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目を覚ませば異世界へ…  作者: 今野常春
異世界でするべき事、その立場って…
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第十九話 さようなら、そしてよろしく!

 済みません、此方の方を一章の終りとさせていただきます。

 エレオノーラの言葉で孝雄実はあっさりと冒険者に為る事を決意する。となればこの村を離れることになる。彼女はその事も含めて、元からオリマッテ・ロットロン男爵とは話し合う予定である為に、そこに盛り込む算段を立てる。

「皆は良いのか?」

「何を言ってんだよ、ご主人様!私は奴隷だぜ…何かそんな扱いされていないけれどさ。何処までも着いて行くぜ!」

「元から冒険者として生きていこうと考えているのです。私はむしろコンド殿と行動を共に出来れば心強い事は在りません」

「私も構わないわよ…それに私以外のメンバーはそれぞれ所帯を持っているから、此処を長期移動は出来ないからね」

 彼女の弟ダンも結婚していている。基本的に結婚年齢は早い、ロドムは子供が三人居て一番上が九歳に為る。



 これで話しは纏まったと、夕食の準備に取り掛かる。この日はエレオノーラが作ることに為っている。その為に孝雄実たちは裏庭の水撒きを行うことにした。此処では孝雄実この世界の植物の成長に驚かされる。

「なあマリアン、この成長って当たり前なのか?」

「んっ、どんなんだろうな?でも大体こんなもんじゃないのか、どうかなサラ?」

「そうね、これくらいだと思うわよ。それにしても本当にコンド殿は『呼ばれた者』なのね」

 目の前には収穫してください、と言わんばかりの野菜たちが勢揃いしていた。

「水撒きよりも収穫だな…」

 そう言ってなるべく収穫時期を逸しない物を優先して収穫を始めるのであった…

 調理が終わり呼びに来たエレオノーラが見た光景は、泥だらけになり収穫に勤しむ三人の姿であった。





 翌日、四人はオリマッテの屋敷に赴いた。昨日は急遽もぎ立て野菜の試食会となった。食べ切れないものはオリマッテに買い取って貰う為に持てるだけの分を運び入れた。

「よく来たな……まあ入りなさい」

 オリマッテは荷台に乗る野菜の塊を見て驚きを隠せなかった。

「こんにちはオリマッテ様、誠に申し訳ありませんがこの野菜の買い取りをお願いいたします」

 エレオノーラは悪びれる様子も無く、淡々と話すその姿がシュールであった。

「あ、ああそれにしても随分と在るな…」

 この辺りは仕事が早い、元商人故の行動である。直ぐに使用人を呼んで然るべき事を行った。

「さて、後はあの者らに任せておけばよい。此処からはこれからの話しをしようか…」

 彼はそう言うと孝雄実たちを中へと誘う。



「サラ今回の処置、残念であった。幾度となく注意はしたのだが無駄になったのだ。それにだ、幾らサラがどう言う気持ちであろうと、お家取り潰しは辛いだろう。しかし、君には仲間が居る。私も支援は惜しまない、ブラスト辺境伯も同じである。だから、新たにロースロンド男爵家の当主となった君に何かあれば相談して欲しい」

「有難う御座います。ロットロン男爵」

 そう言って彼女は頭を下げる。今は男爵家の当主として会話をしている。それが分かるもオリマッテは少し悲しい顔をする。この二人の関係はつい最近のものではない。何れ語る事にあるだろうが此の場は控える。

