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第三話 怪物との戦い

 突然現れた自称美少女を語るラピス。


 あまりに突然のことに、レイオスは対処ができず、相手の攻撃を受け止めたもののバランスを崩し地面に倒れてしまった。


 「っ! お前、何をするんだ。いきなり切りつけてきやがって」


 「うっさいわね! あんたのせいでひどい目にあったのよ。もう少しであの怪物を倒せたかもしれないのに」


 「怪物?」


 (変だな)


 レイオスは怪物と聞いて違和感を感じた。ラスカの森には、確かにモンスターはいるが怪物というほど強大なモンスターはいない。


 「と・に・か・く、あんたがあの怪物を倒しなさいよ!」


 「何でおれが! ってか、話の内容がまだよくわからないんだが!」


 しかし、レイオスの声は森のほうから聞こえた謎の声に、かき消されてしまった。


 その瞬間、森のほうから強烈な殺気を感じた。レイオスは今までこんな殺気を放つモンスターの存在を知らなかった。


 森のほうから少しずつだが何かが歩いてきている。それは歩くたびに木々をなぎ倒し、レイオス達のほうに近づいていた。


音がどんどん大きくなっていく。


 そしてついにそれの姿が現れた。体中の皮膚が黒く、目のあたりだけが不気味に光り、瘴気を体にまとっている。手の先にはどんなものでも切り裂きそうな鋭い爪もあり、口には鋭く黒い歯が何本もある。顔はライオンのようにも見えるが体は犬のような体格をしている。まるでキメラのようだ。


 『ゴオオオオオオオオオオオ・・・・・・』


 「な、なんだこれ!? こんな魔物見たことないぞ。」


 「だから言ったでしょう!怪物だって。もう少しで倒せたかもしれないのに、あんたがじゃまするから」


 確かに、怪物のいたるところに魔術でやられた切り傷がつけられていた。


 しかし、文句を言っている暇はなくなった。怪物の口に魔力が集まり始めたからだ。


 「っ、よけろ!!」


 怪物の口から魔力が放出される。その威力を絶大だった。先ほどまでレイオスとラピスがいた所がざっくりと消えていたのだ。そして、そのまま森をもえぐり取っていった。


 「くっ、森が・・・・」


 先ほどの衝撃でレイオスもラピスもいたるところに傷ができていた。致命傷ではないが早目に回復しないと血があふれて貧血状態になるかも知れない状態だ。


 「こんの、やったわね! 私の顔に傷をつけるなんて。さっきは仕留め損ねたけど、今度はそういかないわ。」


 そういって、ラピスはポーチから鍵を取り出した。恐らく、魔力増幅武器だろうか。鍵の持つ所に魔力石が取り付けられている。


 魔力増幅武器―それは、魔術師たちにとって欠かせないものである。魔力の容量は人それぞれ決まっており、それ以上の容量を超える魔術や魔法は使えない。しかし、魔力石という石を使うことによってその中に事前に魔力を込め使うことができるのだ。


