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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
異世界でするべき事、その立場って…
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第二話 これは異世界と言う物ですか…

 11月16日改稿

 間違いが多すぎます…

 反省しております…

 その馬車は街道を進む。街道とは言え地面を押し固めただけの通り道である。衝撃吸収の仕組みが無い馬車は大層乗り心地が悪い。加えて馬車の種類は荷物を運ぶために造られたものであった。

「イテッ!…知らないてんじょ、イテ」

 有名なワンフレーズさえ言えなかった近藤孝雄実は、寝心地最悪の馬車で目が覚めた。

「ギャウ!」「ガウッ!」

 二頭の子虎は彼が目を覚ますと直ぐに声を上げた。そして顔をペロペロと舐め出す。まるで犬の様である。


「気が付いたかね?」

 御者の席から声を掛けてきたのは、彼が気を失う前に抱きしめてきた男である。

「え、ええ…はい。御蔭さまで…」

「それは良かった。もう少し辛抱してくれ。此処では中途半端なんでな」

 孝雄実は、降りても良いですか?と聞ける余裕は無く移動を続ける。中には固定された荷物があるが、彼は固定されていない。目を覚ましてからと言うもの最悪な状況を孝雄実は味わっている。唯一の救いはブラックとホワイトが緩衝材として耐えてくれたことである。


「さあ、着いたぞ。君も降りて構わないぞ」

 御者の男はそう言うと馬車を降りていた。彼等は小さな村に到着していた。孝雄実は言葉通りに馬車を降りる。虎っ子も同様に飛び降りた。

「おっ、とと…ムギュ」

 彼は長い事馬車の中で激しい揺れに襲われていた。それ故に地面に足を着けた瞬間バランスを崩した。

「……貴方は随分と積極的なのね。私、殿方にそうされるなんて初めてだわ」

 とても甘い匂い、肉感のあるボディーに孝雄実は瞬時に女性だと判断する。加えて彼女の声には怒りが内包されていた。となれば彼が行うのは決まっている。


「申し訳御座いませんでした!!」

 土下座、DOGEZAである。悪い事をしたら謝る場合、何かをお願いしたい場合に行う土下座は便利な作法である。彼は、そのさらに上をいくジャンピング土下座を彼女の目の前で敢行したのだ。

「えっ、ちょっ、何これ!?」

「誠に申し訳御座いませんでした!!わたくしこと近藤孝雄実は慣れぬ馬車に乗り、心身ともに疲れ果てていた所。不慮の事故とは言え女性の、それも美人な貴方の体に触れました事、平にひらにご容赦頂きたく!」

 孝雄実は土下座した状態でその様に彼女に話す。周囲は唖然としていた。彼が一体何をしたのかが全く理解できなかったのだ。加えて彼の口上である。謝罪と褒め言葉を織り交ぜての話し方は今まで聞いた事が無かった。


「ぷ、プハハハハ。何だ、それは、おい君一体何をして、…やべぇおかしくて腹が…」

「まっくだね。くくく、それに見てよ。エレオノーラの顔、どうしたら良いのか、って顔で固まっているよ」

「ロドム、ダン笑っている場合じゃないだろ。村人に注目されているぞ」

「そうだ。おいロドム何とかしろ…」

 アレンと言う男が何とか収集しようとしたところ、彼等が護衛していた男が戻り、ロドムに命令する。

「はっ、申し訳ありません」


 ロドムはそう言うとすぐさま孝雄実を立たせて、エレオノーラを正気に戻した。それを確認した男は声を掛けて大きな建物へと移動を始めた。中へと入ると一階にある大きなテーブルへと腰掛けた。目の前には幾らかの料理が用意されている。それを飲み食いしながら男は話しを始める。


「さて、これで落ち着いて話しが出来るな。私はオリマッテ・ロットロン男爵と言う。君が助けてくれなければ今頃どうなっていたか分からん。改めて礼を言わせて貰う」

 オリマッテはそう言うと頭を下げる。対してこのような事になれない孝雄実は慌てる。

「ああ、いえいえ、そんな頭を上げてくださいよ。おれ、私は困っている人を助けただけですから」

 この言葉に六人は固まる。彼等の常識では逃げるのが当たり前である。何かによって拘束でもなければ、人数の少ない方に肩入れすることは無いからだ。余りにも御人好し過ぎると思ってしまった。だがそれと同時に勇気ある行動で助かった彼等である。その行動を笑うことは絶対にしない。


