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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
気が付けば魔族が!編
73/107

第六十四話 さあ、戦いましょう…

 地底竜の卵だと魔鉱石を生産していた核を言い放ったポンは、孝雄実と相田愛理との間に関係が無かったかと言う様なニュアンスで尋ねた事で室内の空気が冷え切ってしまった。それに気が付いたポンは慌てて言い直す。主にムーレリアが中心人物であるが彼女は無意識である。

「済まない、そう言う訳ではない。そうですな、血を交換した事は無かったか、と尋ねたかったのですよ」

 そう言ってポンが釈明すると孝雄実は事故後の話しを思い出す。彼にしてみれば、そう言えばその様な話しをしていたな、程度の話しであった為に言われるまで思い出せないでいた。


「そう言えば、輸血をして貰いました。輸血と言って分かりますか?」

「大丈夫です。話しを続けてください」

 ポンはその様に述べると孝雄実に先を促す。

「先程俺が重傷となった話をしましたよね。俺はその姉に当たる人から血を分けて貰ったのです。若しかしてそれが関係していませんか?」

「そうですね。ではその資料を一度私に渡してください」

 孝雄実は素直に今見ている資料をポンに返す。そうするとページをめくり始めて彼女の名を探し出す。一覧とはいえ名前が一覧で表示されてはいなかった。


「うーん、おかしいですね。お名前が在りませんな……」

「どう言う事なの?孝雄実と同じ場所出身ならば同じ因子を持っているのではないのか?」

 ムーレリアは魔に話していた言葉を思い出して本へと尋ねる。しかし、それに対して答えたのは彼の秘書と的な立場を務めるペケだった。

「ところがそうでもないのです。確かに日本と言う場所は地底竜様の馴染み深いところで有りますが、そこに暮らす者全てがそうとは限りません」

「ペケの言う通りです。となれば近藤孝雄実さんが此方へとやって来られたのはその混じり合った因子が原因かもしれませんね。加えてムーレリアさんと白さんのお二人という奇跡が此方へと正確に導く事が出来た。そう考えるのが一番あり得る話しですね」


「私たちが?」

 ムーレリアは可能性の話しと言われても此方への鍵が自分たちである事に驚かされる。

「そうです。そもそも因子をお持ちの人間が一人で此方へとやって来ること自体が在り得ません。恐らく卵を触らせなければ此方へと来る事は出来なかった筈ですからな」

「確かに、私が孝雄実に触れさせたのだからな。して、それが原因として何ゆえに此方へと来る事が出来たと考える?」

 ムーレリアの質問に答えるべき確かなものが無く手を顎に当てて悩むポンは言い淀む。


「それが分からんのです。我らも公の民であります。これは始めてお話しすることですな。ドラゴンと呼ばれる種は主に心の中に民を抱えておるのです。勿論別次元に棲むと考えてください。人間の住まう世界と魔族が住む世界が別れる様にドラゴンもまた別に暮らすのです。これは要らぬ軋轢を生まない最善の手段でしょうな。加えて構造も手を加えて主は我等をお生みになられました。人間は全てにおいて不完全では有るが、物を生み出すと言う卓越した能力を。魔族は全てを魔力に依存する体質では有るが、長寿と言う能力と人間よりも強力な力を。我らドラゴンは神域に近しい存在として、永遠の存在と成り得る種として何人も侵す事の出来ない能力を。相互に干渉しにくい環境を与え、それが上手く作用しております」

