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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
気が付けば魔族が!編
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第八十四話 再会

 ゲリットたち冒険者の先輩組は地下道を抜けて、王都北側へと脱していた。彼等が出た場所は第四城壁の中間にある小屋であった。

「こんな場所に繋がっていたのか…」

 テレビでも地下鉄の避難路を特別に…等と言う中でとあるビルの一階に出るなどと言う様な感覚である。

「場所は…あそこが最初の目的地だね」

 地図はジャールが持ち指示を出している。

「なら急ごう。この辺りはまだ被害が出ていないが音からして悠長にしていられない」

 リィーナの言葉に二人は頷き駆け出して行った。


 王都の騒乱は南側で始まった。王都へは東西南北と城門が設置してあり防衛を意図として設計が為されていない事が窺える造りである。特に時代が進み王都の機能が一大消費地と為って以降その造りが顕著と為り、街造りも防衛を考えてではなく人の流れを意識し、物流を考えお金の流れが滞らない様な配置となっている。その為に攻めるに易し守り難しとなっているのだ。

 また今回の騒乱は内側、冒険者が王都へ入っている時から起こる。それこそ、全ての始まりとも言える結界の発動からと言えよう。突如として冒険者が周囲の人を襲い始め、家や商店を破壊し始めたのだ。南部は特に商店が立ち並び日中ともなれば大勢の平民で通りが溢れかえるほどの賑わいを見せる。唯一の救いはピーク時を過ぎていた事であろう。それでも逃げ惑う人の波に呑まれる形で警備兵も満足に初期配置へと着く事が出来ず、組織的な対応が初動において困難を極めたのである。

 だが、それでも王国軍の訓練を受けた者たちである。どう動けばいいのか体が判っていた。鎮圧用にと長く硬い棒を右手に持ち、腕に通して使用する小さな盾を左腕に着けて集団と為って集まり始めた。加えて逃げる平民を誘導し、といった行動を取り始めたことで多少押されていると言う展開にまで戻していた。






「セルトあそこの馬鹿をどうにかしろ。カナ致命傷になる処を狙うなよ。あくまでも気を失わせることに集中しろ!」

 ワレンスナはそう二人に指示を飛ばす。その間にも周囲にいる冒険者の意識を刈り続ける。

 そもそも三人が気付いた時そこは懐かしき王都であり、その独特の匂いも昔を思い出させるものであった。しかし、そこでは何をトチ狂ったのか冒険者が平民を襲い、商店や家を壊していたのである。そして一緒に転送された冒険者も彼等と同じ行動を取ろうと動き出したのであった。中にはそれを止めようと声を掛けた同業者も居たがそう言った者は問答無用で切り殺されてしまった。

 これに容易ならざる事態と三人は瞬時に戦闘モードに頭と体を切り替えた。

「了解だぜ。姉御!!」

 セルトはそう言うと冒険者の群れに殴り込んでいった。彼は主に剣で戦うタイプだが、体術も得意とし特に人間同士の乱戦においては武器よりも徒手空拳に頼っている。

「わかったよ。姉御」

 対してカナはやはり飛び道具に依存している。弓もそうだが短刀を投げる戦闘タイプなのである。その為一人ではそう多くの魔物や動物を狩ることが難しく、乱戦には不向きなのであるが彼の様な戦闘スタイルは援護射撃が必要な接近戦タイプの者には無くてはならない。だから、カナは常にワレンスナの横で隙を突いて攻撃を行っている。


「しかし、参ったね。これでは我等は賊軍ではないか…」

 近くで見れば暴れている冒険者は明らかに我を失っている事が判る。しかし、それらを知らない王都の住人や商人らを始め皆が冒険者を賊と見做すであろうとワレンスナは見ていた。

