第八十六話
デムレストア帝国のムーレリア親衛隊を務める剣士の面々は苦々しい思いに苛まれている。
魔力を広範囲で感知できる能力を備える者は魔族でも極僅かにしか存在しない。そんな中で親衛隊には二名が配属されている。その内の一人がツイーテアである。彼女はその中でもより特殊能力が備わっている。それは特定人物の魔力を距離に関係なく特定すると言う物だ。現在その彼女が居ない事もあり、もう一名の者が先頭に立って王宮内を進んでいる。彼は魔力を感知出来る程度である。
「此処も違うか…」
隊長の男がそう呟く。その顔には焦りの色がはっきりと見えている。全部で三十か所に分散して魔力が感じられると報告した。それでも感知出来るだけましと言うもの。個々に来るまで四か所を訪れ解放してきた。必ず二・三名が両手両足を拘束されている。加えて魔力供給は可能だが、力の解放が押さえつけられていて自分では出来ない様に為っていた。
「まるで時間を消費させるやり方ですね」
「ああ、全部で三十か所は決まっているんだ。次当てるか、最後まで当たらないか…」
拘束を解除し、一ヶ所に集まる様に指示を出した剣士は隊長の下へとやって来る。
「隊長、終了致しました」
「ご苦労。それでは次の場所へと向かおう」
活動する中で必ず物音は起こり得るものだが、発生させている者は彼ら以外存在していなかった。
「王国兵は何処に…?」
これは隊長を始め全ての者が感じる疑問である。と言うよりも王宮内で一人も出会っていないのだ。仮死状態となって以後どうなったのか分からないまま行動しているが不気味で仕方がなかった。
「隊長、少し待って下さい」
五か所目を目指している親衛隊は魔力感知出来る剣士の言葉で停止する。
「どうした。敵か?」
誰とも敵が誰とは言わないが、この場合自国民以外が妥当である。
「後方で魔力を感知しました。若しかしたらツイーテアかもしれません」
男は希望的観測ながらそう告げた。
「ツイーテアしかおらんだろう。姫に何か在れば駆け付ける女だ」
「では一度後退しますか?」
一人が尋ねると間を置くことなく頷いた。
「そうだな。姫が何処に居るか特定できない以上ツイーテアが居るに越した事はない。ピュットご苦労だった」
隊長の言葉で一団は警戒を怠ることなく目的地へと後退するのであった。
一方ツイーテアたちはピュットの推測の通り彼等の後方に空間魔法によって移動していた。何故彼等の近くにではなかったのかと言えば王宮の外側からでは特定出来なかったからだ。故に彼女は念のためにと安全圏に移動したのだ。
「前方に仲間が居ると思う。だけど未だに私の能力を以ってしても確認出来ないとは」
「結界は破壊したのにどうしてです?」
孝雄実は十二か所の結界発動装置を破壊、無効化した事で冒険者等の変化、ツイーテアの魔力吸収を確認した事で疑問に思い彼女に尋ねた。
「分からない。魔力は感じられるんだ。けど特定しようとすると曇ってしまう様な感じなんだ」
彼女自身どうにも言葉に表す事が難しい思いで孝雄実に説明する。その時彼の脳裏にはジャミングと言う単語が浮かんだ。
「若しかして、ツイーテアさんの能力を知る者が対策として別の魔道具を作成しているとかはないですか?」
「どう言う事だ、孝雄実?」
彼女に尋ねられ分かり易い様に説明を始めた。
「なるほど王宮内に別の魔道具か…それに私の能力は希少だが居ない訳ではない。つまり対策を取ろうと思えば確かに取れるかもしれない」
全て仮定の話しであるが、一つずつ考えれば彼女の様な能力が存在する事も全て織り込み済みで対策を講じて在る様に思えたのだ。
「ですが、感知出来るだけ凄いですよね」
「だな。流石ツイーテアさんだな」
孝雄実とツイーテアの後ろでも警戒しつつもそう彼女を褒める言葉が聞え少し恥ずかしげな顔を見せていた。
「っと、そろそろだな。恐らく隊長たちであると思うのだが…」
彼女の指し示す場所は右に折れた位置である。恐らく向こうも一人が魔力を感知出来る者が居る為待ち構えている公算が高かった。その為攻撃を受けても大丈夫なように先頭を歩く。
