第三十八話 秘密の草原
皆さん、こんにちは。イソです。はい、まだ戦闘シーンに入っていません。もう少しで、入ると思いますので楽しみにしていてください。楽しみにしている人がいればですが(笑)
ツヴァイト・レグレーベンは自分の足下に横たわっている人を見た。青い髪を後ろでまとめ、ポニーテールのようにしている人物は口からよだれを垂らしながら、眠っている。
「ふむ・・・・・・なぜ、涎がでているのだ?そんな記憶ではないはずだが」
ツヴァイト・レグレーベンが古代魔法を行ってから、十数分がたとうとしていた。
古代魔法・・・・・・それははるか昔、古代ガリレア王国の時代に作られたものである。正確な用途はわかっていないが、現代魔法とは違い行使するときに使われる魔力の量や術式がけた違いに多いし難しいと言われている。だが、古代魔法を知るものは少なく、今では王族のみが知っていると言われている代物だ。
「・・・・・・すっかり忘れていたが、我が領域に入り込んだものはどうなっているのだろうか。・・・・・・エディスト、エディスト・ハウレグス!」
ツヴァイト・レグレーベンが眼を閉じて、頭の中で名前を呼ぶ。すると、最初は霧のように頭に何かがかかっていたが徐々に晴れていきある男の顔が現れた。
『お呼びでしょうか、ツヴァイト・レグレーベン様』
髪は琥珀色。年は20か23あたりで、まだ若さが残っていることを示すように声が高い。おでこが広く、ハゲとはいかないもののこの年でこのおでこの広さは少々異常だ。本人もそれを意識しているのか、右手で前髪をおでこの方へ寄せていた。
「エディスト・ハウレグス。我が領域に入り込んできた水、風、光、闇の者達はどこにいる?」
するとエディスト・ハウレグスが消えた。少しの間、沈黙が広がる。そして、また戻ってきた話し始めた。
『ツヴァイト・レグレーベン様。水、風、光、闇の三人はアデストにいます。三人とも、別々の方向にあるいていますのでおそらくあたりを散策しにいったのかと』
「アデストにいるのか・・・・・・。この場所からそう遠くではないな。今、邪魔をされるのは少々面倒だ。エディスト・ハウレグス、至急、アデストにいきその三人を拘束、または始末せよ」
『了解いたしました』
そういって、エディスト・ハウレグスはツヴァイト・レグレーベンの頭の中から消えた。
ツヴァイト・レグレーベンは軽く息を吐くと、体をゆっくりとだが起こし、前足で器用にあたりの骨を隅に追いやった。
「もうすぐ始まるな・・・・・・、イスキューオーの生き残りよ。その記憶を見て、そなたがどうなっているか見物だな」
そういって、ツヴァイト・レグレーベンはまた眼を閉じ、瞑想に入った。
「だから、言っているだろう!?お前は魔術が使えないんだから、後衛に回れって!」
「いやよ!なんであたしが、あんたの後ろを歩かなくちゃならないのよ!」
「私的な感情だけで動くな!命のやりとりをしている最中なんだぞ!?」
「別に、敵なんていないじゃない!そういうのは、敵が現れてからいってよね!」
「ああ、もうだめだこいつ。レイラ、俺の後ろに回ってくれないか?俺が前衛の方に回るから」
「えっ!?わ、私はいいですけど・・・・・・」
「無視しないでよ!人の意見は聞きなさいよね!」
「レイラは、俺が傷ついたときは回復に専念してくれ。さっき実験したとおり、水の魔術・魔法は使えるだろ?」
「は、はい・・・・・・だけど」
「あ〜、もう!いいわよ、勝手にやってなさい」
(ふえぇ〜〜ん!誰か、助けてください〜!!)
