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第二十三話 その男の名は……

 レイオス達がいるテラスの近くにある席で不穏な空気を漂わせるものたちがいた。


 「で、どんな感じだ?」


 「少々お待ちください。…………なっ!隊長、あの男、レイラさんのお弁当を食べています!」


 「な、なに!?それは本当か」


 「はい、間違いありません」


 周りにいるものたちも驚きを隠せない様子で、隊長と呼ばれた男の周りをうろつき始めた。


 「仕方ない……。あそこまで、我らのレイラさんを独り占めするとは…………。おい、次の授業は確か――」


 「はい、体術の授業です」


 「よし」


 すると、隊長と呼ばれた男は立ち上がり周りの者たちを見渡した。


 「これより、レイオス抹殺計画を行う。皆、心してかかれ」


 「了解!」


 返事をすると男たちは一人、また一人とその場から居なくなっていった。その場に残ったのは、隊長ただ一人。


 「レイオス、目に物見せてくれるわ。そして、レイラさん。レイオスを倒して私を…………ぐふ、ぐふふふふふふふ」


 不気味に笑いながら、隊長もその場から立ち去った。周りにいる生徒たちから、不審な目を向けられながらだが。


 







 





 無数のゴム弾がレイオスめがけて射出される。レイオスは、体を地面に伏せそれをやり過ごし体制を低くしたまま前に飛び出した。


 「甘い!」


 弾を詰め替えたアシルが、自分自身に向かってくるレイオスに銃口を向け撃つ。だが、レイオスは剣を地面に突き刺すと柄頭を片手でつかみ体を浮き上がらせた。


 「なっ!?」


 予想もしなかった動きに、アシルの動きが一瞬止まる。その瞬間を見逃さずに、レイオスはそのままアシルのほうへ体を向け上段から蹴りを放った。


 「くっ!」


 よけきれないと悟ったアシルは、両手に持った二つの銃を盾代りにしてレイオスの足蹴りを受け止める。


 「まだまだ!」


 銃を足場にして足に力を込める。すると、レイオスの体が浮き上がりその重量に耐えられなくなったアシルが体勢を崩した。レイオスがそのまま剣を引き抜いてアシルの頭上へ剣を振り下ろす。


 「ぎ、ギブアップ!」


 振り下ろされた剣の切先が、顔の2センチほど手前で止まる。いくら、刃を潰した練習用の剣だとしても勢いをつけて振り下ろされたら顔面が大惨事になるところだ。


 「そこまで!この勝負、レイオス・ウォーリアの勝利」


 審判の生徒が、レイオスの勝利を告げる。すると、今まで見ていた生徒たちが一斉に拍手を送った。


 「いや〜、レイオス強いや」


 「アシルもなかなかやるな」


 シャイレストの塔の外側にある練習場に、レイオス達は来ていた。ここでは、主に体を動かす体術や護身術などを習うために作られたところだ。特に、シャイレストの生徒達は魔術や魔法より体術が得意なものたちが多いため、他の所より多めに体術の授業を取り入れている。そして、レイオスとアシルが今まで行っていたものはペアを組んでその者同士自分の得意な武器を使い実際の戦闘と同じように戦うというものだった。


