第三章：ゴブリンの巣穴
修武は足跡を追って森の奥へと進んだ。進むにつれて木々はより密集し、日光は徐々に厚い枝葉に遮られ、わずかな光の斑点だけが腐葉で覆われた地面に降り注いでいた。空気は湿った土の匂いがし、様々な植物の香りと混ざり合い、時折何とも言えない鮮血の匂いも混じっていた。
約5マイルの道のりを経て、修武は山腹に隠された大きな洞窟を発見した。慎重に古い大木の後ろに隠れながら、洞窟の外部環境を観察した。洞口は高さ約20フィートで、茂みに覆われ、浅い小川が洞口から流れ出し、日光に銀色く輝いていた。小川の東岸には狭く乾いた小道があり、洞窟内部へと続いていた。洞口外側には三方を囲む茨の茂みがあり、絶好の隠れ場所になっていた。修武の鋭い目は、二人のゴブリン見張りが茨の中に隠れ、木の板を上に置いて観察用の空間を作っているのを見逃さなかった。
「これがゴブリンの巣だ」修武は小声で言った。「ガンデルレンとシュダーはおそらくここにいる」
彼は行動方法を考えた。直接洞窟に突入するのは賢明ではなかった。そうすればゴブリンが警戒し、人質の安全を危険にさらすかもしれない。まず二人の見張りを始末することが先決だった。
修武はエリシアの教えを思い出した：「救出作戦では、冷静さと沈着さが蛮力よりも重要だ。焦る勇者は自分と他者を危険に追い込むことになる」
「彼らを静かに死なせねば」修武は決意した。「洞内のゴブリンを驚かせてはならない」
彼はかがんで鵞鳥の卵ほどの大きさの石を二つ拾い、泥を優しく拭き取った。修武の指は石の表面を撫で、空気抵抗を減らすのに十分な滑らかさを確認した。これは精密さを要する任務で、失敗は許されなかった。
深呼吸し、修武は精神集中して腕に気を集め、まるで引き絞られた弓のようになり、石は致命的な矢となった。彼の呼吸はゆっくりとリズミカルになり、心拍も落ち着いた。この瞬間、彼は周囲と一体となり、感覚は異常に鋭くなった。茨の中のゴブリンの呼吸さえ聞こえ、彼らの緊張と警戒心を感じ取ることができた。
「おい！」
茨の中から静かな声が上がり、一人のゴブリンが何か異常を発見したようで、修武の方向を見上げていた。その小さな尖った耳が立ち、黄色い目が暗闇で警戒の光を放っていた。彼の手はすでに腰の粗い角笛に伸び、警報を鳴らそうとしていた。
しかし遅すぎた。修武の両手はすでに動いていた。
「プッ！プッ！」
二つの石が弾丸のように発射され、精密な軌道で空気を切り裂き、それぞれ二人のゴブリンの眉間に命中した。石が頭蓋骨を貫通する音は、森の静けさの中でかすかな水滴のようにほとんど気づかないほどだった。ゴブリンたちの目は大きく見開かれ、死の驚きが歪んだ顔に凍りつき、音もなく倒れた。最初のゴブリンの指はまだ角笛に触れたままで、二番目のゴブリンの短剣は地面に落ち、かすかな音を立てただけだった。
修武は素早く洞口に近づき、他の敵がいないか注意深く耳を澄ました。洞窟の壁に耳を当て、奥から聞こえる音を感知した。水の流れる音と時折の会話、金属がぶつかる音が聞こえたが、それらはすべて奥からで、入口近くではなかった。
安全を確認した後、彼は洞窟に足を踏み入れた。
洞窟内部は薄暗く湿っており、小川が右側に自然な境界線を作っていた。地面は凸凹で、砕けた石と砂利で覆われ、時折突き出た尖った石が隠れ場所になりそうだった。空気中にはカビ臭さ、湿気、そして何らかの野獣の臭いが混じっていた。修武は暗闇でも周囲を鮮明に見ることができた。これはエリシアが教えた遊牧民戦闘技術「盲闘」のおかげだった。