「仕方が無いよ。姉御。っと!でもどうしてこうなったのかな」

「それはやはりあの酒じゃないのかっ!」

 会話をしながら二人は戦い続ける。周辺の冒険者は彼女ら三人を敵と見做したのか群がる様に攻撃を始めた。

「チッ!これじゃあ埒が明かない…」

 ワレンスナ達には同業者を殺そうと言う考えはない。しかし、我を失っている冒険者はそうはいかなかった。全員自慢の武器を構えて攻撃を行っている。

「そうだね。なるべく戦う相手を少なくしたいね」

 カナの武器は無限ではない。軽量化と小型化を施した彼の短刀も五十本を切っている。その為温存したいと言う考えが彼の中で働いたのだ。

「そうだな……よし、あそこまで移動するぞ!セルト!戻れっ!!」

 乱戦で聞き取りづらいセルトも彼女の良く通る声によって聞き漏らす事無く指示に従った。


「ここで凌ごう」

 ワレンスナ達が入り込んだのは路地裏と呼ばれる通り道である。

 大の大人が三人横に歩けば一杯となる道幅である。その為に戦う人数も絞って戦えると彼女はこの場所を選んだ。

 そうは言うが気を失わせた者も永遠に気を失う訳ではない。移動しては戦いを繰り返す中で意識を取り戻し彼女たちに向かう者が居たのだ。

 数の多さによって三人はとある塔へと辿り着いた。その頃には大半の冒険者を倒していたが、彼女等もまた体力を奪われていた。

「ここは…」

 ワレンスナは上を見上げた。

「塔だね。監視塔」

「取り敢えずここに入ろうぜ。扉もあるし休めるかもしれねぇ」

 セルトの言葉に二人は頷いた。


 三人は我を失う冒険者等を排除しつつ鋼鉄製の扉を開けて中へと進入した。

「良かった。此処はまだ大丈夫そうだな」

 先頭を切って中へと入ったセルトは周囲を確認してそう言った。続いた二人も同様に警戒しつつ漸く休めると思った。

「確かに疲れたわね」

「姉御口調戻ったね」

 そう話しながら近くにあった箱にワレンスナは腰を下ろす。

「仕方が無いわよ。あの口調は暫く封印していたのよ。こうしている間は元に戻るわ」

 そうこうしていると上にあがっていたセルトが戻って来る。

「上も大丈夫そうだ。そもそも此方はそれほど被害が出ているエリアじゃないみたいだな」

 ワレンスナが予想した通りメインはこの場所ではない事が彼の調べで確認出来た。


「それでどうする?」

 セルトは持参してある水と食料を食べながら二人、特にワレンスナに尋ねた。

「出来れば救出できる人は助けたいわね。それにここまで王都で冒険者が暴れればどの道終わりだろうけど」

 その言葉は皆が感じていることであった。何かの事故によって発生した騒乱は王都全体に拡大していると言っても言い。その証拠がこの場所に本来配置されている筈の警備隊が居ないと言う事だ。この場所は王国が管理している場所であり常に数名の人間で管理と警備を行っているからだ。当然この場所を放棄してまでとなればその規模が自ずと判って来てしまうのがワレンスナであった。

「だよなー」

「僕たち反逆者になるのかな…」

「まあそうとは限らないわ。だからこそ一部でも抵抗しないと」

 ワレンスナが水を口に含み体を伸ばそうと立ち上がったところで足音が聞えた。その瞬間三人は戦闘態勢に入る。


「聞えたな?」

「ああ聞こえたぜ」

「気配は三人かな…」

 ワレンスナを中心に集まり小声で話し合う。その間にも外の連中は近付き遂に扉に手を掛けた音が聞える。

「物陰に隠れよう。それで人数等を確認する」

 ワレンスナは二人にそう告げると早速大きな棚の後ろへと隠れた。此処が一番見つかりにくい場所と為り、入り口を見易い場所でもあった。


 三人が隠れ終わると扉が開いた。薄暗い塔の中では火を付けなければ遠くを見る事が出来ない。入ってきた者もそれらしい装備が無いことからワレンスナは冒険者か住民かと言う二者に絞る。

「声が聞こえないな…」

「そうだね。姉御見える?」

「無理だな。この様な時に日差しが遮られるとわ…」

 小声で話す三人をしり目に侵入者は奥へと移動する。カナの予想通り三人である事は確認出来ている。しかし、相手が敵なのかが判らないのだ。ワレンスナが相手に近い為に倒すならば自身で決めなければならなかった。

