第十一話 闇を統べる魔女
「うわああああああぁぁぁ!」
「きゃあああああぁぁぁぁ!」
レイオス達は暗闇の中を落ちていた。ひゅうううううという風を切る音だけが聞こえる。
『レイオス!!』
レムエムが叫ぶ。
「わかってる!」
レイオスは答え返すと、右手を暗闇のほうへ向けた。
「ホーリーエクセキューション・バシレウスソード!!」
右手が光り輝き、祭壇で出した光の剣が姿を現す。
「伸びろ!」
すると、レイオスの声と共に光の剣の刀身が伸び暗闇に向かっていった。
ドガッ!
何かに刺さる音がする。それと同時にレイオスの降下が止まった。
「我が身に宿る風の息吹よ 悠久を奔る風を従え いま此処に われを守る風とならん エディションゲイル!!」
ぶわっという音と共に、風が吹き荒れる。その風はラピスの体を包み込み、宙に浮かせた。
「ふう、危なかったわ・・・・・・・それよりここはどこ?大広間の地下にこんなところがあるなんて」
「さあな」
「さあなって、なによ、その言い方!」
ギャーギャーとわめくラピスをよそに、レイオスは考えていた。
(どういうことだ?学園の地下にこんなものがあるとは。バシレウスで照らさているのにこの暗さ・・・何か魔法の類を使っているのかもしれない。それに、この下からくる純粋な気配・・・魔物ではないな。ということは、人間?いや、人間にこんな純粋な気配はしないし・・・・)
「ああ、もうわけがわからん」
くしゃくしゃっと髪を掻くと、レイオスはレムエムに向かって話しかけた。
(レムエム、ここがどこだかわかるか?)
(いいや、我も始めて見るぞ。こんなところは)
やっぱりか、とレイオスはうなだれた。
(これからどうする?)
(ここで、立ち往生していたも何も始まるまい。いっそのこと、下へ降りてみたらどうだ)
下を見てみる。暗くてよく分からないが、やはりあの純粋な気配がする。いやな感じというわけではないが、危険なことに変わりはない。
(危険かもしれないぞ)
(こんなとこで何もしていないよりましだろう。それに、小娘がこんなとこでじっとしているような輩には見えんがな)
ラピスのほうを見る。下をのぞきこみ、いけるかな? 風魔法でゆっくりと降下すればなどと独り言を言っている。
(それもそうだな)
レムエムとの会話を切り、下へ行く準備をする。
「ん、下へ行くの?」
レイオスの動きに気付いたラピスが話しかけた。
「ああ。ここで待っているより、下に行ったほうが何か得られるかもしれないからな」
そういうと、レイオスはバシレウスを消した。ヒュウッという音とともにまた暗闇へと落ち始める。ラピスも、風魔法を操りながら降下を始めるのがレイオスの目からみえた。
一方、大広間では祭壇を壊した怪物が姿を現していた。
『ギュオオオオオオアアアアアアアアアアア!!』
怪物の咆哮に、生徒達の精霊が固まる。生徒たち自身も、あまりに急なことに対応できず動けずにいた。
『ギュオオオオ・・』
怪物が動き始める。その瞬間、生徒たちの中から二人の少年が怪物の前に躍り出た。
「へ、選別式のせいで体を動かせずイライラしてたところだ。ぶっ放してやるぜ」
背中に大剣を背負って現れたのは、テイル。背中に背負っていた大剣を抜き、構えて戦闘態勢に入っている。
「まったく、少しは落ち着きなよ。毎回毎回、そうやって失敗してるんだからさ」
腰にしまっていた銃を二丁とりだし、テイルをなだめているのはアシル。アシルも、テイルと同じく怪物に銃を構え戦闘態勢に入った。
「こ、こら!容易に前に出るんじゃない。ここは我々先生たちに任せるんだ!『いやだね』なっ?」
あからさまにいやな顔をしながら、テイルはいった。
「先生、足震えてんじゃん。そんなんで任せろって言われても、信じられないね」
「し、しかし、生徒だけでどうにかできる問題じゃないぞ!」
「ま、見ててくださいよ。ぱぱっと終わらせますんで」
そう言って、テイルは怪物に向かって走り出した。
「すいません、先生。だけど、大丈夫ですよ。僕が付いてますんで」
そう言って、アシルも怪物に向かって走り出した。
―光と闇の塔 地下―
降下し始めてから、数分。下のほうが少し明るくなりだした。どうやら、あそこが最下層らしい。
「ラピス、そろそろ着くぞ。何が起こるか分からないから気を抜くなよ」
レイオスがそういうと、ラピスはふん、と鼻を鳴らした。
「誰に向かって口きいてるのよ。そんなこと、心配されなくてもわかってるわ」
「はいはい」
地面が見えた。
「伸びろ」
右手からバジレウスが現れ、地面に向かって伸びていく。
ガスッ!
バジレウスが地面に突き刺さる。それと同時に、レイオスはバジレウスに少しずつ縮むよう命令した。
そこは通路だった。大理石の柱が一直線に並び、松明がともっている。周りは薄暗く、通路の奥に不思議な光が輝いていた。
「よいしょっと」
ラピスも地面に着地する。そして、周りを見渡し、ため息をついた。
「これは・・・・でかいわね。それにかなり古い時代の建造物だわ」
レイオスとラピスは、周りを見ながら不思議な光がある方向へ歩いて行った。
「ねえ、レイオス。ここ、なに?色んな文字がいたるところに刻まれてるけど読めないのよね」
「・・・・・・」
「ねえ、聞いてる?ねえってば!」
レイオスはラピスの言葉を聞いてなかった。いや、聞けなかった。それ以上のことが、レイオスの頭を埋め尽くしていたからだ。
(レムエム、この文字・・・)
(ああ、間違いない・・・・この文字、これは・・・)
「よく来たねえ、『光の王』よ。いや、ここではレイオス・ウォーリアと呼んだ方がいいのかね」
突然だった。
いつの間にか、レイオスとラピスの前に黒い鳥を肩に止まらせ、真っ黒なフードをかぶった人が現れた。
あまりに突然なことに、レイオス達が固まる。だが、黒い鳥を従えた人はお構いなしにしゃべり続けた。
「ずっと待ってたんだよ、レイオス。選別式が早く始まらないかと、ずっとそわそわしててねえ。いやはや、少々手荒な方法で連れてきてしまったが許してくれ。悪気はないんだよ、悪気はねえ」
黒い鳥を従えた人は、そこで話を区切りレイオスを見つめた。顔が見えないが、敵意がないことは気配からわかる。
「お前、誰だ?」
レイオスは聞いた。
「私かい?私はね・・・・・・」
そういうと、黒い鳥を従えた人はフードを脱いだ。
「私はね、数千年も前から生きている者―フェヴェオリス。人々から忌み嫌われる、魔女さ」
申し訳ありませんが、今回のローン・ウルフ講座はお休みさせていただきます。次回は必ず載せますので、次回もぜひ見てください。