「目を閉じて、暗闇を感じなさい」エリシアはかつてカラティン淑妮聖所の地下室で教えていた。「暗闇は障害ではなく、別の存在形態だ。視覚への依存をやめると、他の感覚がより鋭くなる。風の音を聞き、空気の匂いを嗅ぎ、地面の振動を感じる。これらすべてが暗闇での目となる」
修武は12歳の頃、エリシアに完全に真っ暗な地下室で一ヶ月間訓練するよう命じられたことを思い出した。最初は壁にぶつかったり、障害物につまずいたりしていた。しかし徐々に、彼は暗闇の中で魚が水中にいるように自在に動けるようになり、エリシアがランダムに置いた標的も正確に打つことができるようになった。今、この能力が暗い洞窟で役立っていた。
「淑妮女神よ、彼らを見つける導きを」修武は小声で祈り、首のお守りに軽く触れた。そこに彫られた美しい女性の顔は暗闇でかすかな光を放っているように見えた。修武は淑妮の聖職者ではなく、神聖な力を使う能力もなかったが、淑妮聖所での多年の生活とエリシアの影響により、彼はこの美の女神に深い敬意と信仰を抱いていた。
近くの通路脇には、小さな格闘室へと続く不均等な石段があり、そこからは野獣の咆哮と鎖の音が聞こえてきた。修武は慎重に石段を下り、一歩一歩を注意深く踏み、音を立てないようにした。彼の足取りは羽のように軽く、時折わずかな埃を舞い上げるだけだった。
格闘室の奥は狭くなり、最終的に急な裂け目だけになっていた。家畜と腐敗の混じった悪臭が顔に襲いかかり、修武は眉をひそめた。その臭いはあまりにも強烈で、ほとんど窒息しそうになるほどだった。死と腐敗の匂いに、野獣の排泄物の臭いが混じっていた。エリシアは彼に語ったことがある：「真の勇者は強大な敵に立ち向かうだけでなく、生活のあらゆる不快さにも耐えられる」これを思い出し、修武は深呼吸して、この耐え難い臭いを無視するよう自分に言い聞かせた。
薄暗い光の中で、修武は二匹の狼が入口の石筍の下部にある鉄棒にそれぞれ繋がれているのを見た。彼らは上半身しか残っていない死体を貪欲に食べていた—かつては美しかったであろう若い女性のハーフエルフで、その顔は恐ろしい死の仮面に歪められていた。彼女の目は大きく見開かれ、恐怖と絶望で満ちており、まるで死の最後の瞬間まで慈悲を求めていたかのようだった。彼女の上半身はすでに骨が見えるほど食べられ、露出した白骨と内臓が薄明かりの中で特に恐ろしく見えた。周囲の地面には様々な人型生物の腐敗した死体と骨が散らばり、目を覆いたくなるような光景だった。骨はきれいに食べられ、一部にははっきりとした刀の痕があり、その持ち主が非人道的な拷問を受けたことを示していた。
修武の心には怒りと悲しみが湧き上がった。彼が戦場の惨状を見たことがあっても、このような生命への冒涜は依然として彼に不快感を与えた。これは海賊の襲撃を受けた後のカラティン港を思い出させた。無実の住民の死体が通りに散らばっていた光景を。あの日、カラティン港全体が血の海に沈み、海賊たちは悪魔のように暴れまわり、どこも無事ではなかった。修武とエリシアは城壁の上に立ち、東側の城門を守る任務を担っていたが、最終的に敵は防衛線を突破した。記憶の中の光景はあまりに鮮明だった：燃える家々、崩れ落ちた城壁、至る所に死体、空気中には血と恐怖の匂いが漂っていた。あの日、彼は人間性の最も暗い側面を目の当たりにし、また最愛の人—エリシアを失った。