「そうか、それでも君の行動で命が助かったのだ。此の礼だけは受け取って欲しい。…ところで君の名前は何と言うのかね?」

「名前ですか、近藤孝雄実と申します」

「コンド・タカオミ?変わった名だな。何処から来たのかね?」

 此の質問が一番孝雄実にとってつらい所である。どう話していいものか、彼はそう悩んでしまう。どう説明し様にも彼自身が此処と自分のいた場所の繋がりが得られていない。そんな中でどう言えばいいのかを悩んでいるのだ。

「言いにくい事があっても良いから全部言っちゃいなさい。男爵は立派な方だからどんな事でも受け入れるわ」

 エレオノーラはそう言って孝雄実の背中を押す。これにはオリマッテの退路も絶っていた。その言葉にオリマッテは少し困った顔をするのだった。


「そうですか…分かりました。目が覚めると、皆さんが戦っていた場所よりもさらに奥で寝ていました」

 孝雄実はそこで言葉を切る。少し喉を湿らせてから話しを続ける。

「目を覚ましたらあの二頭の虎がいまして、周囲は暗くなり始めていましたから、二頭の子虎に急いで川辺へと移動を始めて貰いました。川辺で夜を過ごして、早朝移動を開始しました。そしてオリマッテ男爵に出会ったと言うことです」

 その二頭はどうしているのか、言葉が分かるのか、またはしつけが確りと出来ているのかこの店の店主が断りを入れると大人しく店の外で待っているのであった。


 孝雄実が話しをするにつれて、みんなの顔が変わって行った。あったことをそのまま話したのがいけなかったとも考えるが、どうにも合点が行かない。

「それが本当だとすると君は『呼ばれた者』かもしれんな」

 彼はオリマッテの言っている事が理解できなかった。そもそも此処が彼の知る世界である前提で話をしていたのだ。しかし、彼は孝雄実を『呼ばれた者』と言う。だがよく考えればと彼は思った。そもそも馬車を使用した、それこそ十五-八世紀の世界観を持つ白人社会をどこで見られるのか。何故言葉が此処まで通じるのか、数え上げればきりが無いかもしれない状況に孝雄実は気が付いていなかった。それほどまでに彼は思考力を失っていた。暖かい食べ物を腹に入れ、気持ちを落ちつけられたのが良かったのだ。


「『呼ばれた者』とは何でしょうか?」

 孝雄実はおずおずと尋ねる。まさかという思いが脳裏を駆け巡ったからだ。

「ふむ、やはり知らないか…良いかね、良く聞きなさい。『呼ばれた者』とはこの世界以外からやってきた者のことだ。その者は何某かのアイテムを持って、さらには使い魔を連れてやって来るのだ。現れる場所は不明、時期も不明だ」

 そう、まさかと思った最悪の事が近藤孝雄実に降り注いだのである。彼が読む小説でも似たような世界観があったのを思い出す。何度となく読み返した本なのだがどうにも思い出せない。


「その方たちはどうなったのでしょうか…」

 これは聞かねばならなかった。孝雄実は逸る気持ちを抑えて尋ねた。既にその名が知れ渡るほどにこの世界には異世界人が来ている事の現れである。

「ふむ…仮にコンドがそうだとして、今よりも百年以上も前の話しだ。その者は幸せに生涯を全うしたそうだ。…済まないな、私はその話には詳しくない。皆はどうかね…?」

 オリマッテは皆を見る。しかし、彼以上にその件の話しは知らない。この話しは昔話的なものである。


「そうですか…」

 孝雄実は落ち込んだ。しかし、それも仕方のないことだ。だが、こうしてもいられない状況がオリマッテ等には存在している。

「ところでコンドはどうするかね?私たちはここで一夜を過ごせば、私の領地へと戻らねばならないのだ。もしよかったら私と共に来るかい?この先はあのように危険な場所は無い。安心して移動が出来る。どうだろうか?」

