第三部:風岡夏純 17
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意味がよくわからねぇことになっちまったなと、竜次は夕食を口に運びながら考えていた。
友人である角田が果たしてどこへ消えたのか。そして、その原因が本当に秋本 真美の妹と関係があるのか。
夏純の言っていたことを信じるならば、消えた二人は失踪当日に顔を合わせていたらしいが、それがどれ程の重要性があるのかも曖昧なままだと感じている。
自分たちが玩具にしていた女が自殺し、その妹に仲間が呼び出されいなくなった。
そして、隣町の住所が書かれていたであろうメモ用紙の情報。
これらを上手く填め合わせ一つの形にすることは難しく、隠れている真相は掴めない。
ただ、一つだけ仲間の意見に同調できたのは、このままでいれば自分にも最悪な事態が降りかかるだろうということ。
それも、恐らくは取り返しのつかない形で。
竜次は茶碗に残っていたご飯を掻き込み、おもむろに椅子から立ち上がった。
「ん? どうした竜次。もう食わないのか?」
「ああ、今日はちっとやることあってな」
大食漢である竜次がおかわりもなく食事を終えたことに、テーブルを囲んでいた家族が意外そうな顔で見上げてくる。
竜次の家は両親と弟の四人家族。
夏純や角田の家ほど冷めきった様子ではなく、ごく普通の一般的な家庭だった。
母は専業主婦で父は薬品会社に勤めるサラリーマン。
三つ歳の離れた弟は竜次と正反対の性格で、勤勉な真面目タイプ。
学校の成績は常に上位に入る優等生だった。
「そうか。体調が悪いとかなら、無理はしないで休めよ」
「別にそんなんじゃねぇよ」
父の言葉に素っ気なく答え食べ終えた茶碗を片付けると、竜次は自分の部屋へと引き上げる。
竜次自身に勉強や部活に精を出そうという気持ちは一切ない。
当然、成績も悪いし学校での評判も決して良いものではなかったのだが、それに関して両親は特に文句を言うことはしてこなかった。
だからと言って放任主義というわけでもない。
竜次と弟、両方に対して平等に接してくるし、問題を起こせば当然のように説教もされる。
ただ、これまで行ってきた悪事を表沙汰にしないまま上手くやってきたため、表面上は平穏を保てているだけの話。
もしこれまでのことがばれてしまえば、どうなるかは想像するまでもない。
不良だが、一線を越えるような問題は起こさない息子。
親の目には、きっと竜次はそういう風に映っていることだろう。
「……」
竜次の体格では狭く感じる階段を上がり、自分の部屋へと入る。
部屋の中央に置かれた黒い丸テーブルの前にどかりと座ると、置きっぱなしにしていた煙草に火をつけた。
(…………)
自ら吐き出す紫煙に目を細めながら、カフェで見た真美の妹を思い返す。
自分たちのいた場所とそれほど離れていない位置に座っていた秋本 夢美。
あのときはまるでこちらのことなど何一つ知らないように振る舞っていたようだが、あれは完全な芝居だったのだろうか。
実際は姉が受けていた凌辱を知り、何かしらの報復を胸の中で考えていたのではないのか。
(確かあんときは妹にも手ぇ出すつもりでいたことまで喋っちまってたからな。それが秋本の自殺する原因になってたとしたら……妹の立場としちゃ穏やかではいられねぇか)
真美の身体を一緒に楽しんでいた身ではあるが、角田は本当に厄介な事を招いてくれたものだ。
(いや、きっかけは箱沢か。あいつが時計くらいで騒がなきゃ、何も始まらなかった)
嫌がり涙で顔を濡らす真美を犯しているときの記憶が脳裏に蘇り、つい眉をしかめてしまう。
ほどよく膨らんだ乳房と細く白い身体。必死に抵抗しようとする姿、その一つ一つに興奮できた。
そういう今までなら単に欲情するだけの記憶が、もはや不快感を生み出す邪魔な記憶と化してしまった。




