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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第三部:風岡夏純 ①
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第三部:風岡夏純 3

(でも、竜次の言うことがホントなら、貴秀はやっぱり行方不明ってことになる。いったい、どこに行ったの?)


「勝手に病院に行って入院してます……なーんてことはさすがにないよねぇ」


「あいつがか? あるわけねぇだろ。そんなん学校に即ばれるし、俺らにだって連絡くらいは入れるはずだ」


「ですよねー……」


 場の空気に合わないおどけた口調の愛に、竜次はむっつりとした態度で答える。


「…………学校の帰りに事故に遭った。そして、証拠を隠滅しようと慌てた犯人に連れ去られ、どこかの山奥にでも捨てられた、とか」


「え……」


 ぎょっとして、わたしは茜へ視線を移す。


「あくまで想像よ。お話の世界でなら、よくあるパターンじゃない?」


「やめてよ、そんな縁起でもないこと考えるの」


 たぶん自分が思う以上に怖い顔になってしまったのだろう。


 茜は澄ましていた表情を即座に崩し小さく笑うと、


「ごめんなさい」


 と呟き口を閉ざした。


「――はい、皆席について。遅くなってごめんなさい」


 会話が途切れた瞬間、担任の安達が教室へと入ってきた。


 それを合図に、愛たち三人も各自席へと戻っていく。


「今日はちょっと出席取ったら大事な話があるから、ちゃんと聞くように。少し長くなるかもしれないけど我慢してね」


 まだ騒がしい教室の中へそう言葉を投げ込んで、安達は出席簿を開いた。


 番号順に生徒の名前を呼び、貴秀の番で一旦流れを切る。


 空席になった机を一瞥してからわたしを見ると、安達は困ったように


「角田くん、今日も休み?」


 と話を振ってきた。


「そうみたいですね」


 わたしに訊かれたってわからないわよ。


 内心ぼやきながら答えると、安達は困った顔を更に歪めてため息をこぼす。


「ご家族に電話しても風邪だろうくらいしか言われないし、先生もよくわからないんだけど、角田くんまだ暫く来れそうにないくらい酷いの?」


「わかりませんよ。わたしだっていつも一緒にいるわけじゃないんですから。正直、わたしにも連絡してこないんで戸惑ってるんです」


 これは半分本音で半分嘘になるのだろうか。


 貴秀がどんな理由で学校に来ないかは知らない。ただ、風邪でないことや家に帰ってすらいないことは知っている。


 親が、確認もせず学校へ適当な連絡をしていることも。


 なんにせよ、今の時点でわたしは詳細を話すつもりはない。


 万が一、貴秀の失踪が秋本 夢美と関わっていたら……。


(真美にしていたことが、大人たちにばれかねない)


「そう……。もし何かわかったら、すぐに教えて」


 腑に落ちないと言った様子ながらも一応の納得を示し、安達は出席確認を再開する。


 そして、それが終わると下げていた顔を上げ、一度生徒たち全員を見回した。


「えっと、今日は皆にすごく大事な話があります。先日亡くなられた秋本 真美さんの妹で、この学校、一年四組の生徒でもある秋本 夢美さんが二日前から行方不明になっているそうです」


 クラス全体に、直前までとは質の違うざわめきが広がる。


「二日前の昼休み、気分が悪いから早退したいと職員室にいた担任の先生へ告げ学校を出てそれっきりだそうで、もし何か知っている人がいれば先生に教えて。どこかで見かけたとか、気になる噂を聞いたとかどんなことでも構わないから」


「昨日も学校に来てないんですか?」


 女子の一人が、好奇心を含む声でそんな問いを口にした。


「ええ。お母さんから電話があるまで学校側は何もわからなかったみたい。校長先生の話では、もう捜索願は出してるらしいんだけどね。先生もまだ詳しい部分把握してないから細かくは話せないんだけど……」


 秋本夢美がどんな少女なのかは知らないけれど、見た感じでは素行の悪い雰囲気はなかった。


 少なくとも、わたしたちみたいなタイプとは縁がないと言うか、仲良くなることは難しい反対側にいるような部類だと思う。

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