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全裸のヒーロー  作者: hachikun
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キャラメイクから何か変

番外編です。


彼の活躍は、本編の中でも一瞬だけ語られているのですが……うむ。

まぁ、本当に一瞬ですけど ^^;

 俺の名は四重九朗(シエ・クロウ)。決して「しじゅう・くろう」とは呼ばないでくれ。タイタスとか大十字もダメだぞ。

 おっと、いきなりですまない。まず俺が何者かについて説明したほうがいいかな。

 

 まず、俺はただの一般人だ。まぁ勤めている会社は辛うじてこの時代に生き残ってるようなとこだが、幸いな事に仕事に追いまくられるような事はない、少なくとも今のところは。こんな時代だ、一番大切なのはそこだと思うんだよな。

 おっさんというほどには歳をとってないはずだけど、インドアで本ばかり読んでるせいか、年寄り臭い自覚はある、うん。ちょっと悲しいが。

 そして友達は……あー、最近行き来がないなぁ、うん。

 彼女?……あー、なんの話だい?

 まあその、気楽な独身貴族ってやつさ!はは、は、は……。

 

 あー、コホン。ま、そんな話はどうでもいい。

 

 そんな、どうでもいいような俺の趣味というと、本とゲームだ。どっちも時間のかかる趣味なんだが、どっちも捨てがたいんだよな。電子本が普及したおかげでずいぶんと助かってるけど、昔なら本の山に埋もれてただろうな。

 ゲームの方は主にパソコンだったんだが、近年、VRMMOってのが登場して少し様変わりしたな、うん。VRMMOマシンは高いんで、インターフェイスの統合化が進んだんだよ。今は第四世代なんて言われてる奴を使っている。少し前に買ったんだけどな。

 ん?長い?うん、すまん。いよいよここからが本題だ。

 少し前、俺は新作ゲームの話をきいた。第四世代のVRMMOマシンの性能をフルに使う、次世代のネットゲームの話だ。

 プロジェクト『ツンダーク』。

 一説によると、それは研究機関がスパコン並べて作り上げた仮想世界の名で、運営も人間でなくAIがやっているらしい。これはちゃんと証拠もあって、仮想世界ツンダークとその運営AIについては、ちゃんと正式な論文もいっぱい出ているんだと。

 で、だ。

 この仮想世界を、ゲームプログラムを介して一般にも公開、ゲーマーたちの手で仮想世界やそのAIを育てようってのがプロジェクト『ツンダーク』らしい。形態はネットゲームで、β公開は明日だという。

 さて。

 そんな話を延々とした理由?決まってるだろ、俺もこれからプレイするのさ。

 βプレイの申し込みから5日後の事。「よろしくお願いします」という一文とともにアカウントが届いたんだ。正式公開後も、これをそのまま使っていいんだと。うん、楽しみだなぁ。

 すでにスターターキットは起動済みだ。俺の目の前にはVRMMOマシンがあって、俺のアクセスを待っている。

 中に乗り込み、スイッチをいれる。インターフェイスが動き出し、俺のデータが読み込まれる。

『VRMMOマシン起動しました。接続の瞬間に感覚が狂う事がありますが、もし、めまいや苦痛を感じましたら、途中でもただちに中断してください』

 いつものメッセージを聞き流す。

 接続先データとして『仮想世界ツンダーク』がセットされる。アカウントデータが吸い込まれ、やがて荘厳なフルオーケストラのBGMがスタートする。

「おお」

 気がつくと、俺は神殿みたいな場所にいた。

 まぁ、ゲームというか、いかにもファンタジー世界の神殿って感じだな。宗教くさい感じと異世界的な……まぁぶっちゃけ、クリスタルでできたパルテノン神殿を想像してほしい。見覚えがあるようで何処か根本的に異質な、いかにも異世界の神殿って感じの場所だった。

『よくぞまいられた、遠き旅人よ。ここは、異世界ツンダークにおける、そなたの顔を作る場所である』

 男とも女ともつかない、不思議な声が響いた。

 うはぁ、なんか既にすごいんだが。研究機関発のゲームにしちゃ凝りすぎてねえか?