 そして彼女の攻撃権内に相手が入った時である。意を決した彼女は相手に斬りかかる。この時の彼女は「間違ってしまったらごめんなさい」と言う様な気持であった。

「はっ!」

 ワレンスナは上段から剣を振り下ろした。

「なっ!?」

 だがセルト達が聴こえた音は金属が激しくぶつかり合う音であった。つまり彼女の奇襲は失敗に終わったのである。

「ワレンスナ!?」

「ゲリット?」

 ゲリットは剣を両腕で支える形で彼女の名前を叫んだ。

「ゲリット!?」

「ゲリットだって!?」

 セルトとカナはそう言うと隠れていた棚から出て来た。そこには剣をぶつけ合っている二人の姿とジャールとリィーナの姿であった。






 二人は剣を鞘に納め、大きく息を吐きだすと皆は近くにあった木箱等に腰を掛ける。

「殺されるかと思ったぜ。まさかワレンスナが此処にいるとわな。それにセルトとカナも居るなんてな」

 ゲリットの言葉に両者の陣営が頷いた。

「全くね。それにしても……」

 ワレンスナはゲリットを始めこの場にいる者の顔を見渡した。

「懐かしいメンバーが揃ったものね」

「そうだな。何と言ってもあのリィーナが今では新人の試験官として活躍するほどだからな」

「それだけ私も強くなったってことでしょ」

「それに綺麗になったじゃない」

 とても戦闘中における休憩中の会話とは思えない内容である。

「へへへっ」

「照れるリィーナも久しぶりに見たよな」

 ゲリットを除いて彼等は全員ワレンスナと新人の時期に行動した者たちである。特にリィーナはワレンスナに何かとお世話になっていたのである。

「煩いな、セルト。別に良いじゃないか。そう言えばキャメルは元気ですか?」

「今では冒険者になっていると思うわ」

 その名で関係して来るのはセルトである。同性同士と言う事でキャメルとリィーナは頻繁と言う程ではないが会っていた。逆にいえば他の者はそれほど彼女を知らないのである。特にセルトとカナは顔も名前も知らないのであった。


「おう。そろそろ動き出そう。で、ワレンスナ、俺たちはとある任務をこなさなければならない。表の奴らとはどういった関係なんだ?」

 昔話に花を咲かせるほど余裕が有るわけでもない。あと数分後には動きだしたいゲリットは彼女等の会話を打ち切り率直に敵か味方を尋ねた。それにセルトとカナが反応しそうになりワレンスナが手で制する。行動には出無かったがリィーナとジャールも顔に出ていた。

「あの連中と同じであったらこの様な場所で隠れて貴方に斬りかかる訳ないでしょ。これが答えよ」

「なんだ。敵でも良かったんだがな。まあ頼もしい仲間が増えたと言う事で協力してくれや」

 二人はそう言って手を握り合う。二人の間には何かとあると聞き及んでいる四人はそう言い合う間柄なんだと思うのであった。

「そうね。何れはそうなるかも知れないわね。でも今は協力しなければ冒険者と言う職が大変なことになるわ。それは看過できない。ゲリット、包み隠さず話しなさい」

 ワレンスナは有無を言わさない雰囲気を纏いゲリットに尋ねた。

「ああ、その雰囲気が昔を思い出させるな。それじゃあ説明するぞ…」

 ゲリットはこれまでの経緯を彼女に話し始めた。予め話しが終わるまで質問はするなと断った上でである。そこには孝雄実たち、即ちキャメル等の名前も出て来るがこの時ワレンスナの表情は一切変わる事が無かった。これは彼女が戦闘に意識をシフトした証左である。これによって口調も態度も行動も嘗て暴風の如く魔物を狩っていたワレンスナ・スローニャが出来上がる。


