オリマッテ・ロットロン領地開発記 その6
ロドム達が作業をしながら孝雄実たちの事を話題にして話し込んでいると後ろから声を掛けられた。
「娘?一体どう言う事なのですか?」
ロドムは冒険者の為りをしている女性に言葉を返した。
「そのままの意味です。私はワレンスナ。元ドランデストハイムで冒険者ギルドの支部長をしていた者です」
沿う自己紹介するとダンが思い出す様に頷いた。
「あ、若しかしてエレオノーラが手紙に書いていた人の?」
「あの初心そうで近藤孝雄実と一緒にいた嬢ちゃんかな?」
ワレンスナがそう言うと間違いないかのように皆が頷いた。
「あーそうだな。あなたが言う人物で間違いないと思うよ。俺はロドム、こっちにいるのがアランでウォーレンだ」
「で、俺がダン。エレオノーラの弟だ」
四人は関係者と知ると言葉を砕いて話し始める。するとワレンスナも同様に言葉使いを砕き始める。
「そうか、近くを通ったら近藤孝雄実の名前を聞いた者でね。恐らく新しい仲間と言うのは私の娘キャメルの事だ」
「娘ってこう言っては失礼ですがとてもそこまでの娘さんが居る様には見えないのですが…」
アランは勇気を持って彼女にそう尋ねる。
見た目二十代でも通用するワレンスナはとても孝雄実たちと行動出来る子供が居る様には見えなかった。
「あら嬉しい事ってくれるわね。まあ確かに本当の娘ではないわ。キャメルは養子の様なものよ。元はホルト王国から流れ着いた子でね。長い事面倒見ていたのよ。それが、気が付いたら親子の様な関係に為っていたってところね。エレオノーラは勿論近藤孝雄実と行動を共にしている娘は皆好意を持って彼に接しているわ。出遅れている私の娘には積極的に出る様に教えてあるの」
そう言うとワレンスナは悪戯をした子供の様な顔で話した。
「まあ此処ではなんだ。ダン、そろそろ作業終了だろ。この辺りでいいんじゃないか?」
「えっ、うーんとそうだね。まあいいかな、それじゃあ俺は他の作業に当たっている人にも終了を伝えて来るからこっちは任せたよ!」
ダンはそう言うと駆け足で移動を始めた。
「と言う訳だ。もし良かったら話しでも聞かせて貰えないかな?」
「そうね。私ももしかしたらと思ってこっちへと来たから丁度良かったわ」
そう言って四人は近くの休憩所として造られてある建物へと向かうのであった。
「さて改めて自己紹介といこうか。俺はロドム、今ではオリマッテ様の家臣と為っているが元は冒険者でエレオノーラ達と共に行動していたリーダーだ。宜しくな」
「俺はアラン。ロドムと同じさ。今でもリーダーである事には変わらないと思っているんだけどね」
「俺はウォーレン。宜しく」
三人はダンが戻る前にそう話しを始めている。と言うのも彼が戻るのはもっと時間を要する事が分かっているからだ。
「私はワレンスナ。元冒険者ギルドの支部長をしていた冒険者よ。宜しくね」
そう言ってほほ笑むと誰とは言わないが顔を赤らめる者が居る。関係者が居ない事がどれほど良かったかと三人は其々思うのであった。
「さて、何から話しをしようか」
「此処へ来た経緯は?」
ロドムが考えているとアランがそう提案する。そもそも何故彼女が此処にいるのかが分からないと言うのがアランの思いであった。
「そうね。エレオノーラが手紙を出していたのよね。私の事は話題に為っていた?」
「ドランデストハイムでの事件ならある程度書かれてあったな。あれでも大分ぼかされているのだろうけど。支部長が絡んでいると言うのは在ったが詳しくは知らないぜ」
「そう…詳しい話しはもう出来ないのだけれど。私を始めキャメル諸共あそこに住む者は貴方たちの仲間に救われた様な物ね」
ワレンスナは魔物の話し等をある程度ぼかしながら話しを行う。それでも孝雄実たちがこの村を出てからの足取りが見えて来るような説明の仕方であり、彼女の話術が巧みである事が窺い知ることが出来た。
「そうか、孝雄実は何処に行っても中心的な場所に身を置いていると言う事だな」
ロドムはそう感想を述べると今度は村を出発するまでの事を彼女へと話し始める。
「ワレンスナさん、孝雄実が『呼ばれた者』だってことは知っているな?」
「ええ、確認はしなかったけれど恐らく、いえ十中八九そうだと向こうにいた連中と答えを出していたわ」
「そうか。実は俺たちも各賞を持って孝雄実を認識している。間違いなくあいつは『呼ばれた者』だ。しかも魔法を何てこと無に使用出来る者などこの国には居ないだろ?」
