの、もう一人分の食事が増えるなんて。また出費が大変なことに………………

 っていうか、何でこんな唐突なんだよ。フェヴェリオスは敵のはずだろ?なんで、その敵の使い魔が俺の部屋に住み込むことになってなおかつ世話をしてもらわなきゃいかんのだ。その上、ガリルレギオンの塔についても詳しく教えてくれないし……あとでラピスかテイルにでも聞こうかな。…………で、テイルはどこにいるんだろ。


 あれよこれよと考えを張り巡らせる。というより、愚痴を頭の中で言い続ける。

 何もない空間に向かってぶつぶつと呟いているレイオスを見てエルハイマはため息をついた。


 (これが、一週間の間世話をする方ですか。能力的には全く問題ないですが、精神的にまだまだなようですね。そちらの方も鍛えなければ)


 そう言って、エルハイマは両手の拳を握りしめて気合いを入れるのであった。


















 「ぎゃああああ!!そ、それはやめ!ひっ、きゃああああ!!」


 「ふっふっふ〜〜、新しき必殺技デストロイドアンチクラッシャークラッチムーンソルトチョメチョメはいかがです〜〜?」


 「ぎぶ、ギブ!いっ、にゃあああ!?」

 













 その日、校長室から身の毛もよだつような悲鳴が小一時間ほど響きわたっていたとか何とか。

皆様こんにちは、イソです。いっきに四話更新しました。次のお話もある程度できているので来週にはださるとおもいます。それじゃあ、これからもローン・ウルフをよろしくお願いしますです!

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