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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第三部:風岡夏純 ①
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第三部:風岡夏純 14

         7


 七月一日。金曜日。


 梅雨のじっとりとした雨雲が青空を覆い隠し、冷たい雫を撒き散らすのを教室の窓から眺めていたわたしは、不意に肩を叩く手に驚かされて首を室内の方へと向けた。


「ねぇ、夏純。茜、何かあったの?」


 側に立ち、そう声をかけてきたのは愛だった。


 買い物へ来たものの欲しい商品が入荷していなかったときみたいな不満顔をしながら、チラリと席に座っている茜を一瞥する。


 今は二時限目の休み時間。同じ学校に通う人間が消えたからと言って特に生徒たちに混乱はなく、クラスの中もいつも通りの日常が戻ってきている。


「ああ……、そう言えば今朝はずっとぼーっとしてるよね。晴樹と喧嘩でもしたんじゃないの?」


 適当に思いついたことを口にしてみるが、愛はゆっくりと首を傾け苦笑しながら言葉を返してきた。


「そんな感じじゃないでしょお。もしそうなら、茜の場合もう少し感情的になってると思うけど? あの様子は、何かもっと特別な事情が絡んでる気がするんだよね。昨日までは普通だったのに、どうしちゃったのかなぁ……」


「本人に直接訊いてみれば?」


「いや、それがさぁ、話しかけても反応薄いんだよねぇ。ちょっとね……、とか言ってすぐ黙り込んじゃうし」


「ふぅん。まぁ、人には言えないような悩みくらい誰にだってあるしね。ひょっとしたら、財布落として塞ぎ込んでるだけかもしれないわよ」


「いや、それ人に言えないような悩みじゃないし」


 割と真面目に告げたつもりのわたしの言葉に、愛はおかしそうに突っ込みを入れてくる。


「でも、確かに元気ない感じだね。昼休みにでも相談に乗るつもりで話聞いてみようか?」


「うん。それにさ、角田くんのことに関しても、茜なら何か新しい情報掴んでくれてるかもしんないもんね。茜のお父さんなら、失踪事件や隣町のこととか色々知ってる可能性大だよ」


「そうね。それ、実はわたしも期待してる」


 心ここに非ずといった風に机上へ視線を落とし続ける茜を横目に、わたしは頷く。


 わたしたちメンバーの中で、この近辺の土地に関する情報を調べる役割に一番適しているのは間違いなく茜だ。


 彼女の父親なら人脈もあるし、その気になれば警察の捜査状況なんかも把握できたりするのかもしれない。


 貴秀がいなくなって、今日で四日目。


 そろそろ彼の両親も不審に思いはじめてもおかしくない頃合いだろう。


 これでもし、貴秀の親まで警察へ相談をするようなことになれば……。


(秋本 夢美と貴秀。二人が同じ日に消えたことなんて簡単に関連性を疑われるに決まってる)


 ただでさえ、失踪する日に二人が会っているのを目撃した生徒もいるのだ。


 更には夢美の姉も自殺をしたばかり。


 これらの事情や繋がりを警察や学校が調べていけば、わたしたちの存在といじめの実態を暴かれるのは時間の問題。


(これって、本気でかなりヤバい状況よね。どうにかして早く貴秀を見つけるか連絡を取るかしないと、全員真面目に取り返しがつかないことになるかも……)

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