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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
いざ冒険者へ…
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第四十四話 王国のビッグイベント!

 孝雄実たちは現在王都グローリンバリーに滞在している。フェーバル王の息子チャレン改めレイスレット・ベンゼンデントとフェータも加わったことでとある空き家を宛がわれ当面の拠点としている。使用人は付けられてはいないが平民半年分の収入を一月分の生活費として与えられている。これはフェーバルのポケットマネーである。

 孝雄実たちは六日後に行われる冒険者になる為の試験を前に王都の観光をしようと言うことになった。とは言え何処をどの様に観光するかと考えた時、この街を知る者はサラとエレオノーラだけであった。フェータはどうなのかと言うとグローリンバリーへは王に会う為に一度だけ訪れただけである。それからすぐに幽閉地へと向かったのだ。


「それじゃあ此処で落ち合いましょう」

 その様に言うのはサラである。結局二手に分かれる事になった。一つは孝雄実とエレオノーラにマリアンの三人である。残りはもう一つである。巡る場所と目的が違った。今彼等が居るのはこの街でも有名な噴水広場である。グローリンバリーでは此処が待ち合わせ場所になる。彼らもそれに倣いこの場所を待ち合わせに決めていた。


 孝雄実たちは市場などを巡る事にしている。加えて魔導書を読もうとそれを取り扱う場所へと向うことにもしている。対してレイスレットたちはと言うと武器の新調と軍の訓練を見学しようと言うものである。サラは特に必要無かったが、場所を知るのが彼女であったから割りを食った事は間違いない。





「へぇー流石王都って感じなのか?」

 孝雄実は平民たちが其々出店する市場を見ながら歩き回っている。特にこの市場はドットゥーセ王国内の食材が一手に集まる場所である。但しその様に出来ない食材もあるのだが、興味を示したのがマリアンである。彼女は鍋料理以外にも多くの料理を作る事が出来る。今も彼女を先頭にあっちの店に行き、こっちの店に行きを繰り返している。財布はエレオノーラが握り、予算が許す限り買い求めるのである。既にマリアンの肩には大量に食材が収まっている木箱を担いでいる。

「そうね。此の街は国内の食材などが一手に集まるのよ」

「エレオノーラ!これ買ってくれー!!」

 前方を歩くマリアンは大声を出して彼女を呼ぶ。珍しい物を前にしてマリアンは活き活きとしている。

「わかったから静かにしなさいよ…」

 彼女は名前を大声で呼ばれて少し恥ずかしそうであった。多くの人間がいる中マリアンの声はよく通ることに加えて見た目が良い。俄然注目を浴びてしまうのだ。それ故に衆人の目がエレオノーラへ注がれていたのであった。結局マリアンの購入した食材は木箱三つ分になった。これを持っては移動できないとマリアンは一足先に屋敷へと戻ることになった。大きな木箱を軽々と運ぶ彼女はシュールであった。

 そうなると必然的に二人はデートの形になるのであった。






 一方、レイスレットたちはと言うと目的の場所である武器屋を訪れていた。フェータは早速武器の仕様を店主に伝えて選んでもらっていた。

「キャメルさんは新調しなくてもいいのかしら?」

「そうね…今はいいわ」

 彼女は今まで剣を使用していた。とは言え彼女は戦闘訓練を受けた程度である。だが、試験では新たな武器を使用しようと考えている。この事は受験する際の用紙に書き込んである。サラはその事を知らないからそう言って尋ねたのであった。


 そう言って話していると店主が投剣をダース単位で用意していた。

「へーフェータはその武器を使うのね」

 遠目から見えるのは小さな剣である。サラは初めて見るスタイルだった。この戦闘スタイルは個人では決して適すものではない。何と言っても数に限りがあり、連射が利かないスタイルで、どちらかと言うと補助的な戦い方なのだ。

「そうです。俺とフェータで一つの戦い方なんです。俺が前で戦って、彼女がフォローするんです」

 

 これはみっちりと幽閉先で鍛えた戦い方であった。成長期を迎えたレイスレットは使用している武器をウォーハンマーへと変更した。あの場所は、人はいないが多くの獰猛な動物と魔物がいるのが特徴であった。それ故、奥地へと向かうと簡単に戦闘が行えるのだ。