「この哀れな生き物たち」修武は思った。「彼らはみな自分の人生と夢を持っていた」彼はその半エルフの少女に特別な悲しみを感じ、彼女がいつ捕らえられ、このような最期を迎えるまでにどのような拷問を受けたのかと思った。「彼女も誰かの娘、妻、あるいは母親だったかもしれない」修武は考えた。「おそらく誰かが彼女の帰りを待っているだろう」
二匹の狼はまだ修武の存在に気づいておらず、目の前の「食べ物」に集中していた。彼らは低い唸り声を上げ、死体に残された肉を奪い合っていた。これらの野獣は明らかにゴブリンによって馴らされ、捕虜や不要な囚人を処理するための道具となっていた。
修武はゴブリンに飼われたこれらの野獣にいかなる機会も与えないことを決意した。彼は幽霊のように素早く近づき、足音を立てず、影のように動いた。狼の嗅覚は非常に鋭いが、修武は自分の気配をコントロールする方法を知っており、ほとんど匂いの痕跡を残さないようにした。
ちょうど一匹の狼が異常に気づき、頭を上げた瞬間、修武はすでに彼らの背後に来ていた。彼の両手が稲妻のように伸び、二匹の狼の首をしっかりと掴んだ。狼が振り返る前に、彼はすでに雷のような速さで彼らの首を折っていた。二つの軽い「バキッ」という音が生命の終わりを告げ、かつては誇り高い野獣だったかもしれないこれらの動物は、今やゴブリンの食料機械と化し、死は彼らにとって一種の解放だったかもしれない。
「安らかに」修武は静かに言い、自由を失ったこれらの魂のために心の中で黙祷した。彼は優しくあの半エルフの少女の大きく開いたままの目を閉じ、彼女が死後少しでも安らぎを得られるようにした。「淑妮女神よ、この魂を受け入れてください。彼女が彼岸でかつて持ったことのない美しさと平和を見つけますように」
格闘室を去り、修武は小川沿いの主要な通路に沿って進み続けた。地形は徐々に急になり、修武はより注意深く自分の足取りをコントロールし、湿った石の表面で滑らないようにした。水の音は狭い通路の中で反響し、奇妙なエコー効果を生み出し、音源の方向がわからなくなった。
影の中で、彼は小川の向こう岸に西に向かう通路が隠れているのを発見し、一方、主要な通路の前方約20フィートの半空には、木材とロープで作られた簡素な吊り橋があり、現在の通路と交差する別の通路と繋がっていた。吊り橋は長年の使用で傷んでおり、板の間には明らかな隙間があり、ロープにも磨耗が見られた。修武は、この吊り橋はおそらくゴブリンが洞窟の異なる区域間を移動しやすくするために建設したものだろうと推測した。
「ガンデルレンとシュダーはどこにいるのだろう？」修武は考え、周囲を見回した。彼は地面の痕跡を注意深く観察し、何か手がかりを探した。小川沿いの泥の上で、彼はより大きな足跡と引きずられた痕跡を発見した。これらの痕跡は小川の対岸の通路に沿って伸びていた。
直感が彼に対岸の通路を調査すべきだと告げた。その通路は急流のすぐ横にあり、水を嫌うゴブリンのような生き物にとってはあまり使われないかもしれず、重要な人質を隠すのにより適しているかもしれなかった。ゴブリンは通常、捕虜をより隠れた場所に閉じ込めることを好み、彼らの逃亡を防ぐだけでなく、他の捕食者に発見されるのも防いでいた。
修武は軽やかに一跳びし、優雅に小川を飛び越えた。彼の体は空中で美しい弧を描き、着地するときは羽毛のように軽く、音を一切立てなかった。これは彼の長年の武僧訓練の成果であり、自分の体を完璧にコントロールし、風の中の落ち葉のように音もなく進むことができた。
