第五十三話 戦いの終わり
更新、遅れて申し訳ございませんでした!<(_ _)>
「はは………………やったの、ぐっ!………………やったのか?」
そう言って、テイルは崩れ落ち始めた祭壇を信じられない気持ちで見ながらそう呟いた。中央には自分の手に握られている大剣ガリオンで胸を貫かれて絶命したミルテリスが崩れゆく祭壇で倒れている。
「チートだろ…………これ」
そのぐらい、テイルの目の前で起こっている光景はとうてい信じられないものだった。
崩壊。
ただ、ミルテリスが絶命して倒れた瞬間に手放した………………なんとかかんとかスペシャルドリームソードが黒い軌跡を描きながら地面に落ちて切っ先が偶然にも地面にふれた瞬間、今まであれだけの戦闘しても壊れなかった祭壇がいきなり崩れ始めたのだ。
「くそっ、無理………しすぎたか。体がめちゃくちゃ痛えや」
そう言うと、テイルは大剣ガリオンをすぐ横の壁に立てかけた。そして残った回復薬をポーチから取り出し、一気に飲む。すると、先ほどまで血色の悪かったテイルの顔が少しなりとは赤みがかかった。
その時、大きな振動とともにまた祭壇の一部が崩れ落ちた。もう、残っているのはミルテリスがいる部分だけ。時期にあそこも崩れて奈落の底へと消えてゆく。
「………………惜しいことしたな」
戦っている最中にわかったのだが、あの女……ミルテリスは別に悪意があって俺に切りかかったわけではなかったのが刃を交えて感じた。逆に、何かを守るために戦っているようにも見受けられた。それは、テイルの思い過ごしかもしれない。だけど、感じたのだ。自分と同じように誰かを守る強い意志が。
「……行くか」
悲鳴を上げる筋肉に活を入れ、立ち上がる。そして大剣ガリオンを鞘にしまい、担ぐとその場を後にして地上へ戻ろうとした。
「この子を…………………頼みます」
声が聞こえた。
「え?」
テイルの動きが止まった。
(……声?)
そう、声がしたのだ。テイルの後ろ、もう誰もいるはずのない祭壇、ツヴァイト・レグレーベンは祭壇が崩れ落ち始めた瞬間にどこかに消えてしまったし、ミルテリスは自分が背中に担いでいる大剣ガリオンで胸を貫いて絶命したはず。つまり、この場所にはテイル以外にだれもいるはずはないのだ。なのに、
「聞こえたんだ………女性の声が」
とても、とても優しい声。かすかにしか聞こえなかったはずなのに心の奥底に響く声。確か……頼みます、と言われた。そう、この子を、もだ。だけど、誰を?
一瞬だけだったが聞こえた声に戸惑いを感じ、その場から動けなくなる。そして、辺りを見回すがいるのは今すぐにも崩れそうな祭壇の上で倒れている一人の男だけ……………………男?
テイルは一瞬、見間違いかと思って目をこすった。それもそのはず、ミルテリスは女だったはず。それがいきなり男に変わるはずなんてない。
だが、目をこすりもう一度祭壇に倒れている人物を見た瞬間、テイルは大剣ガリオンをその場に放り出すと足に出来る限りの氣をため祭壇の中央に向かって跳躍した。とんだ瞬間、祭壇の残りの地面に亀裂が入るのをテイルはみた。それと同時に心に焦りがでる。
(くそっ!………なんでそんなところにいるんだよ)
そう心の中で愚痴をこぼし、テイルはまもなくたどり着くであろう祭壇に倒れている人物をみた。漆黒の髪、遠目からでもわかる獣のような鋭い目、みたことのない独特な服装、そして欲しい欲しい、と暇さえあればあいつに懇願していた剣。
レイオスが祭壇の中央に倒れていた。
「ああ、くそっ!なんでそんな所にいんだよ!」
心の中で思っていた愚痴をこぼす。だが、迷っている暇はない。レイオスがいる祭壇は今にも崩れ落ちそうな状態だ。恐らく、テイルが今着地すれば衝撃で崩れ落ちるに違いない。とすると、チャンスは着地した瞬間のみ………!