 ラピスがカギを怪物に向ける。そして呪文を唱えた。


 『逆巻け風よ 我にあだなす敵を貫け シルフィード・ランス!!』


 轟!という音ともに、鍵から風の初級魔術、シルフィード・ランスが出て怪物の右手に直撃した。怪物の手が風の力によってえぐり取られていく。


 『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


 右手が崩れたことによって怪物の体制が崩れて、地面にもんどりうった。


 レイオスはこのチャンスを逃さなかった。


 『母なる大地よ わが声に応え 彼の者を捕らえよ  アース・バインド!!』


 レイオスが呪文を唱え終わると、魔力を与えられた地面が盛り上がり怪物の体を覆ってしまった。


 「あんた、なかなかやるじゃない!」


 「そっちこそ!」


 レイオスが走り出す。肩にかけていた剣を抜き取り、怪物の体めがけて切りつけた。


 だが、怪物の体は思っていたより固く致命傷を与えることはできなかった。


 「どきなさい、あんた!」


 ラピスのほうを見ると、呪文の詠唱を終わらせているところだった。レイオスは剣を怪物の体から引き抜くと安全なところまで下がった。


 『飲み込めや嵐 強欲で貪欲な暴君よ 草木も人も風すらもここに在りしすべての物を あなたの礎としてささげよう』


 詠唱が終わる。それと同時に、怪物もレイオスの魔術から抜け出した。


 ラピスの方を向き、怪物が口に魔力を集まる。だが


 「遅いわよ!」


 そういうとラピスは手を怪物に向けた。


 『デストラクション!!』


 嵐が怪物の体を直撃した。嵐が怪物の体を切り裂き、えぐり、そして消し去る。そのあまりにも激しい攻撃に怪物も倒れた。


 「やったあ! 倒したわよ」


 倒れた怪物に向かってラピスは歩きだした。


 「今のは風の上級魔術、デストラクション……あの年で扱えるなんてな」


 (うむ。あのラピスとかいう少女、なかなかな魔力の持ち主だ)


 レイオスがレムエムと念話をしているとラピスが大声でレイオスに叫んだ。


 「どう? 私の実力は。あんたなんかいなくても一人で勝てるのよ、ふふん!」


 「別にお前と競ったわけじゃ…………! そこをどけ、ラピス!」


 「へ、なにを――――」


 『グオオオオオオオ!』


 「きゃああぁ!!」


 怪物が突然起き上がり、腕を振ってラピスをなぎ払った。ラピスの体が宙に浮き、そのまま地面へと叩きつけられる。


 「がっ…………あ、……う……」


 「ラピス!」


 怪物はまだ生きていた。体から黒い血(?)のようなものを流し、両腕を失いながらも怪物は生きていた。


 「くそ、まだこんな力が……ラピス、おいラピス!」


 返事はなかった。死んだかどうかはわからないが、今は構っている暇はなかった。怪物がレイオスに狙いを定めたからだ。


 両腕を失いながらも、体を器用にレイオスのほうへ向け、口に魔力を集める。


 「く、仕方ない。レムエム、おれの詠唱が終わるまで足止めしてくれ」


 『うむ。まかせろ』


 怪物の前に、レムエムがどこからともなく現れる。そして、足に力をためると一気に駆けだした。


 『スラストファング!』


 前足の爪が光り輝き怪物を切り裂く。怪物の口に集まっていた魔力が消える。だが怪物は倒れなかった。


 『ちい、タフな奴め』


 「まかせたぞ、レムエム」


 『ああ、それよりレイオスも早く詠唱を完成せろ!』


 「ああ」


 そういうとレイオスは、剣をを地面に突き立てた。


 『火をあげろ   (はし)り抜けろ炎』


 怪物がまた、口に魔力を集めた。先ほどより早い。


 『ええい! 大条際の悪い奴め』


 怪物から魔力が放たれた。怪物から放たれた魔力はレイオスに向かっていく。


 『一切を灰塵(かいじん)と化せて』


 それでもレイオスは動じなかった。


 『やらせるか! 我につき従うすべての光の聖霊よ わが命に従いて我が汝を守れ 

  レイジング・フォース!』


 レイオスの周りに光の防御膜ができる。


 そして、怪物の魔力が光の防御膜に衝突した。とてつもない風圧が起こる。だが、光の力で作られた防御膜は崩れることはなかった。


 「レムエム、またせた」


 『ふ、遅いぞ』


 ついに、魔術が発動体制に入った。それと同時に、突き刺してあった剣が赤く燃え上がる。


 「これで終わりだ、  我が()くべき覇道を示せ 」


 そして、剣を取り怪物に投げつけた。


 怪物の体に剣が突き刺さる。それと同時にレイオスは最後の言葉を言った。


 『ファイア・ウェイ』


 その瞬間、怪物の突き刺さっていた剣からレイオスによって呼び出された灼熱の火柱が立ち上った。一瞬にして怪物の体が火柱に飲み込まれていく。怪物が断末魔の叫びをあげた。灼熱の炎によって体が焼けていく。その叫び声が終ったあとには、怪物の体はひと固まりの炭とかしていた。風が吹き、怪物の体はチリと化し跡形もなく消え去った。


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