ロドムが言う事は常識であった。詠唱破棄はタブーに近い行為である。特に貴族に至っては爵位にすら影響を及ぼす可能性もあるほどだ。孝雄実はそれを気にする事は無く、魔法を使用している。
「そうね。確かに彼は魔法を詠唱破棄によって使用している。形骸化しているとはいえ自身でそれを使用できない。何処かでタブー視している事が影響しているのよね。彼はそれが無い、だから『呼ばれた者』だと言う訳ね」
そうワレンスナが問うとロドムが頷いて答える。
「さて、前置きはこんな物で言いか。孝雄実とは一緒にいた期間はそれほどでもなかったが大分中身の濃い付き合いだったぜ」
ロドムはそう話し始めるのであった。意外にも年長者二人の会話は孝雄実がどれだけ活躍しているかの自慢合戦へと話しがそれ出していた。しかし、聞いているアランとウォーレンはそれでも大分打ち解けて来た事を雰囲気と場の空気で感じ取ることが出来た。
そうこうしていると外で足音が聞えて来るのが分かった。此の休憩所は彼等専用の建物である。何と言ってもオリマッテの家臣である彼等には色々と外部に漏らす事の出来ない話しを行う場合もある。その為の手段として専用の建物を設えてあるのだ。
足音は三人分の物である。つまりダン以外にもう二人いると言う事だ。
「戻ったよ。それとお客さんを連れて来た」
そう言うと新たに冒険者の身形をした男が現れる。
「姉御!?」
二人の男の声は重なった。
「あらセルトとカナ久しぶりね」
そう驚く二人を余所にワレンスナは動じることなく挨拶をする。
「世の中はこれほどまでに狭いのであるな」
ウォーレンの呟きは此の場にいる者に染みわたる言葉となった。
ダンを含めた三人は席に着くと改めて自己紹介のやり直しとなる。其々ロドム達が終えて最後の二人と為る。
「俺はセルト」
「僕はカナ」
そう話したところでセルトが自身の事を代表してロドム達に話す。
「俺たち二人は王都で冒険者試験に望む者たちを振るいに掛ける事をしていたんだ。だけど二人とも負けてな。それでこの地域でならば、と考えたんだ」
「そうなんだ。それはもう酷かったよ。なんたってあの時は十人に負けたんだから」
あの時の結果は二人にとって心の中から何かを変えなければならないと思わせるに十分な出来事であったのだ。
「カナ、その中にキャメルと言う娘は居たの?」
「ああそれなら俺と戦ったぜ。あの変幻自在な鞭に手を焼かされたよ。それがどうしたんだ?」
ワレンスナが尋ねるとそう答えたセルトについ彼女は顔がにやけてしまう。
「なに、私の娘だからね。つい気になったのさ。でもあんたに勝つなんてね、あの子もやるものだ」
彼女はその様に言う表情はとても嬉しそうであった。しかし、それ言われた二人は衝撃が大きかったようだった。
『はぁー娘!!姉御に娘って!?』
声がハモるほどに彼等には衝撃を与えていた。
「あ、姉御何時の間に子供を?いやいやおかしいだろ!年齢的に、そもそも俺たちが在っていない期間って…」
「あっ、若しかしてキャメルってあの子じゃないの?」
カナはワレンスナがまだ冒険者だった頃、もう直ぐ引退してギルド側に入ると言う時期に一度難民となった少女と会っていた事を思い出した。彼等もまだ駆け出しで何かと余裕のない時期であり、すっかりその少女の事を忘れていたのだ。彼はその事をセルトへと話すと彼も朧げながら記憶が甦る。
「あ、ああそう言えば居た様な…ってそれにしてもそんな子供が大きく為って俺を倒すなんて俺も年を取ったもんだよな」
「まああの時は難民のことども保護していたと言うのが正しいよ。私が支部長に就任する前辺りにあの子を養子に迎えたんだけどね」
ドットゥーセ王国は難民としては中々に生きていくことが難しい国だ。それ故に彼女はキャメルを養子として迎え入れる事を決断した。こうすれば国民としての権利を行使できる。ただ、養子とする場合も親が確りとした立場でなければならないと言う厳しい制限が設けられている。加えてその子供が優秀である事も選考基準として設定されている。その為の教育機関が在る限り絶対に難民を受け入れないとい姿勢で無い事が窺える。
ただ、こうした基準が在るからこそ難民の子供が養子となる事はハードルの高いのだ。この場合ワレンスナが冒険者ギルドの支部長に就任する事が決まったことと、キャメルが事のほか優秀であった事が認められた要因だ。