 振り回して使用するハンマーは隙が生まれやすい、そこでフェータが投剣を考えたのだ。勿論普通の武器を使用するが基本は彼のフォローが主になる。


「そうなの。二人の連携を早く見てみたいわね」

「そうですね。お二人の戦闘スタイルは稀でしょうから楽しみですね」

 そうやって二人はレイスレット等の戦い方を褒める様に話すのであった。

「お待たせしました」

 フェータは申し訳なさそうに三人の元へとやって来る。店主は思いがけない在庫処理に喜んで、店先まで来て見送るのである。

「随分嬉しそうだな、フェータ」

 レイスレットは彼女が頗る機嫌の良さそうな表情にそう尋ねる。


「ええ、あのお店ガルミナ族製の武器を取り扱っていたのよ。投剣でこの手の物が手に入るとは思わなかったわ」

 フェータがガルミナと言う言葉を発した時サラとキャメルの目が変わる。その後も目の前を歩く二人は色々と話しているが、まさかの言葉に驚いていた。


 ガルミナ製の武器は大量生産を行わないことで有名な武器である。使用する鉱石も特殊ながら製造方法も特殊と言うものだ。切れ味抜群で壊れにくいと言うキャッチコピーがぴったりなものだ。

 だがそれ以上に、生産数が余りにも少ない事だ。加えて、武器を製造する際は必ず刀工の元で完成まで一緒にいなければならないと言う厳しい条件を乗り越えないと成らない。


 だから、武器屋で売られていることなどありはしないのだ。いや製造方法を考えれば絶対にと言った方が正しいだろう。

「フェータそれは本物なのかしら?」

 サラはどうしても在る事が頭に浮かぶ。

「ええ、本物ですよ。ほらこれを見てください」

 そう言ってフェータは三人に投剣を見せる。ガルミナ製の武器を見分けるのは簡単だ。普通の金属では造りだせない透明な金属が使用されるのだ。ガラスまでとは行かないが手を当てると確りと見える透明度である。


「確かに本物ね…」

 一本フェータから受け取ったサラは透明なのを確認する。これだけはどんなものでも作ることは出来ない。確認し終わったサラは彼女へ礼を述べて返した。

「私も最初は偽物を疑いましたよ。それでもこれを見ては本物と思うしかありません」

「そうですね。これ程に透明度のある武器はガルミナ製でしかありません」

 冒険者ギルドで働いていたキャメルは数多くの武器を見ている。その中でもレアな武器がガルミナ製の武器である。彼女も一度だけ拝見していた。その時の美しさは今でも脳裏に焼き付いているほどだ。


「それにしても不思議ね。どうしてあそこで売られていたのかしら?」

「そう言われればそうですね。ガルミナ製の武器で思わず浮かれておりましたが、本来はありえませんよね」

 彼女たちは忘れているが、それに驚くのはこれだけでは無い。値段である。本来国が期待を掛けた者に対して国家予算を出して造らせる物である。それが彼女でも買えると言うから怪しさ抜群である。もう一つ怪しさを匂わせたのが在庫として残っていたと言うことだ。投剣を使用する者は数が少ないが、それでもガルミナ製であれば話は別である。その種の武器でも引く手数多なのだ。売れ残る筈が無い。

「確認するにしても、次に訪れる為の時間が残されていませんから今は無理ですね」

 キャメルも確認したいのを我慢する。それは次に訪れる場所である。

 皆が向かうのはドットゥーセ王国軍の訓練場である。結局武器の確認は後日訪れることとして移動するのであった。






 王国軍は国の象徴的な軍隊である。唯一王家の紋章を入れて戦えるのがこの軍だけであるからだ。諸侯軍は絶対に入れる事が出来ない。それ故に王国軍は定員数を常に満たしている唯一の戦力である。

 最強の部隊は勿論近衛騎士団である。しかし、定数で言えば極僅かであり、入れるのは貴族だけである。しかし、王国軍は一平民が就くものだ。平民にとってはその象徴的な物に入る事は彼等にとっても名誉なことだと認識しているのだ。子供が成りたい職業第一位は王国軍であった。

 この日は訓練を国民に見せる日であった。この場所の造りはスタジアムの様な形である。大勢の観衆を入れることを意図として造られている。


 毎度開かれるたびに長蛇の列が出来、最終的にスタジアム二入る事が出来ない者が出るほどであった。 それ故に事前に言われた事は開始一時間前には入場していなければならない。と言うことであった。


「うわーすっげぇー」

 レイスレットがそう言うのは目の前の光景であった。開始一時間前に彼等はスタジアム内に入る事が出来た。それでも席を確保するのは難しいほどの状況であった。歓声もさることながら、その熱気が雰囲気を開始までに醸成しているのだろう。

 観衆は五万名を収容できる。

「あそこに空席があるわね」

 サラは前後二席ずつの空席を見つけた。これで問題無く見る事が可能である。四人は前にサラとミャメルが、後ろにレイスレットとフェータが座る。


「それにしても凄いですね。これほどまでに王国軍は人気があるのですね」

「そうね、私たちの方ではそれほどでもないけれど流石に王都は違うわよね」

 さながら一大イベントと言ったものである。飲み物、食べ物を売る売り子が通路を練り歩いて稼いでいる。酒なども売る事が認められていることからも娯楽に近い物でもあるのだろう。彼らも飲み物と食べ物を人数分購入して開始までの余興を楽しむのであった。