「うん、それでサラ。この先はどうするかね?」

「私はコンド殿たちと冒険者になろうと考えております」

 オリマッテは孝雄実たちを見る。


「昨夜みんなで話しましたが、私も孝雄実たちに付いて行こうと思っています」

 エレオノーラが代表して答える。意外にも彼はその言葉を聞いても動じる事はなかった。

「そうか、エレオノーラがそう決めたのであれば私に異議はない。君の人生だ。好きに生きると言い…それで、ご家族には話したかね?」

「いいえ、これから話そうと考えています」

「そうか、ではそれらは任せるしかないな。此処を出るときは必ず言う様に、それとだ孝雄実」

 オリマッテはそう言って彼に視線を向ける。

「君はこの世界の事を知らない。三人の話しを良く聞く様にな。それとだ、マリアンの事だ。エレオノーラ、必ずドランデストハイムへ行くようにな」

 この街はマリアンの奴隷契約の為である。本来速やかに契約を行わなければならない。しかし、今回の場合は形式的な形で奴隷としている。それに文句を言う貴族…諸侯はいなかったのだ。と言うのも、文句を言えば、じゃあ助けた際のお礼くださいな、と言われて困るのは自分たちであるからだ。


「承知しましたオリマッテ様」

 その後、関係者であるロドム達が集まり、再び同じ事をオリマッテが話した。

「と言うわけだ。寂しくなるがロドム『祝福の牙』からはエレオノーラが抜ける事に為る」

「承知しました。…エレオノーラ、今まで良く頑張った。特にコンドを迎え入れた時以降何かと君に任せることが多くなった事済まないと思う反面、これで良かったとも考えている」

 そう言うと皆が同意するかのように頷く。


「そうだな、寂しくは在るがエレオノーラの門出だぜ!孝雄実こいつは俺たちの妹分の様な存在だ。泣かせることはするなよ!!あっ、苦労とかは別だからなっ!」

「アランの事はそんなに気にしないでよ、孝雄実。エレオノーラのことよろしく義兄さん」

「仲良き事は素晴らしき哉…」

 三人は孝雄実たちに言葉を発せない連携で続けて話した。これではエレオノーラも反論のしようが無かった。

「任せてくださいアランさん。右も左も分かりませんが、なんとか彼女を中心に確りと話しを聞いて行きますよ。ダン、その呼び方どうにかならないのか?ウォーレンさんその言葉以外にも聞きたかったです…」

 孝雄実もお返しとばかりに矢継ぎ早に話していく。

「全くよ、ダン言加減にしなさいよね!」

「でもさ、いい加減にしないと、婚期逃すかもよ…」

 ダンはからかう様に話す。だがこれはその気持ち反面彼女を心配しての事である。それはオリマッテお始めみんなの気持ちであった。優秀すぎるが故に此の村ではどうしてもこれはと言う相手が居ないのだ。


 だからこそ、オリマッテは反対しなかった。ロドム達も戦力減となる事が分かっても送り出すのだ。此処よりも彼女の幸せを優先した結果である。最有力候補は勿論孝雄実である。彼女も満更でもないが、それは当人次第である。それでも此処を出ることで、より多くの人と出会えるのだ。チャンスが広がる事も考えてのことであった。

「コホン…それでだ、何時頃を予定しているかな?」

「準備等を考えて、一週間ほどしたらと考えています」

 これは事前に話し合った結果である。


 冒険者に為るに辺り、エレオノーラとサラ勿論マリアン本人も奴隷契約の事が頭にあった。この国で行く手来たからこその思考である。とにかくブラスト辺境伯が宣告したのであれば、必ず契約は行う事が義務付けられている。故に、ドランデストハイムと言う街には元から行動計画に入っている。そこには教会が建ち、マリアンの様な永続的な奴隷契約を行う事が出来る。さらには、いまだ、不安の残る孝雄実の実戦である。これをマリアンとサラが鍛えると言うことに為る。

 また、エレオノーラはそれと並行して、村を離れるにあたって挨拶や等を行う事が決まっていた。以上が彼等の中で話し合った事である。


「分かった。念のためにドランデストハイムの族長には紹介状を書いておこう。後は、あの家だがどうするかね?もし長期に家を開けていと言うのであれば、他の者に家を貸そうかとも考えているのだが…」

 孝雄実が調子に乗って魔法で土を掘り返した為に、未だ手を着けられていない有望な畑候補の土地が在る。あと数件の家を立て、井戸を作成すれば村の収穫量は跳ね上がる事間違いなしだ、と彼は考えている。

