第二部:秋本夢美 7
縄文時代前期中葉から中期後葉頃の生活を示す貝塚が発見されていて、現時点これが植染町起源の最も古い資料となっているようだ。
古墳時代や建武、慶長といった学校で習った記憶がぼんやりと残る文字を読み流しながら、画面を下へスクロールさせていく。
権力者により支配されたり大きな山火事が起きたりと色々な歴史があるようだけれど、問題となる儀式の行われていた時代や天水田が誕生した時期というのはなかなか出てこない。
(もう少し歴史の勉強真面目にしてればすぐにわかったのかな。江戸時代って書いてあったけど……何年くらいなんだろ。どこかにそれっぽいことでも――)
面白みの欠片すらない堅苦しい文面に嫌気がさし始めた頃。
あたしの目に、とある一文が飛び込んできた。
<一六九八年【元禄十一年】、天水田に謎の奇病が広がり村民の半数が死亡した>
「……これ、さっきのサイトに書いてあった黒くなる病気のこと? 本当にあったの?」
スマホを見つめる瞳が、自然と大きくなってしまう。
その一文の前後をさらに詳しく読んでみるけど、残念ながらそれ以上の詳細は記されておらず、この奇病から約四十年後、この村は権力争いの紛争に巻き込まれ廃村へと追い込まれている。
近隣の村の民が逃散するのに便乗するかたちで、天水田の村民たちはそれぞれ他の地域へ逃げてしまい、その後の足取りは掴めていないようだ。
ともかく。
(奇病が流行していたっていうのは本当だったんだ……。ってことは、儀式に使ったっていう穴や祠も存在はしてるのかな? いや、でも……これかなり昔のことみたいだしなぁ)
あのおかしなサイトに書かれていたことは、少なくとも全てが嘘ではない。それだけは確認できた。
だけど、これだけで信憑性が得られるかと言うとそれもまた難しいだろう。
「…………」
大昔に行われていたかもしれない、常軌を逸した儀式。
生贄と引きかえに、願いを叶えてくれるかもしれないとは書かれていたが……。
(馬鹿馬鹿しい。それで願いが叶うならもっと有名になってるじゃん)
瞼を閉じて、スマホから手を離す。
無駄な時間を過ごしてしまった。
そう自分に言い聞かせながらベッドへ身体を倒すと、閉じた瞼の奥にあの六人グループの顔が浮かび上がってきた。
ニヤニヤと笑いながら、こちらを見つめる十二個の眼球。
お姉ちゃんを殺した、最低なクズたちの視線。
(あたしの願い、か……)
あの六人を、この世から消したい。
あたしの家庭をボロボロにして、罪を償おうとしていないあの連中を全員消してしまいたいという、この願いは――。
(……他に案がないなら、ちょっと確かめてみようかな)
本当に呪いや霊の力で人が死ぬとは思えないけれど、それで本当に成果が出ればもうけものではないか。
自分で手を下せば、それは犯罪となりすぐ警察にばれてしまう。
当然、お母さんにも迷惑がかかる。
(問題の場所を探すだけでもしてみようか)
そんな好奇心にも似た感情が、あたしの胸の奥で疼いた。
自分でもよくわからない、不思議な感情だ。
普段ならば絶対、こんなくだらない与太話に関心なんて示さない性格なのに。
(お姉ちゃんがいなくなって、あたしどこかおかしくなっちゃってるのかな)
割と本気でそんなことを思いながら、あたしは横にしたばかりの身体を起こしお風呂へ入るための準備を始めた。




