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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
気が付けば魔族が!編
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第七十五話 王家襲撃

 フェーバル王は義理の息子と為るアレンゼントル・デレッロ・ストランデス・フロランス侯爵と自室で日付を跨いだ魔族側デムレストア帝国の特使であるムーレリアとの会談を思い出し、語り合っていた。

 その中で、次第にマウスゥート村における事件で魔法と魔族と言う言葉の重みを理解し始めた時である。二人は向かい合う様に話している。此の場では王と家臣と言う立場では無く、親子と言う関係であった。だが義息子のアレンゼントルはおかしな光景をフェーバル王の背後で目撃することになる。

 空間が縦に割れると大きな鎌が最初に姿を現し、次に黒いローブに身を包んだ者が姿を見せた。彼はこの瞬間声を出し、同時にフェーバル王を庇うべく席を立とうとした。下半身と腹筋に力を込め、さあ立ち上がるぞ、声を上げるぞとした瞬間まるで反応が無かった。

(か、体が動かない。それに声も出無い…)

 視覚は問題なく、目の前で酒が入ったことで饒舌に話すフェーバル王が見える。そして言葉が聞こえる事で彼は聴覚も問題は無い事を確認した。だがその間にゆっくりと鎌が動いている。持つ手は骨筋張った見た目である。黒いローブからそれだけが見える。表情すらも窺う事は出来なかった。


 そうしている間に鎌は振りかぶられる。間違いなく首を刎ね飛ばすこと間違いなしの構えである。

(くっ、一体どうなっておる。此のままでは義父上が!!)

 そう思っても意思ではどうにもならない。目で訴え掛けようにも彼は視線が合っていない事に気が付いた。


 遂に鎌が振り下ろされる。

 アレンゼントルは思わず目を瞑った。

 だが、鎌が出した音は人を刎ねる音では無かった。

「そうはさせないぜ!」

 声と共に聞えた音は金属同士がぶつかり合う音であった。そして目を開くとそこには近藤孝雄実の姿が在った。


『人間だと!?馬鹿な一体何故この場に居る…』

 無機質な声が室内に木霊する。その声の主は勿論鎌を持った者である。右側から斬りかかる様に鎌は振られている。長さが在る為に孝雄実はその間には居る様に内側から鎌の動きを止めている体勢と為っている。

「そんな事は知らなくても良いんだよ!」

(くっ!まだ体が動かない。それにどうして気が付かないのだ、義父上…!!) 

 鍔迫り合いが行われ、力が拮抗している中、助けるならば今しかないのだ。しかし、それが出来ない事がもどかしく感じる。加えてこの様な出来事に為ってもフェーバル王は饒舌に会談の感想を述べている。

『グググ、まさかここでしくじるとはな…致し方なし』

 そう言うと鎌から両手を話すと再度空間を切り裂き黒いローブの者は姿を消したのである。


 彼の者が姿を消すと孝雄実は二人へと視線をやる。するとムーレリアの名を呼び始めた。

『倒したか…否、逃げたのであろうな…』

 すると先程と同じ様に空間から彼女が出て来た。

「ああ、中々強かったぜ。それに力では無い何かで阻まれている様な感じだった」

 孝雄実は対戦している時の感想をそう評した。力で押しあっているものでは無かったと言う事だ。

「成程な。まあそれは後で良いだろう。先ずはこの二人に掛かる魔法を解除せねばならん」

 そう言うとムーレリアは手のひらを二人へと見せて、魔法を使用した。


「声が出る!体が動く!!」

 いち早く行動に移れたのはアレンゼントルである。僅かに遅れてフェーバル王も正気へと戻る。

「義父上!大事ありませぬか?衛兵!衛兵は如何した!!」

 そしてもう一人はアレンゼントルの声に只ならぬ事態と応援を呼びに出た。

「大事何を?言っている…しかし、どうにも少し前の事が靄に掛かっている様な気がせんでもないが」

「それは魔法の影響だな、フェーバル王よ」

 声のする方を見ると彼女が経っている事にフェーバル王は驚いた。

「ムーレリア!?何故貴方が此処に居るのだ!?それに近藤孝雄実であったな、君もどうして此の場に居る?」

「先ずは落ちつかれよ、フェーバル王話しはその後だ」

「衛兵済まぬがそこにある椅子を二脚持って来い」

 ムーレリアがそう言うとアレンゼントルは室内に置かれる席を衛兵に二脚持って来させる。そして二人に座る様に述べた。

 その後は大変な事態となる。フェーバル王は一体何が起こったのか判らなかったが一切を見ていた彼は王宮を守る衛兵の隊長が駆け付けると警備を厳重にするよう申し付けた。王国の軍務は全てアレンゼントルに裁量権が在る。後は王が権限を有するだけである。その頂点の者から命令を受ければ否と言う者は居なかった。






