始まりの満月
満月が真っ赤に染まった雨の夜に少年と少女は出会った。少女は真っ赤な満月を忘れさせるほど美しかった。誰もが少女に恋をしてしまう、そう言ってもいいだろう。出るところは出て引き締まるところは引き締まっており、女性らしい体型をしている。その少女と少年は出会った。そして、何かに導かれるように二人は戦いを始めた。踊るように戦いに明け暮れる二人を止める者など誰一人としていなかった。少年は本能による愉悦のために。少女は対等の戦いによる愉悦のために。二人は戦いを楽しんでいた。だが、少年が少女を殺したことで決着する。
「なぁ、あんたは何者なんだ?」
この質問に答える者は誰一人としていない。そこにあるのはバラバラになった少女だけである。少年の手には刀が握られていた。血に染まった刀を洗い流すかのように雨はどんどん激しくなっていく。
少年は問いを投げかけた後に少女を見てからその場を後にしようとする。しかし、少年の足は少女から1m離れた所で立ち止まることになる。
少年の目の前に仮面を被った男が現れたからである。少年は瞬時に相手の力量を見極めて構える。が、仮面の男は唯一見えている口で笑みを浮かべると煉に機械を手渡す。
「紅 煉。君はトーナメント1回戦を突破した。それを記念してこの装置を渡そう」
男が煉に渡した物はダイヤの形をした真ん中が真紅に染まった変わった装置である。そして、この男が言うトーナメントとはいったい何なのか。煉は一気に問い質そうと男の方を振り向くがそこには誰もいなかった。その間放置していた少女の死体も忽然と姿を消えていて煉は何か大きな事象に巻き込まれたことを直感で感じ取っていった。
「面白いことになってきたな。なぁ? 紅煉」
煉は紅煉と呼ぶと急に体を痙攣させてその場に屈みこむ。そして、今まで放っていた殺気が収まり、鋭かった目つきも元に戻った。
「確かに面白そうだな。ダンテ。月下繚乱トーナメントか・・・」
さっきまで静かな気配を漂わせていた煉の周りから殺気が一気に解き放たれる。周りにいた動物達は一斉にその場から逃げ出していってしまう。内に秘めた闘志はもう一人の自分をも超える物である。
「にしても、月下繚乱トーナメントって何なんだ?」
「はろ~、私が教えてあげよっか?」
「君は・・・さっきの?」
「よく覚えてたね。私は橘 舞。能力は不死だからあんな細切れになっても生きてるって訳よ。何でそんな能力があるのかって疑問に思わないの。理由は月下繚乱の戦士に選ばれたから。月下繚乱トーナメントというのは・・・金持ちの道楽よ。人と人にあらざる者を戦わせてどちらが生き残るのかというのを賭けてるのよ」
「なるほどな・・・。俺としては戦えるのなら問題ない。人知を超えた奴らとの勝負か。今から楽しみになってきたぜ」
「・・・あなたは今どっちなの?」
「今はダンテだ。ダンテの黙示録が生んだ紅煉というもう一つの人格ということは理解してるのか。俺が主人格でもう一つの人格が紅 煉だ。煉は甘すぎるからトーナメントで戦い抜くのは厳しいだろ」
「けど、煉くんの方が潜在能力は高いんでしょ?」
「・・・お前は一体どこまで知ってる? その情報を知ってるということはかなり限られてくるが」
「それは教えれないわ。女の秘密ってやつよ」
ちっとダンテは舌打ちするとその場を後にしようとする。舞は煉の後を付いていく。
「何でお前が付いてくる?」
「あぁ、そういえば言ってなかったけど私あなたの家に居候することになったから」
「「何でそうなったんだよ!!」」
煉とダンテ、両方から突っ込みを受けて舞はたじろぐ。その光景を見ている数々の人物は不敵な笑みを浮かべていた。月下繚乱トーナメント、人知を超えた戦いが始まる。