 孝雄実にはこの話しを断る理由が無い。此処は是が非でも彼等に付いていかねば生きてはいけないのだ。それは彼の都合であるが、オリマッテもまた別の思惑を宿しているとは彼は全く気が付く事は無かった…

「迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします」

「おお、そうか。それではこれからよろしく頼むよ。…ロドム彼の事宜しく頼むぞ。私は先に休むことにする」

 オリマッテはそう言って此の場を後にした。彼は二階へと上がって行った。



「まあ、なんだ。これからよろしくってことで、みんなの自己紹介と行こうか。俺はロドム、この中で隊長をしている宜しくな」

 がっちりとした体躯で、見た目から人を惹きつける雰囲気がある。彼が隊長と言うのも頷ける。

「次は俺だな。俺はアラン、副隊長を務めている」

 彼もロドムに負けない体躯である。彼を補佐すべく雰囲気は厳しさを纏っている。

「私はウォーレン。コンドの矢は素晴らしかった。宜しく頼むぞ」

 戦闘中は重そうな鎧を纏うと言う彼は、二人よりも大きな体をしている。それよりも彼の優しそうな顔が印象的であった。

「んじゃあ、次は僕だね。僕はダン。戦闘は得意じゃないんだけど。情報収集なら任せてよ」

 小柄な男である。下手をすれば男の娘と言われかねない、華奢な体格と中性的な顔であった。

「最後は私ね。エレオノーラよ。いろいろと、宜しくね」

 彼女の事はもう良いであろう。孝雄実が評している通りである。


「近藤孝雄実です。宜しくお願いします」

 彼は立ち上がると頭を下げる。こうして彼はロドム率いる隊に仲間入りすることになった。

「よし、これでいいな。本当ならこれから仲間入りを祝い乾杯と行きたいのだが、いまは任務中だ。それは戻ってから行う。それに朝が早い、早く寝なければいけないのだが……」

 ロドムは言い淀む。この言葉で言い淀むと言うことは部屋割なのであろうと孝雄実は考えた。

「もしかして部屋割でしょうか?私ならどこでも構いませんよ。何なら外でも…」

「いやいや、それはいかん。確かにコンドの言う通りなんだが…エレオノーラすまんが君はコンドと同じ部屋で寝てくれ」


 ああやっぱり、これが孝雄実の心の声であった。彼は人の機微を読むのが上手である。目や態度、雰囲気でどう考えているのかが分かるのだ。だからロドムが悩んでいるのが微かに分かった。

「なっ、ちょっとどう言うことよ、ロドム。どうして私が彼と一緒なのよ?」

「別に良いじゃないかエレオノーラ。あそこまで褒められたんだ。お前だって満更でもないだろ」

「なっ、アラン貴方言うに事欠いてなんてこと言っているのよ!」

 しかし、これは決定している話しであった。他の四人はニヤニヤしながら部屋へと移動していった。


「仕方ないわね。私たちも行きましょうか」

 彼女は大きくため息を吐き出すと気持ちを入れ替える。

「は、はい宜しくお願いします!」

 孝雄実は動揺しているのは明らかであった。



「…さて、この状況を見て何かあるかしら?」

 エレオノーラと孝雄実の目の前にはベッドが一台。本来この部屋は一人用である。理由は簡単である。大部屋と個室しか此の宿には無かったのである。

「よ、よろしく?」

「バカッ」「グヘェッ」

 ボケとツッコミ宜しく淀みない彼女の拳は彼の腹に吸い込まれた。

「良いかしらコンド、私たちはあの一台のベッドで寝なければならいのよ。分かるかしら?」

「は、はい…よく理解しております…ですから、宜しくと…グホッ!」

 次は蹴りである。綺麗にお腹を蹴りあげる。顔をやらない辺り手慣れているようだ。

「いいかしら、次は無いわよ。大人しく寝るか、此処で野垂れ死ぬ様に眠りに付くか選びなさい」

 彼女の目は確実に犯る目をしていた、そう孝雄実の目には映っていた。


 彼女の脅しにも似た提案は功を奏したのか、孝雄実は大人しく一人寝用のベッドに潜り込む。隣にはエレオノーラが横になっている。もう心臓はバクバクしっ放しである。

「ねえ、コンド確かに私は大人しく寝なさいとは言ったわよ。でもね、その心臓の音どうにかならないの?

