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第十九話 初めての授業〜前編〜

 レイディアント学園に通う学生たちは、その半数がそれぞれの塔で暮らしている。塔の中は八つの階層で成り立っており、階ごとに違う施設などはあれども、二階と四階と七階だけは二階が教室、四階が光と闇の塔へ行く通路がある場所、七階が学生たちが生活する場所になっていた。


 ほかの階は、会議室があれば食堂もあり、なぜあるのか分からないが娯楽室などの施設もある。ただし、生徒たちの目撃情報によるとほぼ毎日、校長がこの娯楽室に入り込んでいるとかいないとか……


 ラピス・テイルも塔に住んでおり、ラピスが風の塔、テイルが地の塔に住んでいた。レイオスもこの塔に住んでいるがレイオスの場合、属性が分かっていないので(第十話参照)現在、光と闇の塔にある使われなくなった部屋を使っていた。













 「レイオース、学校に行く時間だよ」


 光と闇の塔にあるいくつかある寝室の扉の前で、アシルは扉をたたいた。


 …………


 「反応なし、か……」


 レイオスの部屋ってここでいいのかな? と思いつつ、アシルはドアノブをゆっくりまわした。ギギィッというドア独特の音がする。


 (あ、開いた)


 そぉ〜っと、顔だけドアから出し中を確かめる。


 「中は結構広いんだ」


 ソファーやテーブル、タンスに化粧台など一通りの生活用品がそろっている。窓はレイオスがやったのか元からそうだったのかは分からないが魔法で色付けされたガラスが一定時間ごとに色を変えていた。そして、ソファーの上に白い物体がある。これって、枕か何かかな?


 「レイオス、学校に遅れるよ」


 一つ、二つとドアを開けレイオスがいないか確認する。だが、どの場所にもレイオスはいなかった。トイレ(いたらどう反応すればいいか困るけど)、浴室(いるわけないよね。なんか、ちょっと汚いし)、寝室 (ここにいなかったらどこにいるんだろう)、どこにもいない。


 「う〜ん、困ったな。レイオスにとって初めての授業なのに」


 本当はアシル自身も時間がないのだが、ラピスに旅の話を聞くと『レイオスって、朝なかなか起きないのよね〜。一つも、頭から血を流してたわ』と言っていた。頭から血が流れるのはよくわからないが(本当は一大事なんだけど)、レイオスは朝はあまり起きられないということがわかったので、こうしておこしに来たのだ。


 ちなみに、アシルはラピス達に一緒に起こしに行かないと誘ったのだが


 『めんどくさい』と、ラピス。


 『俺、男の寝顔に興味ねえんだよな』と、テイル。


 ラピスの意見は分かるけど、テイルの意見は女ならおこしに行くのかなとアシルは思った。


 「どうしよう、何で寝室にもいないんだろ」


 あきらめようかな、そう思っていると


 「んむ〜」


 「はい?」


 突如、リビングのほうから変な声が聞こえた。何かよくわからないが、リビングまで行く。すると、もぞもぞとソファーの上にあった白い物体が動いていた。


 「なに、これ?」


 枕、ではなかったらしい。なぜかというと、動いている上に中から、んむ〜という声がするのだ。


 アシルは恐る恐る近づいてみた。すると、


 「ぷはっ!」


 「うわあっ!」


 突然、白い物体からレイオスの顔がにょきっと生えてきた。


 「な、なななな」


 「……ん?アシルか、おはよう」


 「あ、おはよう……じゃなくて!何で、そんな所にいるの?」


 「ん?ああ、これの事か。ちょっと待っててくれ」


 そういうとレイオスはふぁ〜っ、とあくびをすると眠そうな顔をしながらも立ち上がった。手や胴体、足などが白い物体からにょきにょきときのこみたいに出てくる。……すごく不気味だ。


 「で、何の用?」


 「え、あ、うん。もう、学校に行く時間だけど支度しなくていいの?」


 「え?…………あ、本当だ!」


 壁に掛けてあった時計を見て、ようやく今の状況を把握したレイオス。やばいやばいやばいと言いながらすごいスピードで寝室に行き、ドッカンバッタンと音がしたかと思うと、制服に着替えたレイオスが戻ってきた。


 「起きろ、レムエム!」


 そう言って、白い謎の物体を蹴る。すると、白い謎の物体はポーンと空中に浮くとそのまま壁に当り、ゲベラァッという変な声(?)を出して床に落ちた。


 「よし!あとは勉強道具だけだな」


 『いつつっ……、レイオス! よし、ではない! 我を蹴るとは何事だ』


 「勉強道具、勉強道具〜っと、お、あった」


 『無視するな!』


 「ねえ、レイオス、その犬みたいな動物、何?」


 『なっ!い、犬などではない。オオカミだ。オ・オ・カ・ミ!』


 「よし、準備完了だ。アシル、いかないのか?」


 『だから貴様は無視するなと言っているだろうが』


 「あ、わかった」


 『だから、無視するなと――』


 「それじゃ、行ってきます」


 「え〜と、オオカミ君いや、さんかな?まあ、よくわからないけどがんばってね」


 『何をだ!?』


 アシルの答えを聞く前に、レイオス達は出て行ってしまった。残っているのは、ぽつんと一匹だけ残ったレムエム一人。窓は開いていないはずなのだが、ひゅうぅと風の音がする。

 

 『…………無視、しないでくれ』


 一人さみしく、レムエムはそうつぶやいた。

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