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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
エピローグ
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エピローグ 1

         1


<――高校生謎の集団失踪から今日で一ヶ月が経過しましたが、未だに新しい手掛かりは発見されておらず依然として行方のわからない状態が続いています>


 それほど広くない寝室に、テレビの音だけが響いている。


 今からちょうど一月前、同じ学校に通う生徒六名が突然姿を消していなくなると言う事件が発生した。


 隣町の山間部で、消えた生徒たちが使用していたらしい車が発見されたこと以外目ぼしい情報は見つかっていないようで、世間ではふざけて山へ入り何らかの事故に遭遇したか変質者のような人間に殺されどこかに捨てられているのではないのかという好き勝手な情報が錯綜している。


 テレビに得意そうな様子で出演する犯罪の専門家も、ここまで時間が過ぎては生きている可能性は絶望的ではないかと知ったかぶりな推測を何度も披露していた。


<また、消えた六人のうちの五人と普段から仲が良かったという青柳 愛さんの遺体も依然発見されてはおらず、これら二つの事件に関連性があるのかも含め警察の捜査は難航状態が続いている模様です>


「……皆、穴の中に沈んじゃったんだから見つかるわけないわ」


 テレビを観ながらポツリと独り言を漏らすと同時、


「うん? 穴がどうしたって?」


 カチャリと部屋のドアが開き、バスローブ姿の男が髪を拭きながら入ってきた。


 その男へ笑顔で振り向き、秋本(あきもと)里子(さとこ)は小さく首を振る。


「ううん、何でもないわ」


「まだ事件の進展はないのか?」


 里子の座るベッドの横へ腰掛け並びながら、男はテレビを一瞥し煙草に火を点け紫煙を吐き出した。


「みたいね。もう、見つからないんじゃないかしら。熊に襲われたりしてとっくに死んじゃってたりするかもしれないし」


「おいおい、そんなこと考えるもんじゃないだろ。きっと見つかるさ。娘の、夢美ちゃんだったか? その子だって里子に会いたがってるはずだ」


「……ええ」


 遠慮がちに頷きながら、里子は内心冷めた気持ちで息をつく。


(死体に会いたがられても困るわよ。せっかく、自由になれたのに)


 熱が冷め、愛情を感じなくなった夫を呪い殺したのが、今から約三年前。


 幼い頃、大昔に植染で生活していた村民の子孫だという祖母に聞かせてもらった生贄の儀式を利用し、夫を事故死させた。


 住んでいる家からなるべく離れた場所で飼われていた犬を儀式の贄に捧げ計画を実行したときは正直半信半疑ではあったのだが、本当に願いが叶ったと知ったあの瞬間の、驚きと解放感が胸を満たしてくれた感覚は今でも忘れられない。


 煩わしいとしか思えなくなった夫がいなくなり、それに対して自分は罪に問われない。


 そして、多額の保険金の入手。


 周囲や二人の娘に喜びでほくそ笑む自分の本心を悟らせないよう振る舞うのは、なかなかに大変だった。


 娘二人が高校を卒業すれば、後はもう遊んででも暮らせる。


 そう思い、母子家庭で苦しい生活をしているよう演技をしながら適当にパートを続けていた里子だったが、一年ほど前に職場の上司である目の前の男と恋に落ちた。


 だが、男女の関係になるまでは早かったが、そこからの進展は娘たちの存在が枷となり再婚はもちろん同棲すら踏み切ることができない始末。


“娘たちももう高校生くらいなんだろ? いきなり俺みたいな見ず知らずのおっさんが母親と一緒になったら絶対良い顔はしない。気を遣わせるのは可哀そうだ”


 一度一緒に暮らすことを提案したときにはそう言われてしまい仕方なく引き下がりはしたものの、納得のいかない気持ちの方が圧倒的に強く里子はまた儀式を利用することを決めた。


 夫のとき同様、適当に生贄を用意し娘二人がこの世から消えることを願い穴へと落とし、成り行きを見守った。


 それから暫くし、長女が自殺。


 あの子の身にどんなことがあって死を選択するまでに追い詰められたのかは知らないが、その要因を裏で引き起こしてくれたのは山神様のお力だろう。


 そして、その一月ほど後には無事次女もいなくなった。


「…………」

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