 静まり返った室内は小さな物音でさえ敏感に響き渡る。遠くの物音でさえ聞こえてくるほどだ。室内には明りは無い。僅かに射す月明かりが頼りの部屋である。

「そんな事言っても…エレオノーラさんのような美人さんと一つのベッドで寝るなんて、冷静になれと言う方が無理ですよ」

「なっ、また貴方は…なんて事を言うのかしら……いいかしら、貴方は誰にでもそう言うことを言うの?」

 彼女の顔は赤面している。幸いなことに二人は別の方向を向いている。仮に向かい合う、なんて事になれば瞬時に彼女の顔が照れている事が分かるだろう。

「いやいや、幾ら俺でもそんな簡単に女性を美人だなんて言えませんよ。エレオノーラさんが本当にそうだから…」

『美人だね』そう言っただけで、セクハラとして訴えられかねない社会が在る国で生きる孝雄実である。前に新聞で読んだことがある孝雄実は、何時かはそんな社会に出るのかと溜め息を吐いた事を思い出す。そう易々と言える言葉では無い。しかし、彼は心の底から彼女をそう思ってしまったが故に言葉を発した。


「そ、そう。分かったわ…それならその言葉受け取ってあげるわよ…ありがとう……」

 これ以後彼女は何も言うことなく眠りに付いた。孝雄実もしっかりと話しをしたからか、慣れない移動で疲れたか、定かではないが深い眠りへとつくのであった。



 翌朝のことである。物語で良くある光景が二人を襲っていた…

 エレオノーラは朝の目覚めは悪くは無い。朝日が差し込むと、勝手に覚醒するほどすんなり起きられる。しかし、体が思うように動かないのだ。それだけでなく妙な圧迫感を上半身中心に感じた。

「…ちょっと、なんで体が、動かないのよ」

 毛布の様な掛け布団は一枚だけである。寝る前は二人で仲良くシェアしていたのを覚えている。幸い彼女の腕は動く。その原因を探るべく掛け布団を剥いだ。

「……そう貴方はそう言う行動を取るのね…」


 孝雄実の寝相はそれほど悪くは無い。だが彼には何かに抱きついて眠る癖がある。彼の家では眠るとき抱き枕は必需品であった。ブラックとホワイトと寝た時が良い例である。布団代わりでもあったし、モコモコの毛が彼には最適であったのだ。

 彼はエレオノーラを抱きしめるのではなくして、彼女の胸の間に顔を埋める様にして抱きついているのである。時折感触を確認するように顔を動かしてもいる。まるで起きているかのように、確信犯であるかのようなその動きは彼女の怒りを増長させる。


 所謂ラッキースケベから始まる孝雄実とエレオノーラの関係はその時は事故として、さらには見たことが無かった土下座を見せられ有耶無耶のうちに終わったことである。しかし、今は違った…

 無意識にとはいえ、彼女は一度として親兄弟以外の男に触れられた事が無い。恥ずかしさが一気に彼女を包みこんだのである。


 二人が一階に下りた時には既に他の者は勢揃いしていた。既にオリマッテ男爵も準備を終えて待っている状況であった。彼等が二人を見たとき、何かがあったと悟ると同時に笑いが起きた。それは従業員も一緒である。

 朝食が並べられたテーブルにエレオノーラは憮然とした表情で座る。隣には顔をパンパンに張らせたニュー孝雄実が座ったのであった…


 最後までお読み頂き有難う御座いました。

 つい、書いてしまいました第二話です。何だかんだで話しが頭に浮かんでしまいまして…

 ヒロインはエレオノーラかな、と現段階では考えておりますが一応未定と言うことで話しを書いています。


 ご感想等お待ち申し上げております。

 誤字脱字等々御座いましたら御一報頂けると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう。

               今野常春

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