通路はどんどん広がり、最終的に大きな洞窟に通じていた。この洞窟は松明で照らされ、洞窟の他の部分の暗さに比べて特に明るく見えた。松明は洞窟の壁の鉄製の台に挿されており、炎がゆらめき、洞窟の岩壁に踊る影を投げかけていた。洞窟は10フィートの高さの断崖によって高低二つの部分に分かれており、通路の出口は低い部分にあった。修武は別の通路が以前見た吊り橋につながっているようだと気づき、中間は自然に形成された急な石段で結ばれていた。
洞窟の低い部分には、5人のゴブリンが炉火の周りに座り、空気中には料理の煙と、ほとんど処理されていない獣皮や臭いゴブリンの体から発せられる鋭い臭いが漂っていた。彼らは手に何処かから奪ってきた金属の食器を持ち、貪欲にシチューのような料理を飲み込んでいた。彼らの動作は粗野で野蛮で、時には肉片を巡って争い、鋭いキーキーという音を上げていた。
しかし、より注目すべきは高い部分の光景だった—二人の人間が突き出た尖った石に縛られていた。一人は50歳ほどの男性で、上半身は裸で、すでに意識を失っており、一人のゴブリンが彼を殴打していた。もう一人は白髪の長い、青い貴族風の礼服を着た半エルフの少女で、彼女も意識を失っているようだったが、今のところゴブリンから危害は加えられていなかった。
男性は明らかに深刻な虐待を受けており、上半身には鞭の跡や打撲傷が多数あり、顔は血まみれで、口の端からまだ血が滴っていた。ゴブリンは棘のついた革の鞭で彼を打ち続け、鞭を振るうたびに鋭い笑い声を上げていた。一方、半エルフの少女は体に大きな傷は見られなかったが、服はすでに一部破れており、白い長髪は乱れ、明らかに彼女も苦難を経験していた。
修武の心拍は速くなった。男性はシュダー・ホーウィントに違いなかったが、あの半エルフの少女は誰だろう？彼女は修武が探していた対象ではなかったが、明らかにゴブリンの犠牲者だった。いずれにせよ、修武はすべての人質を救出することに決めた。
彼は迅速に状況を評価した。6人のゴブリン、2人の人質、閉鎖された空間。もし彼が無謀に突入すれば、低い部分の5人のゴブリンは迅速に処理できるかもしれないが、高い場所でシュダーを虐待しているゴブリンは人質を盾として使うかもしれない。彼はより慎重な計画が必要だった。
しかし、修武が洞窟に足を踏み入れた瞬間、明るい火の光が彼の姿を露わにした。低い部分のゴブリンたちはすぐに侵入者の存在に気づき、一斉に彼の方を向いた。手に持っていたスプーンと器が地面に落ち、クリアな音を立てた。高い場所のゴブリンもシュダーを殴るのを止め、警戒して修武を見つめた。
「止まれ！」高い場所のゴブリンが突然粗悪な共通語で大声で叫んだ。彼の奇形の顔が恐ろしい笑みに歪み、黄色い目に悪意が満ちていた。彼はのこぎり状の短剣を掲げ、シュダーの首に当て、「もう一歩近づけば、上の人間は突き落とされる！」と脅した。
修武は素早く高い場所のゴブリンと人質の間の距離を見て、ゴブリンが行動する前に彼を倒せるかどうかを判断しようとした。しかしその時、彼の脳裏に突然声が響いた—若い女性の声で、はっきりと直接的だった：「彼に妥協する必要はないわ。私は上で縛られている半エルフの少女、名前はオフィーリア。私はずっと前に目を覚ましていたけど、意識を失ったふりをしていただけよ。ゴブリンが私に注意を向けていない今のうちに、ゴブリンに解離術（Disintegrate）を使うわ。下のゴブリンはあなたにお任せするわ」
修武は少し驚いた。この声は彼の耳からではなく、直接彼の頭の中に入ってきており、まるで誰かが彼の思考の奥深くで囁いているようだった。心霊感応？彼はこのような驚くべき能力に出会ったことがなかったが、エリシアはかつて一部の強力な魔術師や聖職者がこのような能力を使えると言っていた。彼らは口を開くことなく、直接他人に思考を伝えることができるのだと。