 ちょっとイタズラ心の湧いた俺は、メニュー操作しないで口頭で声をかけてみた。

「あの、こんにちは」

 ああ、言っておくけど、何かリアクションを期待したわけじゃないぞ。

 俺はゲームをする時、最初は必ず王道じゃなくて、面白そうな選択肢をとるタイプなんだよ。たとえばプロローグで親戚のおばさんに「女子寮の管理人バイトやらない?」とか言われたら「イヤです」って即答したりな。そもそも管理人をやる事が前提のゲームだからハイかイエスで答えないとダメだろうってわかってても、ついやってしまう。まぁ、いきなり怒られてスタートに戻されたり、聞いてないふりして質問が繰り返されるのが大抵のゲームなんだけど。

 しかし俺はこの瞬間、このツンダークってゲームの凄さをさらに思い知らされる事になった。

『これはこれは。こんにちは、何かご用かな?』

「え……?」

 まさか口頭の問いかけにも返事がくるとは思わなかったんで、俺は一瞬フリーズした。

『おや、口頭で話すのが不思議かの?

 では尋ねるが、そなた、機械越しにメニュー操作での会話と、こうして口頭で直接対話するのとで、印象がよいのはどちらだと思うかえ?』

「そりゃ、口頭でしょう」

『うむ、その通り』

 驚いた事に、声はどこか楽しげだった。感情まで込めてくるのかと、俺はさらに驚いた。

「ああ、そうか。するともしかして、このまま口頭でもキャラメイクできるって事ですか?」

『もちろんできるとも。まぁ、メニュー操作でやらされる微細なキャラクタ調整までは再現できないが、そのかわり、スキルなどの調整面では質疑応答しつつ進める事も可能となっておる』

「あ、いいっすねソレ」

 俺は見た目の細部にこだわるタイプではない。スキル関係のカスタマイズのほうがずっと重要だしな。

 そういうと、声はさらに嬉しそうになった。

『そうであろうのう。ではさっそくだが、キャラクタ作成を始めるとするかな?』

「はい、よろしく。ちなみにお名前聞いていいですか?」

『む?我の名前かえ?』

「はい」

 俺としては、深い意味があったわけではない。仕事で相手の名前を確認するのと同じレベルの意味しかなかったんだよ。先輩によく「相手の担当名は聞いておけ」って言われてたしな。

 そして、相手からも普通に返答がきた。

『わが名はラーマ・メルルケ・アル・ツンダーク。もしツンダークで神殿に赴く事があれば、わが名を唱えればよい、そなたが求めるときには、話をきこうぞ』

「ラーマさんスね。了解っす」

『うむ。そなたとは長きつきあいになろう。どうかよろしく頼む』

「いえいえ、こちらこそよろしく!」

 どこかで聞いた名だなと思ったが、まぁいい。今はそれよりキャラクタ作成だよな!

『うむ。では、始めるとしよう』

 そんな声が響いたかと思うと、俺の容姿の候補らしきものが、パパッと表示されたのだけど……?

「えっと、なんで狼男?」

 いや、狼男というよりこれはむしろ……狼を二本足で立たせて人間っぽい骨格を与えたというべき姿だった。

 全身毛むくじゃら、というよりむしろモフモフだった。犬系の尻尾もちゃんとあるし、足は人間に近い形であるものの、がっしりとしていて筋肉質以前に、別の生き物の足を人間に似た外観にしてみましたっていう感じが漂っていた。首から上にしても、和製の軟弱RPGみたいにホスト崩れに変な耳が生えているような軟弱なものではなくて、おもいっきりただの狼そのものの顔だった。まぁ確かに、半端な狼男にするよりは、この方がずっといいけどな。