「有難う御座います、オリマッテ様。家の事ですがそうして頂いて構いません。しかし、あそこは井戸が在りませんが…?」

 彼女もオリマッテの意図を理解しているが故の返答である。懸念された水問題は孝雄実と彼女の魔法で解決できている。だから住むことに不便を感じていなかった。しかし、農民を住まわせる場合はそうはいかないと考えている。


「その事は問題ないよ。井戸は掘るからね。それに数件の家を建てて、新たに村人を募集しようと考えてもいるからね」

 彼の言葉で孝雄実が又何かをするがそれは後のお話しである…




 翌日からは四人は大忙しである。エレオノーラは昨日から実家に帰っている。やらねばならない事が在るからだ。孝雄実たちは残っている作物の回収と鍛錬である。これがまたハードである。作物には狩り取る時期や、時間と言うのが在る。特に時間を考えると、朝食、回収、鍛錬、回収、昼食、鍛錬…と言うスケジュールが組まれたのである。孝雄実が鍛錬する場合、二人の内どちらかが相手をし、空いている方は作物の回収作業である。ある意味休む暇が無い…それでも彼等の気持ちにはへこたれると言うものはない。


「所でさ、オリマッテさんが井戸を掘るって言っていたよな」

 マリアンの肉弾戦訓練を終えた孝雄実が地面に大の字に寝そべって彼女に話しかける。

「そう言えば言っていたな…それがどうかしたのかご主人様?」

 彼女も同様な態勢で休んでいるが、彼の言葉で上半身を起こす。

「水って掘ると出るものなら、魔法でやってみてはどうかなって思ったのだよ」

 これは日本で読んでいた小説の知識である。魔法万能な物語で、そのような描写が在った事を思い出しての事である。

「ま、魔法で掘るって…確かにこの辺りは水が出るとは思うけどさ。滅茶苦茶深く掘らないと出てこないぜ」

 彼女が言う深さは三十メートルである。他の井戸はどれもそれぐらいであるのがこの村の井戸である。であれば、その位を掘れば水が出る可能性が在る。


「まあそれを可能にするのが魔法だろ、っと!」

 そう言って思い立ったが吉日である。孝雄実はサラを呼びだして、三人で話し合いを始める。

「井戸を掘る…ね。このような事はエレオノーラさんや他の方に相談した方がいいのではないかしら?」

「そうなんでけどさ、エレオノーラは今忙しいだろ。それに内緒で掘って、感謝の気持ちってことでプレゼントしたらどうかなってさ」

 サラの言っている事が正論である。相談しなければ本来ないけない案件である。井戸を掘る事、それは村にとって一大事業であるからだ。水などは共有財産である。井戸を巡って戦いが起こる事さえあるのが人間の社会である。


「サラの言うことも正しいけどさ、ここはご主人様の案に乗っかろうぜ!」

 と言う訳で丸っと言い含められたサラは賛同してのである。そうなったからにはと、どの辺りを掘るかの選定である。これに役だったのは子虎のブラックとホワイトである。

 童話でも犬がご主人に此処を掘ってくれと言うものが在る。それよろしく二頭が同じ場所を足で掘り始めたのである。当然力不足で、目印程度ではある。

「そうね……ここならば問題ないわね。これから先、この場所を中心として考えれば絶妙な場所となるわね」

 サラにはエレオノーラ同様知識欲が在る。特に領地経営に関係する書物をよく読み、暇さえあれば話しを聞いたりもしていた。それが今役に立つ。




「よし、それじゃあ掘るぜ!!」

 孝雄実は気合を入れるとボウガンを構える。何も持たずには流石に無理だと判断しての事である。頭の中では井戸の構造と断面図を思い描く。ただし、今は水が出る事が優先である。円筒状の形を地面から刺す様にして、ドリルの様に上に土を持ってくることも忘れない。それを三十メートル。あくまで孝雄実の長さは目算である。