奇しくも両者の思惑は合致してしまった。親衛隊の面々は徐々に近づいて来る一団を待ち待ち構えることに決めていた。そして、剣速に自身のあるゲーレンシュが一番手を務める。
「はっ!」
声と共に目で追うのも厳しいほどの上段からの攻撃を浴びせた。しかし、当然ツイーテアも攻撃が来る事を予測し素早く彼の攻撃を受け止めた。
「ツイーテア!」
「随分荒々しい歓迎だな、ゲーレンシュ。私でなければやられていたぞ」
二人は剣を合わせながらそう語り合った。
「よかった。お前だってゲーレンシュが予想していたが念のためにな。許せ」
「仕方が無いでしょう。何を隠そう私も確認出来ませんから」
そう彼女が言うと剣士の面々は渋い顔になる。それほど彼女の能力に期待を掛けていたのだ。
「どう言う事だ。姫のおわす場所も判らないと?」
「はい。残念ながら…」
「ちょっといいですか。ムーレリアの魔力ってどんな感じなんですか?」
彼等の会話に孝雄実が割り込む形で参加する。既に孝雄実がムーレリアを呼び捨てにする事は彼等の中では容認されている。その為敬称を着けなくとも問題はなかった。
「それはツイーテアが詳しいな。質問に答えてやれ」
「はっ。魔力を発する場合、色がそれぞれ異なる事は前に説明されていると思う。私の場合色を記憶してどんなに離れていても分かるんだ。姫は黄金一色だ」
色と魔力は密接に関係する。白、真っ白と言えばいいが体の周りを淡い靄の様に包んでいる。これが魔力最低レベルの者が纏う色とされ、ムーレリアの黄金一色は最高レベルに近い色とされる。但し色におけるランクは幅広い。国債や社債の格付けを想像して頂ければ分かり易いと思う。
そう言った説明をした彼女に対し、孝雄実は「えっ?」と言う表情を表し、ツイーテアは見逃さなかった。それを彼に尋ねると色が違うがムーレリアのそれと思しき物を感じると言い出したのだ。
「エメラルド?」
「はい。黄金も混じっていると思うのですが、俺にはエメラルドがメインに見えています」
互いに認識の違いから誤差は多分に含まれるであろうが、恐らくそれがムーレリアであろうと当たりを付ける。但し、救出に参加するのは人間側では孝雄実だけとなった。と言うのも王国の人間が第一にフェーバル王の安否を確認しない等在ってはならぬ事であるからだ。
孝雄実は彼らにこの場よりも下にムーレリアの反応を感じると告げた。そこで今彼等が居るところで隊を二つに分けることに決めた。単純に孝雄実とツイーテアがムーレリア救助に向かうと言う物だが、王国側の戦力低下は免れない。そこで二人の代わりに剣士が二人移動する事となる。
この事で魔族側、即ち帝国側の戦力が減るかと言えばそうならない事は織り込み済みである。
「それではこの場で別れよう。我等は姫を救出した後もう一度此処へと戻る」
「我等は王を始め、お歴々の方々を救出したならば指示を仰がねばなりません」
隊長が代表してサラが話しをする。やはりここで中心となるのは爵位であった。
「承知した」
そう言って相方進む道を変えて移動を開始する。
「気を付けてね。孝雄実」
「私が付いていけないのが残念だが気を付けてくれよ。ご主人様」
「それじゃあまた後でね」
「又逢いましょう。孝雄実」
四者の言葉を受け彼も言葉を返す。
「ああ、みんなも気を付けて行動してくれ。ブラック、悪いがみんなを頼む。ホワイトは俺と一緒に行動してくれ。それじゃあ、また後でな!」
既に剣士等の一団は移動を開始しており孝雄実は走って追いかけて行った。
王宮は嘗てこの場で立てられた砦を改築した物である。砦が存在すると言う事は当然捕虜を捕らえておく場所が存在する。孝雄実たちが地下牢に押し込められたのもその名残であった。
現在の王国で罪人を捕らえておくのは地上に建てられた建物に収監される。
魔力は充満しているが魔道具によって拘束されたムーレリアは壁に両手両足を鎖で拘束されている。だが意識ははっきりとしており忌々しい表情でコレイド・ムサソーダを睨んでいる。
