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第二十四話 決闘と歌詞泥棒

 「僕は…………何事にも一番でなければいけないんだああぁぁ!!」


 「意味分かんないこと言うな!」


 アルティスがレイピアのグリップをきつく握りしめ、踏み込む。レイオスはそれをよけるために、後ろに飛んだ。


 『 母なる大地よ 我が声に答え彼の者を捕らえよ アース・バインド!』


 剣を地面に突き刺し、詠唱する。すると、魔力を与えられた地面が盛り上がりアルティスを包み込もうとした。


 『 我と契約せし紅蓮の炎をまとう者よ 今我が呼びかけにこたえその姿を現せ


    すべてを焼き尽くす業火の蛇  』


 アルティスがレイピアで空中に陣を描き、詠唱を始める。だが、レイオスの魔術のほうが数秒早くアルティスを包み込んだ。


 「やったか?」


 『クロル・オエ・アビュロス!』


 声が聞こえた瞬間、アルティスを包み込んでいた土の塊が破壊された。そして、中から一筋の炎が現れた。それはとぐろを巻き、レイオスのほうを見つめている。


 「…………蛇?」


 アルティスが召喚したのは、体に炎をまとった巨大な蛇だった。体は赤いうろこでおおわれ、口にはとても鋭い牙がある。


 「さあ、行け!僕の次に美しい使い魔、アビュロスよ。レイオスを飲み込め!」


 『シャアアアアァァァァ!!』


 アビュロスは声を上げると、レイオスに向かって突進した。体を炎で包みこみ、回転する。


 「くそっ、精霊に美しいとかつけるなよな! 我の体に流れる光の王の血よ 悪しき力から我を守れ 光の王 レイオス・ウォーリアが命ずる アディキアー・テレイティム!」


 光の壁がレイオスの前に現れる。


 『シャアアアァァァ!!』


 アビュロスが光の壁と激突する。あまりの衝撃に風圧が起こる。


 「くっ!」


 光の壁にひびが入る。どうやら、アビュロスの方が力が強いようだ。アビュロスから先ほどより強く炎が現れる。その瞬間、光の壁は粉々に砕け散ってしまった。


 「ちぃっ!」


 剣を抜き、左のほうへ飛ぶ。


 「僕がいることを忘れるな!」


 アルティスが蛇の後ろから現れた。レイピアに蛇の炎を付加させ、無数の突きを繰り出す。


 「くらえ!百あるうちの華麗なる必殺技 ファングエルテリオン・クヴェリックスゥゥゥ!」


 「技名、長っ!ってか、百もあるのかよ!」


 アルティスの言葉に突っ込みながら、その技を剣ではじき返す。


 (このファングエルテリオンなんとかって技、見た目は派手だが威力はそうでもない。これなら…………)


 「ふううぅぅっ!」


 剣に魔力を込める。すると、今まで透明だった刀身が光り輝き始めた。そして、アルティスのレイピアを弾き剣を両手で持ったあと、地面に突き刺した。


 「行くぞ、 光よ その力を以て裁きの剣とならん エンディミオス・オルカクローグ!」


 レイオスの周りに陣が現れる。その陣は、一瞬消えたかと思うとアルティスの足元に現れた。そして、アルティスを取り囲むように光の壁が出現した。


 「な、なんだこれはっ!?」

 

 光の壁を壊そうと、レイピアで突いたりアビュロスを突進させて壊そうとする。だが、光の壁は予想より硬く壊れることはなかった。


 「続けていくぞ! 光よ 断罪の場に現れし愚者の罪を裁きたまえ カディール・バルディシアァァ!!」


  瞬間、不思議な模様が施された光の剣が地面から3本現れアルティスの首から数センチも離れていないところに止まった。アルティスがそこから抜け出そうと、レイピアに力を込めるるが、レイオスが魔力を込め光の剣を操作し剣を伸ばすと諦めたようにレイピアを手放した。


