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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
気が付けば魔族が!編
92/107

オリマッテ・ロットロン領地開発記 その5

 結局ブラスト辺境伯家に長年仕えて来た譜代の家臣とも言えるモノースル男爵家は潰えた。そして当然モノースル領の統治を行う者が消えれば後任をすぐさま選出しなければならない。そこでレイバーグ・コレスタント・ブラストは隣にいたオリマッテ・ロットロン男爵へと希望を見出す。元々先代モノースル男爵はレイバーグの右腕であった。主に政治的分野、領地の管理運営などである。

 領民を困らせる訳にはいかないと直ぐにオリマッテを此処の統治に当たらせることを決定した。

「反乱を未然に防ぎ、見事な手腕で以って鎮圧した事これ以上褒める事の出来ないものであった。そこで私レイバーグ・コレスタント・ブラストのオリマッテ・ロットロン男爵に報いるべく本日此処にモノースル領を授ける。新たにオリマッテ・モノースル・ロットロンと名乗るがよい!」

 モノースル領内で領民等を一同に集めた場所においてそうレイバーグが宣言した。これを拒否する事は絶対許されるものではなく、受けざるを得ない状況である。

「謹んでお受けいたします」

 これで此の場の統治はオリマッテへと移ったことになる。しかし、あくまでも形式に過ぎない。実務的な異常などは全て行われず、領主が変わるだけでモノースル家に仕えている家臣はそのままオリマッテに仕える事となったのだ。此処において反論等出来ようはずもなく、不満を持つ者が居ても口に出せば身の破滅を待つばかりとなるのである。

「アレバレル、その方も復帰せよ。モノースル領の代官とする。これを拒否する事は許さん」

 早速オリマッテはそう命令を出す。そもそもアレバレルはモノースル家と共に尽きようと考えていた。だが、それは許される筈もなかったのだ。唯一残されたファーというモノースル家の血を引く少女が居るからだ。彼女の面倒はオリマッテが見る事と為るが、出来るならばこの村に住まわせておきたいと考えていたからである。


「承知いたしました旦那様。これよりアレバレルは代官として旦那様のお言葉通り確りとこなしてみせましょう」

 元々家令としてモノースル家三代に渡って仕えた人間である。他の家臣も一目も置く存在である。これで彼が従った事で大半の家臣がオリマッテの下へと降る事となった。但し、それを許されなかった者もいる。

「その方らは財産の没収と領地からの追放だ」

 一部の家臣とそもそもの原因を作った商人である。合わせて十一名がその憂き目に遭ったのだ。有無を言わさずレイバーグは刑を執行する。こうしなければ速やかにオリマッテが行動出来ない事が分かっているからだ。






 あの処分から一週間が経過する。元々両方の村は一本の街道で繋がっている。一方的にグーテコバ・モノースルが嫌っていたが領民同士の交流などは盛んである。特に発展著しく、オリマッテは商人と伝手のあるロットロン村だ。多くの物流の終着点と為っているのだ。通過点であるモノースル村では今迄そのお零れを僅かながらに頂いていたに過ぎないが、オリマッテが領主となれば話しは変わって来る。ロットロン村の開発もそうだが、どうせならばと街道を広げ、モノースル村から開発規模を拡大してしまおうと考えたのである。問題は金であるがそれはモノースル家と財産と没収された者、さらには投資を募ることで大規模な開発へと漕ぎつける運びとなった。特に投資の分野においてはブラスト辺境伯の家臣等が率先して投資を行う。

 理由は在る。オリマッテの手腕だ。グーテコバ・モノースル同様にオリマッテを快く思っていない貴族も多くいるのだ。しかし、それを表だって見せる事はしない。何と言ってもレイバーグと懇意にし、信頼されているのが分かっているからだ。彼らとてレイバーグから睨まれたくはない。故に最低限度の付き合いをするだけで一切干渉していなかったと言う方が正しい。今回の結果を見て馬鹿な者はこうなる事が分かり、さらにオリマッテが領地を新たに獲得したことで無視できない存在と見做されたのだ。