「いけませんな。あなたの様な美貌の持ち主がその様な顔をするなんて」
「誰がこの様な顔にさせていると思っているんだ!っ…」
彼女が激昂する瞬間電流が体内を駆け巡った。気を失わないギリギリの威力である為、彼女の髪が体から滲み出る汗によって張り付いている。
「流石帝国屈指の、時期皇帝と称されるほどのお方ですな。中々にしぶとい」
「ふん。お前の様に、人を痛めつける様なものから褒められても嬉しくはない…」
そう言った刹那ムサソーダが彼女の顔を叩いた。
「余り調子に乗るなよ、小娘…」
そう言った瞬間漸くムサソーダの真の姿が顔を覗かせる。
「そうですな。我等としてもこうする事は望むべき事ではない」
「そうね。私たちはこの楽園を逃したくないだけなの」
三者三様の口調と表情を覗かせ、体は一つ、頭は三つと言う姿だ。
「ほ、ほう…漸く姿を見せたか。してお前の正体はなんだ?」
この様な姿をムーレリアは初めて見る。デムレストア帝国に居る場合、姿は種族問わず人間と遜色のない。此方の世界へと送られるとき初めて魔物へと姿を変えるのだ。
「やはり分からぬか」
「仕方ありませんな」
「そうよ。我等は大昔に追放された者。彼女が知る筈が無いわ」
三つの顔は当然と言う様な顔で話すが、ムーレリアはそれどころではない。一体どのような理由でこの事態を引き起こしているのか分からなくなっているのだ。
「お前たちは一体何がしたいのだ。此処は人間の世界であろう」
「確かに此処は人間が住む世界。だが、だからと言って我らが住んではいけないと言う決まりは存在せぬ」
「そうですな。加えて此処は住み心地がいい」
「襲われる事が無く。魔力は供給される。言う事無いわ」
その言葉をムーレリアは黙って聞いていた。言葉にしていないが彼等も又デムレストア帝国の被害者であると分かったからである。女性の声で話した襲われる事が無い。これが決めてであった。
帝国は実力至上主義が定着している。如何なる場合も実力によって見せつける事が出来れば帝国内では上にいける。それこそ皇帝も夢ではないのだ。男女の差は無い。だからこそムーレリアは女性であろうとも魔力において現皇帝の次点という者から次の為政者と見做されている。
しかし、その陰で朽ちる者も後を絶たないのだ。帝国は約百二十の部族から構成される。
帝国国内に住まう二千万の臣民が居るが、彼等は実力によって生き残った者たちと言える。勿論部族で生存できる数が異なり、その中で切られる場合、実力を抑えられた魔物の姿となって人間の世界へと送られる。彼の中に家族や恋人もいるが、それすら関係なく送られる。これが間引きの実態だ。
恐らくその目に遭ったのが彼らであろうと予測したのだ。迫害に近い扱いの後手に入れた安息の地。それが今再び国と言う形で奪われようとしていると彼等が思ったに違いない。そうムーレリアは思い、又確信したのであった。
「なるほどな。お前も被害者の一人であったか…しかし、この様な手段に打って出る等許されるべきではない!」
前は自分自身に言い聞かせるように呟き、後はムサソーダに言葉をぶつけた。
「ふん。小娘に言われるまでもない。だが、それでも立たねばならぬものなのだよ。我が一族以外にも弱いと言うだけで追い出された者は数知れず…知っているか、この世界において我が魔族が魔物としてやって来ても時間を掛ければ再び魔族として甦る事を?」
ムサソーダは三つの頭の内真ん中の頭が中心となって話す。左右の頭は主に話しの肉付けを行う役割を果たしているに過ぎなかった。
「甦る?どう言う意味だ?たしかに魔力を封じて送り出すが、それが解放される事はない筈だ…」
魔族たちも人間の社会に重大な損失を与える力を解き放つ事を禁忌として捉えている。何も人間の為にと考えているのではなく、二つ目の帝国が現れるのを恐れての事なのだ。だからこそ魔物にまで魔力を封じ、力を抑え、あまつさえ人間でも倒せる水準にまで落としたのだ。裏話を知れば発狂しかねないものだが、そうしなければ大多数の魔族を活かす事は出来ないと同時の為政者は判断したのだ。それを打ち破るのがムーレリアの提案である。