「わかった。それでは私たちはこの三か所を破壊する手伝いをすればいいのだな?」

「ああ、頼むぜ。これは現場にまで運ばないと作動しない代物らしい。ここ以外にも守っている奴等が居るとも限らないからな」

 そう言ってゲリットが立ち上がるとワレンスナも立ち上がり、それに合わせ残りの四人も立ち上がった。

「それじゃあ行動に移りますか」

「だね。だけど初めてだね。このメンバーで行動なんて」

「元々ソロで行動する者ばかりだしな」

 セルト、カナ、ジャールはそう言って和気藹々と言う雰囲気で武器を手に持つ。

「宜しくお願いします。ワレンスナさん」

「ああ、そんな畏まる必要はないぞ、リィーナ。既に経験を積んだ冒険者なんだ。期待している」

 その言葉でどれほどワレンスナがリィーナ自身を思っているかを感じ取るのであった。


 ゲリットを先頭に階段を上る。セルトが偵察がてら入った当初に確認しているが、その後に何が有るか分からない事から慎重に進む。

 王都の城壁は外へと向かう程に高さが低くなっている。それは元々なだらかな丘に王宮が建設されたからである。元は砦の要素を含んでいたが国家を建国し周辺に敵が居なくなったことでその用途が希薄となった。以後、砦は大改修を経て現在の王宮となり、当時を思える場所は堀を残すだけである。

 その城壁もまた時代が進むごとに変化が見られ歴史の変遷を見て取れる。材料を始め造り方も時代を考える事が出来る。

 今彼等が居る場所は凡そ二百年前に造られた。高さにして城壁部で三階建ての高さが有る。塔に至っては七階建ての高さに相当する。数が少なくなるほどに城壁の高さは半階分上がる事になる。その為第一城壁と第二城壁では塔は撤廃されている。但し歴史的かつがあると判断されていることから数か所残されている。


「ふぅ、ここか…」

 現役冒険者が移動すれば慎重に行動してもそれほど時間を要する事が無かった。

「ここがその目的の物なのか?」

 ワレンスナがそう言って見た物は成人男性の腰辺りまである正六角形の台座の中央に禍々しいほどに嵌めこまれた魔鉱石であった。それは蒼白く光り輝き塔の中を彩っている。本来ならば日差しを取り込んで中を照らせるだけの空間が開けられているが生憎今にも降って来そうな曇天であった。

「気味が悪いな」

「ああ、そうだな」

 セルトとジャールがそう話しているとカナが脂汗を流しながら呼吸を荒くしているのにリィーナが気付いた。

「大丈夫かカナ?」

 彼女は彼の腕を自身の肩に回させて体を支える。

「う、うん。ここに来たら少し気分が悪くなってね…」

「無理はするな」

 こう言った気遣いに不謹慎ながらもジャールは羨ましそうに眺めるのであった。


「リィーナ下にカナを移動させておけ」

「ワレンスナあいつにはこれを作動させる任務が有る。セルト代わってやれ。ジャールは二人の護衛を頼む」

 ゲリットはそう指示を出すとリィーナには直ぐに行動するように目で訴えかけた。二人は即座に言葉を返して下の階へ降りて行った。

「さあ、早くやってしまおう」

 そう促すとリィーナは背負っていた『クラッシュ』をツイーテアの指示通りに魔鉱石の上に取り付けた。そして、魔力を流し始める。

 すると赤い光と共に青白い光を放っていた魔鉱石はせめぎ合いながら徐々に赤色が優勢と為り遂に赤一色となった。

「これで終わったのか?」

「話しからすればそうだろう。確認しよう。おいセルト悪いがカナを連れて上がって来てくれ!」

 ゲリットは下に移動させた三人を呼び戻した。


「うん。気分悪く為らないよ」

 カナはゲリットに言われ台座中央に近づくように言われてそう感想を述べた。つまり彼はリィーナが行ったことを確認する為に彼を通して行ったのである。

「よし。これでこれが信頼できる事が判ったな。それでは次へ行こう」

 そう言ってふと外を見れば同時期にエレオノーラ達の方角で色が赤へと変化し、孝雄実たちの方角では三回目の爆発が聞こえて来た。


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 ご感想等お待ちしております。

 それでは次話で御会い致しましょう!

                     今野常春


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