 レイバーグが将来の右腕として考えていることも大きな要因となる。年齢で言えばレイバーグの後の当主のと言っても良いがその頃オリマッテは絶大な権力を持っている事が予想出来る。その為競う様に投資に賛同したのである。


「信じられん…これでは没収した金など使用する事もないではないか…」

 オリマッテとアレバレルは帳簿を睨み合いながらそう呟く。明らかに投資額が求めている額よりも超過していたのだ。

「これは元モノースル家の年間予算の三倍程です」

 アレバレルは驚きながらもその様にオリマッテに説明する。

「まああって困る物でもない。第二、第三と開発したいと考えていたところだ。これだけ予算が在ればそうと起きない将来開発へと着手できるだろう」

 元々構想は練っていた。何れグーテコバが手の施しようもない行動をした場合、主人のレイバーグへと開発計画を手渡してグーテコバの処分と資金援助の話しをする予定だったのだ。それが前倒ししただけの事であるとオリマッテは考えている。


 さらにこの投資は直接投資者に返還される物でもない。基本的に投資を行った者はブラスト辺境伯の家臣である。返還は主人を中心に行われる。これは誰がどれだけ貢献したかを確認し、それに見合った見返りを付けて返還する事が考えられているからだ。

 しかし、商人の場合は違う。必ず事前に契約を結ぶ事が定められている。これは商人ギルドと王国が間に入る為により厳しい取り立てに為る恐れがある。その為貴族間で投資した方が良いのであった。


「まったく現金な家臣どもだな…」

 レイバーグは投資の願いを聞き遂げたことで全家臣等に通達した。そして彼を窓口に一括してオリマッテに投資額を渡すことになるのだが、その過程で既にどれだけの額が投じられるか判明しているのだ。今迄オリマッテは自身の出自を考えて遠慮していた為にこうした事は分からなかったが、それでも家臣の態度を見れば今迄どう接していたかが分かる物だ。それ故に呆れる様な、これこそが貴族の嗅覚かといった感情で言葉を発した。まだレイバーグはオリマッテを重臣に取り立てるとは宣言していない。爵位も男爵のままだ。だが、目聡い家臣等は既に彼がそれを睨んで動いている事に敏感に反応した結果だったのだと判断した。






 ロドム達は正式に冒険者ではなく彼の家臣となった。今迄は冒険者との兼ね合いで付き合いが在ったと言う物だが、モノースル領を手に入れた瞬間それではモノースル家の元家臣と吊り合いが合わないからである。とは言え元平民等のロドム達と比べる事は出来ないのが現実だ。あくまでも格の問題で彼等を引き上げたに過ぎない。今まで通りの付き合いで良いとオリマッテは彼等に話したのである。

「しかし、何だかあっと言う間に時が過ぎていくな…」

 ロットロン村へと戻り開発区となる場所で精を出すロドムはそう呟く。彼等も貴重な働き手として作業に従事している。

「どうしたんだロドム、いきなり?」

 隣では木を伐るアランがそう問う。本来此の場は開発区ではなかったが、思った以上に人が集まったことでエリアを拡大しているのだ。その伐採で得た木々は確りと家の材料に使用される。

「いや、孝雄実が来てからの事をつい思い出してな」

 そう言うとアランとその近くで丸太を運んでいたウォーレンも彼の言葉に頷いた。

「確かにな。そもそもオリマッテ様の計画も、孝雄実が居なかったら実現するのはまだまだ先の話しだったからな」

「そうだな。そう考えれば孝雄実の存在は我らに大きな役割を果たしてくれた」

 アランとウォーレンはそう話す。

「そう言えば深い森の開発もそうだな」

「ああ、ブラストルアイクを結ぶ街道の話しだろ?そう言えばあそこに住む賊を退治出来たのも鬼を孝雄実が魔法で退治したからだもんな」


 天災クラスと言われる鬼の出現によりレイバーグは五千名の兵士を集めて討伐へと向かった。道中諸侯等も参加し、いざ決戦と言う段階で呆気なく鬼が倒された話を聞いた。軍を動かせば金が掛かる。それ故に諸侯と家臣等の救済を目的に、懸案であった深い森に住む賊を退治することに戦力を振り向けたのだ。