未だに、二人の仲が直らないどころか逆に悪化していく様子にレイラは心の中でレイオスとレイラ、そして自分しかいない空間に向かって叫ぶのだった。
「ーーーを知ることだ、か。ったく、何をいっていたのか思い出せない」
じめじめとした緑色のこけが壁を覆っている通路を歩きながら先ほど見た夢を思い出す。後ろには、レイラが杖を構えながらなるべく、上を見ないようにうつむきながら歩いていた。どうやら、こういう陰険とした場所は嫌いなようだ。そして、その後ろには嫌々ながらもラピスがまだ、ぶつぶつと文句を言いながら歩いていた。
「ま、親父のことだ。どうせ、ろくなことじゃないだろうな」
そう納得して、また歩き出す。右手には剣を握ったままだ。どこから敵がくるか分からないため、いつでも戦える状態にしておかなければならない。実際、先ほど歩いている途中に蛇か人間かよく分からない化け物が身体をまっぷたつに切られて絶命していた。
(テイルかもしれないな、あれをやったのは)
レイオスがその化け物をよく調べていたときに、わずかにだが青い毛が落ちていた。と、なるとテイルしかいない。ただ・・・・・・
(化け物の肉の一部がえぐりとられていたけど、あれって・・・・・・まさかテイルが・・・・・・・・・・・・ないな。テイルでもあれは食べようとはしないだろ)
化け物の身体に、何かでえぐられた様なあとがあったがまさかテイルが腹を空かしているからといって食べることはない・・・・・・・・と思いたい。
「なあ、レイラ。テイルって、何でも食べるのか?」
「へっ?ど、どうしたんですかいきなり」
レイラが驚いてレイオスを見る。
「いや、テイルって何でも食うのかな〜っと。ほら、さっき蛇と人間を混ぜた化け物みたいなモンスターがいただろ?そいつさ、身体の一部がえぐられていたんだけどまさか、テイルが食ったりしたんじゃないか・・・・・・と思って」
レイオスが先ほど発見した化け物ーー詳しくいうとサブトヴァズだが、そのときに発見した傷を見て自分の考えを述べた。すると、
「あ、サブトヴァズのことですか?ま、まさか・・・・・・少ししか面識はありませんけど、テイルさんでもさすがにそういうのは食べないと思いますよ・・・・・・たぶん」
レイラが自分の記憶を探ってテイルがそういうものは食べないと言う。だが、途中から両手で頭を抱えてなにやらうなり始めた。
「・・・・・・・・・・・・あるかもしれないんだな」
「・・・・・・はい」
レイラの話によると、何度か一緒にギルドの依頼で仕事をしたらしいのだが、どうやらそのときにもモンスターの肉を干し肉にしていたらしい。テイルらしいといえばテイルらしいが・・・・・・
「はあ・・・」
そこで、レイオスは考えるのをやめた。これ以上考えると、テイルを見る価値観が全く変わってしまいそうな気がするからだ。
「いったい、いつになったらつくんだよ・・・・・・」
そう、レイオスが愚痴をこぼしたときだった。かすかにだが、前方の方に光が見えだした。レイオス・レイラ・ラピス、三人ともが歩くスピードを早める。
「うわ〜・・・・・・なによ、ここ」
視界が開けた。暗い場所に長時間いたせいか数秒の間、目が眩む。だが、少しずつ目が慣れて周りが見えるようになったとき光の先にあったものをみて、ラピスはため息をついた。それもそのはず。レイオス達の前に広がっていたのは、普通ではありえない場所だった。
「草原・・・・・・!?」
空から降り注ぐ太陽の光を受けて本来は緑色の草野原が金色に光輝いている。信じられない思いで空を見上げると、白い雲が無数に浮かんでいた。
「これは・・・・・・すごいな」
レイオスが感嘆する。
「こ、これって魔法・・・・・・魔法なんですか!?」
しゃがみこんで、両手で草を引っ張ったり縮めたりして本物の草かどうかを確かめながら、レイラが興奮気味になって二人に尋ねた。
「・・・・・・・・・・・・違うと思うわよ。魔法なら、手では触れないはずだもの。それに、魔法でできているならある程度の魔力を感じるはずよ。だけど、ここでは全く感じないわ」
ラピスはその場にしゃがみこむと、草をちぎって魔法かどうか確かめながらレイラの問いに答えた。
「だけど、変だな。この草原はともかく、太陽や雲は魔法じゃないとできないはずなんだが・・・・・・」
レイオスが空を見上げて答える。軽く風が吹き、レイオスの漆黒の髪を揺らす。レイラはその姿に、顔を赤くした。
「そ、そそ、そうなんですか!あ、あの、私、あたりを散策してきますね!」
そういうと、レイラはレイオスに顔を見せないようにしながら遠くへ行ってしまった。レイオスとラピスが首を傾げる。
「どうしたんだ、レイラ」
「私に聞かないでよね。・・・・・・それじゃあ、私も周りを散策してくるわ」
レイオスの問いには答えようとはせず、ラピスもその場から離れあたりを散策しに行った。その場に残ったのは、レイオスただ一人。
「・・・・・・俺も行くか」
むなしい風が吹き、何ともいえない気持ちになりながらレイオスもその場を後にした。
今回から、毎週月曜日に更新したいと思っています。その方が、読者さま方も分かりやすいと思いますので。