 長々とポンはその様に説明をするが、それを納得するように聞いているのはムーレリアであった。


「成程、その話で合点が行ったぞ」

 そうして彼女はその様に話す。

「どうしたんだよ。ムーレリア?」

「どうしたのよ?」

 孝雄実と白は同じ言葉を彼女に話しかける。

「以前ゴッゼント大陸の話しはしたな?」

「あの魔力の塊の話しだな。それがどうしたんだ?」

「そこでは各部族が個体数制限を掛けて住んでいる。それに漏れるものは人間の世界へと間引いているのだ。たしか此処までは話したな」

 今度は孝雄実は言葉を発することなく頷く事で肯定する。


「その時は姿と魔力を落として人間界へと放出させるのだ。これが未だに分からない事だったのだがポン殿の話しで納得したわ!些か腹の立つ事でもあるがな、だがそれも人間の世界である。人間を、他にも動植物が存在する世界である。そこに異物が放り込まれるのだ。自然と討伐対象へとかわるのだ。余りに強過ぎる事はその世界では許されない。それ故の措置と言うことだったか…」

 孝雄実はその言葉で有る事を尋ねる。それは拙い絵と身振り手振りで伝える。

「俺が最初にこの世界に来た時だ。鬼と呼ばれる魔物が出現したんだ。大きさはこれくらいでとにかく大きかった。素早さは無かったが一歩がとにかく大きかったからな。まるで災害にでも遭ったかの様な被害だったよ。それも魔族の違いなのかな?」

「うーん、若しかすれば巨人鬼の事かもしれんな」


「巨人鬼って、そのまんまだな…でもそれも抑えられているってことなんだよな?」

「そうだ、でもその枠には当てはまらない場合もある。そえがあの蜘蛛の場合だな。あいつが間引きされた理由は自ら望んで大陸を出たからだ。その場合は力の抑制を受ける事は無い。これはそいつの性格次第だがなあいつは稀なケースなんだ」

 そう話している中でポンは話しを締める。

「さて、話しを一度区切りましょうか。先ずは此処へと来た事を為しましょう」

 ポンがその様に言うといきなり雰囲気を変える。周囲も障害物の無い空間へと変化を遂げる。


「老人夫婦があなた方をどれほど鍛えたか。私はそれを確認せねばならないのです。続きはその後で…勿論試験を突破してからですが」

 

 だが彼は予想に反して人間の姿のままであった。

「ドラゴンの姿にならぬのか?」

「御心配には及びませんよ、ムーレリアさん。ドラゴンの姿は仮の物本物の姿は人の形なのです。魂がそれに合うようになれば自ずと人の姿に成れます。それにあの体格では満足な戦いは出来ないのですよ。シンキを使用する事で自在な戦闘が行える。であればドラゴンそのままの姿ではそれを表現しにくくなるのです」

 ポンはその様に話すと突如大剣を出現させる。洋剣では無く刀のタイプである。彼はそれを何度か振ることで準備体操を行う。その速さは孝雄実が稽古を付けて貰ったヘルシマシルトンの比では無かった。


「さあ、これから貴方たちの実力を試させていただきましょう。ですがその前に此方をお飲みください。ペケ!」

 ポンはその様に言うとペケを呼びだす。それに遅れることなく彼はコップに持ってやって来る。中身はジュースの様な色と匂いであった。三人は口には出さないがそれを問い掛ける様にポンを見やる。

「ご安心ください。あなた方は此方へと来て碌な休息をとっていない。回復薬だとお考えください。さあ、時間が勿体無い、早くそれを飲んでください」

 当然である。よく考えれば彼等はあの激しい揺れを起こしていた核の中へといると言う事だ。原因も聞いていない。そんな中で三週間以上もこの世界に居るのだ。外はどうなっているか、心配しない者などいない。

 三人は騙されたと思ってそれを飲み干す。有りがちな話しではあるが彼等の疲労感と言う物はきれいさっぱりと無くなっていた。


「すごい、体が軽くなった!」

「うむ、確かに私も軽くなったぞ!孝雄実はどうだ?」

「どうだろう、何か変わらないと言った方がいいな」

 三人の中でも変化が殆んど無かった孝雄実はその様に答える。だがその反応を見てポンとペケは何やら思う事が在る様である。


「まあ、人には効果が表れにくいと言う事も有りますからな。さあ戦いましょう。準備は宜しいですな!」

 彼はその様に言うと戦闘態勢へと移行する。まるで隙の無い構えは熟練の戦士の様相であった。それに呼応するように三人も構えを作り対峙する。

「よろしい、あのお二人の期待に十分応えてください。それでは行きますよ!!」






 それはあっと言う間である。ポンが合図の様に言葉を発すると一瞬で距離を詰め、三人へと肉薄する。刃を返した刀を横一閃、何時薙いだのか分からないほどの速度で以って彼等を攻撃する。