「心霊伝音」とエリシアは説明した。「これは魔法には属さない超能力の一つよ。使い手は思考を直接目標の頭脳に伝えることができる。秘密の通信に理想的な方法ね」
オフィーリアと名乗るこの半エルフの少女は明らかに普通の人間ではなく、まだ若いにもかかわらず、このような高度な魔法技術を使うことができた。解離術は強力な破壊的魔法で、対象を瞬時に最も基本的な粒子に分解することができる。普通の魔術師がそのような複雑な魔法を習得するには数十年もの時間がかかる。
修武はこの声を信じることにした。彼は降参するふりをして、ゆっくりと後ろに数歩下がり、両手を上げて攻撃の意図がないことを示した。「彼らを傷つけないでくれ」彼は大声で言い、顔に心配と妥協の表情を浮かべた。「話し合おう。問題を起こすつもりはない」
ゴブリンたちはこれを見て、得意げに大笑いした。彼らの鋭い笑い声が洞窟に響き渡った。その笑い声には嘲笑と軽蔑が満ちており、明らかに修武が彼らの脅しに恐れをなしたと思っていた。低い場所の一人のゴブリンは太ももを叩き、修武の方向を指差して何か彼らの言葉で言い、他のゴブリンたちの笑いを誘った。
高い場所のゴブリンも警戒を緩め、シュダーに向き直って拳と足で殴り続け、完全に隣の半エルフの少女を無視していた。「見ろ、人間よ」彼はシュダーに向かって咆哮した。「お前の救助者も臆病者だ！お前たちを救う者は誰もいない！」
修武の目の端で、オフィーリアが目を開けるのに気づいた。彼女の目には明るい青い光が輝いており、その青は夜空のように深く、しかし星のように明るかった。彼女の縛られた手の指がわずかに震え、奇妙な手振りをしていた。複雑で精緻な指先の動き、明らかに何らかの高位魔法の詠唱動作だった。
同時に彼女の唇が無言で動き、何らかの呪文を唱えているようだったが、その速度は驚くほど速く、まるで長い呪文を数秒に圧縮したかのようだった。彼女は巧みに自分の服についた灰を材料として使い、それを小さな球体に形成し、指の動きと共に放った。
一瞬のうちに、鮮やかな緑色の光線が彼女の指先から放たれ、シュダーを虐待していたゴブリンに直撃した。その緑の光はあまりにも明るく、ほぼ洞窟全体を照らし出した。哀れなゴブリンは悲鳴を上げる暇もなく、緑の光に完全に包まれ、風に吹かれる砂塵のように灰になって地面に散った。彼の手にあった革の鞭だけが床に落ち、彼がつい先ほどまで存在していたことを証明していた。
この光景に、低い場所のゴブリンたちは目を見開いた。彼らは明らかにこのような恐ろしい魔法を見たことがなかった。彼らの目に恐怖の色が浮かび、何人かは無意識に後ろに数歩下がった。しかし、すぐに彼らの恐怖は怒りに変わり、鋭い叫び声が洞窟に響き渡った。
彼らが反応する前に、修武はすでに行動を開始していた。
彼は風のように低い場所のゴブリンたちに向かって突進した。彼の姿はあまりにも速く、普通の人の目にはほとんどぼやけた残像のようにしか見えなかった。彼の速度は驚くほど速く、まるで空気さえも彼の前進を妨げることができないかのようだった。最初のゴブリンがまだ武器を手に取る前に、修武の拳はすでにその胸を貫通し、気の勁が爆発して、その心臓を粉々に砕いていた。
「愚かな」
修武は冷たく言い、血にまみれた拳を引き抜いた。ゴブリンの目は大きく見開かれ、胸の穴を信じられないように見下ろし、そして柔らかく倒れ、二度と起き上がることはなかった。