 気を取り直し室内は四人へと戻る。

「二人とも酒は飲めるかな?」

 アレンゼントルは孝雄実とムーレリアに問い掛ける。法令では二十歳からとなる酒も此の場は日本では無い。孝雄実はロットロン村に居る時から度々酒を飲んでいた。

「はい」

「勿論。だが、その前にその瓶を渡して貰おうか」

 ムーレリアはそう言うと手を出して受け取ろうとする。しかし、彼女の思惑と違いアレンゼントルは異なった受け取り方をする。

「毒等は入っておりませぬぞ。ムーレリア皇女殿下」

 彼は心外な、と言う気持ちであった。

「違う。その酒瓶に魔法が刻まれて居るのだ。いいからそれを渡せ」

 そう言って奪い取る様に彼から受け取ると、両手を瓶に当てて目を閉じる。その光景をフェーバル王とアレンゼントル興味津々と見やる。


「やはり魔力が込められておった。これで問題なく酒が飲めるな」

 そう言ってムーレリアは酒瓶を彼に返した。それを受け取ると最初にムーレリアに注ぎ、次いで孝雄実に酒を注いだのであった。貴族のトップに近い彼が孝雄実に酒を注ぐなどそうそうあるものではないだろう。爵位の低いものであれば羨ましがる話しであった。

「さて、二人は魅惑という魔法に掛かっていた」

「魅惑?」

 フェーバル王が尋ねる。

「左様。これは水分に溶け込ませる魔法であり、本来は戦いの前に掛ける魔法なのだ。特に自分は強いのだと暗示を掛ける意味でな。だが今回の様に様々な用途に使用出来る。その為に我が国ではこの魔法は使用目的に制限を掛けている」

「この魔法も魔族が使用出来るのかね?」

 そう尋ねるとムーレリアは頷いた。


「そうだ。人間は使用制限が多いから分からないだろうが、魔族は基本的に制限が無い。これも含め空間魔法もその一つだな」

「先程この部屋へと現れた魔法ですな?」

「そうだ。特使殿の父上よ」

「して、魔法は分かったが、ならばなぜムーレリアはこの事が分かったのだ?」

 フェーバル王は話しの流れから、この事案を予見し、且つ防ぐ事が出来たと分かっているにも拘わらず、何故ギリギリを狙ったのか、その辺りが理解出来なかった。


「そうだな。危険は承知ではあるがなんにしても敵を知らねばならなかった。フェーバル王には申し訳ないが、相手にとって極上の餌にさせて貰った」

 その言葉に瞬時に反応を示そうとしたのがアレンゼントルであった。しかし、それを手で制したのはフェーバル王であった。

「成程、敵にしてみればそう見えるのか」

 まるで納得したように話すとムーレリアは話しを続ける。

「これは憶測ではあるが、狙いはもう一つ特使殿の父上も含まれておる」

「成程。余と近しく、この国で最大の貴族の家柄であるアレンゼントルを狙うか…」

 そう言われ、アレンゼントル自身もあり得る話しと納得していた。だが、それをして得する者と言えば間違いなくあの者たちであると結論に辿り着いた。


『詠唱派』

 孝雄実を含めて同じ言葉が出て来た。此の派閥は気が付けばそう呼ばれていたに過ぎない。

「そう言えば俺たちが途中で止まった村にも魔族の魔法を使用して亡くなった人がいたよな」

 孝雄実がそれと関連付けてマウスゥート村での出来事を話題に上げる。

「そうだな。あれは間違いなく魔族の魔法である。そして今回と同じ者がやったのであろう」

 ムーレリアは孝雄実にそう答えると再度孝雄実は尋ねる。

「どうして同じ者と判るんだ?」

 これは話しを聞いている二人も疑問に思う話しである。


「魔力の痕跡だ。魔力にはその者独自の色彩が在る。私もだが孝雄実も魔法を使用すれば異なる色彩が見えるのだぞ」

 そう言ってムーレリアは魔法を発現させると直ぐに消す。

「孝雄実私の色は何色に見える?」

 そう言われて孝雄実はじっと目を凝らす。フェーバ王たちはまったく見える事は無かった。

「黄金の様な輝きが見えるけど…これがそうなのか?」

「ほう、やはり見えたな。正解だ、孝雄実!私の色はこの瞳と同じ黄金の色彩が見てとれるのだ」

 そう言われても見えない二人は何もない場所で指をさしあーだのこうだのとムーレリアが孝雄実に説明を行っているようにしか見えなかった。

「す、済まない。我らにも少し分かる様に話してくれると助かるのだが…」

 フェーバル王はそう言うとムーレリアはしまったと言う顔に為る。

「済まぬが、そなたら魔法は?」

「一応できるぞ。だが残念なことに詠唱破棄は決して出来ないがな…」

「私も同じです」

 少し残念そうに二人は答える。


「そうか。まあいい、魔法とは基本的に詠唱など無くとも簡単に発言できるものなのだ。そもそもがおかしな話なのだがな。此処に居る孝雄実も詠唱などは必要としていない。恐らく何某かの力がそれを必要としているのであろうな」