「散れ!固まっては不利だ!」

 ムーレリアは普段も男勝りな口調ではあるが戦闘時ともなればそれ以上である。まさに戦いの中でこそ華やぐ様な雰囲気すらある。事実彼女の顔は強敵に出会えた事の嬉しさを表現している。孝雄実と白はその声に呼応するようにシンキを使用して彼の後方へと移動する。これで正面をムーレリア、右後方を孝雄実が、反対を白が囲むという構図が出来上がる。


「成程、速度においては問題ありませんね。シンキを確りと使用為さっている。ではこれはどうでしょうか?」

 そう言うとポンは手を上に上げる。一瞬何をしたのか分からなかったが、突如地面が爆ぜる。

「魔法!?」

 そう、まるで詠唱破棄をしたような魔法の様な光景が巻き起こった。彼を中心に円形の形に爆ぜたそれはムーレリア達の視界を失わせるに十分な効果を発揮する。


「やはりこれは知りませんでしたか。それほど彼等は甘くは無いと言う事ですな!」

 ポンは何事かを呟くと正面に居るムーレリアへと斬りかかる。対して彼女は格闘戦術である。両腕には彼女が戦闘時に装着する籠手を、腕にはリストバンドを実に着けている。それで彼女はポンが袈裟掛けに振り下ろした刀を防ぐ。

「グッー…」

「やはり貴方が一番シンキを使用出来る様ですね。まさか私の一撃を止めるとは思いませんでしたよ」

 ムーレリアは辛うじて右手の項で防いでいるに過ぎなかった。その顔は苦悶に満ちている。


「行くぞ、白!」

「分かった!」

 孝雄実は背中を見せるポンへ行くなら今と言わんばかりに白へと声を掛けて突撃する。彼は双剣を握りしめ体内でシンキの巡りを増やして彼に攻撃を始める。完全な奇襲がと思った瞬間ポンは視線を孝雄実へと向ける。


「それではシンキを垂れ流し、気配を知らせている様なものですよ!」

 振り返る様に彼は刀を翻す。それで孝雄実の一撃は防がれてしまった。

「貴方もです、白さん」

 彼女は彼に遅れる事一コンマという僅かな誤差であった。その事が、ポンが行動を移すには十分な時間であった。彼はその様に言うと蹴りを彼女の腹へと決める。

「白!!」

 孝雄実が見たのは信じられないほど遠くへと飛ばされる白であった。


「出来は悪くない。ですがそれだけです。それではシンキを活かしきれていませんよ。活かすとはこうするのです!」

 ムーレリアはその言葉を聞くと撫でられた様に感じたところで弾き飛ばされる。

「グッー…」

「白、ムーレリア!」

 二人ともが呆気なくやられ、孝雄実は再度目の前の人物の強さを認識する。その隙をポンは逃さない。彼は孝雄実が目を離した隙を突いて刀を構えて彼に突檄を行う。


「戦っている間は目を切ってはいけません。ましてやシンキと言う物を感じられるのです。今のあなたは目どころか、気配すらも私に集中しなければならないのです」

 孝雄実は辛うじて彼の攻撃を防いだが、それも束の間剣をクロスさせていた事が災いし、ポンの蹴りを食らう結果となる。

「ゴッ!」

 変な声が出たのは予期しない攻撃だからである。それによって彼は攻撃を受け続ける羽目になる。ポンは刀だけの攻撃ばかりではない。拳もあれば蹴りもある。はたまた頭突きも浴びせるなど何でもありの戦いである。