 便宜上メートルで書いてはいるがこの国の単位は異なっている。孝雄実はこの手の勘に優れているのであった。

 出来あがったのかボウガンを地面に着ける。二頭の子虎は確りとイメージを受け取り、期待にこたえようとする。モリモリと土が円計上に盛り上がっていく。直径二、五メートルの円を描いて周囲に土を出現させる。此処で面白いのはボウガンを地面に着けている孝雄実が、どんどん下に潜っていると言う事である。


 これを見てサラは直ぐに梯子を用意しなければ、と言い出しマリアンが動き出す。此処で考えられるのは滲み出た水が徐々に彼を襲うことである。

 相応しながらも面白い様に土が溢れていく。周囲にうず高くならないのは子虎の配慮である。もし、それが無ければ、深さと高さの合計分の長さの梯子が求められるからだ。幸いこの家に紐で縛り上げられた縄梯子である。彼女はそれを何時投げ入れても良い様に準備を始める。


 それから暫くすると土の色や形状が変わり出す。掘り始めからは茶色い土であったのが黒い土、これが畑の最適な土である。それが四~十五メートルの間続いた。粘土状の対へと変わり、漸く水が出るとされる土の色が現れる。

「出たーっ!水だー!!」

 下から孝雄実の声が反響する。幸い此の時は周囲には人が居なかった。それ故にばれる事はないが、二人は慎重に穴の中を覗き見る。しかし、暗くて見えない。そこでサラが魔法を使う。魔法はイメージだと言う事を胸に刻み込んだ彼女は、ポイントを決めて等間隔の火を側面に出現させる。

「で、出来た…」

「おお、すげーって魔法かよそれ!!凄いな、サラ!」

 褒め間も僅か、魔法は孝雄実が居る場所まで到達する。そうして下の様子が分かる様になった。


「ご主人さま―!」

 声が届くまでにしばらく時間が掛かる。すると漸く下から声が返ってくる。

「なんだよ、マリアン。此の明りはサラだよな!すげーじゃん!」

「今から梯子降ろすぜ!!」

 そう言って、マリアンは梯子を投げ入れた。明るさが保たれ、難なく彼は登って来た。

「よいしょっと」

「やったな、ご主人様!」

 水はこれから徐々にろ過される。加えて周囲の壁はコンクリートをイメージして固めていく。それは本当に奇跡の様な光景であった。孝雄実はイメージをとにかく強くしていく。

「本当にすごいのね、マリアン」

「だな、サラ…」

 唖然とするしかない孝雄実の魔法をして二人を唖然とさせる。


 しかし、ここで、マリアンも活躍をすることに為る。未だに地面には掘り出した土が残っているのだ。これらをどう処理するかが残っている。今彼女が出来るのは人形の作成である。

「とりあえず、マリアンは土を退かす事を考えないとな…」

 孝雄実はそう言うと自分も人形を造り出す。最初彼はゴーレムと呼んでいたが、それは使役して仕える物が在ると言うことで、人形と呼ぶようになった。

「おお、ご主人様はこんなことも出来るのかよ!!」

 高さは彼等の膝ほどであるがそれが盛り上がって出来た、土塁から生まれて来ては移動を開始する。そして事前にサラが移動場所をしていた為に、そこへと向かわせる。そして、人形はそこへと向かうと自然と土へと戻るのだ。これに再度二人が驚いたそうな…


 結局、これはマリアンが引き継ぐことになった。井戸を掘り、中の壁面をコーティングして人形を半分程作成して魔力切れを起こしてしまった。此の対処はさらに任せて彼女はすぐさま魔法を使う。こう言った物はイメージが残っている間にするのが一番だと体感で覚えている。見事、作成数と動きは遅いものの、嘗ては五百名以上を統率していただけはある。孝雄実とは違い秩序を持って整然と行進しているのである。これが魔法の面白さであった。


 一方、サラは孝雄実を彼の部屋へと運び寝かせると再び作物の回収に精を出す。その最中(さなか)、常に孝雄実の魔法を思い浮かべていた。井戸は掘るものと言う固定観念が在った。しかし、それは発想さえあれば可能であったのではないかと考えている。そして自分の魔法使用可能元素を思い浮かべる。火と風である。しかし、火の元素とは違い、短いが種類が本当に少ないのが風の元素である。

