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第十八話 お酒の飲みすぎには注意しよう

 「到着っと」

 

 「お〜、やっと来たか――って、何でラピスだけなんだ?そしてそのゴミ袋何?」


 ベランダから全力疾走で来ること、約10分。ラピスはシャイレストの塔まで来ていた。ここには、アシルの部屋があり、ここでレイオスの歓迎会をしようというアシルの提案でレイオスをここに連れてきたのだ。が、


 「えっ?あ!やっちゃった…………」


 「ラピス、もしかして無理やり引きずってきたんじゃないだろうね」


 体中傷だらけになり、ほこりなどでレイオスがごみ袋のようになっていた。


 …………フェヴェリオスの時より、重症な気がする。


 そう思いながら、レイオスは自分に回復魔法をかけ始めた。


 「ま、まあ、命に別状はないんだし別にいいじゃない、生きてるんだから。だからあんた達も気にしなくていいわよ、生きてるんだから」


 「なんで二回言ったんだ?」


 「大事なことだから二回言ったのよ。文句ある?」


 「ない」


 「僕もないよ。それより、早く始めようよ。せっかく、いろいろ料理を作ったのに」


 そういうとアシルは、レイオスを奥へと案内した。奥に行くとなかなか広いリビングに出た。中央にはテーブルがあり、テーブルの上にはいろいろな料理が所狭しと並んでいた。


 「すごいな……、これ君が作ったのか?」


 「まあね。あ、自己紹介を忘れてたね。僕の名前はアシル・ホーネンス、16歳だよ」


 「おっ、じゃあ俺も自己紹介しとくかな。俺の名前はテイル・ロスウェー、17歳だ。テイルって呼び捨てしてもかまわないぜ」


 「よろしく、アシル、テイル、俺の名前はレイオス・ウォーリア。レイオスって呼んでくれ」


 ひと通りの自己紹介が終わる。すると、ラピスがどこから持ってきたのかある飲み物を取り出した。


 「ふふふふ、パーティーといったらこれがないと始まらないでしょ」


 「ラピス、くだらないことを聞くけどそれ何?」


 「お・さ・け☆」


 「やっぱり……」


 ラベルをみると、『必殺!人倒し』と書いてある。すごいネーミング……、ちなみにどこの国でもそうだが、18歳まではお酒を飲めない決まりになっている。つまり、ラピス達は飲んではいけないお子様たちなのだ。


 「よーし、では乾杯だ!」


 意気揚々とテイルはグラスに人倒しを注ぎ始めた。


 17歳は飲んだらいけないだろ。


 そうレイオスは思ったが、テイルに無理やりお酒を注がされる。お酒の色がどす黒いのは気のせいだろうか。


 「アシルも飲めよ、ほら!ラピスも飲むだろ」


 「ふ、甘いわね。私はこれで飲むわよ」


 すると、ラピスはテイルが持っていたお酒を奪った。どうやら、ビンで飲むらしい。


 「まじかよ」


 と、テイル。そういう本人も特大のジョッキにお酒がなみなみと注がれているのは言うまでもない。


 「二日酔いにならないように気をつけてよ」


 と、アシル。アシルは普通のグラスに注がれている。


 「お酒はあんまり好きじゃないんだけどな」


 (お前は、チュリージュースしか飲まんからな)


 と、レイオスとレムエム。レムエムは姿を消している。ちなみにチュリージュースとは、チュリーの木になる一つの枝に実が二つ付いている果物でそれを絞って作られるものがチュリージュースである。チュリージュースはその甘さゆえ子供からは絶大な支持を得ているが、15歳以上の人たちからは甘すぎるという意見が多かった。ちなみにレイオスは17歳だがチュリージュースはとても好きな飲み物なのだ。


 (うっさい!チュリージュースは神が作った最高の飲みモノなんだよ)


 (そのわりには、お酒の量が何気に多いような気がするが)


