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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第二部:秋本夢美 ②
20/91

第二部:秋本夢美 6

村が消滅した正確な時期は調べることができなかったが、明治の初め頃には既に無くなっていたものと思われる>


 ここまで一気に読んで、あたしはいつの間にか止めていた息を吐き出し数回瞬きを繰り返した。


(ここに書いてある住所、隣町だ。電車を使えば十五分くらいで行ける。あの辺は山間部だから、この話の舞台としてはしっくりくるかも)


 まさか、こんな近所の情報が書かれたサイトがあるとは思わなかった。


 病み移しなんて言葉、今まで生きてきて一度も耳にしたことがない。


 同じ県内、それもこれだけ近い距離での話なら、少しくらいは聞き覚えがあってもおかしくないはずなのに。


(やっぱり、ガセネタなのかな。この辺に住んでる人が適当に考えたことを掲載してるとか)


 大体、本当にこんな場所があるのなら心霊スポットにでも取り上げられて自分たちの世代辺りで話題になるくらいはするだろう。


 まして、こうしてネットで日本中に情報が開示されているのだ。


(そもそも、これでどうして願いが叶うなんて話になるのよ)


 災厄から逃れるため、遥か昔に行われていた悪習。


 これはせいぜい、その紹介や記録的なものでしかない。


 訝しく思いつつ、あたしは更にページをスライドさせる。


「……」


 すると、次に黒い画面へ浮かび上がってきた文字は、


<病み移しの方法>


 という一文。


 その下には、また何やら長い説明が記されている。


<病み移しとは、上記のように村の災いを終結させ、元の暮らしを取り戻すことを目的に始まった儀式です。


 これは即ち、言い方を変えてしまえば対価を払うことにより一つの願いを叶える儀式であるとも受け取れるのではないでしょうか。


 昔の村人は毎年若い命、対価を生贄として捧げることで、平穏な日常を手にしていた。


 つまり、生贄を一人、この穴へと捧げればあなたが望む願いを一つ叶えてくれる可能性がある、ということです。


 お金が欲しい。結婚をしたい。難病を治したい。夢を叶えたい。或いは……憎い誰かを殺したい。


 誰しもが人の前では口にできないような欲望や願いを持っています。


 それを現実のものに変えてくれるかもしれない儀式。それが、この病み移しではないのかと私は思うのです。



 残念ながら、これを書いている私は病み移しを実際に行ったことはありません。


 情けないことに、己の欲望のために生贄を捧げる勇気はありませんでした。


 ですから、もし今これを呼んでいるあなたがこの儀式に興味を持たれたのであれば、それは完全な自己責任です。


 リスクを冒してでもあなたに叶えたい願いがあるのなら、この天水田の跡地を、黒い死体と生贄を落とし続けた穴を見つけだし儀式を行うことで、その願いを手にできるのかもしれません>


 そこまで全てを読み終えて。


 あたしはまた、数回の瞬きを繰り返した。


「……嘘くさい」


 最後まで読み終えての、率直な感想。


 どう考えても、こんな話は眉唾だ。特に酷いのが最後の方。


<これを書いている私は病み移しを実際に行ったことはありません>


「だったら、何でこんなこと書いて広めてるのよ」


 胡散臭いにも程がある。


 とんだガセネタを掴まされた気持ちになりながら、あたしは念のためにとここに記されている住所について検索をかけてみる。


 もし本当にこの土地で過去何かしらの災厄があったならば、少しくらい関連する情報が載っていてもおかしくはない。


 T県植染(うえぞめ)山神(やまがみ)地区。


 この土地が存在していることは知っているから、それに対する情報がヒットすることには驚かない。


 町の人口や面積、公共施設の紹介などどうでも良い基本情報を読み飛ばしつつざっと目を通していくと、歴史の項目が現れた。


 該当のページを開き内容を確かめると、思いの外細かい解説の文字が羅列されていた。

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