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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第四部:風岡夏純 ②
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第四部:風岡夏純 9

「……つまり、オレらに関わる余地は現状無しってこと? だとしても、明日か明後日くらいには何かしら連絡があるかもしれないよ? 少し落ち着けば、両親だって愛のスマホに目を向けるだろうし」


「うん。それはそう。お葬式だって行ってあげなきゃいけないし。でも、それらは全部向こうから連絡があって初めてできることでしょ? だからこそ今はわたしたちがやらなくちゃいけないことを優先しなくちゃ。愛はいなくなっても、それは真美の妹からすれば無関係。黙ってたらわたしたちが追い詰められる事態は変わらない」


 愛には申し訳なさ過ぎることは理解してるけど、彼女のことを優先していたら自分たちは取り返しのつかない窮地へ立たされるのだ。


「何としてでも、貴秀と真美の妹見つけださないと……。ねぇ、茜。警察はもうどれくらいのエリアを捜索し終えたのかとか、そういうのはわからないの?」


 正面にある後頭部に瞳をスライドし、わたしは訊ねる。


「……特には。近所の住民に目撃した人はいないかを訊いて回って、後は人の入り込めそうな場所なんかを調べつつ山中の捜索も消防団と協力して範囲を広げていく方針だってことくらいしか知らないわ。お父さんもそこまで細かく把握してるわけじゃないみたいだから」


「そっか……」


 それはそれでしょうがない。


 いくら市長と言っても、警察が全ての情報をリアルタイムに公開してくれるわけではないだろうし。


「つーか、道あってんのか? この辺は俺あんまし土地勘ねーからな」


「このまま真っ直ぐ進んで、信号のない交差点があるからそこを左へ曲がって。その後はもう一本道で迷いようがないから大丈夫よ。十分も走れば右手にバス停が見えてくるから」


 もはや外灯すらなくなり完全な暗闇に包まれた前方を指差し茜が告げると、竜次は


「わかった」


 とだけ短く答えさらに強くアクセルを踏み込んだ。


 窓から見える範囲に、民家はない。


 黒く連なるシルエットは、杉の木の群れだろうか。


 こんな所なら、確かに猪くらいは現れてもおかしくないかもしれない。


 茜の指示通りに、車は交差点を左へ曲がる。


 車内は再び沈黙。


 重い空気が充満し、息苦しさを覚え始めた頃。


「……あれか?」


 竜次がスピードを減速させ、路肩に停車させた。


 そのすぐ左側には、バス停が確認できる。


「このエリアにバス停は一箇所しかないから、間違いないと思う。いなくなった二人が最後に目撃されてるのはこの場所よ」


 じっと窓の外を見つめながら、茜が呟く。


「……こんな所で、貴秀は本当に降りたのか? 想像してた以上に殺風景そうな場所だな」


 無限に広がる漆黒を睨み、晴樹は口元を歪めた。


「どうする? 降りるのか?」


「そうね。とりあえず、この近くを歩いてみよう」


 言って、わたしは先陣を切るようにドアを開け外へと降りた。


 途端に、ムワリとした熱気と湿気が身体を包む。


「どこを探すつもりでいるんだ?」


 晴樹が用意してくれたライトを点け周囲を照らすわたしの横へ立ち、竜次はザワザワと風に揺れる木々を見上げて訊ねてきた。


「わからないけど、どうせ普通に歩いていける範囲は警察が真っ先に調べ終えてると思うから、可能性の残されてるのは山の中かな。この山のどこか、すぐには人目につかないような場所に二人はいるんじゃないかしら」


「じゃあ、まずは山に入るための道を探すか。ここで降りて歩いたってんなら、どっかその辺に脇道みてぇなのがあるかもしれねぇしな」


 言って、竜次は適当に近場を照らす。


 目に映る範囲に、山道の入口らしきものは見当たらない。


 ずっと立ち尽くしていても埒があかないため、全員で固まり移動を開始しながら注意深く周囲へ意識を向ける。


 野生の獣に留意し、万が一誰かに見つかる危険性も考慮しなくてはならない。

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