 だが、と彼女は考える。嘗て『呼ばれた者』と呼ばれた中で魔法は万能である。と言う言葉を残して亡くなった人物の話しが在った。これは高名な魔法使いが詠唱破棄否定論を唱える際に、必ず出してくる話しである。絵空事であるという言葉で彼の者を否定するのである。


 そこでふと考えてみる。空である。彼女は何てこと話しに上を見上げた。すると鳥が優雅に空を我がもの顔で跳んでいるではないか。この世界に空気力学という学問はない。だが空を飛びたいと言う願望は人類が考える事である。風が吹けば体が押されたりする。であれば、と彼女は下から風を起こせば、常に体を浮かせるだけの風の力があればと考えだした。


 真っ先に反応したのはブラックとホワイトであった。未だにマリアンが人形を作成して、四苦八苦している最中、二頭はその動きを見るのを止めて、サラの方角を見たのである。マリアンもそれが気に為ってその方角を見た。




「う、浮いてる…浮いてる!?」

 サラがイメージしたのは自身の足元から風を吹き出すイメージだった。ジェット機のアフターバーナーを想像して頂きたい。そうやって体を浮かせるだけの風を生み出す分だけを発現させたのだ。今は空中に浮かんでいるだけであるが、この世界の魔法においては史上初の快挙であった。

「おーいサーラー!」

 下から声がして視線をやるとマリアンと二頭の子虎がいた。さらにイメージして徐々に風の威力を弱めると体が柔らかく着地した。サラはそこで、緊張している事に気が付いた。大きく息を吐き出すと虚脱感が酷い事に気が付いたのだ。


「おい大丈夫かよ!」

「ええ、大丈夫よ。唯少し魔力を使い過ぎたかしらね」

 マリアンが抱きとめるとサラは笑顔を見せる余裕を残して返答した。

「ってそうだよ!あれ完全に空に浮いていたよな!?ご主人様でもやらないのに!」

 マリアンは興奮していた。

「そうね、コンド殿の発想、イメージを考えてみたのよ。ほらさっきの井戸掘りもそうでしょ。私たちにはあの作業は人力でやるものだと言う考えが在った。でも彼はそれを魔法で出来ないか、と言う発想で見事に成し遂げた。そこでね。私が使用出来る元素は火と風なのよ。だからね、ふと空を見たときに思ったのよ。空を魔法で飛べないかなって、ね…」

 マリアンはサラに肩を貸して家に入った。丁度昼時である。切り上げるにはいい時間であった。



「はい、水」

「あら有難うマリアン」

 席に着くと彼女は水をコップに入れて差し出した。朝食時に作り置きしていた鍋物を再度過熱している為に、今はすることが無い。

「それにしても凄かったよな。さっきの魔法」

「そうね、自分でやったのもあれだけれど、本当にすごいわよ、魔法は」

 彼女はそう言ってマリアンを見る。その真意が分からない彼女は首を傾げる。それを見てサラが話しを続ける。

「貴方も詠唱破棄で驚いたでしょ。私たちの頭には不可能とされていたの。でもコンド殿はそんなのお構い無に私たちにやって見せた。それに驚かされ、さらには井戸掘りよね。もう、今までの魔法の知識は私には必要が無くなったわ。むしろそれが魔法の発展を妨げているとしか思えなくなったのよ」


 力説するサラにマリアンの思考は付いて行けなくなった。と言うよりも彼女には魔法の知識が無い。今目の前で話される言葉自体彼女には(はてな)である。そう言う意味ではマリアンの方が発想は豊かなのかもしれない…