「それが可能なのだ。だからこそ私の様な者が復活できたのだからな」
「とは言え多くの月日を…」
「辛抱致しましたわね…」
左右の頭は感慨深そうに追随した。
「とは言え、人から人へ移りながらの過程は楽しかったがな…」
その瞬間醜悪な顔を覗かせる。孝雄実がこの話しを聞けばウイルス感染の事を想像するかもしれない。
根本的に甦る事とは何も元に戻るだけが甦る話しではないからだ。
彼の場合、追放原因が問題となり、魔物にすらなる事が許されず微粒子の小ささにまでにされてしまう。だが、彼は諦めることなく常に待った。それは場所柄人間が必ず使用する場所、そう井戸の中であったのだ。即ち水に紛れ人体に入りこむ。そして飲んだ人間の体内を駆け巡り脳へと到達し乗っ取りを行う。それを延々と繰り返し、遂に建国当初の人間と言う立場を確立したのだ。そしてそれからの行動は常に中枢に居る人間を乗っ取り、意のままに操れる者を支配下に置き現在に至るのである。
それを苦しさと事の重大さに顔を歪めるムーレリアに饒舌に語りかけていた。
「まさに我の王国よ。これ程までに人間を意のままに操れるとは思いもしなかったがな」
「権力とは恐ろしきものですな」
「金と異性を与えれば此方に寄与する者が多く、この国の王が可哀想に思えましたからね」
既に一族の復興は彼の中で諦めている。無限とも思える時を如何に過ごすかに重きを置いた結果が今を露わしている。
「なれば、尚の事私にその話をするのは間違いであったな。そもそも何事も事を起こさず、じっとしていれば永らえたとは考えなかったのか?」
ムーレリアにしてみれば最高の環境に居ながらこの様な暴挙に及ぶ彼の心理が判らなかった。如何に魔族を知る同族の者が国交を結ぶべく訪れたとはいえ、最終的な話し合い内容をムサソーダも知るところなのだ。つまりピュータ村において魔族を鉱物採掘に従事させ、生存権を人間世界にも確立すると言うだけの話しだ。彼等の権利にはほとんど介入しないと言う事は分かり切っていた。であるにも拘らずこの様な行動を取ることにムーレリアは首を傾げるしかなかったのだ。
「それはこの国の王と我が対立していたからにほかならぬ。こうした行動に出る契機となったのがそなたであるが、衝突は必須であったのだ。調べれば恐らく王も行動していよう。彼の息子を追放せねばならぬ決まりを制定した大家が私の家系の者、即ち私なのだからな。問題はどちらが出るかであったが、そこは我の読みの甘さかも知れぬ」
「そうか。だが、それももう終わりだ。残念なことにもうお前に残された時間は無いぞ」
ムーレリアは大体の話しは聞いたと判断した。そして直ぐ近くに彼女が最も信頼を置く者たちが近付いている事も感知していた。彼女もまた魔力感知を行える数少ない能力者である。勿論誰かとまでは付きとめられないが此処まで来る者で魔力を感じ取れる者と言えば間違う事はない。
「何だと?」
「一体どう言うことでしょうか」
「はっきりと言いなさい。小娘!」
とたんに焦りの色を見せ始めるムサソーダ。それと言うのもムーレリアの態度ががらりと変化したからに他ならない。加えて室内を重苦しい何かが支配し始めたからだ。左右の頭は何を話しているのか分からないほどの狼狽振りとなり、真ん中の頭も思考停止に陥っている。
「姫!救いに参りましたぞ!」
鋼鉄と魔鉱石を混ぜて鋳造した特注品の扉も関係なく、親衛隊隊長が自身の一振りによって切り裂いてしまった。
孝雄実のムーレリアに対する感知は間違いなく本物であった。これにはツイーテアと隊長のヂュラルトを始めとした剣士も舌を巻いた。此処に来るまで、ムーレリアの反応を言い放つ孝雄実にある意味で半信半疑であった彼等は、ここにきて彼の評価を格段に上げざるを得なかった。