「どうもあなたは形式ばかりに捉われておりますな。いいですか、命のやり取りは殺されたら終わりなのです。剣だけ、槍だけ、拳だけとどうして限定した戦いをなさるのです。使える物を使う。その上で、頭を使い上手く利用して自身の有利な戦闘へと引き寄せる。これぐらいして初めて相手と互角である。そう考えなければ勝てるものも勝てませんぞ!」

 彼は話し掛けながら孝雄実が辛うじて防ぐ事が出来る速度で斬り付ける。ヘルシマシルトンから貰った双剣を使用して、シンキを大きく取り込み、全力を持って凌いでいる状態である。だが、彼には弱点が在る。それが吸収力の少なさである。容量はとんでもない量を誇るが、その分満タンにするためには多くの時間が必要となる。


『いい加減に力の使い方を覚えよ。これでは何のために此方へと招いたか分からん』

 この声がして以降の孝雄実は別人の如く動きを変える事となる。孝雄実はブラウン管テレビが切れる様にプッと意識が途切れる。

「おや、いかが致しましたか?少し雰囲気がっ!」

 その様に話して孝雄実を心配したポンであったが、突如孝雄実から尋常ではない剣速で攻撃を受けて彼も肝を冷やす。その後は攻守を入れ替えての戦いが始める。孝雄実は二刀流の利点を生かし、手数をとにかく増やし相手に反撃の隙を与えない攻撃へと転じている。


「これは、私も本気を出さざるを得ないと言うことでしょうか…」

 まさか、孝雄実の実力がここまで有るとは思いもよらなかったポンは、内心人間と侮っていたことを恥じる。加えて自分の目もまだまだだと思わざるを得なかった。

 一度距離を取ると気持ちを入れ替えるべく大量のシンキを体に取り込む。次第に体内で充実していくのを感じると間を置くことなく孝雄実に向かって吶喊する。今度は手加減など無い。全力で、相手よりも早い剣速で、剣を振る回数で、全てを上回る思いで立ち向かう。


だがその予想をはるかに上回る動きを孝雄実が見せる。

(まるで別人だ…)

 ポンは戦闘を行いながら、冷静に孝雄実の事を見る。戦い方、シンキに操り方そのどれもが入れ替わっている様に感じた。

(別人、成程。今だ、彼の意識と混在するところまでは至っていないと言うことか。ならば今この時を無駄にはするまい!)

 ポンは目の前に居る男を人間と思って戦う事を止めるのである。






「イテテ、まったく思いっきり入れてくれちゃって」

 白はポンからの攻撃を受けて大分遠くまで飛ばされた事に気が付いた。拳を入れられた腹をさすりながら飛ばされた方向を見る。そこには孝雄実とポンの二人が信じられない速さで戦っているのが目に映る。

「凄いだろ白?」

 何時の間にかムーレリアが白の後ろに立っている。彼女は白ほどではないがポンとの戦闘中に飛ばされた事には変わりは無かった。ムーレリアが気が付いた時点で孝雄実とポンの戦いはああなっていた。故に彼女はあそこへと戻る事は止めて、白の元へと移動していたのだ。


「どう言う事なの?まさか孝雄実があそこまで出来るなんて…」

「私は人間の世界の事を詳しくは知らない。それに『呼ばれた者』と言うものがどのようなものかを知る事はなかった。それを含めて白の方が知るところが多いんじゃないのか?」

「私でも知らない事はあるわよ。この世界や孝雄実を含めた『呼ばれた者』がドラゴンの因子を持っているなんて初めて知らされたわ」

 二人は目を合わせる事は無く、視線は激しい土埃を巻き起こしながら戦う二人へと注がれるのであった……


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 やばいです。話しが思い浮かばないという状態に陥っています…まさか二日も間を空けるとは思いもよりませんでした


 ご感想お待ちしております。

 誤字脱字御座いましたらご報告いただけると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう!

               今野常春

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