「ま、まあサラが何か凄いのは理解したよ…」

 これ以上はマリアンがパンクしかねないのであった。


 夜、二日目であるにも拘らずエレオノーラが帰って来た。三人が驚いて聞いてみれば、昨夜盛大にお祝いされて、早々に戻る様にと両親から言われたのだそうだ。彼女はそう説明するが、その時の様子は完全に嫁入りと考えてもおかしくはないものであった。それは話しをしていなかった。それよりもである。サプライズとしてプレゼントしようと画策した井戸掘りは案の定怒られた。なぜ、私だけにでも相談しないのか、と言う感じで孝雄実は文句を言われるのであった。

「まあいいわ、それは明日オリマッテ様に話しをしましょう…」

 こう言うのには訳が在る。オリマッテが裏庭の畑を中心に家を数件建てて、新たなコミュニティーを造り出そうと考えている、そう考えているからだ。つまり、前々から孝雄実たちがこの村を出ると考えて事前に準備をしていた。そう考えられる言動が見受けられたからでもある。


 事実、エレオノーラが考えた通り翌日に相談しに行ったところ材料を発注していたのであった。さらには町割りも行い在る程度計画が出来ていたのであった。幸いなのはその場所がほぼ変わらない井戸の場所であった事である。だからかオリマッテからは文句はない、むしろ良くやったと孝雄実をほめたたえたのであった。




 出発の日がやってきた。村の入り口には手の空いている村人が総出で見送りに来ている。特にエレオノーラの名前を呼ぶ人間が多い。ついでマリアンである。彼女の活発な性格は奴隷であると知りながらも村人には受け入れられていた。

「気を付けてな、孝雄実、エレオノーラ、マリアンそしてサラ」

 オリマッテが代表して四人に声を掛ける。そして彼は手で持てるほどの子袋を差し出す。

「受け取ってくれ孝雄実、これは鬼討伐、ゴブリン討伐、そして井戸掘りの報酬だ。あとはこれだ」

 そう言って前に言っていた紹介状である。孝雄実はそれらを受け取ると失くさない様に袋へと入れて肩に背負う。

「有難う御座います。何から何まで…」

「何、これは当たり前のことだ。君はこれから苦労するかもしれないが決して諦めないでくれ、そして仲間を頼るのだぞ」

 そう言って孝雄実の手をがっしりと握る。これを他の三人にも行う。これで出発のセレモニーは終了する。後は各々最も仲の良かった人間達が話しかけて出発することに為る。


「それじゃあ行こうか、オリマッテさん本当に有難う御座いました。このご恩は決して忘れません!」

 孝雄実は世話になった人に声を掛けて、馬に乗る。この日までに一人で馬に乗れるように訓練をしていたのである。違和感なく彼が馬に乗ると三人にそう言った。

「ええそうね、それではまた御会い致しましょう、オリマッテ様」

 エレオノーラも孝雄実の言葉に賛同し、本当に最後の挨拶をして馬に乗った。

 彼女を先頭に移動を始める。目指すはドランデストハイムである。

 

 かくして四人の冒険者としての旅が始まった。孝雄実がどうして呼ばれたのか、此の旅が偶然なのかそうでないのかは何れ分かるかる事である…


「みんなの姿、見えなくなったな」

「そうね…」

「やっぱり寂しいのかエレオノーラ?」

「そうかもね、マリアン。数日開ける事はっても先の見えない旅は初めてだもの」

「それでも嬉しそうよ、エレオノーラ」

 馬に乗りながらそうやって話しをする。皆一様に新しい環境に胸を弾ませるのである。

「みんな、改めてこれから宜しくな!」

『こちらこそ、よろしくね!!』


 最後までお読みいただき有難う御座いました。


 これにて本当に一章を終わりと致します。次話以降は第二章的な感じで書いてまいります。

 

 一区切りとしまして、此処まででブックマークをしていただいた読者の皆さま、お読みいただいた読者の皆さま、評価を戴いた方、感想を戴いた方と誠にありがとうございます。日々増え続けることで、書いていて本当に励みとなります。もっと多くの方にお読みいただけるよう、努力してまいります。以後も御贔屓賜りますようお願い申し上げて、挨拶と致します。

 

 ご感想等お待ちしております。

 それでは次話で御会い致しましょう!

                今野常春


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