スタートレックで見た事がまさか現実に起こるのを見られるとは。
スタートレックで見たことを思い出すような出来事が起こった。しかし、プログラミング知識欠如が誤解を招いているようだ。
まさかスタートレックで見た未来がこんなに早く現実になろうとは思わなかった。将棋の電王戦(コンピューターの将棋ソフトと人間のプロ棋士の対決)で起こった出来事である。
この対局でコンピューターのプログラムは、人間のプロ棋士が決めた勝負手が人間から見てもあまりに異例な一手であったために、ソフトウエアのプログラムにそのパターンが入力されておらず、王手を見過ごしたしまったまま別の手を指してしまい負けになったという、まさしく異例の展開に周囲も驚ろいた。「王手放置」での負けということになるのだが、実はこのプロ棋士がこの異例の指し手に対する問題をあらかじめ研究段階で認識しており、「本番では修正されているかも知れないと思っていた」がこの局面で「やってみた」とのこと。
まさに、「敵を知らば百戦危うからず」を地で行く話なのだが、週刊誌や新聞では「人間の能力は凄い」だの「まだまだ人間も捨てた物ではない」だのといろいろ書いているのだが、そもそもプログラム自体が人間の創造物であってその間違い自体も人間のミスに過ぎない事をまるで忘れているようだ。
この話を聞いて思い出したのがスタートレックの37話にある「不思議の宇宙のアリス」というエピソードに出てくるアンドロイドを退治する話である。この話は人間に奉仕するようにプログラムされたアンドロイド達が、奉仕する対象の人間たちが死滅してしまったために活動を停止していたが、宇宙を逃亡していた詐欺師で小悪党ハリー・マッドを新しく奉仕する対象として見つけた。そして、彼らを奴隷として支配したと思ったハリーは主役の宇宙船エンタープライズ号を奪って逃亡しようと考えて彼らをおびき寄せて船を奪ったのだが、欠点の多い人間に奉仕して、それを幸せにし、そしてそれを支配することを最重要にプログラミングされたアンドロイド達は欠点の多いハリー一人よりも沢山の奉仕するべき人類を求めて宇宙に出るためにエンタープライズ号を手渡さずに宇宙に出ようとする。だが、主人公カーク船長はアンドロイド達が不合理なことにぶつかると対処できず、指令センターに問い合わせることを見抜き、彼らを「おとぎの国に誘い込んで」「不合理、不条理なことを浴びせて」判断不能、反応できなくすることで活動できなくさせて窮地を脱するのである。その手段は、「見えない爆弾」を使って芝居をして、その不合理、道理に合わない行動や言動に説明を求めてくる彼らを「自己言及のパラドックス」に陥れていくのだ。「全てのマルタ人は嘘つきだとマルタ人が言っている」と言う奴だが、突き詰めると無限循環になるパラドックスにアンドロイド達は次の行動を決定できなくなりオーバーヒートして活動を停止するというものだった。
話の上では一番最後に「完全に理性的、理論的な知性が不合理で非論理的な人間性と言う奴に負けたのだ」と副主人公のドクターマッコイが主張するのだが、結局はこの手のパラドックスを回避する手段を組み込んでいないプログラムミスが原因だ。創造者の能力の上をいくようなプログラムは出来ないということなのだが、当時の翻訳ではプログラミングを理解できる人はいなかったということなのだろう。
今後コンピュータープログラミングが本当に自身を開発拡大する成長能力を持つようになるには大変だと思うが、それが実現するまでは人間を越えるのは「部分的」と言う限定が付くだろう。だが、「人間より厳正で正しい判断が出来るようになる」などと言い出す者がいるのは不思議である。
残念であるが被創造物は創造者の能力を越えることは難しいとおもえる。論理的に行動を限定するのではと但し書きが付くが。人間は不合理で、非論理的な存在である。それがこのような問題の克服の可能性であり、挑戦のしがいのある問題である。
非論理的な思考だから論理的な思考の限界が見えるとは、全く認識は逆説的だ。