 ムーレリアはそう核心を突く事を話し始める。彼女にとって煩わしいと感じる程の詠唱は無駄と断じる他に無かった。

「確かに、我が国において詠唱と言う物を使用する事は絶対に近い事柄となっておる。特に王である余を始め王家は必ず使用せねばならぬ」

 それを破ったからこそ、子でも出会ってもチャレン…レイスレットを新たな男爵家の者として王族から剥奪したのである。ある意味であの瞬間から対立を表面化させていたのかも知れなかった。






 四人の会話は一向に終わりを見せない。王はこの時六十を超えている。ドットゥーセ王国の平均寿命は貴族で八十と高齢である。しかし、時刻にして四時を回る頃まで延々と起きていられる精神力は流石為政者と言ったところか。

「さて時間も押しているな、余としても一眠りしたいのだが」

「そうだな、確かに時間からすれば朝と言っても差し支えないものであるな。案して欲しいこの場所は安全だ。私を始め配下の者が魔力に関して見張っている。物理的な問題はそちらの兵士が廊下で見ているだろう。何かあれば空間を超えて駆け付けよう。最後に一言、魔族は貴国の中枢に入り込んでおる可能性が大きい。その事を念頭に今日の会談と以降ではないか、フェーバル王」

 ムーレリアは敢えてあの場でその話をして一気にあぶり出そうと言う魂胆を彼に伝える。察しの良い二人は彼女が言う事を理解し、フェーバル王が代表し答える。

「成程、面白そうであるな。残念ながら奴らの歴史は王家と同等に長い物が在る。下手をすれば建国以前から此の場に居たのかも知れぬな」

 自虐的に彼女へ話すが当のムーレリアはそう考えているのである。だからこそツイーテアを始め数名をデムレストア帝国へと戻し調べを命じているのだ。

 その日はそうして終わりを迎えるのであった。






 一方、黒ローブの者は空間を渡るととある小屋へと姿を露わす。

「申し訳ありません。思わぬ邪魔が入りまして…」

 その者は両膝を地面に着けて目の前に座る人物に深く頭を下げる。薄暗い中はっきりと分かる存在感がヒシヒシと伝わる。

「失敗は許されないと申した筈だな」

「だが、あの姫が現れては致し方ないのではないか?」

「しかし、こ奴を抑えたのは人間の坊やよ?」

 そう話し合っている間。黒いローブの者は生きた心地がしなかった。過去に失敗と判断された者の末路を知るが故である。

「そう言えばそうであったな。しかし、不思議だな。あの小僧は一体どうやってあの場に現れた?」

「確かにそうですな」

「まるで空間魔法の様な現れ方よね…」

 そう話しているとこの部屋の扉を鳴らす音が聞こえる。それに気が付いた声の主は表情を変える。

「忙しき時に…処分は保留と致す。いいか、こうなれば手を出す事は許さぬ。以後は普通に過ごせよいな」

「はっ!真に申し訳の次第もありません」

「下がれ」

 そう言うと黒いローブの者は姿を消すのであった。


 それに合わせる様に再度ドアを鳴らす音が室内に響き渡る。今度は声も伴っている。

「閣下!閣下は御在宅でしょうか!!」

 その声に答える様にドアを開ける。

「どうしたこの様な時刻に、一体何かあったのかね?」

 家主から見た者は王国軍兵士であった。鎧の胸部分に王家の紋章が暗闇でも鮮明に輝いている。

「はっ!先程王宮より知らせが入りまして、陛下の自室が何者かに襲撃を受けたと言うことであります!!」

 この場所は王宮に勤める者が住まうエリアである。その声に俄かに人の息吹が聞こえ始める。兵士はそれを考慮して話している。同時に各家に兵士が伝えているのであろう至る所でその声が聞こえている。王都の造りによって一般の国民には声は伝わらない。

「何!陛下が!?してその者は如何した?」

「逃げられました。しかし、陛下を始めフロランス侯爵様はご無事であります。唯今王宮警護の要請により非常招集が発令されております!」

「わかった。至急向かおう。連絡ご苦労であった」

 そう言って兵士はこの家を後にした。


(まったく…この様な大事になろうとは)

(ですが彼の二人を殺せばさらに大事に為りますぞ)

(そうです。むしろこの事を利用する事を考えましょう)

 こうして家主は王宮へと向かう衣装へと着替え家を後にするのであった……


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 ご感想お待ちしております。

 誤字脱字在りましたらご報告いただけると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう!

               今野常春

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