 「レイオスの動きが変則的で、どこからどう来るのか分からなかったよ。あれは自己流なの?」


 「ああ、自己流というよりある動物の動きを真似していたらああいう戦い方になったんだけどな」


 「ふ〜ん、あ、次の試合が始まるよ。早くよけないと」


 「そうだな」


 次の試合を見るため、アシルとレイオスは見学している生徒たちの中へはいってゆく。その時、目の前にレイオスの行き先を阻むように一人の男が現れた。


 「やあ、レイオス君。すごかったよ、君たちの戦い」


 「あ、どうも」


 突然話しかけてきた男を、レイオスはまじまじと見た。


 髪の色は金髪、顔は中の上。服装は、貴族が着るようなきらびやかな服だ。胸にはポケットが付いており、そこには一輪の赤いバラが入っている。


 「えっと、ところであんた誰?」


 すると、金髪の男は前髪を軽く掻きあげた。


 「僕の名前は、アルティス・レインパルド。世界が嫉妬する世界一の美青年さ」


 美青年と言っている時点で、この男終わってるな。そう思ったレイオスだった。


 「どうかな、僕と手合わせ願える――」


 「アシル〜、レイラのところに行こう」


 「わかった〜」


 「って、うぉい!」


 自分自身のことを美青年というアルティスを放っておき、レイラがいるところまでいこうとする。が、


 「ま、待ちたまえ!僕が話しかけているというのに無粋な男だな」


 またもや、自称美青年、アルティスがレイオス達の前に立ちはだかった。どうやらお怒りのご様子で、鼻息を荒くしている。


 「なんなんだよ、一体。俺は自称、美青年にいちいちかまっている暇はないんだが」


 「なっ!」


 レイオスは軽くため息をついて、アルティスをそこから追い払うように手で払いのけた。


 「レイオス、失礼だよ。そういう時は、もっと優しく言わないと、こういう風に。アルティス君、邪魔だからどけてくれないかな。後、いまどき自分のことを美青年というのはどうかと思うよ。その胸のバラも、かっこ悪いし」


 「ななななななななっ!」


 「アシル、俺よりひどいぞ、それ」


 「そうかな、優しく言ったつもりだけど」


 「そ、そうですよ、アシルさん」


 レイオス達のやり取りを聞いていたのか、レイラがアルティスをかばうように話に割って入った。


 「れ、レイラさん」


 アルティスの顔が、笑顔になる。


 「た、確かにアルティスさんはキザで自己中心的でナルシルトで私は嫌いな人ですけど、そこまで言ったら可哀そうですよ」


 「ふぐあっ!」


 言葉とは時に、身体的な傷よりも深刻なダメージを与えるものである。


 「レイラ、それ全然フォローになってない」


 「うん」


 「あっ!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 あわてて、頭を下げ謝るレイラ。だが時すでに遅く、アルティスは石像のように硬直していた。顔の表情は言うまい。


 「あちゃ〜、固まってるよ。仕方ないな、…………放っておこう」


 「ええっ!?」


 「そうだね。いちいちかまってあげるのもめんどくさいしね」


 「アシルさん、そんなキャラでしたっけ!?」


 硬直したままのアルティスを放っておき、レイオスとアシルはその場を後にしようとした。レイラに、次の試合を見に行こうと肩に手をかける。


 だが、その行動がアルティスの逆鱗に触れた。

 

 「…………レイラさんに、気安く触るな」


 そういうと同時に、アルティスは腰に差してあったレイピアをレイオスに向けた。練習用ではなく、研ぎ澄まされた本物の剣を。


 「…………何の真似だよ」


 突きつけられたレイピアと突きつけているアルティスを見る。鼻息は荒く、目は焦点があっていない。


 「レイラさんに触れるなと言ってるんだ。レイラさんは、レイラさんは…………お前のような田舎者が触れていい存在ではないんだよ!」


 「理由になってないぞ」


 そう反論した瞬間、アルティスが一歩踏み込んだ。


 「危なっ!」


 レイオスが先ほどまでいた場所にレイピアがあった。おそらく、避けるのが遅れていればレイオスは重傷を負っていたことだろう。


 「あ、あ、あの、アルティスさん?どうかしたんですか」


 レイラが心配そうにアルティスに駆け寄る。だが、アシルがそれを引き止めた。今のアルティスにうかつに近寄ったら何をするか分からないと思ったからだ。


 「レイラちゃん親衛隊隊長、アルティス・レインパルド様がお前を完膚なきまでに叩きのめしてくれるわ!!」


 「いきなりで何が、何だか分からないが、そっちがその気なら…………」


 レイオスも腰に差してあった剣を抜き、構える。


 



 かくして、レイラをめぐる争いがいま始まろうとしていた!!











 「あ、あの、親衛隊ってなんですか?」


 「簡単にいえば、ストーカーの集まりだよ」







 続く!

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