最初のゴブリンの死体が地面に落ちる前に、修武はすでに体を回し、一撃の蹴りで二番目のゴブリンの頭を肩から蹴り飛ばした。頭は空中で血の弧を描き、洞窟の壁に激しくぶつかり、鈍い音を立てた。無頭の体は地面で数回けいれんした後、動かなくなった。この一蹴りの力はあまりにも強く、ゴブリンの頭をほぼ肉団子のようにしてしまった。
三番目のゴブリンは恐怖に悲鳴を上げ、逃げようとした。その小さな体はパニックで躓きながら、目には隠しきれない恐怖が満ちていた。しかし修武は影のように追いかけ、後ろから一撃の手刀を振り下ろした。その手の縁は最も鋭い刀のようで、風を切る音を立てていた。
「バキッ！」
手刀は正確にゴブリンの頭頂部に命中し、この不運な生き物を頭から足まで二つに切断した。血と内臓が即座に吹き出し、洞窟の壁と地面に飛び散り、血の模様を描いた。ゴブリンの体の二つの部分はそれぞれ横に倒れ、腸や他の内臓が地面に流れ出し、不快な生臭い匂いを放った。
残りの二人のゴブリンはようやく反応し、一人が粗悪な短剣を手に取り、もう一人は燃える松明を掴み、修武に対して絶望的な反撃を始めた。彼らの顔には恐怖が書かれていたが、一筋の諦めもあり、自分たちがもう逃げ場がないことを知っていた。
「死ね、侵入者！」短剣を持ったゴブリンが叫び、ノコギリのような短剣を振り回して修武に突進した。その動きは素早かったが、修武の目にはスローモーションのように見えた。
修武は刺してくる短剣を避け、同時に強力な一撃を短剣を持つゴブリンの顎に向けて放った。拳が骨に当たる瞬間、強力な気の勁が爆発し、ゴブリンの頭は粉々になり、脳漿が四方に飛び散った。その歪んだ体は巨大な衝撃で吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられ、頭部はもはや識別できない血の塊と化していた。
最後の松明を持ったゴブリンはすでに恐怖のあまり気が狂いそうになり、松明を投げ捨てて逃げ出した。その小さな体は恐怖に駆られて驚くべき速さを見せ、洞窟の出口に向かって走った。
修武は冷ややかにこの光景を見つめ、心に一瞬の躊躇が過った。エリシアはかつて彼に教えていた：「逃げる敵に慈悲を示すことは、勇者の美徳である」しかし同時に、このゴブリンを逃がせば、より多くの仲間を連れてくるかもしれず、人質の安全を危険にさらす恐れがあった。
「エリシア、すまない」修武は心の中で呟き、しゃがんで地面から短剣を拾い上げ、精密な投擲を行った。短剣は回転しながら飛び、空気を切り裂く音を立てた。
「ブスッ！」
短剣は逃げるゴブリンの背中に深く突き刺さり、柄まで埋まった。ゴブリンは悲痛な悲鳴を上げ、体が前方に倒れ、地面で数回転がった後、動かなくなった。暗い緑色の血液が傷口からゆっくりと流れ出し、地面を濡らした。
「片付いた」修武は言い、周囲を見回して他の脅威がないことを確認し、高い場所の二人の捕虜に向き直った。
彼は素早く石段を登り、高い場所に到達した。半エルフの少女はすでに目を覚まし、彼女を縛っている縄を解こうとしていた。修武は彼女の側に歩み寄り、慎重に彼女の拘束を解いた。
「ありがとう」少女は言った。彼女の声は柔らかく優雅で、明らかな貴族のなまりがあった。「自分で解くこともできたけど、こっちの方が早いわね」
修武はうなずき、すぐにまだ意識を失っている男性人間に向かった。彼は素早く相手の怪我を確認した—複数の打撲傷と切り傷があるが、幸いなことに命に関わるものではなかった。彼は注意深く縄を解き、この筋骨隆々とした男性を優しく地面に横たえた。
