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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第四部:風岡夏純 ②
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第四部:風岡夏純 21

(そんな理由だけで、被害を受ける? 何か、全然わからないけど……もっと他にもわたしたちには見えない何かがあるような気がする。なんて言うか――)


 わたしたちが理解できていない、もう一つ“別の存在”が関与しているような。


 生贄の儀式による呪いと秋本 夢美の殺意。それにプラスする、他の要素みたいなもの。


 そういうものが最低もう一つくらい存在しないと、これまでに起きた全ての出来事の辻褄が合わせられない。


 秋本 夢美は生贄に見立ててて貴秀を殺した。


 儀式の呪いだか祟りは眉唾などではなく本物で、それに巻き込まれて秋本 夢美本人も死んだ。


 そして二人は化物となってしまう。


 これらとは繋がらない、第三の要因。


 絶対に、何か真実に結びつくパーツが不足している。


 秋本 夢美の仕返し。そのことにばかり意識がいっていたけれど、これはそんな生易しい事態ではなかった。


「――ぐぇっ!?」


「え?」


 着地点の定まらない支離滅裂な思考を展開している途中で、いきなり晴樹のくぐもった声が耳に届きわたしは驚いたように意識を現実に戻した。


「え……嘘、晴樹……?」


 足元の少し先へ固定していた視線を正面に戻したとき、そこには今まで存在していたはずの仲間の姿がなくなっていた。


 常軌を逸した出来事に驚いて、わたしはつんのめるようになりながら足を止める。


「晴樹、どこにいったの?」


 道を逸れたのかと疑うにも、そんな一瞬で見失うなんてことはあり得ない。


 ほんの数メートル先には晴樹が握りしめていたライトが持ち主を失い転がっている。


 困惑を隠せないまま周囲を見回すも、人の姿は見つけられない。


 まさか地面に穴でも開いていてそこに落ちたのかと思い、慎重にライトの転がっている場所へ近づき、


「ぐっ……お……ぉ……」


 そこで、わたしは微かな呻き声を聞いた。


 足元ではない。聞こえてきたのは――。


(――上?)


 咄嗟に、わたしは頭上を、木々が密集し空の見えないその位置を見上げた。


「なっ……!」


 ほぼ真上。二メートルほど離れた位置に、もがくようにして足をばたつかせる晴樹の姿を確認する。


 何故彼があんな所へ移動してしまったのか。


 その疑問に一瞬だけ迷いかけたものの、真相に気がつくことはそう難しくはなかった。


 晴樹より更に上。


 絡み合うように広がる木の枝からぶら下がり、両手で晴樹の首を締め上げている黒い人間。


 その存在に気づいたと同時に、ゴギッという鈍い嫌な音が鼓膜へ届き晴樹の足も電池が切れたみたいにその動きを停止させた。


「…………」


 不自然に折れ曲がった晴樹の首を、能面みたいに無表情な顔をした黒い化物が掴んでいる。


 その顔は、さっき見た貴秀と秋本 夢美のものとは全く違う、見たことのない顔だった。


 まるでマネキンのように平坦で、そもそも人間であったという名残すら感じられない、異様で不思議な様相。


(これって……)


 まともな人間ではなく、元人間にも属さないような化物。


 直感で、わたしは悟った。


 今自分の頭上で晴樹を殺したこれが、この化物こそが恐らく――。


(山神だ。これが貴秀たちを黒い死体に変えて操ってる元凶――)


 黒化して死んだ愛や、竜次と茜の前に現れていたのも、これの仕業だとしたなら――


「――ひっ!」


 ドスッという音を立て、眼前に晴樹の死体が落ちてきた。


「……は、はる、き?」


 首が歪むその姿からして、もはや生きていることは思えない。


 それでも、一縷の望みをかけるつもりで声をかけると、


「――!」


 わたしの呼びかけに反応を示したかのように、晴樹の頭がビクンと跳ねて動いた。


 まだ息がある。そう思い、喜びかけたのも束の間、わたしはすぐに表情を引きつらせる羽目になってしまった。


 晴樹の折れた首。あり得ない角度に曲がったその部分が、黒く染まり始めている。

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