「えーと、この顔固定ですか?他の選択肢は?」

『ない。なぜなら、そなたが求めるのがこの姿だからだ』

「意味わかりませんて。だいたい俺が求めるものっていうのは」

『優れた戦士として名をあげ、若い娘にモテたい。違ったかな?』

「……」

 あー、違っちゃいない。いないんですけどー。

『おや、ちとデリカシーに欠けてしもうたかな。気を悪くしたなら謝ろう』

「……まぁ、色々と異論をはさみたいところはありますけど、活躍して賞賛されたいってあたりは確かに言う通りかも」

 実際、リアルで社会人になっちまうと、手放しで褒められる事なんてまずないからなぁ。あったとしても、それはヤバイものだったりするわけで。

 その点、ネトゲの勝利っていうやつはシンプルでわかりやすい。自分の腕一本で勝利をもぎとり、場合によっては誰かに感謝される。そういう生活がとても魅力的に思えたんだよな。

 かりに感謝されなかったとしてもだ。自分の行動が誰かの助けになる、いいじゃねえか。善行っていうのは結局は自己満足みたいなもんだし、そんな日の酒はきっとうまいぞ。

 そんな事を考えていると、

『で、そこでじゃ。まずこれを見てみよ』

 声がそう言ったかと思うと、目の前に何か地図のようなものが映った。

『これはゴンドル大陸塊の中央付近から東部大陸にかけての地図じゃ。まず、ここを見るがよい』

 中央大陸と書かれた部分の中央付近、そこが点滅していた。

『ここにあるのが「はじまりの町」。通常のプレイヤーは、ほとんどがここをスタート拠点とするのじゃが、一部に例外がある。たとえば、そなたに提示した狼人の場合、場所は東部大陸の中央平原となる』

 光点が地図の中心から、南東くらいにある大きな大陸に移った。

『中央大陸からこちらに渡るには、対岸のカルカラという国から船でわたらねばならない。だが中央大陸にいるプレイヤーで現在、カルカラに到達したプレイヤーは誰もおらぬ。つまり、東部大陸のあらゆる問題は手付かずのままとなっておる』

「それって、敵も強くてクリアできないからじゃないのか?」

『むろんそれもある。じゃが、その狼人(ろうにん)はもともとスペックが高い。序盤の戦いを馬鹿にせず、きちんと鍛錬しておれば、遅れをとる事はあるまいよ』

「ほう。そんなにすごいのかい?」

『うむ。わざわざ他の者とスタート位置を変えている理由もわかるであろう。チュートリアルでの敵もその分強くなければならず、また、最初から強いがゆえの苦労は他人には見えぬ。チート扱いされても困るでの』

「……なるほど」

 最初からある程度の強さをもち、そして周囲には未解決の問題が山積みか。で、それゆえに他のプレイヤーとはスタート位置が違うと。

 ふむ。面白そうだな。

 パーティプレイとかもともと苦手だしな。十分に成長して他大陸からプレイヤーが来るようになってから、そういう心配はすればいいか。

「よしわかった、それでいこう」

『やってくれるか。そなたの決断に大いなる感謝を』

「ははは、なんのなんの」

 そんな大げさなと思ったけど、俺からすりゃゲームだけど、登場人物にとっちゃ現実だもんな。だから俺も微笑んで頷いた。

 さて、冒険のはじまりだ!

「おっとそうだ、忘れるところだった」

『何じゃな?』

「最初って所持金はいくらになってるんだ?ちょっと気になったんだが」

『所持金のう……いるのか?その、当面は使い道がないと思うが』

「使い道がない?」

『スタート地点は東大陸でもかなりの田舎でな。貨幣すら意味をなしておらんのじゃ』

「……どんだけ田舎だよオイ」

『そのかわり、皆、心豊かで良い者ばかりだぞ?』

「へいへいわかったよ。当面はお金とか気にすんなって事だな?」

『すまぬの。では、これよりツンダークに初移行する。次元の壁を超えるのでな、注意するように』

「おう」

 次元の壁ね。異世界設定ってわけか、ふむ。

 そんな事を考えていたもんだから、俺は大事な設定を忘れているのにナチュラルで気付かなかった。

 そう。

 

 

 職業設定もスキルチェックもしないで、俺は旅立ってしまったのだった。


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