「ああ、そうだな。この国は養子を取る事はそれほど厳しい事ではないが難民となるとな。一冒険者では先ず審査は通らないだろうな。だからこそ姉御は急いだのか?」
セルトは徐々に記憶を掘り返すとあの頃の彼女の動きに納得するのだった。兎に角功績を上げていち早く何処かの支部長へと駆け登る方法を取っていた事を覚えている。一時期その事によって良くない噂も流れたほどだ。それが原因と為り自治領となるエルサンド族の支配下にあるドランデストハイムの冒険者ギルドの支部長としてやっていくことになったのだ。だが、全てがキャメルの為と言うのであれば頷く事が出来るのだ。
「まあ、そうかな。それに加えて兎に角状況を変えたいとも思っていたしね。好都合だったのは言うまでもないよ。って悪いね、私たちだけで話しを進めちゃって」
ワレンスナはロドム達が蚊帳の外に置かれている事に気が付きそう謝罪した。
「いや、構わないさ。昔なじみが顔を突き合わせれば話しが盛り上がるのは当たり前だ。それにその話は俺たちの仲間とも関係するみたいだしな。聞いていて損は無いだろう」
ロドムは彼女の言葉にそう返した。
「だな、それに新たなライバルがどんな人物か知るには丁度良い話しの様だ」
「苦労した女性か、強敵だな…」
アランとウォーレンはキャメルの話しを聞いて人物像を勝手に考えている。
「ライバルね…確かにあの者たちはそうなるかもしれないわね。でも、何も一人でなければいけない訳でもないわ。様は養えるかどうかそれだけよ。私は近藤孝雄実がそうなると考えているわ」
ワレンスナはあの時既にそう見えていたのだ。だからこそ娘の背中を押したのである。血の繋がりは無いが彼女は本当の娘の様に思っている。それをキャメルも同様に親と見て接している。それほど大事にしている娘の背中を押す以上勝算が無ければする事はしなかったのだ。そうでなければ着いて行くと話された時、どんな事をしてでも引き止めていたのは明白であった。
そんな時である。八人が話していると扉が開いた。普段はノックが在り許可を求める者が常であったがそうではない以上彼等の関係者がやって来た事を意味する。
「旦那様!?」
ロドムは入って来た人物にそう言って驚いた。それは他の者も同様であった。なお彼が呼んだ人物はオリマッテ・ロットロンだ。領地を拡大して以後呼び方を統一することになり、家臣として籍を置く彼等は全員が旦那様と呼ぶ事と為っていた。
「おや、お客かね。ああ、そんな畏まらなくてもいいよ。私は元商人だ。そうされるのには慣れていなくてね」
そう言った理由はワレンスナ達の行動である。彼等は何処まで行っても平民である。貴族の彼に対して敬う態度をする事は決しておかしな行為ではない。それをオリマッテは制したのだ。
「余り時間が無いので手短に話す。先程私宛に広範囲依頼の要請が届いた」
そう言ってオリマッテはテーブルへその旨が書き込まれた要請書を置いた。ワレンスナ達の正体は知らないがロドムが此処へと迎え入れていると言う事でオリマッテは気にすることなくそうした。
ロドムはそれを手に取ると喰い射る様に見る。
「王都で依頼を募っているのですか…ですが旦那様…」
「ロドムの言いたい事は分かる。怪しいと私は思う。確認の為にブラスト辺境伯へと確認を取ったがあそこでも募集が行われているそうだ」
この知らせの経緯を皆に話すといち早くワレンスナが反応を見せる。
「失礼。私はワレンスナと申します。今は冒険者に復帰していますが元は冒険者ギルドの支部長をしていました。そこでなのですが、一つ腑に落ちない事が在ります」
彼女はそう言うとロドムから要請書を受け取るとオリマッテに分かり易い様に彼に指で文章を指差す。
「ここです。この一文こそが腑に落ちない部分なのです」
「王都で募集する。この文章がおかしいのかね?」
そう尋ねると彼女は頷く。
「はい。最初に説明すると広範囲依頼は一地方部に限られているのです。例えば此処、ブラスト辺境伯爵さまの地域では認められるのはドランデストハイムまでの地域に依頼を出す事が許されているのです。ですがアレンセント川を越えた西側には依頼を出す事は出来ません。これは逆の場合も同様です。そもそも王国中に依頼を出す事など出来ないのです。これはギルドの要職以上の者であれば知っている話しです」