 これにより救済と危険の除去が達成できたのだ。さらに一番活躍した孝雄実は多くの礼金を諸侯から受け取ることに為っていたが、マリアンを仲間にすると言う事で全額放棄したことで多くの金が浮いたのである。

 現在の開発はその資金が充てられている。

「既に半分ほどが着工している様だぜ」

 工事は此方側とブラストルアイク側の両方から行われている。道中数か所に兵が駐屯できる場所と休憩場所を設ける話しもあり、全体で恩恵に与れる構図が発生しているのだ。

「それを考えるとあいつはほんとうに凄いんだな…」

 アランはしみじみといまは遠くにいる孝雄実たちを思い出す。そこには彼等の妹的な立場のエレオノーラやサラ、マリアン等が思い出されている。

「ほらほら、時間ないんだよ!手を動かして!!」

 そうしていると彼等の仲間であるダンがやって来てそう指摘された。今や現場監督から資材調達までオリマッテの右腕としてロットロン村の開発に携わっている。彼は正真正銘エレオノーラの弟である。やはり優秀な遺伝子は彼にも受け継がれていたのだ。


「ああ、すまねえなダン」

 ロドムたちはそう言うと作業を再開する。とは言え殆んど伐り倒し終えた中での事だ。それほど急ぐ必要もなかったのである。ただ、今日の行程までと言う範囲でダンはそう彼等に言葉を掛けたのだ。

「それでなにを話していたの?」

 手を動かしながら、と前置きを話してダンは尋ねた。

「たくっ厳しい事言うぜ。なにこうして開発出来ているのも孝雄実が居なければ何も始まらなかったな、ってな」

「ああ、なるほどね。確かにそうだね。いやー驚いたよね。あそこまで無尽蔵に土を掘り返す、井戸を簡単に造る。エレオノーラも良い人を見つけてくれてよかったよ」

 ダンは姉の事を名前で呼ぶ。特に二人は年が一つしか違わないから尚更だ。

「今どの辺りに居るんだ?」

 アランはその会話が気に為りそう尋ねた。

「この前届いた手紙だと王都に到着しているみたいだよ。色々あってドラゴンに乗って王宮へと連れて行かれた話が書いてあった」

 そう言うと三人はやはり何かが起こるのだとしみじみと思うのだった。


「あっ、後仲間が増えたって、またしても女だってさ。何かインクが震えていたからライバル出現かもしれないね」

 何やら楽しそうな燃料を投下したダンはにっこりとほほ笑んだ。彼等にはエレオノーラがどの様な心境でその手紙を書いていたかが手に分かるのだ。

「まあお互い初心だからな。出来れば結婚まで行って貰いたいぜ」

「だな。でもそうするとサラやマリアン達はどうなるんだ?」

「サラは男爵様だ。簡単に結婚は出来ないだろ。マリアンは孝雄実の奴隷だ。これも出来ない」

 ウォーレンは的確にアランの質問に答える。

「ならライバルはその新しく加わったって言う女か?」

「そうなるかな。でも楽しみだよね。俺たちは此処から出る事は出来ないしさ」

 全員家族持ちである。それにロットロン村に骨を埋める事を決めている為に孝雄実たちの様に王国中を移動する事は出来る筈が無かった。その点でもエレオノーラの手紙は貴重なのだ。これ以外にもエルサンド族の話し等既に五通手紙が届いている。これは家族のみならずオリマッテ等も楽しみにしているのであった。


「でもどんな女性なんだろうな、新しい仲間って」

 アランがそう言うと彼等の後ろから声が聞こえる。

「それは私の娘だよ」

 四人は後ろを振り向くと冒険者の格好をした女性が立っているのであった。


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 久々の開発記でした。物語上此方の話しも進めないといけない事に気が着いた今野常春です。

 ご感想等お待ちしております。

 それでは次話で御会い致しましょう!

              今野常春

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