そして遂に室内の気配を窺っていた彼は突入を敢行したのである。
「姫!」
「ムーレリア!!」
雪崩を打つように親衛隊と孝雄実に加えホワイトが進入する。
「ええい、貴様等は…」
誰だ。と問い掛ける前にヂュラルトがムサソーダの首を刎ね飛ばした。それは呆気ないほどの物である。
「よくやった。ヂュラルト」
長い事拘束されていたムーレリアをツイーテアが解放していた。これにて情勢は決する。
「ば、莫迦な…」
首を刎ねられたにも拘らずムサソーダは苦しむことなく言葉を発した。しかし、左右の頭は同じ様に切り離されているが反応を見せなかった。つまり死んでいると言う事が確認出来たのだ。
「やはり本体は脳に入りこんでいると見ていいのか」
ムーレリアは今迄の話しで沿う当たりを付けていた。これにはムサソーダの表情が変化する。一見権力によって強者と目される彼であるが実情は正反対である。人へと乗り移る事が出来なければ終わりなのだ。たとえそうなってもムーレリア達に見つからなければ再出発できるがそうはいかなかった。
「ツイーテア。これを完全密封し帝国へと輸送せよ」
「はっ!」
こう言われてはお終いである。加えて防腐処理のため氷漬け処置をされてしまい言葉すら発する事が困難になってしまった。
「な、なあムーレリア…」
「孝雄実も助けに来てくれたのか。有難う。それでなんだ?」
「ん、いや、何て言うかさ、これで終わりなのかなって…」
そう言い淀む彼の脳内では呆気なさすぎると言う言葉が浮かんでいたのだ。だが、王国側もコレイト・ムサソーダが主要人物としてあげていた為、これ以上の事は彼自身では突っ込む事が叶わなかった。
「終わったと言っても問題ないだろう。しかし、それはこれからの調べに掛かって来るだろうな。勿論我が帝国もこの王国も根深い闇が存在する事が判った。その原因が我ら祖先の行いだと言うのだから笑えない」
自称気味に話すムーレリアに孝雄実は何も言えなかった。自分が関われる事等微塵もないと自覚しているからだ。
「そう言えば孝雄実が此処を見つけたのだな。よく分かったな」
つい自虐気味に話したと思い無理やりにでも話題を変えようと思い打って付けの事を思い出した。
「まあね。若しかしたら俺たちで出向いたあの世界の事が生きて来るんじゃないのかな」
「あの世界?……成程、流石は地底竜と言う訳か」
周囲は何の話をしているか全く分からない事である。知るのは二人と一頭の虎である。
この後は指示通りにムサソーダの頭部を帝国へと輸送し、二名の剣士をこの室内に調査の為に残し上へと戻る事となった。
『陛下。ご報告に参りました』
『何かね?』
『隣国ドットゥーセ王国の件に御座います』
『おお、そう言えば魔族の者と国交を結ぶとか』
『正しく。陛下の耳目は流石で御座います』
『なに。指揮している者が良いからだよ』
『そうですか。しかし、それも陛下がお導きになられた事で御座います』
『だとしてもだ。さて彼の国の報告をして貰おうか』
『では早速…謀が失敗致しました』
『はっ?えっ、ちょっと待ってくれ!謀?一体何の話だ?』
『あれ?ほら王国中枢に仕込んだ種ですよ。お忘れですか?』
『種?…おお、そう言えばその様な報告を受けていたな。忘れていたよ、はっはっはっ!』
『はぁー覚えていなかったのですね。まあいいでしょう。魔族対策は効果が証明されました。但しあれを破壊されれば消えてしまいます。詳しくは帰還致しましたらご報告に向かいます』
『うむ。首を長くして待っているぞ』
連絡を終えると男は深く椅子に腰かけた。
「まさか、もう一枚絡んでいるとは知る筈がないな…」
誰も居ない室内で男はそう呟き気を入れ直し報告書の作成に当たるのであった……
最後までお読みいただき有難う御座いました。
着地地点がどうにもしっくりこない。しかし、構想の中でははまっていた。めげることなく書いて行くの見み!!
ご感想等お待ちしております。
それでは次話で御会い致しましょう!
今野常春