彼女がそう説明するとオリマッテ等は首を傾げる。
「だが、これは正式な要請書だぞ。まさか不正でも行っている訳でもあるまい」
「ですから腑に落ちないのです。ギルドは軍務省の下部に位置しています。最終的な責任者はフロランス侯爵です。ですがその彼の名が此処にはありません」
そう言うと確かに名前はギルドの本部長の名前が書き込まれているだけであった。
「ああ、そう言えばそうだな。何せ私がこれを受け取るのは初めてで、それが分からなかったよ」
「旦那様、若しやそれがこの要請書の狙いではないのでしょうか?」
「どう言う事だロドム?」
「仮定の話しですが、ギルドの者ならば知っている。そして領主はその事に慣れていない。そこから導かれるのは不正を見抜く者が居ないと言う事です。今はワレンスナさんが今居たから指摘出来ましたが、そうではない場所の領主ならどう行動するでしょうか?恐らくは此処に書かれてある通り自領に居る冒険者に声を掛けて向かう意思のある者を向かわせるでしょう。支部が置かれる場合は別ですが、此処の様な場所は状況が異なります」
そう言われると何か胡散臭さが増しオリマッテの表情が怪しくなる。元から怪しいと思い確認する事も厭わなかった彼だ。ロドムが仮定の話しをしてもそれが正しい様に思えてしまう。しかし、それがどうしてそうなるのか、その真相が全く分からないのだ。
「しかし、一体王都で何が起こっていると言うのだ?そもそも広範囲依頼で集める人員とはどれほどのものなのだ?」
そう言ってワレンスナへと視線を向けるとその彼女は直ぐに答える。
「例えば災害が深刻な場合です。長雨で洪水が発生した地域では特に人の力と物資の迅速な移動が求められます。その場合、王国軍や諸侯軍の動員もありますがそれ以外に冒険者へも依頼が出されるのです。単位で言えば一千名からです。しかし、それほどの冒険者が一つの街に居る事も珍しい事です。そこで地方全体に依頼を出すのです。まあ報酬面で増額することに為りますが、資金面を気にしなければ問題は在りません」
長く説明する彼女だが、肝心な事はその数である。オリマッテは元商人故に計算には長ける。王国全土を分割する地方を考えた場合、そこから導き出される最低人数を彼は計算するのだ。
「最低でも三万人の冒険者か…」
「これに対抗できるのは王国軍ぐらいですね、旦那様」
そう言ったのはアランだった。しかし、その言葉がオリマッテを動かす。
「これは想像以上に不味い事になるのではないかもしれん。済まんが全員私に着いて来てくれ!」
オリマッテはそう言うと有無を言わさず部屋を出る。家臣であるロドム達は彼に否を言うことなく素直に従うが冒険者として此処へと来た三人は事情が異なる。
「ど、どうする…?」
そう言ったのはセルトだった。
「どうするって着いて行くしかないでしょ」
「そうね。まあ退屈することが無くてよかったわ」
そう言って三人は彼等の後を追い駆けるのであった。
オリマッテはロットロン村にある自身の屋敷へと戻っている。後を追いかけて来た残りの者もこの室内へと通された。
「先程ブラスト辺境伯へ伝書鳩を遣わせた。高速便だから一日で知らせが来るだろうが、皆に私の予測を話そうと思う…」
そう言って彼の口から出て来た言葉に彼等は衝撃を受けた。奇しくも此処には居ない孝雄実たちが王都内で不安視した状況を精査した様な答えを導き出したのだ。
オリマッテに与えられた情報は冒険者の広範囲依頼の旨が書かれた要請書とワレンスナのギルド側の情報だけだ。そしてそこへアランの王国軍と言う単語で一つの線として彼の中で答えが出てしまった。
「もうじき王国軍の恒例となる演習が始まる。その前段階として商人が活発に動き始める。物資の買い付けと輸送の為にな。私も嘗てはそれで稼いだものだ。アランが、王国軍が唯一の対抗だ。と言った瞬間一つの可能性を考えてしまったのだよ」
オリマッテの表情は余り良くない。むしろ徐々に血の気が引いている様にも見受けられる。普段彼の顔を見ているロドム達は勿論ワレンスナ等もよろしくない話しが此処で出る事を覚悟するのだった。
「反乱だ。最低でも三万名の冒険者を集める。尋常な話しではない。では尋常ではない事は何か、それが私には反乱としか思えない…」
「ちょ、ちょっとお待ちください。冒険者を、ロットロン男爵様は冒険者を王国軍にぶつけると仰るのですか?」
