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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第四部:風岡夏純 ②
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第四部:風岡夏純 7

 怯えか動揺か。


 茜の声は、普段の彼女からは想像できないくらい理知的な雰囲気が欠如している。


「茜、落ち着いて」


 自分にも言い聞かせる心地で、わたしはどうにか口を開く。


「良い? 愛が死んだっていうのは、ちょっとわたしにもどう受け止めたらいいのかわからないけど……。でも、呪いとか、そんなおかしなことを考えるのはやめて。何がどうなったら、わたしたちが呪われるのよ? 真美の妹が呪術でもやったって言うつもり? 馬鹿みたいだよ、そんなの」


 最後の方は、お互いの空気を和ませるために繕った冗談のつもりだった。


 くだらないと、少しでも笑えたら。そう思っての一言だったのだが。


「……そういうことも、あり得るかもしれないわね。私の見た黒い影も、きっと私を殺そうとして近くにいるんじゃ……」


 茜はその冗談をさも当然のことと肯定するかのように、真面目な呟きを漏らしてきた。


 その反応に内心うんざりする気落ちを芽生えさせながら、わたしは喉まで出かけたため息の代わりに諭すような言葉を吐き出す。


「あのさ、茜。あんた本当にどうしたのよ? いつもは冷静に振る舞ってるくせに、意外と小心者だったの? 呪いとか祟りとか、そんな非現実的なものこの世に存在するわけない。愛の死因だって、これから警察だか医者だかが調べてすぐにはっきりすること。わたしたちが消えた二人を見つけ出して真美の妹黙らせればそれで解決するんだから、そんなくだらないことで怖気づいてないでよ」


 若干強い口調になってしまったと自覚するも、仕方がないと正当化しておく。


 これくらいは言っておかなければ、捜索の土壇場で尻込みされそうで不安になってきてしまう。


「とにかくさ、後で集まってから改めて話をしよ? 晴樹たちも一緒の方が、気分的にも違うでしょ」


「……ええ、そうね」


「うん。じゃあ、また後で」


 電話を切り、わたしは再びテレビに視線を戻す。


 いつの間にか愛のことを知らせるニュースは終わり、どこかの食品工場で起きた食中毒問題の報道に切り替わっていた。


「……」


 身体全体が真っ黒になった死体。


 そう言われてイメージできるのは、焼死体。


 だけど、さっきの報道を聞いた限りでは火事で燃えたというわけではないのだろう。


(薄気味悪い……。よりによってこんなタイミングで)


 心臓が重苦しくなり、脳内をゾワゾワした感覚が這い回る。


 わたしはどうでも良いニュースを流し続けるテレビを消し、気分を落ち着かせようとシャワーを浴びることに決めた。

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