 手放したレイピアが地面におち空しい音を立てる。それは、敗北を知らせる合図でもあった。


 「…………気が済んだか?」


 剣を抜く。すると、アルティスを囲んでいた光の剣が消え去った。


 「…………僕は、僕はっ!守らなきゃ――――」


 「レイオ――――ス!」


 「いけっ、ヘビュッ!」


 突然だった。一瞬風が吹いたかと思うと、アルティスは顔面に足跡をつけその場に倒れていた。自称美青年の顔も、凹んでいれば見る影もない。


 「あんたでしょあんたでしょあんたでしょあんたでしょあんたでしょおおおおおおおおおぉぉ!!」

 

 「ちょっ、待っ、へぶっ、何がだごふっ、殴んげふっ、も……やめ」


 現われたのはラピスだった。いきなりレイオスにつかみかかったかと思うと今度は殴り始める。突然のことで、レイオスは対処ができず防御壁をかける暇もなかった。と、いうより突然現れて殴ってくるのは普通はあり得ないことだ。

 

 「あんたが盗んだんでしょ!ほら、早く白状しなさいよ。早く!」


 「ラピス、そろそろやめないと死んじゃうよ?レイオスが」


 「そ、そうですよ!レイオスさんを放してください」


 アシルとレイラにいわれ、ようやくラピスは落ち着き始めた。だが、まだ鼻息は荒く鬼のような形相だ。


 「……ふ〜、わかったわ。それじゃあ、優しく言うわよ。レイオス、あんた私の私物を盗んだでしょ!」


 「…………唐突だな。というか、何を盗まれたんだ?ボギュアッ!」


 「どの口が言ってるのかしら?この口、この口?この口ね!」


 「だから鳩尾だけを殴るのはやめろーー!」


 「ラピス、何を盗まれたの?後、レイオスも下着を盗んだんなら白状しちゃいなよ」


 「盗んでねえよ!ってか、何で下着なんだよ」


 「れ、レイオスさんってそんな人だったんですか!?」


 「レイらもアシルにだまされるな!」


 「…………盗まれたのは――――」


 「は?」


 一瞬の沈黙、そして…………







 「歌詞よ」






 「……お菓子?」


 「アシル、殺すわよ」


 「貸しですか?」


 「何を貸すのよ」


 「可笑しいな〜、なんちって」


 「テイル、死ね。シルフィード・ランス」


 「ぎゃあああああああああ!!」


 「何でテイルが、っとそれよりあの歌のことか?」


 「そうよ、その歌詞が盗まれたのよ、あんたにっ!」


 

 テイルにシルフィード・ランスを連発しながら、ラピスはレイオスのほうを指差した。


 「だから俺じゃないって」


 「じゃあ、誰なのよ。校長とあんた以外、知ってる人いないんだから」


 「だから俺じゃない――――」


 その時、耳をつんざくような音が聞こえた。その音は、すぐに静まったがそのすぐあとに聞き覚えのある声が聞こえた。


 『あーあー、マイクのテスト中ですう〜。皆さん聞こえますか〜?」


 校長の声だった。どうやら魔法で拡声器を作り話しているのだろう。


 『突然ですが、事件ですよ〜。この学園内に泥棒が侵入しました〜。どうやって入ったかは教えられませんが、皆さん見つけたら捕まえてくださ〜い。特徴は……ありませ〜ん』


 『特徴を教えろよ』その瞬間、全校生徒が同時にこう思ったことだろう。それほど、校長は言ったことは突然だった。


 「ラピス、これじゃないのか?泥棒って」


 「…………あ〜、そ、そうかもね〜」


 「と、いうことは俺は何の罪もないのに殴られたってことだよな」


 「うっ!」


 「ラ〜ピ〜ス〜」


 「う、うるさいわね!ほら、早く泥棒を捕まえに行くわよ!」


 そう言って、ラピスはその場から逃げるように居なくなった。残ったのは、体中に(主にみぞおち)あざができたレイオスと、アシルとレイラ、そしてラピスに顔面を蹴られ気絶しているアルティスと、肉の塊のように見えるテイル。


 「……しかたない、行くか」


 「そうだね」


 「あの、あれは?」


 そう言って、アルティスと肉の塊を指差す。


 「別にいいだろ、あれ」


 「そんなことより早く行こうよ」


 「そ、そうですね」


 そう言って、レイオスたちは泥棒と捕まえるためにその場を後にした。





次回は、学園に紛れ込んだ泥棒を探すちょっとした推理物になっております。

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