セルトは慌てる様に彼に尋ねる。一歩間違えば彼らでさえその可能性が在る。
「ああ、だが可能性の一つとして上げたに過ぎない」
「ですが、あくまでも仮定、可能性の話しですよね。何処からその様な見解が出て来たのでしょうか?」
今度はワレンスナがオリマッテに尋ねた。
「それは要請書に書かれてある名前だよ。君が指摘してくれなければ判らなかったが、ガチっと何かが填まる様な気がしたよ。此処にある名前、学術省のコレイト・ムサソーダ侯爵と為っている。本来軍務省と学術省は水と油の存在だ。互いに予算の奪い合いをする程に仲が悪い。本来軍務大臣の名前が無いと不味い事が更に信憑性を高めている様に感じるのだ」
そう言うオリマッテは要請書を一つずつ指差して話した。
「成程私たち平民では知り得ない話しですね。そうなるとギルドの本部長がムサソーダ侯爵と繋がっていると言うことでしょうか?」
「そこまでは判らないな。そこでだ、ロドム君たちにこれに参加して貰いたいのだ」
オリマッテはロドム達を見てそう言葉を発した。
「依頼の確認をするということでしょうか?」
「ああ、恐らくブラスト辺境伯を中心に東側の貴族領では冒険者を出す事はしないだろう。だが、それで済む筈が無いと私は考えている。だからこそ君たちに参加して貰いたいのだ」
そう言うとロドム達は顔を見合わせる。
「それには私たちも参加しましょう。私もですが此方の二人も実力では後れを取る事は有りません。それにこれはギルドの裏側を知る私が参加した方がより効果的だと考えます」
「確かにワレンスナの言うことに一理ある。ロドム達は私にとって掛け替えのない家臣であり、友でもある。故に貴方に頼ることになるがどうか無事に連れ帰って来て貰いたい」
オリマッテはそう言って彼女に頭を下げるのであった。
そうと決まれば、主にロドム達の出発準備に時間を割き、ワレンスナ達は長旅での疲れを取るべく休むことに時間を費やす。その間三人は今回の事を話し合うに十分な時間を得たと言える。
「どう思う?」
「どう思うって、間違いなくヤバい話しに為っていると俺は思うぜ」
「同感。僕たちが王都を立って三週間は経過しているけど、あの時は全くそんな雰囲気すらなかったからね」
三人はなるべく声が漏れない様に声を押し殺して話し合う。ワレンスナが尋ね、セルトとカナが声耐えると言う形式だ。彼女は支部長就任以降王都へと向かう事は無かったからだ。何かあれば伝書鳩を用いての連絡と人を送らなければならない場合はキャメルが彼女の代理として赴いていたからに他ならない。だからこそ王都の現状を一番知る二人から話しを聞いているのだ。
「だが、そんな短期間に情勢を変える事が出来るのか…」
「どうなんだろうな」
「そもそも、末端の冒険者がギルド内部の事を知るすべはほとんどないよ」
カナがそう言うとセルトもその言葉に同調する。対してワレンスナも実情を知るようになったのはギルド職員に為って以降である為にそれもそうかと頷くのであった。大した収穫もなく三人の会話は準備が整ったとの知らせを受けて終わりを迎えるのだった。
「それでは旦那様行って参ります」
「うむ。どの様な状況か全く分からない。特に注意してくれ。それとこれを使用してくれ」
オリマッテはそう言うと一枚の木札を彼に渡す。
「これは?」
「此処より西側に向かった場所にヘイレスまでの直通列車が在るのだ。まあ緊急仕様で殆んど使用されていないが今回時間との勝負だからな、ブラスト辺境伯に頼み込んで使用許可を得たと言う訳だ。心配しなくても大丈夫だ。年に一度必ず点検補修は確りと行われていると言う。だから安心して集合地点へ向かってくれ」
そう別れの挨拶を済ませるとロドムを先頭に馬に跨り西へと向けて出発をするのであった。一行は東側の冒険者集結地点としてアレンセント川を越えた王都側の街ドレンスへ向かうことになる。要請書を見せれば川を渡る事も簡単に行われ費用も掛からない。全ては依頼主へと請求が向かうからだ。此処が広範囲依頼の痛いところで資金が潤沢でないと出す事が難しい。
道中ワレンスナがロドム達にそう説明をしながらオリマッテが話す件の場所へと向かうのであった。
最後までお読みいただき有難う御座いました。
ご感想等お待ちしております。
それでは次話で御会い致しましょう!
今野常春