足の力を抜く。衝撃を入れてしまえばよけい地面に伝わる衝撃が強くなるからだ。
その時、まもなく着地するであろう祭壇に亀裂が入った。そして、祭壇が真っ二つに割れる。
「しまっ……!」
今にも着地する祭壇の位置を見てテイルは毒づいた。レイオスがいるのは半分に割れたうちの片方。しかし、自分が着地しそうなのはレイオスがいないもう半分の祭壇の片割れ。これではレイオスを助ける前に祭壇が崩れて助けられなくなってしまう………!
「レイオーース!!」
その時だった。
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、目も開けられぬほどの突風が吹き荒れた。
「うわっ!?」
目の前を風の固まりが通り過ぎていった。あまりの突風に一瞬だけ目をつむる。そして、風が収まりもう一度目を開けるとラピスがレイオスの首根っこを掴んで空中に浮かんでいるのが見えた。
喋りかけようと思うが、その前に今の状態をどうにかしなくてはならない。
そう判断すると、テイルは祭壇に着地した瞬間にもう一度、足に氣をためドームの頂上にある突起部分に向かって跳躍した。跳躍した反動で祭壇がすべて崩れ落ちる。そして、突起部分に到達する前にポーチから布を取り出すと先端に小型のナイフを巻き付け布を回転させながら突起部分に向かってとばした。すると、布が突起部分に絡まり簡易式の縄が完成した。それを両手で掴み、うまくバランスをとりながら出口まで飛んでいく。
「ラピス、お前何してんだ?」
布から手を離して出口の所に着地したテイル。だが、ラピスはその言葉に応える前にテイルの顔に右拳をめり込ませた。おふっ!?という、気色悪い声を出してテイルが壁にめり込む。
「あんたねえ〜〜………………迷惑かけてんじゃないわよ!このバカ!」
そう言うと、ラピスは自分の足下に寝かせていたレイオスをテイルに向かってぶん投げた。テイルが慌てて壁から抜け出すと、それを受け取る。
そうっと、テイルはレイオスをみた。そしてため息を一つ。
「へっ、何も知らずにのんきに寝やがって……」
安らかな寝息をたてて寝ているレイオスをみて、テイルはそう愚痴をこぼした。だが、そう言っているテイルの顔はとても満面な笑みを浮かべていた。
レイオスが無事なのを確認すると、テイルは大剣ガリオンを背負い直しそしてその上からレイオスを背負った。ラピスが自分に向かってレイオスを渡したのは自分ではもてないからだろう。その証拠に先ほど、ラピスがレイオスを掴んだときにレイオスの重さで落ちそうになっていた。まあ、ラピスの魔法って自分の体重までが限界らしいからな……。つまり、結構体重があ……
と、言う前にテイルのすぐ横を何か高速の物体が通り抜けた。それは通路の奥に消え、少しの間をおいた後何かが爆発したような音を出す。
「…………ラピスさん、いきなりシルフィード・ランスを打つのはやめてくれねえか?」
「さあ、何のこと?ほら、さっさと歩かないともっかいシルフィード・ランスをお見舞いするわよ!」
やっぱり打ったんじゃねえか……という台詞を言うとラピスに殺されるので口に出さないようにしながら歩き始める。近頃、というよりレイオスが来てからシルフィード・ランスを打つ量が格段に増えているよな……
そんなことを思いつつも、しっかりとレイオスを担いで歩き続ける。だが、相当ガタが来ているのか足がふるえ始めていた。腕もだ。いや全身の筋肉が悲鳴を上げている。やはりあれを使うと副作用がひどいな………
残っている氣を手と足に集中させる。これならば、恐らく出口まではもつはず。でないと、ぜってえラピスに引きずられること間違いないだろう。ただでさえ、前科があるわけだし。
この地下に入る前に起きたプラマイド事件を思いだし、出口に向かいながらも途中で倒れないようにしねえとな……そう、心に近いながら身震いするテイルであった。
読者の皆様、こんにちは。イソです"( ´ ▽ ` )ノ"ちわぁ
約一か月もの間、小説の更新を遅らせてしまい誠に申し訳ございませんでした!
次回からはこのようなことがないよう、気を付けます。
次回ですが、一気に四話ほど更新したいと思っています。