「彼はシュダー・ホーウィントですか？」修武は尋ね、半エルフの少女に向き直った。
少女は解放された後、修武をじっくりと見つめ、目に賞賛の光が浮かんだ。彼女は青い礼服と乱れた白髪を簡単に整えた後、右足を軽く後ろに引き、左足を少し前に出し、スカートが彼女の動きに合わせて優雅に広がった。彼女の右手はスカートの端を軽く摘み、外側に少し広げ、同時に体をゆっくりと沈め、膝を軽く曲げ、標準的で優雅なカーテシーを形成した。彼女の左手は胸から外側に優雅に開き、手のひらを下に向け、まるで翼を広げた白い鳩のようだった。
「私はオフィーリア・マルゲイスト、ディープウォーター・シティのマルゲイスト家の分家出身です」彼女は自信を持って自己紹介した。彼女の声には年齢不相応の成熟した魅力があった。「私たちの家族は都市でそれなりの地位を持っていますが、私の属する分家は本家からあまり重視されていません」彼女の口調には、かすかに苦々しさが混じっていた。
彼女は白い長髪をかき上げ、続けた。「幼い頃に両親が馬車事故で亡くなり、私に豊かな財産と貴族地区の邸宅を残してくれました。私の後見人は家族の老執事ジャスティンで、彼は同時に私の魔法の啓蒙教師でもあります」彼女の目はジャスティンの名前を口にするとき少し柔らかくなった。
「魔法に関しては」彼女は胸を誇らしげに張り、濃い青色の瞳が知性の光で輝いた。「10歳の時にすでに魔法において驚くべき才能を示し、魔法の理解はジャスティンを超えていました。その後、シルバームーン・シティの賢者の宝庫に魔法を学びに行き、そこでほとんどの呪文が記録された貴重な魔法書を継承しました」彼女は顎を上げ、声に誇りを込めて言った。「私の驚異的な記憶力と理解力のおかげで、書物のすべての呪文を習得することに成功しました。これは、こんなに若いハーフエルフでは前例のない偉業なのです」
修武はうなずき、この半エルフの少女の背景に少し好奇心を抱いた。彼はオフィーリアを見つめ、彼女の容姿と雰囲気がエリシアによく似ていることに気づいた—同じ白い長髪、同じ優雅な雰囲気、話し方まで似ていた。唯一の違いは、オフィーリアの言動に時折見える自尊心で、これはエリシアの謙虚さと穏やかな性格とは全く異なっていた。
この類似点に修武は一瞬我を忘れ、まるで若いエリシアが目の前に立っているかのように感じた。彼は深呼吸をして自分を落ち着かせ、これは全く別の人物であることを自分に言い聞かせた。オフィーリアが行った貴族の礼儀作法の方法にも微妙な違いがあった—エリシアの礼儀はより控えめで自然だったが、オフィーリアの動きは完璧ではあるものの、少し意識的な演技の要素があり、まるで観客の拍手を期待しているかのようだった。
「私は修武、カラトゥ大陸から来ました」彼は簡単に自己紹介し、地面に横たわる男性を指さした。「この方はおそらくシュダー・ホーウィントです。私は彼の友人であるガンデルレン・シーカーロックに雇われ、ファンダリンまでの物資護送を任されています」
オフィーリアはうなずき、突然何かを思い出したかのように周囲を見回した。「あのドワーフはどこ？私と一緒に捕まったドワーフは？」
「ガンデルレン？」修武は疑問を持って尋ねた。「彼のことですか？」