 そうして遂に開始時刻となった。時刻は正午、既に会場の熱気は最高潮に盛り上がっている。そこに一人の男がマイクの様な物を握りだし演説を始める。

「兄上…」

 大観衆の歓声の為にレイスレットの呟きが聞えたか分からないが、少なくともフェータはその言葉聞き取れる。そう目の前には次期王となるアレイセン・ドットゥーセであった。彼が登壇しただけで割れんばかりの歓声がより大きな物になる。


『諸君、よくぞ参った!我がドットゥーセ王国軍は日夜厳しい訓練を重ね、国をそして諸君らを守らんがために頑張っている。これはフェーバル王も認めるところである!!』

 この言葉で歓声が上がるかと思いきやアレイセンの声を聞き逃さない様に静寂が取って代わる。

『ではなぜ此処までの厳しい訓練を課し、それを不満も無くこなすのか。それは諸君らを守る為である!私、アレイセン・ドットゥーセも諸君らを守るためならば王国軍を率いて先頭に立とう!軍は国家を守るためには無くてはならない。それを為すは諸君らの思いである。本日はそんな諸君らに現状を披露しよう』

 そう言うと周囲から勇ましい太鼓の音色が始まった。それに合わせて兵士が隊列を組んで入場を始める。と共に再び歓声が起こり始める。中には人の名を呼びかける者もいる。


 五千名の兵士がアレイセンを前にして整列する。彼等は王国軍の中でも精鋭として認められた部隊である。半年に一度行われるこの行事に参加することも一種のステータスとなっている。

『王国軍第一団以下五千名ご命令により参集いたしました!!』

 隊列から一人前に出てアレイセンの前で膝をついてその様に話す。

『ご苦労。兵士諸君誠にご苦労!!今日は諸君らが主役である。半年間厳しい訓練に耐え抜いた実力を如何なく発揮して貰いたい。それにより王国の守りは万全であると君たちの親兄弟、妻、恋人ありとあらゆる者に実感させよ!!これはアレイセン・ドットゥーセの命令である!』

 その言葉で一矢乱さずに礼を取るその姿は鳥肌が立つほどであった。


 始まりはこのような形式に沿った展開で始まった。アレイセンを始め王国の重鎮が正面で見学する様はまさに国家を上げての一大イベントといった趣である。

 兵士らが見せるのは各兵士が持つ武器の腕前からである。剣での戦いを百組一斉に行うものから、投げ槍の腕前を披露するもの、弓の精度や距離を競うものと戦闘に繋がる物が多く披露される。そのたびに歓声が上がり、場を盛り上げ、開始前に作り上げた熱気をより燃え上がらせる。

 特に盛り上がったのは騎兵の戦いである。

 一般に馬上槍試合またはジョストと言えばいいだろう。互いに馬に乗った兵士が距離を取り、一気に間を詰めて一瞬のうちに勝負を決めるものだ。


 本来は貴族の行う物なのだが、王国軍でも特に優秀と認められた者がこの競技に参加する事が出来る。 まさに花形の職種である。これに参加する者は一様に観衆の女性から黄色い声が上がるのが慣例である。兵士も何れはこの場に立ちたいと思うものである。

 そして、個人種目である為に貴族の目に留まることもしばしばある。これは優秀な人間を自分の家に入れる為でもある。此の社会はどこまで行っても貴族が上位を占めるのである。この場所では彼等が主役だが戦場では使い捨ての駒になりがちなのだ。だからこそ、兵士が最終的に目指すのは貴族入りなのである。


 王国からは準男爵が最高位だが、陪臣貴族ともなれば男爵若しくは子爵も夢ではない。こう言うエサがあるのも王国軍が人気に職種である事の一員である。馬上槍試合は最精鋭十五名が参加する。そこでの優勝者はアレイセン自ら言葉を述べ、褒美を与えられ、準男爵位を授けられるのである。平民にとっては夢の様な瞬間であった。


 しかし、此処までは前座に過ぎない。馬上槍試合によってこれ以上盛り上がりの無い雰囲気を生み出すことには成功した。此処からが本当の王国軍の見せどころである。

 五千名の兵が二手に分かれた摸擬戦の始まりである。とは言え、実際には過去の戦いを模した物である。読み手が登場して話しを行いながら兵士らがその動きを再現するといったものだ。此処では戦場を再現させるべく魔法でその場所を作り上げるのも盛り上がる一つである。まるで孝雄実が行う魔法の様に簡単に作り上げる彼等は流石の人物であった。

 魔法を使用しているのは王国でも有名な魔法使いで、魔法を使用するごとに名前が読み上げられ、その都度どよめきが起こる。勿論詠唱は必ず読みあげてであるが…


 かくして本日のメインイベントが始まるのであった……


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 ご感想お待ちしております。

 誤字脱字在りましたらご報告いただけると幸いです。

 それでは次話で御会い致しましょう!

               今野常春

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