 レムエムが言うとおり、レイオスのグラスはテイル程ではないものの中ジョッキぐらいの大きさがあり、それに人倒しがなみなみと注がれていた。


 (まあ、あれだ。疲れをとるのはお酒がいいって聞いたから)


 (そういうことにしておくか。ただ、飲みすぎて他人に迷惑をかけないようにな)


 (わかってるよ)


 「ほら、早く乾杯するわよ!そこで独り言なんか言ってないで、早くグラスを持ちなさいよ」


 「ぐ、ぐるじい……」


 ぎゅぅぅぅっと、レイオスの首を絞める。まだ何も飲んでいないはずなのに、酔っ払っているように見えるのは気のせいだろうか。


 「わ、わかったから放してくれ」


 「しょうがないわね。…………みんなグラスもった?持ったわね。それじゃあ、レイオスの入学を歓迎して……乾杯!」


 「乾杯!」


 「乾杯」


 「乾杯……てか、俺の歓迎会だったのか」


 「あれ、知らなかったの?」


 「ああ、ただいきなりラピスに連れてこられたもんで」


 「はははは、しょうがないよあれは。昔からそうだし」


 「昔からって、ラピスの事知ってるのか?」


 「うん、まあね。ラピスがこっちに来た時からずっとラピスと遊んでたからね」


 「ふうん」


 「ほらほら、飲みなさいよ〜!どんどん飲め〜!」


 「おら〜、やってやるぜ!秘技、逆立ち飲み!」


 「…………出来上がるのが早すぎないか?」


 「…………気にしたら負けだよ」


 「そうだな」


 「僕たちもそろそろ、飲もうよ。あんな風にならない程度に」


 アシルがグラスを持つ。レイオスもアシルと同じようにグラスをもった。


 「それじゃあ」


 「乾杯」


 カランと、グラスをぶつける。そして、レイオスたちも飲み始めた。













          〜一時間後〜

 

 「それでは、切り込み特攻隊長テイル・ロスウェー、歌います!」


 「まってまひた!」


 「その時さ、ラピスが後ろからシルフィードランスをぶつけてきたんだよ。そのせいで、服が泥だらけになってさ。家に帰ったら母さんにこっぴどく怒られてひどい目にあったんだよ」

 

 「災難だったな、アシル。俺も、あいつのせいで寿命が10年ぐらいは縮んだ気がするよ」


 ぼえ〜っと、歌でも何でもないただの叫び声がアシルの部屋で響く。ラピスはラピスで、10本目の人倒しを飲みながら、テイルの歌を聴いている。ろれつが回らなくなっているのか、言葉がおかしくなっている。アシルとレイオスはというと、おつまみを食べながらラピスにひどい目にあった時の話をしていた。


 (むう、すごいことになってしまっているな)


 散歩から帰ってきたレムエムが、その光景を見て思った。部屋は散乱し、ひどい状態になっている。


 「レヒオス、あんひゃ何でわたしのはなしにゃんかしちぇんのよ〜。ひょかもなく、そんなことしていいのかしら〜」


 「うるさいな。今、アシルと大事な話してるんだから邪魔しないでくれよ」


 「うっひゃいでふって〜、わひゃしにそんにゃこといっていいにょかしら」


 そういうと、ラピスは呪文を唱えシルフィードランスを放った。


 「じゃますんなよ」


 レイオスが酔っ払いながらも、防御壁をかけて防御する。どうやら、魔力はもう戻ってきているようだ。


 「お、やるわね。ひょうぶよ!」


 「望むところだ!」


 酔っ払ったラピスとレイオスの戦いが始まった。テイルとアシルはそれを止めようとせず、それどころかテイルはいまだに歌を歌い続け、アシルは隅っこで何やらぶつぶつ言っている。


 (…………散歩に行くか)


 あまりの光景にレムエムはそこから避難した。








 その後、パーティーは朝まで続けられ、アシルを除く三人が二日酔いになったという。


 

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