「そう、ガンデルレン」オフィーリアの目に微妙な光が浮かんだ。「私がゴブリンに捕らえられてこの洞窟に連れて来られたとき、彼もここにいたの。彼はすでに意識を失っていて、若い人間の女性魔術師に連れて行かれたわ。その魔術師は深い紫色のローブを着て、神秘的な宝石がはめ込まれた杖を手にしていた」彼女は眉をひそめて回想した。「彼女は私のことを全く気にせず、まるで私が存在しないかのようで、ガンデルレンにだけ集中していた。彼女は彼のポケットから小さな包みを取り出し、呪文を唱えると、紫の光が一閃し、彼らは消えてしまった」
「あれは転送術よ」オフィーリアは付け加え、目に専門的な評価の光を浮かべた。「第七環の上級魔法で、かなり経験豊富な魔術師だけが使えるものよ。彼女の手の動きはとても流暢で、呪文の音節も正確無比で、しっかりとした魔法の基礎を示していたわ」
オフィーリアの口元がわずかに上がり、かすかに自信を示した。「でも、呪文戦闘ならば、私が彼女に勝てる自信があるわ。私の解離術のほうが強力だし、呪文溯行の恩恵も持っているから、短時間に強力な呪文を連続して放つことができるの」
修武はこの説明を聞いて、眉をさらに寄せた。「強力な人間女性魔術師？ガンデルレンはこの人物について何も言っていませんでした。彼女はなぜガンデルレンを連れ去ったのでしょう？」
オフィーリアは首を振って理解できないことを示した。「わからないわ。でもあの小さな包みが彼女にとって非常に重要だったみたい。それは手のひらサイズの物で、深い茶色の革で包まれ、金色の細い紐が結ばれていたわ」彼女は一瞬静止し、「あの女魔術師の目は...貪欲さと計算に満ちていたわ」
「これはいつのことですか？」修武は尋ねた。
「約一日前」オフィーリアは答えた。「その後、ゴブリンたちは私をあなたが先ほど見つけた場所へ連れて行き、意識を失ったあの男性人間と一緒に縛り付けたの」
「オフィーリアさん、あなたの話し方から魔法の造詣がとても高いことが伺えますが、どうしてゴブリンに捕まってしまったのですか？」修武はオフィーリアに尋ね返した。声にはわずかに皮肉の調子が混じっていた。
オフィーリアはこれを聞くと、顔を横に向け、長い間考えてから小声で答えた。「ファンダリンに到着したばかりのとき、地元の暴漢に襲われて連れ去られたの...」彼女の口調には不自然さがあり、目もわずかに揺れており、明らかに嘘をついていた。
修武は眉を上げ、この説明を信じていないことを示した。オフィーリアは豪華な衣装を着て、非凡な魔法能力を見せ、手を縛られた状態でも高位魔法を使うことができるのに、どうして普通の暴漢に簡単に連れ去られることがあり得るだろうか？
彼は、オフィーリアが話すときのかすかな表情の変化に気づいた—右目のわずかな痙攣、口元の不自然な曲がり、そして無意識に服の端を弄る小さな動作。これらはすべてエリシアが彼に教えた嘘を見分ける兆候だった。「人は嘘をつくとき、体は常に真実を暴露するものだ」とエリシアはかつて彼に教えた。「それらの微妙な、無意識の体の言葉を観察しなさい。言葉よりも正直なことが多いのよ」
修武は今は追求しないことにした。オフィーリアがどんな秘密を持っていようと、現在の最優先事項はすべての人の安全を確保し、ガンデルレンとナベルの行方を突き止めることだった。
彼はまだ意識のないシュダーに向き直り、彼の頬を軽くたたいて目を覚まさせようとした。シュダーの呼吸は安定していたが、顔色は青白く、体中の傷痕は彼が過酷な拷問を受けたことを示していた。
「私たちはこの洞窟をさらに探索する必要があります」修武は言い、次の行動計画を考えた。彼は周囲を見回し、洞窟に二つの出口があることを確認した—一つは彼が来た通路、もう一つは高い場所から奥へと続く通路で、おそらく前に見た吊り橋につながっているようだった。
